単一個体で最古の樹木はカリフォルニア州に

ハンク・グリーン氏:「最古」や「最大」を決めるとき、特にその対象が自然界で最上級の物の場合、答えは通りいっぺんにはなりません。事実、最古の樹木の場合は2種が候補に挙がり、定義によって変わります。

単一個体の樹で最古とされるのは、2012年にカリフォルニア州中東部ホワイトマウンテンで発見されたGreat northern bristlecone pine(和名未定、マツの一種)で、その樹齢は5063年になります。ピラミッドより古いのですよ。

同種のブリスルコーンパイン(イガゴヨウマツ)の写真がこちらですが、どう見ても生きているようには見えません。長寿の秘訣は、ひょっとしたら、このあたりにあるのかも知れませんね。

標高が高く、乾燥して気温の低いホワイトマウンテンの気象条件は、実は太古の樹木を育むには最適の環境なのです。不思議なことに、標高が高ければ高いほど、樹齢も上がります。

複数の研究によれば、マツの寿命は、生育環境の悪さと直結しています。ホワイトマウンテンの年間降雨量は、わずか30センチメートル未満です。それに加えて木々が生育するのは、苦灰岩という石灰岩の一種で、アルカリ度の高く栄養素の少ない土壌です。

しかし年月を経るうちに、他の樹木と異なり、ブリスルコーンパインはこの高いアルカリ度に適応し、他の競争者がほとんど無い環境で、思うがままに繁茂しました。

ブリスルコーンパインは成長にあまりエネルギーを消費しません。条件が良ければ、年間で樹の幹の周囲がわずか0.25ミリメートル伸びる程度ですが、代わりに乏しい資源を最大限に活用できます。

その結果、ブリスルコーンパインは生きているよりも枯れた木のような外観になりますが、これにはメリットがあります。呼吸を減らし、水の損失を防ぐことができるのです。

また、周囲に樹木が少ないことは、山火事の犠牲になりにくく、何千年も生き長らえることに繋がります。

研究者は、これらの樹木の正確な樹齢を、「クロスデート」という手法で測定することができます。

木の芯部のサンプルを、生きている木と枯れた木の双方から採取し、年輪のパターンと照らし合わせて、何千年前もの昔の様子を探ることができるのです。

8万年を超えて生き続ける生命

次の候補は、ユタ州中南部にあるフィッシュレイク国立公園にあります。ここには、地上で最古の生命とされる、カロリナポプラのクローンの群生があるのです。

パンド(pando)と呼ばれている、0.5平方キロメートルにも及ぶ、これら全ての木もしくは幹は、同一の遺伝子から成っています。

群生の単一個体の樹齢は200年を超えてはいませんが、8万年を超えて生きる、1つの根系から繋がって生えています。総重量は6千トンを超え、地上でもっとも重い生命としての特徴も持っています。

では、「パンド」はなぜ、これほどまでに長生きなのでしょうか。

パンドのようなクローン性の群生は、花を咲かせて実を付ける方法と、クローンの生成、いずれでも繁殖することができます

このケースでは、クローンの生成は単に「巨大な根系のネットワークを広げ、地面から新たに芽を生やす」ことになります。

パンドの心臓部は地中に深く埋まっているため、山火事でも根絶できません。最近の研究では、パンドは1万年以上も有性生殖を行っていないということです。乾いてしまって久しいですね。つまり、完全に根系に依存してクローン生成を継続し、山火事を利用して、球果植物の進出を未然に防いでいるわけです。

進化のコツをうまく利用した、世界最古の樹木のお話でした。5000歳になっても、あと5000年は覚えていられそうなエピソードでしたね。