2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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中西大介氏(以下、中西):これは先ほどご紹介できなかったSNSの数字ですね。大きく数字は伸びています。SNSの活用はこれからですね。大きいテーマですけれども。
本田哲也氏(以下、本田):Twitterのインプレッション10倍ですね。
中西:これは、これから少し次の話にも関係するところですけど、グローバルに向けた情報発信という意味でも、SNSと関連を深めていこうと思います。アジア戦略を通じて。
ここから少し余談です。ニューヨーク近代美術館、MoMA、皆さんご存知ですよね。世界的な絵がいっぱいあります。僕、ここが大好きで、ニューヨーク行くたびに寄るんですけれども、日本の美術館はいまだに写真撮ってそこから拡散させるなんていうのはできないですね。やらせてもらってないですよね。
ご存知の方も多いと思いますが、MoMAはこうやって世界的な絵の前で、これたとえばゴッホもあるし、ピカソもあるし。世界的な名画がこのフロアにずっと並んでいるんですけれども、ニューヨークの美術館は「写真撮って拡散してください」と言ってるんです。
僕、先週東京都美術館にボッティチェリ見に行ったんですけれども、日本の美術館はいまだにやっぱり難しいですよね。良し悪しではなく、このへんの感覚の違いがよく表れていると思います。もちろんこのMoMAは、Wi-fiはパーフェクトでしたね。
日本のスタジアムは、いまだWi-fi環境がものすごい乏しいです。だから、スタジアムへ行った人が一番楽しめるという環境にはなってないです。意外とテレビの前で、セカンドスクリーンで見てたほうがいろんな情報が入ってきてしまうんです。
スタジアムに来てくれる方々が一番楽しい環境を作れていないというのは、Jリーグは今とても問題だと思いますね。これは大きい課題ですね。
本田:逆にいうと可能性。試合の消費ですか? あえて言いますけど。その可能性が、まだそこ残っているということですよね。
中西:努力の余地がまだだいぶ残っていると思います。
本田:見逃し視聴じゃないですけど、似たような感覚ですね。
中西:やっぱりリアルでスタジアムに来てくれるお客さんが、一緒に舞台を作ってくれることからすると、その環境が整ってないというのは大きな課題ですね。こちらは90分の試合のストーリーを補完する情報ですね。
本田:スタジアムの独特な……それでいうと、ここで何ですけど、会場の皆さん、「去年1年間でJリーグの試合を見に行った」という方、手を挙げていただいてもいいですか?
(会場多数挙手)
中西:やっぱり関心のある方がある程度は……。
本田:関心がある方が集まってる(笑)。世相をあんまり反映していないかもしれないですけど、ありがたいことですね。となると、(スタジアムに)行かれた方が多いと思うんですけれど、やっぱり独特の……やっぱりマーケティング・テクノロジーフェアで、IT、デジタルというのが主眼の、今日明日のフェアですけど。
やっぱりリアルの世界観とか体験。ある種の「カスタマー・エクスペリエンス」ですね。これはやっぱり得難いものがありますからね。
中西:ありますね。ドイツのブンデスリーガが今、観客数では世界一なんです。イングリッシュプレミアリーグ以上なんですね。平均4万4千人以上、彼らのコンセプトは「ライフステージのどこにいても、スタジアムにあなたの居場所はあるよ」ということを訴えようとしてます。ロングストーリーの提示ですね。
つまり、子どものときは家族に、お父さんお母さんに連れてきてもらった。あるいはサッカーのコーチに連れてきてもらって、友達と一緒に行った。
次のステージでは、ひょっとしたら自分でアルバイトしてお小遣いをためて、デートでスタジアムに行くかもしれない。そのデートで行くようなスタジアムは、安全で楽しめる雰囲気がないといけないので。
ドイツのスタジアムも、かつてフーリガンがいて、荒れていた時代があるんです。そういう状況をドイツのサッカー全体で努力をしながら排していき、デートで女の子が行っても楽しめるような環境を作ってきた。
次に社会人になったら、まだ生活費が足りないので、自分は高いチケットは買えないけれども、立ち見席でちゃんと居場所がある。毎試合行ける、安いお金で見れる場所がある。
今度社会的に成功すると、それはクラブに貢献する意味でも、年間シートを買ってもらったり、ビューボックスを買ってもらったり、VIPになればなったでそこは社交の場になるので。
試合を見に来るだけじゃなくて、日常のコミュニケーションの場としてスタジアムが使われる。
今度歳がいってリタイアしたあとも、年金で行ける席がある。場所がある。つまり、「生涯通じてあなたの居場所は、ブンデスリーガのスタジアムにはどこにでもありますよ」ということをコンセプトとして掲げて、それが今、彼らはうまくいって観客数世界一にもなっているんですね。
本田:ゆりかごから墓場までですね。それは今のお話だと、私はドイツに行ったことないですけど、具体的にこのスタジアムの作りとか、そういうのが今みたいな話に基づいて設計されてたり、改修されていたりするんですか?
