たいていの大人はおしっこを我慢できる
マイケル・アランダ氏:その時がきたら、行くしかない。ここで“行く”が意味するのは、楽になれということです──抑えている尿意から。
しかし時に私たちは、あと1通メールを書くため、映画のクライマックスを見逃さないため、もしくはソファから立ち上がって洗面所まで行くのが面倒くさいからといった理由でトイレを我慢します。誰でも似たような経験があるでしょう。
そんなことをすると身体によくないという話を聞いたことがあると思います。実際に身体によくはありません。ただし、頻繁に、しかもかなり長い時間我慢した場合に限ります。そして命の危険は、たいていありません。
大人の身体であれば、膀胱に500ミリリットル(コップ約2杯分)の尿がたまったとき、その時が来たと感じます。膀胱の周りには尿の量を測る感覚器官があり、満杯になったら脳に合図を出すのです。
たいていの大人は、トイレのタイミングをコントロールできます。つまり、合図を受け取ってからすぐにトイレに向かうだけでなく、近くにお手洗いがなければしばらく我慢することもできるのです。
尿意をこらえているときは、膀胱の中にある円柱状の括約筋が、尿道から尿が漏れないように収縮しています。
しかし、あまりに長時間我慢し続けると、──例えば、何時間も運転しっぱなしの生活を何年も続けているトラック運転手──尿閉や伝染病のリスクが増してしまいます。
尿閉とは、膀胱内の尿を完全に排泄することができなくなる病気です。頻繁にトイレを我慢していると膀胱の筋肉が衰え、年齢を重ねたときに尿閉になりやすくなります。また、あまりに大量の尿をため込んでしまうと、膀胱でバクテリアが繁殖し、膀胱や泌尿器系が伝染病にかかる可能性を高めてしまうのです。
膀胱が破裂してしまうケースもなくはない
ここまでの内容だけでも十分に恐ろしいのですが、さらに無理をすると、いったいどうなってしまうのでしょう? ティコ・ブラーエが頭をよぎりましたか? 16世紀の天文学者である彼は、長時間尿意を我慢していたために膀胱が破裂し、命を落としたと言われています。
ただ、膀胱が破裂する音が聞こえる前に、ふつう私たちの身体は「尿意を抑える」という脳からの指令を無視します。つまり漏らしてしまうのです。しかし、ごくごくまれに膀胱が破裂してしまうケースもなくはありません。たいていの場合これは、すでに膀胱がダメージを負っている人の身に起こります。
でも、それまでいたって健康体だった人の膀胱が破裂したという報告もわずかながらあるのです。その原因はたいてい、酒の飲みすぎ。脳が送る「もう限界」というシグナルを、アルコールが弱めてしまうのです。ただし、もう一度言っておきますが、これは非常に稀なケースですよ。
だから、尿意を感じてから2、3時間我慢したくらいでは、膀胱破裂なんていう最悪の事態には至らないと考えてください。まあ、公共の場で漏らしてしまう方が“最悪の事態”かもしれませんけどね。