業績を向上させる人事評価の内容

高橋恭介氏(以下、高橋):それでは、この業績を向上させる人事評価の内容としてはどういうものなのか、その1からその8までございますので、レジュメに沿ってお話をさせていただきます。

まずはじめに評価を四半期とする。そして、査定を半期にする。大手の倍速で回せないか。サイバーエージェントさんからも数百名までは四半期でやられていたというお話を聞いております。

私は、100名未満の会社さんであれば四半期で目標設定をし、評価点を出し、その2回の平均点で、年2回の給与改定を行っていくことができると思います。賞与ではございません。

この私が言っている査定は、基本給の改定でございまして、これは年2回の査定をしている会社に優秀な人が集まっていくというのは、これは紛れもない事実でございます。

皆さんの会社とまったく同業で、まったく同じ条件で求人が出されていた時、「給与改定は2回ございます。弊社は人事評価制度に基づいて、査定を年2回行っています」ということをライバルが書いていた。皆さんの会社は「弊社は年1回の給与の査定です」という時に、優秀な人ほどその査定サイクルを見ています。

自分が正当に評価されるのか、自信がある社員であれば倍速で自分の給与が上がっていく。それであれば、多少年収が下がってもこのご時世でもやりがいと成長と適切な評価によって優秀人材を獲得することが可能になっていく。そういう事例もたくさんございます。

四半期単位で目標や方針を決定し、全社員に伝える

当然デメリットもあります。運用面の負荷が倍になるわけですから、はたしてその運用がうまくいくのか。そこの疑念を払拭するために我々は運用支援サービスを行っているのでございますし、自社の中で社長が旗振り役となって、きちんと取り組んでいけば必ず根付いた運用につながっていくと思います。

次が適切な目標設定ということでございます。ここでお話をしたいのは、経営側のお話です。よく聞かれるんですけども、じゅうぶんな材料を提供するのが最大の課題なんですね。

「評価制度で行動目標を自己設定するって、社長、できますか?」「そうだね、難しそうだな」と。「どれくらいかかりそうですか」というお話をすると「2、3年はかかりそうだなと」「どういうポイントでですか?」と聞くと「うちの中間管理職だとなかなか良い目標設定の承認までいかないんじゃないかな」というお話をされるんです。

私は、言い方はマイルドにしますけど、必ずお話をしているのは、「初年度は社長自らのご意思ですよ」と。社長自らがこの十分な材料を提供することを四半期単位でやり続けることができるか。これはブラック企業ではないことの最大の証ではないかなと私は思います。

社員に嘘をつく、市場に嘘をつく、お客様に嘘をつきながら経営をやっていけば、四半期単位で全社の目標や方針、そしてそこから部門にブレークダウンされて、目標や方針というものを定性定量軸でしっかりと全社員にきちんとお伝えするということは、おそらく不可能ではないかなと思っております。

ですので、社長がこの評価制度を使い、社員と向き合い、きちんとメッセージを届け続けていくという覚悟と、やり続けていくというしつこさが、業績を向上させる人事評価の肝になってくるかと思います。

その観点で言うと、藤田社長は1万人に迫っていくサイバーエージェント社でもしつこさと継続性という観点ではすばらしい評価のPDCAサイクルを回していらっしゃるのではないかと。5パーセントが課題。これもすばらしいことではないかなと思うわけです。

中間面談が離職率の低下に

あとは中間面談の実施です。人事白書によりますと、若年者に対する有効な離職防止策の第1位、これは3年連続変わっておりません。上司による定期的な面談でございます。

中間面談は適切な評価を導くということだけではなく、やはり社員のモチベーションの向上、強いては離職率の低下につながっていくというところでございます。そもそも評価とは何か? 事実の積み上げでございますから、中間面談は必須だと思います。

毎月やられているサイバーエージェントさんのところまでいけるかはわかりませんけれども、弊社は四半期評価の中で中間面談。これもかなりタイトなスケジュールです。

目標設定と前クウォーターの評価を1ヶ月以内で終えない限り、中間面談の実施の意味はなしえませんから、これはかなりスケジュール管理が必要で、全社員が共同プロジェクトで動いていかない限り、なしえないことでもあります。

