漫画、アニメ、ゲームが女性の人権を侵害している?

山田太郎氏(以下、山田):先週お話しした、国連の女子差別撤廃委員会が、ジュネーブで開かれました。日本審査っていうのが開かれまして、1日中やっていたようです。で、今日その担当の人に……。

坂井崇俊氏(以下、坂井):現場でちょうど話していた人ですね。

山田:外務省に来ていただきまして、詳細な説明を受けました。わりと議論も、向こうもよく知っていますので、もう外務省、この問題は山田事務所ってことになってますので、もうみんな顔見知りって感じで、毎回、「またか!」って感じでやってるんですけども、どうしていくかってことで。

事実をまず確認のためにお話ししておきますと、ガーナの委員のほうから、これはどういうことかっていうと、女子差別撤廃委員会って国連の委員会があって、いろんな国籍の国連の委員がいるんですね。

そのなかでいろんなテーマがあるんですが、一番最初に漫画、アニメ、ゲームを含む、そういうコンテンツが、要は女子の人権を侵害しているんではないか。だから、ただちに極端なコンテンツについては禁止すべきだ、というような提言、提案が……。

坂井:あ、提言はですね、頒布されているんですけど、それについてどういうことをやっているかっていう。その、禁止すべきだとは言われてないですね。

山田:もともと、でも女子差別撤廃委員会のなかでは……。

坂井:もともとは言われてますけども、今回の質問としては言われてないです。

山田:今回の質問はそういう質問だったんで、それに関してどうかっていうことが議論されている。ただ、出た質問は1件だけで、そのガーナの委員から何ていうふうに出たかっていうと……。

坂井:「児童ポルノが入っている漫画とかに対する対策はどうなっているか?」っていう。

山田:どうなってんだっていう質問がされて、警察庁のほうが行ってたのかな。

坂井:はい、警察庁ですね。

山田:で、警察庁が回答したのが、いわゆる刑法175条の議論をしちゃっているような雰囲気で。どういうことかっていうと、「日本におけるわいせつDVDだとかはちゃんと取り締まってます」と。去年だけで百何十本って言ってたっけ。

坂井:185本、2014年ですね。

山田:185本を取り締まったと言ってるんですけど、それ、児童ポルノの対象物とはちょっと思えないので。それだけ今、取り締まってませんから。

坂井:(笑)。

山田:なんか話がうまくかみ合ってないっていう。

坂井:まったくかみ合ってない。

山田:何が言いたいかっていうと、このままかみ合わないまま放置しといても、たぶん、結局、何らかの勧告を受ける可能性はちょっとあると思っているので、それまで中身を詰めて。

今日はお互いどんなやり取りがされたかっていうことの、正式な確認を外務省としましたが、ちょっとうちもこれを受けてですね、今後、いわゆる国連の女子差別撤廃委員会からいろいろ言われないように、少し策を練っておく必要があるのかなと。

ただ、今回はですね、従軍慰安婦の問題に主眼を置くような形になったので、そのあとダーッと1日中続いていったんで、現実的には15分ぐらいで、漫画、アニメ、ゲームに関してはセッションが終わったということだったと。

それがいいことだったのかどうなのかということなので、これもう1回継続的に取り上げて、そういう勧告を受けないように。でも、たぶん、受けるんでしょう。

受けることになるので、その場合、どう対処するのかっていうことを政府と当時の外務省が受け口になるとは思いますけれども、対応をどういうふうにしていけばいいのかということを考えるということになると思います。

坂井:一応、警察庁には、その当時のやり取りを出すように依頼しています。どういう質問で、どういう回答をしたのかっていう。

山田:そうなんですよ。僕もね、タイミングが合えば行きたいなと(笑)。

坂井:でも、あそこ女性でないと無理なんですよ。

荻野幸太郎氏(以下、荻野):そんなことはないですよ。

山田:え、そうなの。議員もダメなの?

