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テーマ「青学ハッピー大作戦! ストレス対処能力」について(全1記事)

ストレスに強い人の特徴とは? 箱根駅伝で2連覇した青学陸上部の「ハッピー大作戦」

健康経営を支援するマインドフルネスや職場でのストレスチェックなど、企業のなかで従業員のメンタル面の健康に気を遣うことによって、生産性を高めようとする動きに注目が集まっています。メンタルトレーナーの田中ウルヴェ京氏は、2016年の第92回東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)で2年連続の総合優勝を果たした青山学院大学陸上部が、原晋監督の指導のもとにチームで実践した「ハッピー大作戦」を例に、ストレスに強い人の特徴を解説しました。

箱根駅伝で2連覇した青学の「ハッピー大作戦」

堀潤氏(以下、堀):さぁ、京さん、お願いします。

田中ウルヴェ京氏(以下、田中):はい、「青学ハッピー大作戦! ストレス対処能力を高めた」ってこと?

:今日ここまで、すごいストレスがかかる話ばっかりやってきましたからね!

田中:ですね!

:ずっと緊張してたから!

(テーマ「青学ハッピー大作戦! ストレス対処能力」について)

脊山:今月2日、3日に行われた関東の大学対抗で競う「箱根駅伝」で青山学院大学が2年連続の総合優勝を果たしました。

:確かに強かったですね!

「陸上界を盛り上げるため、批判を恐れずメディアに積極的に出て」と青山学院大学・原監督は発言。

ユニークな言葉で広く陸上をアピールした中、今回の箱根は「ハッピー大作戦」と銘打ち、幸福度を表すハッピー指数でチーム状態を表していたことで話題になったということです。

田中:初優勝した昨年も、「ワクワク大作戦」でした。

:「ワクワク大作戦」、いいですね! このわかりやすい感じがね(笑)。

田中:今年は「ハッピー大作戦」。皆さん、もちろんハッピーって、単に楽しいって意味じゃないとわかっていると思うんですけど、選手やコーチという当事者の方はやっぱり「本当にこんなに努力したんだ」とかって、本物の方はおっしゃらないじゃないですか。

なので、ぜひここでちゃんと、ハッピー大作戦は別に「きゃー、楽しい!」とか言って勝ったわけじゃないんだということを説明したくて……。

ストレスに強い人の特徴とは?

ハッピーだけで勝てるわけじゃない。実は、「青学は、ハッピー大作戦をすることによって、ストレス対処能力を高めたんですよ」ということを。

ちょっと古い研究なんですけど。1978年から1980年代に「ストレスに強い人たちの共通の特性」、これはアスリートに限らず企業で成功した人なども集めたコバサさんという人の研究で。

:コバサさん?

田中:はいはい、ですよね?(笑)。思いますよね! コバサさん! シカゴ大学の人。

:3C!

田中:この1980年代の研究では、「3つのCを持っている人がストレスに強い」と言われています。簡単に言うと、「CONTROL」。自分がコントロールできるものだけに集中できる人。簡単に言っちゃうとですよ。

「CHALLENGE」。元々人生というのは変化があるのが当たり前のことなので、変化の中で自分が能動的に変化していこうとする人。

最後「COMMITMENT」。日本語だと「覚悟」とか言ったりもするんですけれど。

:「腹を据える」。

田中:腹を据えるとか。なぜこのことをやらなければいけないかという目標と言ったら薄いんですけど、意思がしっかりしているという。

(これらが)「3つのC」と言われているんですね。

:確かにこの変化に対応できないと、やっぱりすごく不安になっちゃいますよね......。

田中:リアクティブになっちゃうと不安になりますよね。

青学の原監督は、コントロールとチャレンジの部分を、心技体のうちの体、つまり体のトレーニングで。表現が極端かもしれないですけど、本当にばかみたいに一生懸命愚直な泥臭いトレーニングをしたと言われています。フィジカルな部分で。

:そうか。多少コースが変化しても、体がしっかりと対応するような肉体を作ると。

田中:肉体を作ってきた。どんなことにもコントロールできる肉体、そしてどんなことにもチャレンジできる、リスクマネジメントできる体を作ってきたという部分で、この2つはもちろん説明ができる。

