相次ぐニュースキャスターの降板について

奥野総一郎氏(以下、奥野):民主党維新無所属クラブの奥野総一郎でございます。高市さん、よろしくお願いします。

今日は放送法の解釈について、大臣、そして放送法に精通しておられるはずの籾井NHK会長とも議論してまいりたいと思います。

年が明けて、さまざまな問題、ニュースキャスターの降板ですね。テレビ朝日の古舘キャスター、そしてTBSの岸井キャスター、またNHKクローズアップ現代の国谷キャスターが3月末をもって交代ということが発表されています。

また昨年は、NHKの大越キャスターも4月から交代ということで、相次いで、あえて言わせていただければ、政権に物を申してきたキャスターが交代しているということであります。

例えば、『報道ステーション』で言えば、一昨年の11月の衆議院選挙のときに、「アベノミクスの恩恵が富裕層にしか及んでいないかのような報道をした」として、自民党から名指しで文書で注意がいっていると。

あるいは『NEWS23』でいえば、安倍総理が出演した際に、アベノミクスに批判的な街の声が紹介されたとして、総理が「街の声の実態が反映されていない」ということで、指導の文書がいっている。

また、昨年におきましては、テレビ朝日の古賀問題、あるいは『クローズアップ現代』の問題で、自民党の幹部の方が、テレビ局に対する停波、放送の停止について言及したとの報道もあります。

このように、政権与党からの報道に関する発言が出ていると。そうした中でのキャスターの交代ということであります。

放送法第4条の解釈の変更

そして、岸井さんの降板のきっかけとなったという報道もあるのが、お手元にお配りしております資料ですね。「放送法順守を求める視聴者の会」ということで、公開質問状を今、お手元にお配りしています。

この質問状にありますように、昨年9月16日の『NEWS23』において、岸井アンカーが、「メディアとしても安保法案の廃案に向けて、声をずっと上げ続けるべきだ」と主張したことについて、「一方的な意見を断定的に視聴者に押し付けることは、放送法に明らかに抵触するんだ」と言っています。(1)のところですね。

それについて、従来の総務省の放送法4条の見解が不適切。従来の見解というのは、「全体を見る」と。一つひとつの番組について政治的な公平性を判断するのではなくて、番組全体として政治的公平性を判断すべきだと。これが従来の総務大臣の見解だと。

しかし、これは不適切だというふうに述べています。そして大臣に対して、この4条の部分について「個々の番組内で放送法第4条を十分尊重すること」ということで意見書を出してきておられるわけです。

この見解について、まず籾井会長にうかがいたいと思うんですが、放送事業者として、公共放送の代表として、この意見ですね。「政治的公平性は1つの番組の中で求められている」のか、あるいは「放送番組全体、NHKの番組全体で求められているのか」という点について、うかがいたいと思います。

会長は先日、会見でも認めておられますけども、「NHKの解説員についても偏った考えを持つ人がいる」と発言されたそうです。そうした点も踏まえながら、政治的公平性について、どのように考えているかうかがいたいと思います。

委員長:日本放送協会会長、籾井勝人君。

籾井勝人氏(以下、籾井):まず質問の1つは、放送の中でバランスをどういうふうに取っていくかというご質問だったと思うんですが。私が着任する前の国会において、前会長の松本会長が、「これはそれぞれの番組の中でバランスを取っていく。これが実際の具体的な方法だ」と答えてるんです。

もとより、年間を通じて、全体の中でバランスを取るということは、理屈としては正しいんですが、やはり我々が実態としてバランスを取るためには、一つひとつの番組の中で極力バランスを取りながら放送をしていく必要があると、我々は認識いたしております。

それから、先ほどの私の発言についてでございますが、これは、それぞれの解説員が、それぞれの意見を持っておるということを申し上げたわけで、それが実際に放送に出てくる場合には、やはりバランスを取りながら、いろんな意見を加味して放送に反映させると。こういうふうに申し上げたつもりでございます。

委員長:奥野総一郎君。

番組の「政治的公平性」を判断するのは誰か

奥野:今のご発言によれば、籾井会長の理解は、政治的公平性ですね、放送法4条1項の2号ですか。番組の編集にあたっては、守らなくてはいけない事項として「政治的に公平であること」ということは、これは一つひとつの番組、ニュース解説ならニュース解説、NHKスペシャルならNHKスペシャルという、一つひとつの番組の中において守られるべき基準だと理解されているということを、今おっしゃいました。

そうしたときに、じゃあ誰が一体判断するのかと。政治的公平性が守られているかどうかは番組を作るに際しては、おそらく番組編集権を持っている会長が判断することになると思いますが。会長として、この番組に対して、政治公益性が取れてないと判断した時に編集権を行使して、変更を命じることはあるんでしょうか?