目標の数は極力絞る

次は各論になりますが、ここでお話をしたいのは2点です。目標を絞りましょうと。倍速で回す代わりに目標の数は極力絞ってメッセージ性を出していきましょうということです。もう1つはコンピテンシー、行動評価は4段階評価でやったほうが、これは意思も入ります。甘辛の排除にもつながります。多面的な評価にも最後はつながります。

5段階でやっている会社さんが多いと思いますが、サイバーエージェントさんも実は二重晴れ、晴れ、曇り、雨、大雨と5段階でやっていらっしゃったので、すみませんが、サイバーエージェントさんの制度も多少批判するような内容になってしまうかもしれないんですけど。

5段階の真ん中、3というものの中心化傾向というのはどうやっても排除が難しいと思います。そして、5段階でやった場合は定性的な評価になりますから、行動目標というものは1と5の出現率はほとんどないと。すなわち、3に寄りながら、≒3段階評価にしかならない。

4段階評価にするということは、マルバツを2回やる形になりますので、評価する側、そして被評価者、上司もそこには意思、ジャッジが入るので、やっぱり3というのは褒められたい。

及第点だと。2というのは指摘が残った。真ん中を作らないというところで、4段階の威力は発揮し、1という出現率も相応に出てきます。

4段階評価は4段階評価、5段階評価は≒3段階評価。どちらのほうが多面的な評価か、そして評価者の意思が入り、ギャップを埋められるか。世の中の通知表は5段階だったので、何となく5段階でやるというのがトレンドなんですけど、ぜひプロセス、言い方は行動、定性、プロセス、コンピテンシーいろいろあると思いますが、こちらぜひ4段階でアプローチしてみてはいかがでしょうか。

3月決算の会社、「今期の評価から4段階にしますよ」と言っても間に合うのではないかと思いますので、ぜひやってみてはどうでしょう。

現場で自己設定をしていく

次は、コンピテンシー。行動目標をいちからコンサル会社に発注したり、社内でワーディングをしてコンピテンシーディクショナリーを作ることではなく、皆さんお手元にございます、上が黒くなっているコンピテンシー一覧というA3の横の紙がございます。

こちらの75項目から選択をする形で、全社共通、職種共通、役職共通という、共通言語化はあまり時間と労力をかけずに、まずはスタートという形でフレームを作り、経営者側、部門長の意思を込めて、そこから先の具体的目標というのは、現場で自己設定をしていくと。

そして、数をグーッと絞ってクウォーターで回していく。1歩ずつ階段を登っていくように、社員の成長を実感させ、そして1つ1つの事柄に対して褒めていくということ、はたまた指摘するということ。

30項目くらい抽象的な項目が付与されて5段階でできたかできなかったかを図っていく、これでは形骸化します。人材育成にもなりません。差もつけられない。

こういう観点では、どれくらいの自己設計をするかということ。全社共通でいくつか、職種共通でいくつか、役職共通でいくつか、コンピテンシーの一覧から選択をし、そこから先は自己設計で、100文字くらいをかなり具体的な目標をここには上司と相談しながら書き上げていく。

それがクウォーター内できちんと発揮できたかどうか、構造改善がなされたかどうかを4段階で評価する。しかもその間には、中間面談でギャップを埋めていく。

これを四半期でずっと2年間くらい回していくと、稚拙な目標、評価者の甘辛もあった会社が極めて具体的で、勝ちパターンを共有し、ナレッジマネジメントにもつながっていきながら、工数も削減できる。

小さい子供の歯磨きのような形で、初めは強制力を持たせてやらせていかないといけないんだということです。2年回していけば、今度はマネジメント層が、これがなくてはもう部下とは対峙できない。

何をして部下とコミュニケーションとればいいのかもわからない。評価はできませんというふうに、組織風土の中で馴染んでいき、信頼されていく1つのやり方ではないかなと。

なので、私自身のビジネスをある種否定しているようなものなんですけれども、制度構築のコンサルティングというのは、役務提供がなくなっていくと思います。

これだけIT技術が進み、ジョブカードというものがこれから出てきて、ジョブグレーディングという言葉が出ている世の中においては、目標設定は現場で生んでいく。

そのフレームを作るために、1年かけて、1千万かけてコンサルティング会社に発注することは必要ないのではないかと私は強く思っております。ただ運用には課題がありますので、弊社のクラウド型運用支援サービスにご興味がある方はぜひアンケートにチェックをいただきたいと思うのですけども。