中西:2006年のワールドカップ以降に設計されたスタジアムは、そういうコンセプトでできていますね。我々のスポンサーさん、タイトルパートナーさんが明治安田生命さんなんですけれども、コンセプトが非常に合っています。
ゆりかごから墓場まで、「ライフステージのどこでも、我々のパートナーですよ」ということを消費者の皆さんに訴えかけたい明治安田生命さんとJリーグというのは、そういう意味でものすごくパートナーとして親和性が高いと思います。
基本的な理念を共有できるので、とても深いところでつながっていると常に実感します。世界的にも生命保険会社はサッカークラブのスポンサーが多いんですよ。
本田:やっぱりマーケティング的に考えると、今の話もすごく示唆があると思うんですけど、顧客のインサイトとかライフステージによっての意味づけですよね。
Jリーグの場合はサッカーというコンテンツをある種、売っているというならば、それが10代の女の子だとどういう意味があるかとか、あるいは子どもができたばかりのニューファミリーにとってどういう意味があるかとか。
「どういう気持ちのどういうときに見るものなのか、差し出すか」という、相手に寄りそう感じのコミュニケーションというのは、なかなかこれ日本企業は苦手だったりするんですけども、そういう示唆がやっぱり今の話はあるかなと。
中西:ありますね。そのへんがとても大事だと思います。これも物語論でいうと、大きい、一番長い。
本田:「物語論」がキーワードですね(笑)。
中西:人生、ライフステージどこでも寄りそうマーケティングのあり方というのは、まさに一番大きな物語ですよね。イングランドのリバプールにあるエヴァートンというクラブがあるんですけれども、エヴァートンというクラブはファンがどこで離脱するか、つまり「人生の大きなプロットの中で、どこでサッカーの試合を見に行かなくなるか」というのを調査したんですね。
意外なことにというか、考えれば当然かもしれませんけれども、「子供が生まれたとき」。とくに夫婦で見に行っていたサポーターは、奥さんがなかなかお子さんにかかりきりになるので、それをきっかけに少しスタジアムから足が遠のく。
今度、エヴァートンのホームページ見ていただいて、今まだあるかどうかわからないですけれども、新しいシーズンのシーズンシートのプロモーションビデオがあるんです。
そのビデオの作り方なんですけれども、妊娠したお母さんが、エヴァートンのファンショップをゆっくり歩いているんですね。ゆっくり歩いているところに小さい赤ちゃん用のシャツがそこにかかってるんですけど、それをにっこり微笑んで取って見ているシーンがあるんです。
つまり、ライフステージの一番離脱しやすいところに対して、エヴァートンとしてどうやってファンに継続してもらうかということを体現した(映像)。
本田:すばらしいですね。
中西:これもマーケティングですね。すばらしいビデオがあるんですけれども。ヨーロッパのクラブというのは、やっぱり長いことその人の人生に寄りそうかたちで発展してきてますので、基本、そこを外さないですよね。
やっぱりそのビデオの中を見ながら、「我々もこういう発想で皆さんに訴えかけなきゃいけないな」と、すごいヒントになりましたよね。
本田:それでいくとそうですよね。実はスポーツ、サッカー、フットボール、勝った負けたというのは、単純な試合結果、あるいは誰が活躍したかというのあるわけですけど。
それはさることながら、消費者の方というのはどういう経験したか。勝った負けたも大事ですけど、何の意味があったか。子供がどういう反応したかとか、いつを思い出したかとか。このくらいの想像力でもって寄りそっていくというのが。これは一般的に、マーケティングコミュニケーションとしては重要かなと思いますよね。
中西:そうですね。イングランドの場合は勝った負けたを越えて、チームをめぐるゴシップまでが売り物になりますよね(笑)。ああいう物語の中に監督と選手の確執や、クラブ役員との確執なんかは「これ、ほぼシェイクスピアの何かだったな」とか国民は思うのでしょうね。それもある種、物語の消費ですよね。
そういう彼らにイギリス人の中の定型の物語があり、それをサッカーとともに植えつけながら、あるいはサッカーとともに、そういった物語とともに生きていく。そういう感じがとてもします。
