選択肢が多ければいいというものではない

中山陽平氏:皆さん、こんにちは。ラウンドナップコンサルティング代表の中山です。今回のノンスペシャリストのためのWebマーケティングラジオを始めていきたいと思います。最後までよろしくお願いいたします。

今回はですね、直前に書いた記事なんですけれども、物事の選択肢といいますか、お客さんに対してどういう形で選択肢を提供するかというところについて少しお伝えできればと思います。これはコンバージョンレートの改善というところに役に立ちます。

元記事は「陳列するジャムは6個がいいのか、24個がいいのか。買い手の心理を押さえてコンバージョンレートを改善するには?」という記事ですね。このタイトル、不思議なタイトルだなというふうに感じられた方もいらっしゃるかもしれないんですけれども、これはブログを読んでいただくとわかります。

それは最初にこういった実験の結果を書いているからです。

それは、あるジャムには24種類のバリエーションがあります。Aという食料品店ではそのうちの6種類のジャムを陳列しました。Bという食料品店では24種類すべてを陳列しました。

ここからはクイズです。AとBそれぞれの食料品店で仮にそれ以外の条件が同じだったとしてどちらがより売れたでしょうか?

結果としては24種類並べているほうが人々を惹きつけた。しかし、購買につながったのは6種類のほうだったんですね。

これは思考実験でも何でもなく、コロンビア大学のシーナ・アイアンガー氏が実際に行なった実験で、論文も掲載されています。論文のほうも、英語なんですけれどリンクを貼っていますので、詳細な調査の仕方ですとかそういったものを見たい方はぜひそちらの論文を直接ご参照ください。

「選ぶ」という行為にはパワーが要る

この記事でお伝えしたかったのは、この実験結果自体もなかなか興味深いものなんですけれども、「お客さんに選んでもらう」ということの意識・捉え方というものを変えていただきたいな、というところなんです。「選ぶ」って何となく楽しいイメージ、お客さんもある程度好きでやっているイメージがあるんじゃないかと。

「ショッピング」というものが結構娯楽として捉えられていることも影響していると思うんですけれども。何となく「選ぶ」という行動は「お客さんが好きでやってるんでしょう。それなりに楽しくやってるんでしょう」というふうに思ってしまいがちですよね。

でも、これって全然そうじゃないじゃないですか。例えば、「ショッピング」みたいにリスクがない、お金はちょっとかかりますけれど、失敗したら失敗したで「まあ、いいや」で済んでしまうようなものであれば、それはエンターテイメントの一貫ですから、そんなに別にプレッシャーがかかってやることではないですよね。

でも、例えば高額商品、それは海外旅行であったり家であったり、もう少し身近なものであれば高級な家具とか電化製品。そういったものを買う場合、この「選択」という行為って、突然ものすごく重くなるんですよね。

しかも、それが沢山の人に影響を与えるもの。例えば、家族が使う冷蔵庫買う、オーブンを新しく高いやつを買う。こういうものになった場合って突然敷居が上がりますよね。

いろんなこと調べると思うんです。カタログを調べる。口コミを調べる。実際に触りに行ってみる。見に行ってみる。あとから文句言われたら嫌ですもんね。

そんなこと考えると「選ぶ」という行為って、ものすごくパワーが実はいるんですね。

まずお客さんも皆さんのサービスを選ぶ。皆さんが本当食料品とかそういう一般的な日常品を売っているんだったら、また別です。

でも、そうではなくってある種の主にB2B系の商品売っている・サービスを扱っているのであれば、Web制作などもそうですよね、ものすごくお客さんというのは、自分が納得できる、あるいは周りが納得できるような選択をするためにパワーを使っているんだということを必ず押さえておいたほうがいいです。

