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ログミーLIVE vol.1(全6記事)

「リモートワークは手段でしかない」GitHubが作りだす“幸せの最適化”

2016年2月25日、世界をログする書き起こしメディア、ログミーが初のリアルイベント「ログミーLIVE」を開催しました。第1回目のテーマは「働き方」。1人目の登壇者、ギットハブ・ジャパンの堀江大輔氏は、同社が最も大切にしている“幸せの最適化”という価値観を紹介。その上で、社員の半数以上がリモート勤務を導入するGitHubのワークスタイルについて語りました。

第1回 ログミーLIVE「GitHubの働き方」

堀江大輔氏(以下、堀江):今日はGitHubがどういう働き方をしているか、どうしてそういう働き方をしているかを紹介しようと思っています。

いきなり言い訳から始めるんですけど、花粉症がすごいひどくて、じゃあ薬を飲もうと思ったら、いつも以上にとろんとしていて、忘れそうなのでここにコンピューターを置いておきます。

堀江氏のプロフィールとGitHubの社風

まず自己紹介なんですけど、私、堀江大輔と申します。2014年1月にGitHubに入社しまして、もともとgithub.com、GitHubのSaaSのサービスなんですけど、そのテクニカルサポートをしていまして。

1年半くらい前に日本のGitHubの立ち上げのために、1回ジェネラルマネージャーになりまして、こんな人はあまりいないかもしれないですけど、GitHubのサポートってすごいおもしろくて、勝手に世界一のサポートチームだと思ってたんですけど、サポートをやっぱりしたいと思いまして、半年前にサポートに戻りました。

いまはアジア太平洋地区のサポートチームをさらにサポートする仕事をしています。日本語のサポートチームの立ち上げをしていまして、実はサポートはGitHubに入社する前はやってなかったんですよね。

入社前はいろいろなWeb企業で企画だったり、プロジェクトマネージャー、マーケティング、新規事業の立ち上げとかしていまして、実は今日のイベントに使ったPeatixなんですけど、もともと私が4年前に最初の企画をやった人です。

GitHubを知っている人はいますか?

(会場挙手)

ですけど、紹介します。GitHubは簡単にいうとソーシャルネットワークです。ソーシャルネットワークで、Facebookみたいなものもありますけど、GitHubはどちらかといいますと、開発者用のソーシャルネットワークです。

Facebookは子どもの写真だったり、ご飯の写真とかを共有するのに対して、GitHubではソースコードを共有します。さらにそのソースコードに対していろいろな人が「これいいね」とか、「ここを直そう」とか、「これこうしたら?」とか、そういうのを、いろいろな人が集まって、どんどんコミュニティによってより良いプログラムだったり、ソフトができる、というのがGitHubです。

実は私、ずっとウェブの会社で働いていたんですけど、まったく開発ができなくて、4年前に開発を勉強しようと思って、そのときにGitHubを使い始めて、すごいGitHubの会社のことをどんどん知れば知るほど好きになって、応募して、入社してしまったんです。

ここからはGitHubの社風に関して話したいんですけど、まず最初にGitHubって制度もいっぱいあるんですけど、絶対に制度を真似しちゃダメだと思うんですよ。他社のいいところってすごい参考になりますけど、そのいいところを真似しても、実際、真似するだけだとすごい危険なことが起きると思っています。

極端な例を挙げますと、この写真なんですけど、南太平洋の島の部族の方々が、木で飛行機を作ってるんですよ。どうして木で飛行機を作っているかといいますと、第二次世界大戦のときに、アメリカ軍がいろいろな太平洋の島に基地を作りました。

基地を作るときに、物資がいっぱい来て、その物資を部族に分けたんですよね。それで戦争が終ってアメリカ軍が消えたら、物資がこなくなったんですよ。で、その部族の方々は考えたんですよね。どうすれば物資がまた来るのか。

「そうだ、飛行機がなければ、管制塔がなければ」と思って、木を切って、飛行機を作ったりして、管制塔とかの模型を作って、それを崇拝していたんですね。これって飛行機がポイントだと思って、まったく間違ったことをやって、結局物資は来ないんですよ。

川原崎晋裕氏(以下、川原崎):この飛行機は飛ばないんですよね。

堀江:飛ばないです。

川原崎:エンジンとかないんですよね。

堀江:ないです。飛行機のオブジェを作れば、また物資が来るだろうと。

川原崎:雨乞い的なことなんですか。

堀江:そういうことです。そういうのを作ったんです。これはすごい極端な例なんですけど、要はAppleがこうだから、Googleがこうだから、自分たちもそうすればいいかというと、まったく意味がないんですよね。

