作者別売上ランキングを分析

東海林真之氏(以下、東海林):これ、作者別ランキングもあるんですよね?

兎来栄寿氏(以下、兎来):作者別ランキングもありますね。

角野信彦氏(以下、角野):作品ランキングに入っていて、作者ランキングに入ってないものって、何かあるんですか?

筧将英氏(以下、筧):6位はそうじゃないですか?

東海林:6位そうですね。小畑健さん。9位の高橋留美子さんもすごいよね。

兎来:高橋留美子さん入ってますね!

角野:本当だ。すごい。

角野:17位の「咲」って何ですか?

兎来:なんですかね、これ。「咲」って……。並び的に咲坂伊緒さんですよね。

東海林:咲坂伊緒さんでしょうね。『アオハライド』に『ストロボ・エッジ』ですよ。

:「咲」っていう作者なのかと思った。

兎来:すごいですね。『キングダム』売れてるんですね。原泰久さんが12位に入ってて。

東海林:特に今年ですよね。

兎来:そうですね、2015年で一気に。それまでは『To LOVEる』より売れてなかったんですよ。累計発行部数は。

東海林:なんで、比較対象をそれにしたのかがわからない(笑)。

角野:作品ランキングに入ってなくて、作家に入ってるっていうのは、作家にファンがついてるっていうことなんでしょうね。

東海林:確かに。

角野:すばらしいですね、高橋留美子さん。

やはり、ジョジョは強い

兎来:荒木飛呂彦さんも15位ということで、ジョジョは強いですね。

:いろんな作品が売れてるっていうことですよね?

兎来:そうですね。

角野:『バオー来訪者』は売れてるんですね。

一同:(笑)。

東海林:何割を占めるんだろう(笑)。

角野:あと、『武装ポーカー』。

:『武装ポーカー』、最高にいいですよね。もう完全に青春甘酸っぱいっていうのが……。

東海林:(ニコ生コメントに)「甘酸っぱい感を忘れないで」って。忘れてませんよ(笑)。

角野:僕の記憶だと、『バオー来訪者』は常にジャンプの最後に載ってたんだよね。

兎来:ジョジョも絶対に最後ですからね。

角野:荒木さんが、ここの位置が好きなのかと思っちゃった。

兎来:子供の頃は位置の意味とかわかんないですからね。

角野:「バオーまた最後だよ」みたいな。「つまんね~」とか言って。

一同:(笑)。

兎来:僕、バオーは子供の頃に読んだときは、おもしろかったんですけどね。

角野:そう。大人になったら?

兎来:あんまり、バオーを読み返してないので……。

一同:(笑)。

角野:そういう大人の返答はいらないんですよ。

あだち充の作品は、全部3文字のタイトル?

東海林:ジョジョで話を広げちゃっていいんですか?(笑)1回恋愛に戻します?

兎来:そうですね、戻しましょう。

角野:恋愛の話をするんだ、今日は。

兎来:そうです。甘酸っぱい恋愛青春マンガの話です。

角野:『タッチ』のことは話さなくていいんですか?

兎来:南ちゃんについて。

東海林:そうですよね。

角野:あだち充さんの作品は、全部3文字のタイトルがついてるっていうことは話さなくていいですか?