マイナス査定を取り入れる

最後にその8でございます。マイナス査定も取り入れましょうと。一般的な大企業の事例は、S、A、B、C、Dの5段階の評価記号。そして、1つの評価記号の中には15点くらいの点数レンジを持っている。15点は茶番だというのが私の持論です。

下の表を見ていただくと、評価ランクは10段階、そして5段階変われば、同期入社でも半年後には差がついている。これくらい繊細な設計で信賞必罰に絡んで行かない限り、本能的にやるかやらないか、必然性を帯びさせられるかどうかが最後の肝だと思います。

自分の仕事に反映することはやります。これは経営者も同じだと思います。サラリーマン経営者と創業マンの決定的な違いはリスクの取り方だと思います。

ベンチャーで働く社員は、どうしても人が足りない、代替要員がいない、忙しい。そういうことでどうしてもこういう業務から逃げていく。抜け道がある、逃げ場を作らない、その枠組みの中で人材育成プログラムを回していける。

刹那的な教育研修に終始するのではなく、評価業務を回して行くことが、人材育成、教育研修プログラムだという腹のくくり方を経営者がどこまでできるのか。これは私が評価制度をしっかり運用させる経営者の腹づもり、まず出発点ではないかと思います。

マイナス査定のメリット

マイナス査定のメリットはいくつかあると思います。中途入社が今増えていると思います。今、売り手市場ですから、これは不謹慎かもしれませんけど、野菜や魚、豚肉と同じです。

受給バランスで物事の値段は決まるわけですから、有効求人倍率が1.8。ベンチャーでいえば3倍を超えている。

現状の社員よりも高い給与で、現職の給与よりも高い給与を出さないと人が取れない。入社して3ヶ月後の使用期間が終わったら、既存の同じ地位の立場の社員のパフォーマンスと同じくらいだったらまだいいんじゃないかなと。

しかし、8掛け、7掛けの社員が2、3割高い給与をもらっている現実。そういう矛盾にさいなまれる経営者はたくさんいると思います。

それでは調整給で初めから入社するのか。調整給は当然ながら嫌がるわけですし、調整給ということで給与提示された会社は蹴っていく。そういう時代の中では、ちょっと言葉は悪いですけど、合法的にきちんと年2回の給与会計の中で、マイナス査定をきちんとする。

辞めてもらいたいということではなく、先ほどもサイバーエージェントさんは(ミスマッチ制度で)50パーセントが残り、その半分は舵役の方向に転換しているということもありましたとおり。

私ども、これは退職勧奨ではなく信賞必罰を持ってして、期待レベルを明示し、反骨精神を持って、再度前を向いて次の半年間を頑張ってもらいたいという思いからもマイナス査定をします。

限られた昇給原資をハイパフォーマーに分配していく。年2回の給与改定をしても、いたずらに人件費は高騰しない、それはマイナス査定があるからであり、これを絶対評価で運用するからこそ、企業防衛型の人事評価制度になっていくわけでございます。

私は、この5点くらいが中小ベンチャー企業で差をつけていく評価ランクとしては適切ではないかと思っております。15点というのは荒すぎませんかと。野球に例えると、20勝した投手と5勝しかしなかった投手の翌年の年俸が同じくらい。

それくらいプロスポーツの世界でいうと、私はこの15点の差で年に1回の給与改定が同じだと。56点の価値と70点の価値は天と地の差があると思います。

私は緻密に1点の重みをつけて、しっかりと運用していくことを考えると、15点の違いとは、同じ賃金を支払ってはいけないくらいの価値を見いだしていると思います。

それを同じ賃金を出す。平等という名の不平等。優秀な人のモチベーションが下がるのではないか。年功制を表向き、成果主義に振り換えただけではないか。そういうお話をしているわけでございます。

