詐欺師扱いされながら大勝負に出た

孫正義氏:1年間でソフトバンクの株式価値が、100分の1に落ちた。100分の1ですよ。バブルの頂点の時、実は僕は3日間だけビル・ゲイツよりお金持ちになったことがある。世界一になったことがある。お金いらなーい、と思ってたのが、直後にネットバブル崩壊で、ドーンと100分の1になったら、もう犯罪者扱いですよ。ネット事業に携わってるというだけで、なんか詐欺師のように言われる。まるで犯罪者扱い。どこの雑誌めくってもネット事業=詐欺師集団、そんな感じでしたね。もう大変な状況です。「お金いらなーい」と言ってたら、「お金ない」に。

個人的にちょっと借金していて、借金数えたら僕の持ってる株の価値より超えてる。あちゃーと、こういう状況。「いらなーい」なんて贅沢なことを言ってられなくなった。そのどん底の時に、もういい、もうやぶれかぶれだ、どうせお金ない、ここでもう最後の勝負行くぞ、ということで、すでに準備しはじめてた大勝負、ブロードバンドに行くぞ! と。

もうこれはプランしてましたから。バブルの頂点の時に、金が余ってるという時に、よし、あのNTTに勝負しかけてやる、と。日本で最大の企業、あのNTTをぶち抜いてやる、打ち負かしてやる! カーッと燃えてましたからね。で、いざ、入るという時に、どん底で、金はない。でももう思い立ったら引けない、ということで、名乗りを上げた。

なぜならその時、日本のインターネットは、先進国で世界一遅い、世界一高い。これじゃインターネット業界に携わってる我々としては恥ずかしい。シリコンバレーの連中に対して恥ずかしい。日本は世界で2番目のGDPの国だと、色々言うとるけど、先進国の中でインターネット世界一遅いぞ、世界一高いぞ、と。先進国の中で。GDPは2番だ。なんじゃその国は、ということで、これは恥ずかしい。だから日本のインターネット業界全部のために、日本のインターネットユーザー全部のために、わしの人生よりも、そのことのほうが大切だ。

ソフトバンクも大切、ソフトバンク潰れちゃいかん。ソフトバンクの経営者としての責務はある。でもそれはそれとして、潰すわけにはいかんけど、あわせて、わしは何のために生まれてきたんだ。わしゃ何のために志立てたんだ、と。わしの志って何だったんだ。そりゃデジタル情報革命だろう、と。この革命のために、人生を捧げてるわけだから、ここでひるむわけにはいかんということで、この世界一高い、世界一遅いってヤツを、世界一安くしてやろう、世界一高速にしてやろう、と。

“厄介な男”でないと大事は成せない

そのメリットを得るのはYahoo! JAPANだけじゃないんです。もちろんYahoo! JAPANはメリットを得ます。うちの子会社ですからね。子がかわいいと思うのは親の常ですから。Yahoo! JAPANが喜ぶ、それはいいじゃないか。でもついでに楽天も喜ぶぞ、と。ついでにニフティとかなんとか、いろいろな会社も、インターネットやってる人たちもみんな喜ぶけど、社長いいんですか?と、うちの役員に聞かれました。

「バカモン! そんなこまい、ちまちました考えでどうするんだ! Yahoo! JAPANが喜ぶ、ええじゃないか。ついでに楽天も、モバゲーみたいなところとか、そのいろいろあるけども、みんな喜ぶでええじゃないか」と。大切なことは、自分の競争しているライバルが喜ぶ、なんか漁夫の利を得る、そんなことでなんかケチケチしてもしゃあない、と。

「Yahoo! JAPANのユーザーだけ安くしましょうか?」「バカモン! みんなに安くしてやれ!」と。それで日本のインターネットユーザーの全員が喜ぶ。日本国民は最終的に全部インターネットユーザーになるぞ。日本国民が最終的に全部インターネットユーザーになって、その日本国民が、いつか、いつか、喜んでくれりゃあそれでええやないか、と。

「でも社長、我々がやって、我々だけが感謝されないと、ついでに誰のおかげでそうなったなんて、のちの人は忘れますよ」なんて、そうやって言われた。僕は、ええじゃないか、と。名もいらん、金もいらん、地位も名誉もいらない。そんな男が一番厄介だ、と。そんな厄介な男でないと、大事は成せない、大きな事はなせない、こう言ったのは、あの幕末の西郷隆盛であります。

名もいらない、金もいらない、地位も名誉もいらない、命すらいらない。そんな厄介な男はいない。そんな男は打ち負かそうにも負かせられないわけ。命もいらない、金も地位も名誉も何もいらない、と。こんな厄介な男はいない。そりゃNTTから見たらそうですよね。儲けを計算してない。当時のNTTさんが出してきた料金体系の5分の1ですよ。8割引、8割引。世界最高速。NTTの4倍の速度。アメリカの、ヨーロッパの、中国の10倍の速度。なのに値段はNTTの8分の1。

アメリカ、ヨーロッパ、中国に比べても世界一安い。そんなブロードバンドを提供したわけです。まさに「なんもいらん」という状態。もう「殺せ」というようなもんですよ。まな板に乗った状態。そのくらいの魂がないと、ひきちぎれるほどの情熱がないと、革命なんてできやせん、ということ。

ひと晩で申し込みが100万件を突破した

これを発表した日、ひと晩で、申し込みが100万件を突破した。まさに100万の人々を助けるということ。1晩で100万件申し込みが来た。そんなに用意してなかった、機材を。そんなに来ると思わんかった。その間、お客さんを半年以上待たせて、むちゃくちゃ言われた。詐欺師! どうしてくれるんだ!と。お客さんそんなに申し込み来ちゃったあとに、NTTさんは繋がしてくれんわけよね。もう怒鳴り込んでいって、机叩いて。NTTは面倒くさい手続きを言うわけですよ。

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