あと、コミットメントの部分では、一人ひとりが自分の腹落ちできる目標設定をしたと言われています。チームでこうだよと決めるのではなく、まず一人ひとりが決めて、それをチームの連帯感としてまとめていったと言われています。この3つがもちろんあったのは事実で。

笑顔がもつ2つの利点

でも、この3つはストレスが強い人が持っている特性とは言われているんですけど、この3つをずっと毎日毎日やっていくって実はすごく大変じゃないですか。

:そうとうストイックなものが求められますよね。

田中:それこそストレスだから。

:そうですね!

田中:ここで大事なのが、2000年以降、マーク・タガーさんという医学博士が、このストレスがますますあるような情報社会、多様化社会の中で、「CONNECTEDNESS」というものも付け加えようと。周囲とのつながり。温かさとか優しさを含めることで、この3Cはもっと活きてくるんじゃないかと言われています。

:今っぽいですねぇ〜!

田中:今っぽいじゃないですか!

:今っぽいですねぇ〜!

田中:これにはいろいろな根拠があるんですけど。

:「シェアしていこうね」

田中:シェアしていこう、つらさをシェアしていこう。

例えば、青学の皆さんの最大の長所だと言われているのは、つらい時、もうダメかもしれない時にも、笑顔で(いること)。

笑顔の研究は幸福学で、すでに1998年からあるんですけど。どんなにつらい時も、「つらいな」って笑顔でやっていると、脳内のホルモンバランスが変わっていくというような研究が、今すごく進化しています。

:やっぱり、笑っていると実際にいいわけですか。

田中:笑顔には2つの利点があって。

1つは実力発揮につながる思考回路になるという個人のメリットが1つと。あとは、ニコニコしている人と一緒に走ったりすると、何となくつられるというのと。両方ですよね。

:確かに職場に1人「うーん......」っていう人がいると、みんな「うーん......」ってなるし。誰かがいつも笑っていたら伝播していきますしね。

田中:辛いいろいろな情勢がありますから、「困ったな」ってニコニコしながら言うと、少しは問題解決能力の思考に移れるという。

:昨年、世界人権デーの時に、子供の権利スピーチコンテストの審査員をしたんですけど、フィリピンと日本にルーツを持つ女の子が、「私は小学校の時に日本にやってきた。日本語もしゃべれなかった。すごくいじめられたり、嫌なことを言われた。でも、私はそれを変えたいと思って、嫌だと思う人に自分から笑顔で挨拶をするようにしたんです。そしたら、相手が変わった」と。

なるほどなと思っていたんですけど。そういうふうにつながっていって。

田中:大事ですね。特に不安なところだったり。

私はアメリカに留学してた時に、例えば、「朝走る時も笑顔で知らない人に挨拶しなさいね」と。この理由は、繋がるというよりは犯罪防止だと言われました。

:おぉ〜〜!

田中:自分がアジア人なので、「悪者じゃないですよ」ということをちゃんと意思表示しろという意味だったんだと。笑顔って実は大事ですよね。

脊山:箱根駅伝をずっと取材していたんですけど、1年生の選手でスタート前に笑顔でいられる人って初めて見たので、今回青学の選手、復路で1年生が。

:それはやっぱり大きい。

脊山:スタート前、わざとやっていたんですよね。

田中:わざとです。うれしいわけはないんです。緊張もしていますし、はい。

:まぁね!

田中:ぜんぜんうれしくない! 笑顔の練習は実際メンタルトレーニングにもするくらいで。それをやらなきゃいけない理由がもう1つあって。こういう時に大事なんですよね。

やっぱり負けたりするわけです。昨年11月、青学は全日本大学駅伝で2位になったんですね。その時も「あの負けが逆にチームの成長につながった」なんていう言葉を言えるのは、対処能力がついているチームだからこそ笑顔で「わ、困っちゃったね」って。

諦めているとかいう意味ではなく、楽観的な意味でもなく、しっかり踏ん張れる力があるってことですよね。

:ありがとうございました。

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