一言で「文化」と言っちゃうと思考停止になるので、文化というものは長い間の物語の形成、物語の共有ととらえると、今のマーケティングの考え方とも合致するんじゃないですかね。
本田:スキャンダルも話題の1つ。Jリーグはもう少し文春さんと仲良くしたほうがいいかもしれないですね、今年は(笑)。
中西:(笑)。フットボールもそうだし、この国では、文化に対してエンターテインメントを低く見たり、文化に対して「娯楽」というものをやや低く見る傾向がありますけれども。
モーツァルトの「ディヴェルティメント」は、「エンターテインメント」という意味ですよね。ディヴェルティメントには今も残っている美しい曲がたくさんあります。
最初はお客さまである宮廷に対して、あるいは富裕層である顧客から依頼されて作った曲ですよね。楽しませようとして作った曲。まさにエンターテインメントです。ディヴェルティメントですね。はじめから文化を創るために創作したわけではない。時代を超えて今の時代まで残っているから、結果として文化、あるいは芸術だといわれるのだと思います。
その時代はその時代で、「その人達にどうやって楽しんでもらうか」を考え抜いて作られた。スポーツも同じで、初めはエンターテインメントとして目の前のお客様のために作り、後世まで残ったものが文化になっていくので、「文化」というところから入ると、入口がすごく狭くなると私は思います。
もう少し幅広くとらえて、マーケティングの考え方も活用しながら、文化に近づいていくんだと思いますね。
本田:そういう意味じゃ文化圏が違うという意味でいうと……海外の話に移っていきましょうか。アジアなんて、グローバルレベルでは文化で近いところもありますけども、このへんのJリーグの、とくにアジア展開というあたりですね。
中西:今、Jリーグは9ヶ国と提携をしてます。アジアの国がほとんどで、これを始めたきっかけというのは、イングリッシュプレミアリーグです。プレミアリーグはまさに世界を席巻しています。さきほど申したように、17番目のクラブは世界で17番目のクラブになるくらい、ものすごい放送権料が上がっています。
イングランド国内だけではなくて、世界中209ヶ国に放送を流している収入ですね。イングランドの一人勝ちの状況になっている。このお金のうち、アジアからのマネーがほぼ半分です。海外放送権料、イングランドのものすごい大きい放送権料のうち、アジアからのお金がほぼ半分。
本来アジアの中で、アジアのフットボールの発展に使われるべきお金がどんどんヨーロッパ、とくにイングランドに流れています。だからアジア各国でサッカーはものすごく盛んなのですが、国内リーグは低いレベルにとどめおかれているという、そういう状況があります。
アジアの各国とそれぞれのリーグが自律的に発展することが、それぞれの国に寄与することであり、リーグ間の協力がアジアのサッカーのレベルの発展を促す。
そうした考えのもとで、アジアの中で一番始めに本格的にプロ化をし、この20何年経験を積んできたJリーグは、アジア各国に対して「今までのノウハウ・知見を全部シェアしましょう」と呼びかけ提携を始めています。そうしてJリーグのプレゼンスを高めていきます。非常にロングスパンで進める必要がありますが、最終的にはもちろん、Jリーグに返ってくる話だと考えます。
FIFA(国際サッカー連盟)に加盟する国は、IOCや国連に比べても多く、スポーツで一番多い国と地域で構成されています。
中西:FIFAとUEFA(ヨーロッパサッカー連盟)の予算を合わせると、IOCを超えます。
本田:ものすごい。
中西:だから利権の巣窟になったりして、昨今いろいろ問題があるわけですけれど……。でもご存じのように、こういう大きなマーケットの中でワールドカップは開催されています。
中西:さきほどアジアの課題を挙げましたが、グローバル化の中で、日本の課題も浮き彫りになっています。選手の流出です。この20年、我々も選手の育成を一生懸命やってきました。
中西:まだまだ足りないとは思いますが、曲がりなりにも、本田(圭佑)くんや香川(真司)くんみたいな、ヨーロッパのトップクラブで活躍する選手も出てきてる。ここ、育成を一生懸命やるとですね、真ん中でまず選手の海外の流出が起こる。