オークファンでの「絶対評価」導入事例

導入事例、すぐ裏の上場企業、株式会社オークファンさんの事例をここでお話したいと思います。

ナレーション:株式会社あしたのチームが提供する、絶対評価の導入事例について紹介します。お客様は、株式会社オークファン様です。

ナレーション:2007年に創業し、現在では国内最大級のネットオークション価格比較サイトを運営しています。

ナレーション:業界のトップを走るオークファン様ですが、2013年にはいくつかの課題があったんです。

ナレーション:創業から6年後の2013年に東証マザーズに上場。

ナレーション:しかし、上場した直後からあらゆる問題が顕在化。期待していた優秀な人材が辞めていってしまったことです。

ナレーション:退職の理由としては、待遇、評価、人材育成に対する不満が主なものでした。

ナレーション:優秀な人材の定着と育成を目的とし、評価制度を構築、運用することを意思決定。

ナレーション:数社のコンペの結果、運用面、制度の内容、実績、価格の4つの理由で、絶対評価の導入を決定されました。

ナレーション:絶対評価を導入されて、あらゆる面で変化が起きました。

ナレーション:一般社員においては、生産性が高まり、やる気が上がっていました。

ナレーション:管理職においては、部下への対応がきめ細やかになり、更に部下を導くスキルが身についてきました。

ナレーション:経営層においては、メンバーを評価する際の迷いがなくなり、1人1人に合わせた成長を促すアドバイスができるようになりました。

ナレーション:会社全体においては、共通のものさしができて、コミュニケーションが活性化され、優秀な社員の獲得や社員の定着に効果を発揮しています。

ナレーション:2013年に導入してから半期毎に制度を見直し、2015年には独自の指標が完成。

ナレーション:オークファン、武永社長からのご評価です。

ナレーション:評価制度が中心となって、それがキャリアパス、研修、人材育成、ビジョンの共有へとつながっていきました。まさに会社の背骨が出来上がったのです。

武永修一氏(以下、武永):当初、評価制度は大手企業に必要なもので、ベンチャーには必要がないと考えていました。しかし、我々のような中小、ベンチャーこそ評価制度は必要だと今は感じています。

武永:2期連続40パーセント近く業績が向上しています。評価制度は業績を向上させるツールであると認識しています。

武永:人、モノ、カネ、文化の中で、人と文化に悩んでいたら、あしたのチームに相談することをお薦めします。

ナレーション:あしたのチームは今後もオークファン様の業績向上に向けて、評価制度の運用を支援してまいります。

高橋:600社近い導入実績のある中で、武永社長オークファン様にご協力いただいて作ったスライドでございました。

人事評価制度で大切な3つのポイント

最後まとめでございます。

いろいろこんなことができるのと、それは机上の空論ではないかというお気持ちの方もいらっしゃったかと思いますが、多くのことをお話させていただいたつもりです。

最後に3つまとめさせていただきました。このポイントが皆さんの会社の中で、人事評価制度のポイントで今できているか、できていないのであれば、それをやるための障害は何なのか、できるのかできないのかをぜひ判断をしていただきたいと思っております。

行動目標の自己設計、絶対評価、マイナス査定のこの3つでございます。これを継承するだけでも、この1時間私がお話させていただいたことの少しでも価値が出せるのではないかということころでございます。

最後になりますけども、本セミナーにおけるサイバーエージェントの評価制度とあしたの人事評価。「ゼッタイ!評価」というのは弊社の商品名です。あしたの人事評価とも呼んでおります。

基本的な考え方や運用のやり方に通ずる部分が多いわけでございます。成長する企業にとって 必要な人事制度の考え方ではないでしょうか。成長する企業にとって必要な、成功させるための運用、PDCAを回して行くためには、マネジメントが率先して評価制度に関わり、特にトップが関わる必要があると思います。

そして、フィードバックを適切に行い、しっかりと社員と向き合っていくことが必要でああろうと。今企業経営者や人事部門に求められていることは評価制度を使った人材育成を通じ、企業を成長させ、業績アップにつなげていくことであると、最後に締めさせていただきまして、私のセミナーを終了させていただきます。

ご静聴どうもありがとうございました。