GitHubもそうで。GitHubは7年前にできた会社なんですけど、GitHubは他の会社がこうしているからとか、そういうことは考えずに制度を作っています。

GitHubが作り出す“幸せの最適化”

どういうことを考えているかというと、GitHubではFirst Principlesと呼んでいます。直訳しますと「第一義」。最も根本的に何が重要なのか。どこに意味があるのかを考えた上で、進もうとしています。

もう少し簡単にいうと、「なぜなぜ分析」です。こういうことはなぜ起きているのかと。何回も聞くことによって、実際どこに問題があるのか、何を本当は解決しようとしているのかを考えようとしています。

GitHubはサンフランシスコという街でできたんですけど、その中でいろいろなエンジニアがいるんですけど、そのエンジニアを採用するのはすごく難しいですし、さらにそこの会社で競っているなかで、どうやったらいいチームを作れるか、どうやったらいいプロダクトを作れるかを、すごい考えた結果のFirst Principlesなんですけど、「幸せの最適化」です。

何が重要かというと、幸せの最適化。誰を幸せにしようか、何をどうやって幸せにしようかって3つあって、1つは従業員、次がお客さま、3つ目が株主。

まず最初に従業員を幸せにしましょう。従業員が幸せだと、良いソフト、GitHubをより良いものを作れる。そのより良いGitHubを作ることによって、お客さんが幸せになる。お客さんが幸せになると、どんどんGitHubを使って、自分の友だちとかに「GitHubを使えばいいよ」とか言ったりするので、お客さんが増えて、当然有料プランもあるので、収益もどんどん増えていきます。

そうするとGitHubの株主が幸せになります。そうするとまた従業員が幸せになって、そういうパターンを作りましょうと思いました。

世界中で働く487人の社員

GitHubはさっき撮ったスクリーンショットなんですけど、487人の社員がいまして、こういう感じで世界中にいます。リモートが270人、これも260〜270の間ですけど、

川原崎:半分以上がリモートワーク?

堀江:半分以上がリモートワークですね。当然、従業員の幸せもあるんですけど、GitHubはすごい小さい会社で、いろいろな他の会社と競い合っているなかで、サンフランシスコだけで採用しようと思っても、すごい大変なんですよ。サンフランシスコっていろいろな人が採用をしているので。

これもFirst Principlesなんですけど、サンフランシスコにしかいい人がいない、いい開発者だったり、いいマーケターだったりがいないっていうのも、すごいナンセンスなので、じゃあロスであったり、シアトルであったり、日本であったり、いい開発者がいれば、どこにいようが一緒に仕事したいじゃないですか。

じゃあそういう開発者と仕事できるようにするっていうのは別に無理じゃないですよ。それを可能にすれば、すごい採用の可能性が広がりますよね。

ですので、そこから生まれたのがリモートワークです。誰とでも仕事がしたい。実際、最初のリモートワークの人はサポートだったんですよね。サポートメンバーで採用したい人がちょうどコロラドにいたので、サポートメンバーをコロラドで採用しました。

アメリカ国外の最初のリモートもサポートでした。ギリシャにいる開発者が「サポートをやりたいんだけど」という話になって、すごくいい人だったので、みんな一緒に仕事したいと思ったので、ギリシャで採用しました。

リモートワークがデフォルトの考え方

リモートワークをしましょうって言えば、みんなコンピューターを持って、カフェ行って仕事をすればいいってわけではなくて、会社自体がどういうふうにすれば、リモートワークでサンフランシスコにいても、東京にいても、どこにいてもみんながちゃんと一緒に仕事できるかって考える必要があります。

リモートがデフォルトっていう考え方を持っています。リモートワークにコミットするんだったら、誰がいてもまずリモートをベースに考えましょうと。

リモートいいなと思っても、実際リモートワークって大変なんですよ。自分がいまいるチームは1人、自分以外に東京にいるんです。他のアジア太平洋のチームメンバーはフィリピン、あともう4人がオーストラリアにいるんですけど、その4人も全員違う街にいて、その人たち、我々全員どうやって仕事をするかというと、GitHubの場合はチャットであったり、あとはビデオであったり、GitHub上にその情報を残したり、ルールの1つとしてあるのは、必ずURLがなければいけない。