荻野:議員もいけますよ。

山田:議員もいけるの。じゃあ、ちょっと、チャンスがあれば、本当はどんどん出張っていってですね、外務省や政府だけに任せておいても仕方がないので、今後はフロントに立ってやっていきたいというふうに思っていますが。

海外メディアによる秋葉原のイメージは、子供搾取の巣窟!?

山田:まずは、とはいえ、日本は政府が代表していますので、政府がしっかり対応しないと変なことになっちゃいますので、ちょっとぜひ、そのあたりは重ねてやっていきたいと思っています。それに関連してってこともあるんですが、今日、BBCの取材も受けたんですよね。

坂井:はい。

山田:ちょっと写真があれば。

坂井:写真はですね……、今すぐにはないです。

山田:じゃあ、いいです。BBCの記者が来まして、どちらかというとBBCとかCNNっていうと、海外メディアは「日本の秋葉原はそういう子供搾取の巣窟の場所だ」とか、けっこうそんなようなことを報道されることが多い。

まあ、JKビジネスとか、これまでCNNのやってきた。これもうちの番組でさんざんやりましたが、ただ、BBCのなかにも「そういう報道姿勢はおかしいよね」っていうような心ある人がいまして。

その人と具体的にどういう形で再発信するのかと、決して我が国がポルノ大国でですね、漫画、アニメ、ゲームがですね、結局、子供のそういう性搾取に根本的につながって、大変なことになってるという状況じゃないよと。

かなりな間違いがあるんではないかということで、少しディスカッションをしながら取材を受けたというのが、今日のBBCとのやり取りでした。それで、資料なんかをいろいろ作ってですね、まあ外国人、非常にロジカルですので。

坂井:あ、出るかな?

山田:出ますか、資料。

山田:はい。まず、こんなところから始めないと、わけわかんないっていう話なので、少しご説明しておきます。まず、わいせつっていう話と児童ポルノっていう話は違うんだよと。逆に言うと、まず児童ポルノの話をすると、実在が非実在かという法があると思うんだけれども、まず実在で児童であれば、これはもう児童ポルノの対象で法律違反ですと。

これだってこれまでは、児童ポルノ法ができるまでは平気で「女性自身」とかでは、子供の、ちっちゃい子のヌードのモデルってのがいて、平気で流されていた時代もあったんだけど、これは時代的変遷でもって、今は日本は単純所持をはじめとして禁止となりましたということなんですね。

遊佐めぐみ氏(以下、遊佐):はい。

山田:ポイントは実在の大人っていったところに関しては、わいせつじゃなければ、つまり、刑法175条じゃなければ捕まることはないし、ましてや非実在っていうのは関係ないんじゃないんですか、っていうようなところが大きな議論なんですよね。

遊佐:はい。

山田:それから、また大混乱するのは、いわゆる青少年健全という観点も少しちょっと論点がありまして、要はよく麻生さんがですね、「なんで漫画、アニメがダメですか?」って言ったら、「子供が見るから」って言ってるんですけど、これは見る人側の話をしていて、区分陳列の話なんですね。

そのあるR15とかR18とか、あるわけだけども、誰に見せる見せないっていうことは、根本的にそれ自身が法律違反のものを扱っているというわけではなくて、区分されればそれで、いわゆる「見せてもいいよ」というゾーニングの問題なんで、こういうあたりの議論がむちゃくちゃと。

で、根本的に言うと、我が国であったとしてもどんなものでもOKなんじゃなくて、いわゆる刑法175法におけるわいせつっていうものに関しては、漫画であろうと何であろうと、それ自身は要はポルノとかそういうことではなく禁止ですと。

私も立場として、別にそういうところまで解禁しろという議員じゃないから。ということなんです。ある意味、ろくでなし子さんの世界というのは、また別になるから。ということで、いずれにしても、まずこういう整理をちゃんとやったということです。

人権はグローバル・文化や風習はローカルであるべき

山田:それから、もう1つは、これもさんざん番組では言ってますけども、「人権はグローバルで文化とか風習とかはローカルであるべきだ」と。例えば、欧米の人たちにとってみると、よくワカメちゃんのパンチラも許せませんと。特に子供のそういったものはダメ。