籾井:一つひとつの番組でバランスが取れてないという場合には、それなりに番組のシリーズのなかでバランスを取っていくとか、あるいは全体のなかでバランスを取っていくというのは方法論としてございます。

でも、おわかりの通り、年間通じましてこの番組はバランスが取れてなかったということを言ったとしまして、それはその時点でのバランスを取るということには行動としてはなかなかできないわけです。

私としては、ご承知の通り、会長が掌理するということになっていますが、実際はすべてのことにおいて、実務を分掌しているわけです。従いまして、その分掌のなかで、各役員並びに現場の局長なりがきちんと判断してやっているというのが今のNHKの実際の実態でございます。

「放送法の規律は視聴者が判断する」

奥野:今おっしゃった、会長は要らないということ、そうするとおそらくは編成権を持っているのは板野(裕爾 )専務理事ということになるんでしょうが。その権限でバランスが取れていない時は変えることもあると理解いたします。

もう1点おうかがいしたいんですが、バランスが取れている、取れていないというのは、どういう基準なんでしょうか? 何を持ってバランスが取れていないのか、取れているのか。誰が判断するのか、もう一度おうかがいしたいと思います。

籾井:明らかに会長が判断するわけではございません。これについては放送法というものがきちんとございますので、その放送法に則って判断をする。この判断する人が誰かと言えば、放送法に基づいて判断するので最終的には視聴者になるんだろうと私は考えております。

奥野:それ、視聴者なんでしょうかね? 放送法の規律というのはNHKに及んでいるんですよね。NHKが守るべき番組準則なんですよね。その番組準則に適っているかを視聴者が判断するんですか?

会長が判断するんじゃないですか? 会長じゃないとしても、会長が委ねている誰かが判断するんじゃないんですか? 放送法の理解、間違っているんじゃないんですか?

籾井:先ほどから申し上げているように、番組それぞれについては私どもは極力そのなかでバランスを取ると心がけているわけです。これはもちろん放送法に則ってやるわけです。

そして、それに対してベストを尽くして、バランスを取るわけですが、万が一それに外れた場合にどうするんだ、この判断は私が裁判官で「外れてる」「外れてない」とか、そういうことではなくて。視聴者の反応とかで、これはバランスが取れていなかったとか、そういうことになるんではなかろうかと思います。

放送法に基づいてやっている限りにおいて、我々はベストを尽くしてバランスを取っているというわけです。

奥野:いやぁ、これは諦めましたよ。放送法で縛られているのはNHKさんです。民法さんもそうです。番組準則に従ってやりましょうと。なぜ1個1個の番組じゃないかというと難しいからですよ。1個1個の番組で政治的公益性が保たれているかどうか。判断しがたいから全体として、と言っているんですよね。それを最終的に判断するのは最終責任者の会長じゃないんですか? 私は極めて無責任な答弁だと思います。これ以上やっていると、ほかの質問ができませんから、会長へはいったんここで止めますが。

総務大臣からニュース番組への回答文書

さっきの話に戻りますが、この質問状に関して、総務大臣の名前で昨年12月4日に回答文書が出ています。「放送法遵守を求める視聴者の会御中」というかたちで出されています。

これを読み上げますと「基本的には、1つの番組というよりは、放送事業者の番組全体を見て判断する必要があるという考え方を示して参りました」。これは従前の答弁を踏襲してきているわけですよね。話題になった、このコンメンタールにもちゃんと書いてありますし、従来の公定解釈です。

しかしそこに付け加っていて、1つの番組のみでも例えば……「殊更に特定の候補者や候補予定者のみを相当の時間にわたり取り上げる特別番組を放送した場合のように、選挙の公平性に明らかに支障を及ぼすと認められる場合」。

「国論を二分するような政治課題について、放送事業者が、一方の政治的見解を取り上げず、殊更に、他の政治的見解のみを取り上げて、それを支持する内容を相当の時間にわたり繰り返す番組を放送した場合のように、当該放送事業者の番組編集が不偏不党の立場から明らかに逸脱していると認められる場合といった極端な場合においては、一般論として『政治的に公平であること』を確保しているとは認められないと考えております。以上は、私が国会答弁でも申し上げていることであります」と付いているわけです。

これは従来の答弁を変更したということなんでしょうか?