「こういうことが起きたんだよ」「こういう会話したんだよ」と言った場合には、そのURLを、そのリンクを送る。必ずその記録がない場合は送れない。そういう文化を入れることによって、リモートをデフォルトに考えています。

川原崎:それは完全に徹底されているんですか。

堀江:されていないです。大変なんです。

川原崎:一応ログを完全に取るということですよね。

堀江:そうなんですけど、常にそういう戦いです。

川原崎:リモートをやっていると、「言った、言わない」がけっこう重要になってくる。

堀江:そうです。なので、僕もすごい口うるさい人だと思われていると思んですけど、「それってURLあるの?」とか聞きます。リモートの人はけっこうプッシュしてやっていますね。

川原崎:すごいですね、「それURLあるの?」って。

堀江:そういう会話をしています。Slackを使っていますけど、Slackの場合、URLが残りますし常にそういう会話をします。我々はslackを使ってますけど、slackもURLが残りますし、イシューも各コメントにリンクがあるので、そういうのを使っています。

私もリモートワークが可能になったことによって、浜松町の大門に日本のオフィスがあるんですよ。仕事しやすい良いオフィスが。僕は別にオフィスに行きたくないんで(笑)。

(会場笑)

家であったり渋谷であったり、そういうところで仕事をします。それによって別に仕事ができないわけじゃないので。会社として、みんなリモートで仕事をしようと考えていて、それで成り立っています。

最近入った、そこにいる順子さんなんですけど、オフィスから遠いところに住んでいて、オフィスに畳の部屋で仕事するのが大好きなんで、毎日出社してそこで仕事をしています。来る必要はないんですけど、そこで仕事がしやすいので。でもチームメンバーは全員違うところにいるんです。

重要なのは「何のために制度を導入するのか」

では次の話にいくと、GitHubがあるからこそ、GitHubは作れています。要は、GitHub上で会話をしているんですよ。昔はGitHubの話でマネージャーはいないという話になっていたんですけど、創業者がリーダーになっていたので、実際にはいました。

GitHubが採用をするときには自発的に活動できる人を採用しているので、特にリーダーが「あれしろ、これしろ」と言う必要がなかったので、そういう感じでなんとなく誰かがリードしてどんどん進んでました。

でも僕が入社したとき、200人だったんですけど、いま500人近くいて、そういう中でやはりコミュニケーションが難しくなったんですよ。誰が何をするかとか、そういうのがやはりわかりづらくなっていたので、自己編成の限界が出たことによって、これですね。

マネージャーがいるかいないかって、別にFirst Principleじゃなくて、完全に手段であったので、じゃあマネージャーを導入しましょうと。いま実験中です。チームによってマネージャーの役割はけっこう実は違います。

ですけど、マネージャーの一番重要な役割はチームメンバーをサポートすることです。チームメンバーが本当に自分の力を全部出せて、成功に導くことが重要です。必ずしも「君はあれやれ、これやれ」と言っているマネージャーはいません。それで上手くいっているかどうかはチームによって違います。

それ以外の制度なんですけど、例えば1年に1回、会社全員で集まったり、育児休暇は父親であっても、母親であっても4ヶ月間、完全に有給で休暇が取れます。1年に2回、カンファレンスに参加します。

で、有給なんですけど、基本的に休みたいときに休めってことなんですけど、これがどうして成り立っているかといいますと、会社が従業員を信頼しているからであって、信頼できると思わなかったら、そもそも採用していないです。

でも採用した以上、その完全にその人が自分の力を発揮できるような環境を作るためだったら、別にそこまで管理する必要ないと思っています。あとKindle手当なんですけど、これは従業員が入って、常にスキルアップできるように、本をいくらでも読めるように、Kindleの本をいくらでも買えるような制度です。

これすべて何をしようとしているかといいますと、やはり従業員の幸せの最適化を叶えましょうと。まとめますと、いろいろなワークスタイルがあって、GitHubにはいろいろな制度があります。

どういう制度があるかとか、どういうワークスタイルがあるかはすごい重要でありますけど、もっと重要なのはどうしてそういう制度があるのか、何のためにそういう制度を導入するのか、だと思います。

それは会社にとってもそうですし、従業員にとっても、自分がどういうふうに働きたいか、どういうことをしたいかを考えることは重要かと思います。以上です。

(会場拍手)

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