だけど、胸のふくらみだとか、それが豊富であるってことに関しては、欧米は非常に寛容なんだけど、日本はかなりそれ自身が問題になる。「碧志摩メグ」問題みたいなのも、そういったことが発端で議論が起こっちゃうということでありまして。

あるいは、今日、話としても出たんだけど、イスラム教圏の世界に行ってしまえば、既婚の女性が肌を見せるとか、顔が見せられるってことは、それ自身、彼らの世界ではダメだし、でも、欧米からすれば逆に「女性をそういうもので閉じ込めておくっていうことは人権侵害なんじゃないか」とか、いろんな議論があるわけで。

基本的にはローカルにおいて「何がいけないか」というのは、とくに社会的な秩序系っていうものに関しては当然、地域地域によって、もうちょっと議論があるし、そこを十把一絡げでもってですね、欧米的な価値観を我々は押しつけられるべきじゃないし、我々自身が日本でどういったものがいいのか悪いのか、っていうことは議論されればいいんであると。

ただ、もちろん、命がかかっている人権みたいなものに関して、これはもうグローバルスタンダードで。もちろん国によっては、政府がまったく機能していない、もしくは、政府が悪い政府であるということもあるから、そういった人権の問題に関しては当然、国連が関与することもあるよねっていうことで。そういった、まず交通整理がいるんじゃないのという議論をしたと。

それと、もう1つは内心の自由っていうのが非常に表現の自由の場合は大事で、これもここでは言ったかもしれませんが、「ある人を例えば憎くて殺したい」というふうに思っただけで、内心で考えただけで、思想警察みたいな話にもなりかねないわけだし。

それを少し発露して、自分だけが見るものとして描いたところで、その時点で捕まっちゃうんですかと。それが幸せな、豊かな社会なのかということだと思っています。

もちろん、でも、発露は自由にできるけれども、受け手がそれが嫌なものであったり、強制的に見せられれば、それはですね名誉棄損ということにもなるかもしれないし、傷害だということで、傷ついたといことで捕まることもある。

だから、表現の自由は自由なんだけども、表現は発現したと同時に責任はあるんだよということについては、交通整理はいると。

だけれども、責任があるんだけれども、じゃあ発露するときに「まったく何にもできない、こういうものは」ってなると、誰が決めるかっていうと為政者が決めることになるから、じゃあ為政者が法律なり何なりで、最初に線を引いてしまうということが、果たしてどうなのかと。

まあ、そういうことをですね、淡々と議論をしたうえで、あともう1つは「なんでそういうふうに漫画、アニメを規制したいんでしょうね?」っていう議論もあったときに、「漫画、アニメ、ゲームがですね、やっぱり若い子供たちにとってみると、ある種の影響を与えているからだろうね」っていうような議論もあって。

というのはその、ある種、勉強するとか、たぶん教科書がつまんないからそういうふうになっちゃてるのかもしれないけれども、そういうものよりも漫画、アニメ、ゲームを一生懸命やる。

それは当然というか、おもしろいんだからと。ということなんだけど、それをやっぱり規制したい親はいる。今の親の世代の人たちも昔は子供で、そういうことを繰り返してやってきてたんだけど、「たぶん技術が上がったんだよね」っていう議論もあって。

っていうのは、例えば、昔はしずかちゃんのお風呂シーンでもドキドキしたし、キューティーハニーの着替えだけでも、変身シーンでもドキドキしたんだけど、今、「え、だから?」みたいな。

技だとかいろんなものが、昔に比べれば相対的に上がってきているから、仮にああいうレベルの話であれば、微笑ましいみたいなくらいに見ていた親の世代も、今の先鋭化されたもうちょっと描き方だったり緻密さみたいなもので描いていれば、「それはやりすぎでしょ」って言いかねないっていうことで。やっぱ、相対的な問題ってのがあるよねと。

性的興奮自体を悪と見なすかどうか

山田:それと性的興奮という話も議論があったんだけど、「必ずしも性的興奮というのは悪いことなのかっていうことは、ちゃんと整理しておかないといけない」というような話もしまして。