東海林:そうなんですか? 知らなかったです。

角野:『みゆき』、『タッチ』、『MIX』。

兎来:『ラフ!』

東海林:うん、なるほど(笑)。

角野:なんとか3文字にしようというのがありありと出てたよね。

兎来:あだち振り向きみたいなのは発見でしたね。青春といえば『サンデー』ですね。青くさい青春モノが多いですよね。

角野:あだちさんの『タッチ』で、同じ風景を何個も続けて3ページぐらい潰すっていう、あの作戦はすごいよね。

兎来:すごいですね(笑)。

東海林:作戦なのか(笑)。

角野:それについて芥川賞作家の阿部和重さんは、あの空想世界、作品の世界に一瞬ふっと引き込まれる間を作ってるって、いいように解釈してたけど。

兎来:解釈次第ですね、ものごとは。

角野:さすが阿部さんだと思いました。

青春を語る上で『サンデー』は外せない

東海林:当時の『サンデー』はすごいですよね。さっき話に出た『めぞん一刻』もそうですし、『うる星やつら』もそうですし。

兎来:青春を語る上では外せない雑誌ですね、『サンデー』は。最近は凋落が話題になってましたけど。編集長が代わったじゃないですか。

今週の『サンデー』を読んだら、新しく始まった作品も、読み切りの新人さんの作品も両方すごくいい青春モノでおもしろくて。

一同:へぇ~。

兎来:今後の『サンデー』は、復活できるという兆しを僕は感じました。

角野:サンデーの編集者さん、「マンガHONZ大賞」に来ますよ。だから僕はもう何も言いません。

兎来:そろそろ「マンガHONZ大賞」についても宣伝しちゃいますか? 角野さんからお願いします。

角野:「マンガHONZ超新作大賞」っていうのを去年からやってまして。2014年11月から2015年10月末までの間に1巻が出たか、連載が開始されたものだけが対象です。

今年始まったばっかりの作品を選んで応援していこうっていう意図でやってます。さっきの「売れた1巻対談」と一緒ですね。マンガは1巻が売れればあとが続くので、1巻を応援することがすごく大切なんですね。

東海林:例えば、ノミネートされたもので言えるのってあるんですか? ランキングは後日発表を待つとして……。

兎来:でも「このマンガがすごい!」と被ってる部分は、そんなになかった印象ですね。

角野:「このマンガがすごい!」とはぜんぜん被ってないですね。

兎来:ほんのちょっと被ってますね。ぜんぜん色合いの違うランキングになってて、おもしろいなと思いながら見ましたね。

選んだものが、「このマンガがすごい!」に載ることもある

角野:逆に僕らが選んでたものが、今年の「このマンガがすごい!」に載ったりとかしてたよね? 確か、去年(2014年)に選んだ『僕のヒーローアカデミア』が今年入ってたでしょ?

兎来:そうですね。『僕のヒーローアカデミア』は、『ゴールデンカムイ』と『ダンジョン飯』がなかったら1位になってたんじゃないかぐらいの作品ですからね。

角野:あと山本さほさんの『岡崎に捧ぐ』。あれも去年僕らが選んだけど、あの時はまだcakesのWeb連載だけの段階でしたよね?

東海林:まだ単行本化してなかったですよね。

角野:みんなに言われて読んだら「これすげぇじゃん!」って思ってランキングに入ったんですけど。今年スペリオールで連載されて、本になってから「このマンガがすごい!」に載ったもんね。

兎来:そうですね。

角野:だからそんな感じで、僕らはかなり先を見通す能力があるということですね。そんなランキングをやっていて、それに関するトークショーを12月28日(2015年)に、渋谷の「SPBS」っていう本屋さんでやります。

その時は、『宇宙兄弟』の編集者でコルクの代表の佐渡島、当然堀江も来まして。マンガHONZのメンバーが、このマンガがどれだけ楽しくてよかったかをプレゼンします。

兎来:ゲストでいろいろな方が来られるんですよね。

角野:それを言っちゃうと作品がわかっちゃうので、お話しできないんですけど……(笑)。

兎来:ランクインしてる作家さんがいらっしゃるようで。

角野:そうですね。だからランクインした作品を買って、その場でサインをいただくっていうこともできるし。

兎来:すばらしいですね。

角野:堀江とか佐渡島の本を買ってもサインもらえるかもしれない。

兎来:買って持っていけばいいんですか?

角野:買って持っていってもいいんじゃないですか?

兎来:その場でも買える?