海外の有力選手中心の日本代表がつくられる。代表は人気が出ます。代表戦のチケットは即日完売になりますよね。人気も実力も上がってくる。代表戦の収入が上がることによって協会の収入が多くなるので、さらに強化につぎ込めるというグッドサイクルですよね。
一方で、国内リーグ、Jリーグは矛盾を起こします。選手は海外に次々と流出し、相対的に国内の人気が落ちてきます。人気がなければ収入も下がるので、海外の選手の獲得も難しくなって、だんだんサイクルが悪循環に。
本田:尻すぼみじゃないですけども、ミッシングリングですね。
中西:今は日本のモデルを示してますが、ヨーロッパの中堅国から南米にわたって、ほぼすべての国で負のスパイラルが起こっている。これが現実のモデルなんですね。
我々はこのミッシングリングをどうやって正常なリングに戻していくかってということが1つの戦いで、日本だけでは解決できないと考えています。アジアとの連携に乗り出し、グローバルの視点で打ち手を講じていきます。これはカタールリーグとの提携。
中西:2022年カタールでワールドカップあります。我々は2014年のワールドカップブラジル大会で惨敗しました。ものすごい悔しい思いをしました。
ブラジルという国を、我々はよく知ってると思っていました。けれども実際に現地の気候やコンディションの作り方、何かあったときのトラブルの対処のときに電話一本でいろいろ解決してくれるネットワーク作り。いろんなこと総合的に考えると、ブラジルとの関係性が不十分であったと言わざるをえません。
そうした課題感から、(20)22年に、1人でも多くのカタールの関係者を知っていて、一人でも多くの指導者や選手が、カタールでプレーした経験をもっている状況を作るためには、もう今からカタールとの連携が必要で、若い選手をこれからカタールに何回も送ル予定です。
カタールにとっては、ワールドカップの前の東京オリンピックで成果を上げることで、自国のワールドカップへ大きな弾みになります。そのため、逆に東京でのプレー経験を彼らには増やす働きかけをします。こうしたアジア各国とWin-Winの関係を結び、相互に発展することで、いつかこうした協力関係のもと、ヨーロッパの強豪国を倒すぞと。シンプルにいうとそういうことですね。
中西:我々は一方で、Jリーグの試合の中継をしてもらえるように、各国の放送局といろいろ交渉してきました。彼らの国のスター選手をJリーグに呼び、自国のスター選手の情報を日本でも出しましょうということで進めていますが、まだまだ規模が小さいです。
視聴者数としては1014万人。本来ASEAN全体では6億、7億人のマーケットですから、まだまだですけれども、まずは放送を見てもらえる環境、例えば先ほどご紹介したチャンピオンシップや、ヤマザキナビスコカップの決勝を無料放送で見てもらうような環境を少しずつ、今作っています。
中西:これは、イランのテヘランでおこなわれた、フットボールのマーケティングのセミナーです。真ん中にいるの私です。イランの各クラブに対して、フットボールのマーケティングについての講義をおこなってきました。ある種の技術供与ですかね。こういう関係も今は築いてきています。
興味深い事例として、川崎フロンターレの取り組みをご紹介します。フロンターレのスポンサーに、東急グループさんがあります。
中西:東急電鉄、東急不動産が、ベトナムのビンズン市に都市開発のビジネスをおこなう。着手にあたって、その関係を先導した一端は、実はサッカーでの友好関係で、川崎フロンターレがこのビンズン市の一番強いチームと試合をすることによって、両者の関係構築の一助となりました。
サッカーは、異なるビジネス同士の橋渡しとしても役に立つと実感しました。その背景には、東南アジアの各クラブのオーナーやサッカー協会の関係者というのは、だいたいどこかの大企業のオーナーか財閥のトップなんですね。
ビジネスの軸であれば今まで関係を構築するのに苦慮してたところに、サッカーが介在すると、円滑にその関係性が構築できる。今回のケースはそれを示す典型だといえます。
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