マーケティングに携わる人間としては、お客さんは「選ぶ」という行為を決してプラスの行為としては捉えていない。可能であれば理想的には自分に最も合ったものを最短の時間で、あるいは周りが納得できる形で手に入れることができる。これができたら最高なんですね。別に好きで選んでいるわけではないと。ここをまず、そういうものなんだよということを押さえてみてください。

お客さんの納得感が大事

結構あるのが、どんなものでもそうなんですけれども「うちにはこういうサービスがあります。こういうサービスもあります。こういったカスタマイズができます」っていう大風呂敷を広げちゃうタイプですね。例えば、パソコンを自分で一から組み上げられます、みたいな感じですね。「Build to Order」(BTO)なんて言いますけれど。

こういうのって、それ自体を楽しめればいいですけれども。例えば、パソコンなんか一番わかりやすいですよね、うちの会社にとってどういうマザーボードが良くて、どういうぐらいの容量が必要で、どれぐらいのCPUが必要で。これを全部自分で調べて自分で構成を選んで修理もする。これはものすごく大変ですよね。わかる人にしかわからないですよね。

しかも、責任が伴いますよね。会社が求めているものを実現できなかったらね。なんだかんだ5万円10万円するものじゃないですか、パソコンって。だとすると、こんなにプレッシャーのかかる仕事はない。

だったら、お客さんは別のところに行きます。それはどういうところかというと、例えば小規模オフィスで普通の事務をやるために構成されたパソコンはこれですよ、というふうに教えてくれるようなところです。そういうふうに商品が構成されているところです。こういうものであれば安心してそれを頼めばいい話じゃないですか。

でも、さっきみたいに全部あなたが決めるんですよ、という形になっていると、お客さんはホトホト困ってしまう。

これが押さえていただきたいポイントなんです。「選ぶ」ということは決してプラス行為ではない。むしろ選ばないでいい。ただ、押し付けられるのは嫌なんですね。皆さんもそうだと思うんですけれども、押し付けられるのは嫌だ。だから「納得感」というのがものすごく大事です。

ここが非常に難しいポイントなんですけれども、選択肢が多いこと自体は良いことです。プラスのことです。ですけれども、それから、お客さんが自分で自分に合ったものを納得できる形で選べるかどうかというのは別の話です。

理想的にはたくさんの選択肢からお客さんが自然と自分に合ったものを選ぶ、たどり着ける。そういう状況になっているのがベストですね。

値段以外の判断基準を提供しよう

だから、ECサイトなどももちろんそうです。ECサイトに関しては商品が非常にバラけているのでなかなか難しい部分もあるんですけれども、例えば多数のオプションを付けられるインターネットサービス、例えばシステム系とか。

メインのプランが3つくらいあって、その中でいろんなオプションがつけられてみたいなことになった場合に、それをすべてお客さんに選んでもらうんじゃなくて。お客さんのニーズからこちらからおすすめできる、おすすめしていく。そういったものじゃないとなかなかお客さんって選べないんですね。

やっぱりよくわからないから、「人に聞こう」とか「もういいや」とかみたいになっちゃたりするんです。

それか、もっと良くないのは、例えば競合が3社ありましたと。選び方がよくわかりません、そういった場合、どういう基準になってしまうかというと、最悪の、「安さと速さで決める」ということになっちゃうんです。

例えば、印刷をお願いする会社が3つあったとしました。3つともなんとなく料金は安いなと。料金がちょっと違って、それ以外は納期とか違うなと。あと何が違うのかって何か印刷機の仕様が書かれていたりするけれども、よくわかんないし。会社もどこにあるのかはわかるけれども、誰が何やってるかもわからないし。

みたいになってくると、この3つから選ぶとしたら、もう値段、それしかなくなっちゃうんですよね。そうすると、結局価格勝負みたいなところにいっちゃうわけです。

「なんだかんだ言って価格だよね」みたいなことをよく言われたりするんですけれども、それって価格以外の価値をうまく訴求できていない。つまり価値基準・判断基準というものを提供できていないパターンが非常に多いです。