角野:一応その場でも買えると思います。

:書店ですからね。

角野:ご用意いただけると思います。佐渡島の本はわかんないです。

一同:(笑)。

角野:マンガは必ず用意されます。堀江さんの本もたぶんあると思います。

兎来:ニコニコ生放送で配信もするということで。タイムシフトの予約もあります、ぜひぜひお見逃しなく。

角野:前売りは3000円だそうです。堀江さんのサロンに入ると、ひと月1万円なので。

兎来:(チケットは)お安いですね。

角野:こっちのほうがお安いですね。

兎来:ちゃんと話せて、佐渡島さんの本も買えて。

東海林:確かに。

角野:こっちはもう60人弱ぐらいかな? 堀江さんを囲んで、触り放題。

一同:(笑)

兎来:なんか違うイベントみたいに……。

角野:それは冗談なんですけど。

東海林:28日でしたっけ?

角野:12月28日、月曜かな?

兎来:仕事納めぐらいのときですね。僕も登壇していいマンガをプレゼンするんで、ぜひ楽しみにしていてください。

角野:本当に僕らのチョイスは、来年の「このマンガがすごい!」に参考にされちゃうから。

一同:(笑)。

角野:先取ってますよね。

東海林:困るなぁ。

「マンガHONZ大賞」には恋愛マンガがない?

角野:出版前のやつがたくさん。「マンガ大賞」にもマネされちゃうからね。

一同:(笑)。

角野:確か『僕のヒーローアカデミア』は今年マンガ大賞に入ってたよね?

兎来:そうですね。

東海林:小林さんがレビュー書いてましたよね。

兎来:熱いレビューを。

東海林:マンガHONZの中で、なかなか少年ジャンプ系は書く方がいないので。小林さん頼りになるところはありますけど。

:書きにくい感じありますね。

兎来:思ったんですよ。「マンガHONZ大賞」ってぜんぜん少女マンガがないなって。少女マンガどころか恋愛マンガ自体がない。

東海林:今日もおっさんしかいないですからね。

:そういうことですよね。

角野:いや、そんなこと言っても、女子もいるんですよ。

兎来:女子、いるんですけど……。

東海林:王道を紹介しない女子じゃないですか?

:BLを紹介する方と……。

角野:おっさん女子なんじゃない?

:エロにいく人と。

東海林:アラサー・アラフォー担当と、エロ・BLと……。

兎来:あとダウナー系と。

一同:(笑)。

兎来:でも、ダウナー系作品はいいの多いですからね。

:そうですね。

角野:『みちくさ日記』、ねぇ。『みちくさ日記』をWebの段階で発見してきてプッシュしてくるなんて、もうメンヘラとしか……。

一同:(笑)。

兎来:それ以上はやめましょう!

東海林:褒め言葉です(笑)。

角野:『みちくさ日記』って、今でもWebで読めるんですか?

兎来:読めます。3話ぐらいまでですけど、3話終わったらあとは本を読んでくださいっていう感じで。フルイチさんでも売ってるかな?

角野:フルイチさんは売ってるでしょう。

兎来:新刊で買っていただいても大丈夫なんで。

角野:新刊の書店もありますからね、フルイチさんには。

おじさんのキュンキュンする気持ちがわかる女子高生も多い

兎来:「このマンガがすごい!」を見てても、純粋に若者の恋愛だけを描いてる作品って本当に少なくて。3位に『町田くんの世界』はあったんですけど、それ以外は本当にアラサー・アラフォーとか、それ以外のテーマにフィーチャーしてるのが多くて。本当に今純粋に恋愛マンガを読みたい人は、マーガレットを読むしかないんだなって。

一同:あ~。

東海林:今どんな作品があるんですか?

兎来:今だと、咲坂伊緒さんを始めとして、『青空エール』は映画化しますしね。河原和音さんとかも。『俺物語!!』とかも河原さんが原作ですしね。

角野:でも『orange』、よかったんじゃない?

一同:『orange』!

東海林:『orange』よかったですね。

角野:『orange』はなんだっけ? 『ゴラク』だっけ?

東海林:『アクション』です(笑)。

兎来:絶対に『ゴラク』ではやらないです!