多岐にわたりながら基本的なところで何が起こってるのか、といったあたりをしっかり議論したうえで、BBC側としても今後、日本の漫画とか、アニメとか、もっと言うと文化、風習も含めたうえでのエロの体系っていうものを、もうちょっとほんとはわかってもらわないと、たぶん伝えきれないっていうのかな。

それと一面だけを、極端なものだけをとらえて、あたかもそれが蔓延してるというような報道になれば、非常にそれ自身はですね、そんなもんだなと。あとは、「たぶん、驚きみたいなものも期待してるんじゃないか」という、ぶっちゃけみたいな話もあって。

っていうのは、編集側としてみると寛容でジェントルな日本が、こんなにエロかったりとか、ある種の事件性を含む、なんて言うんだろうな、そういう性虐待みたいなものが蔓延してることが報道できれば、当然それは人々の関心を呼んでしまうので、どうしてもそういう動機を持ちやすいんではないかというような。

メディアのそもそもの危険性っていうのかな、問題点みたいなものに関しても触れたわけでして。そういうことを総合的に議論して、なんとか海外でのいわゆる偏見ですよね、ある種の偏見をなくすということをこれからやっていく、ということをやったと。

ちょっとどういう形で記事になって上がってくるかわかりませんけども、かなり長い時間、BBCさんとこのあたりについて議論したと、ぜひそのあたりちょっと、荻野さんからも。

荻野:やっぱり今回の記者さんはですね、最終的にどういうまとめたレポートをされるか、もちろんまだわからないんですけれども、理解されていないことをどう理解を深めるための報道をするかというところで、とても真面目に苦しんでいる方だなあと。

おそらく、彼女は日本で暮らしてきて日本の漫画にも親しんでる、アニメもわかってるから、わかってるんですよ、本人は。

だけれども、それについて、「日本での性表現っていうのはこういうものなんですよ」、「日本において漫画で性を語るっていうことは、こういう文化的背景があって、こういう意味があって、みんなこういふうに読んでるんですよ」ということを、自分の上司や同僚のイギリス人に、どうすれば理解してもらえるかなっていうことに関しては、やっぱり答えがないんですよね。

まあ、そういうことだと思うんですよ。結局、他の人もたぶん、漫画研究者とかで世界的に活躍している日本人、外国人、いろんな方がいるんですけど、やっぱり日本の性表現、漫画の性表現について、自分はできるんだけど、じゃあそういう背景わかってない人にどう説明しようかって言ったときに、なかなかうまい説得、説得というか、わかってもらう方法がないと。で、みんなそこで困っていると。

もう1つ、さらに言ってしまうと、やっぱり日本人、そういうことを言われるとイヤな気持ちになるので、あんまりよろしくない、良くない方法での反論をしちゃってる部分もあるわけですよね、感情的になって。

それについても、たぶんフラストレーションあると思うんですよ。反論しちゃったら逆効果でしょと。我慢してしっかり伝えられることがあるんじゃないんですか、説明する方法があるはずではないですか。

で、あの人も含め、いろんな人ががんばってるし苦しんでるんだろうなというのは、今日取材を受けて強く感じましたね。

山田:はい。ということで、前から荻野さんには「国際的にこの問題を発信するべきだ」というふうに、僕はずっとアドバイスをもらっていたわけだれども、今まさにそういう時期にきたのかなあと。

荻野:だと思いますねえ。

山田:やっぱり国内でさんざんこの問題を取り上げてきました。今でもまだ国内では、漫画、アニメ、ゲーム規制っていうのはくすぶっているけれども、今、今年に入って国連の動きが活発だし、3月に我々、勧告をたぶん受けるなかでどういう回答をしようと。

やっぱり外国のそういう人たちは理解できない、気に入らないっていうことになるから、そこに対してどうやって説得していくのかといったあたりですね、そろそろそういう側面でもやらにゃあいかんのかな、というふうに思っています。