お金以外の部分で選んでもらいたいんだったら、お金以外の部分の選び方、選択方法。こういうところ押さえなきゃいけないんだよ。それを伝えてあげなきゃいけないんですね。

なので、先ほどの印刷会社であれば、例えば、印刷機がこういうところが違って、うちは他と違ってこういうところが強いんですよ。モノクロのグラデーションの再現性が、普通はこんなんですけれども、うちはこんな感じなんです。というふうに実際の画像を出して比べるとか。

細い線がこんなに綺麗に出るんですよ、というところを出すとか。あるいは紙はこんないろんな種類が使えるんですよというものを画像で出すとか。初心者でも大丈夫なんですよ、と言って簡単にわかるような発注書を見せるとか。そういった他の基準、初心者に優しいとか,、綺麗に出るとか。

そういったところを出していかないと、安さとか速さになっちゃうわけです。

お客さんにプロダクトの良さを伝えるために

ちょっと話逸れましたけれども、判断基準、つまり選び方を伝えないとそういうところにいっちゃうわけです。だから、お客さんに対してうちはこういうのがいっぱいあります、というふうに風呂敷を広げて商品を並べる。これだけでは駄目なんです、というのが一番お伝えしたいことです。

まずは、もちろん商品がいっぱいあるのは素晴らしいことです。ただ、それ以上にお客さんのニーズというものを組み取った上でお客さんが自分に必要な商品にたどり着けるような構成であったりデザインであったり、導線づくり、ナビゲーション。そういったものを用意しておかないと、その豊富なラインナップも結局宝の持ち腐れになってしまうんだよ、ということなんですね。

それが今回のこの記事でお伝えしたかったことです。これは結構あります。なんとなく商品を、とくにプロダクトを作っている方にありがちなんですけれども、いい商品を作って入ればお客さんはその良さに自然と気づいてくれるだろうみたいに思ってしまったりするんです。

いい商品を作ったのになかなか売れないなあ、という状況になると、結局、「今はみんな不況だからお金ないんだよね。いいもの作ったって売れなんだよね」みたいに考えてしまうと。そういうケースが多いんですけれども。

結構、大概の場合は伝え方の問題です。要するに伝わってない、「良さ」が。良さを伝えるために判断基準を提供したり、お客さんの事例をのせるとか。そういう努力をしていない。そういうケースが多いです。

なので、いろんな話、バラけてしまいましたけれども、とにかくお客さんが選択するっていう行動を別に快く思っていないっていうことをまず押さえてみて下さい。

お客さんが納得できる判断基準を提供する

その上でどうやったらお客さんに気持よく、お客さんが満足できる商品やサービスにお客さんが簡単にたどり着けるようになっているかどうか。

その、サイトとか。あるいはセールスの仕方がなっているかどうか。それを見直してみてください。そして、お客さんがそこにたどり着くためにはいろんな判断をしなければいけないわけですから、お客さんがきちんと自分で判断できるような判断基準のコンテンツがあるかどうか。

それは製品規格であったり、お客様の声であったり、いろんなものがあると思うんですけれども、お客さんが納得感をもって前に進んでいけるような、そういうコンテンツがあるかどうか。これを確認してみてください。

これがあれば自然とお客さんは自分の求めるものにたどり着いて、そして成約に至る。その確率が上がっていきます。ぜひこの観点で自社のサイトというものを見直してみて下さい。

ワンプライス・ワン商品、1商品みたいなものを売ってる場合にはあまり関係ない話ですけれども、いろんなラインナップがあったり類似のサービスを持っている場合にはこの辺の整理っていうのは絶対に必要です。整理をしておくことによって、それだけでコンバージョンレートが改善したりします。

なので、ぜひこの観点、この1月9日の記事も見ていただいて、お客さんって本当にうちのサービスのことわかってくれてるのかな、というものを確認していただてはいかがでしょうか。