東海林:どんな間違いですか(笑)。

角野:『サンデー』かと思った。

兎来:確かにスピリッツで『恋は雨上がりのように』をやってるんで、それも奇跡のような感じですけど。

東海林:あれはでも、おじさんがキュンキュンするマンガなんじゃないんですか?

兎来:普通に高校生の女の子が読んで「キュンキュンしました」って言ってましたよ。

東海林:ホントですか?

:両方の視点から行けますよね。

兎来:おじさんにキュンキュンする気持ちが女子高生は「わかる~」って言ってて。わりとおじさん好きらしいですよ、女子高生は。

:(女子高生と)話したってことですよね?

兎来:はい。

角野:おじさんが女子高生を好きなのは普通でしょ。

兎来:いやいや、逆です(笑)。

:それは当たり前です(笑)。

角野:女子高生がおじさんを好きなのね?

兎来:そうなんです。けっこう好きな人も多いっていう。

東海林:そこに女子高生が共感するんですか?

兎来:らしいです。

東海林:びっくりですね。

:おじさんって何歳までなのか。高校生からすると。

兎来:おじさんの定義がね。たぶん交わらない、違ったところに輪があるんですけど。

角野:杉田かおるが石立鉄男を好きだみたいな、そういう感じですか?

東海林:それ、ターゲット層どこに置いてるんですか?

一同:(笑)。

兎来:見てる方がどれぐらいわかるのかっていう……。

角野:かなり理解されたっていうことだよ。今の反応は。チー坊ね。

双葉社を支える『orange』の人気

『orange』は僕は本当に。大西さんのレビューを読んで買ったんですけど、あれ、もうちょっと続いてもいいかなって。

兎来:そうなんですよね。逆に、よく終わらせたなと思いますよ。

角野:めちゃくちゃ売れてるでしょ? きっと。

兎来:もう売れすぎてて、双葉社のホームページを見たらベスト10に全部『orange』が入ってるんですよ。

角野:そうなの(笑)。

兎来:どれだけ双葉社を支えてるんだろうって。

角野:そりゃあね。それは『3月のライオン』がどんだけ白泉社を支えてるんだっていうのと……。

兎来:同じですね。『orange』はもともと、集英社『マーガレット』ですもんね。

東海林:移ったんですよね?

角野:それが『ゴラク』に。

:『ゴラク』じゃないです(笑)。近代麻雀とか。

兎来:めっちゃプッシュしてるじゃないですか(笑)。

『週刊マンガゴラク』の魅力

角野:『ゴラク』好きなんですよ、僕。

兎来:知ってます(笑)。

東海林:間違えて『ゴラク』買う人がいたらどうするんですか?

一同:(笑)。

角野:『ゴラク』間違えて買ったら、おもしろいのいっぱい載ってるよ。

東海林:それは間違いないですけど。

角野:『ギフト±』とか。

兎来:あれも女子高生がかわいいマンガですからね。

角野:『蟻地獄』。

兎来:臓器売買する話はちょっと……。

東海林:マンガHONZメンバーは好きですけどね。

角野:『ゴラク』って、臓器売買する話が2作品も載ってるんですよ。

一同:(笑)。

:もはや社会派ですね。

兎来:違う意味の胸キュンですよ(笑)。

角野:「目玉をあと50個集めなければ!」とか言っててさぁ。それを読み終わったら次に「目ん玉をえぐり出し……」っていうマンガが来て。

東海林:違う作品なんですよね?

角野:驚いたもん。「この2人、何?ネーム共有してんの?」みたいな。

兎来:ありのまま今起こったことを話すぜ。今日は甘酸っぱい恋愛マンガを語ると思ったら、臓器売買の話をしていた……。

一同:(笑)。

東海林:まさかの(笑)。

角野:そうそう。ゴメンね、ホント。

兎来:そういう角野さんが、僕は大好きです。

角野:僕は本当に小禄さんが大好きです。

兎来:この場にいない人(笑)。