ストリートスマートの代表例は松下幸之助

大前創希氏(以下、大前創希):アカデミックスマートとストリートスマート。このストリートスマートってどういう意味なんですかね。

大前研一氏(以下、大前研一):松下幸之助さんみたいな、小学校しか行ってないけども、やっぱりものすごい判断力と好奇心がある。あれがストリート。ストリートで非常に頭が良くなったというか、生活の知恵を持ってる人ですよね。

アカデミックスマートは、先生の言うことを全部覚えていった人。そういう勉強の仕方をした人はアカデミックスマート。こういう人が一番集まってるのが役人でしょう。だから役立たずって言われて、もうこいつら本当に役立たずですよ。

だからやっぱり、いま学校で教えてることを全部覚えたとしても、新しい問題についてはどうしようもないし、それから欧米に追いつけ追い越せと言ってる時代は、日本はそっちに行けばよかったんだけど、いまオバマさんに、「あんた何やりたいの?」「中東でどうするんですか?」と聞いたら、「?」だよね。

先週ジェブ・ブッシュ、フロリダ知事が今度は大統領候補で、「あなただったらイラクに行きましたか」って質問を受けて、「お父ちゃんは行った、兄ちゃんも行った。あなただったら、ああいう状況のときにイラクに行きましたか」って聞かれて、いまの大統領候補としては「自分だったら行かなかった」と言わざるを得なかった。

あれだけ仲のいいブッシュ家でも、兄さんを否定して、父ちゃんを否定しなきゃいけないという話ですよ。つまり、アメリカが世界のリーダーだと言うんだったら、「アメリカが方向を示せ」と言ったって、何考えてるのかわからないですよ。結局、答えは自分で見ないといけないですね。

ストリートスマート、幸之助さんが代表例です。幸之助さんは小学校しか出てなかったけども、それだけ早く世の中に出たので、自分で一生懸命質問して答えを自分で見つける。見つけるまで、自分でいろいろな人に話を聞く。こういうスタイルの経営者でしたけれども、日本の生んだ偉大な経営者のトップの1人だと思いますけどもね。

大前創希:今のお話を聞いてますと、ストリートスマートとアスクエブリワンとラーン、リーダー、ネットワークみたいなところは、だいぶつながってるような感触がありますよね。

大前研一:同じことですよね。

大前創希:そうですよね。

大前研一:同じことです。だから三洋をつくった井植歳男さんという人が、自分が中学まで行っちゃったと。三洋の井植さんは、幸之助さんの奥さんの弟だったわけです。だから、もともと松下にいたわけです。

けんか別れして自分で独立したときに、俺は兄貴にかなわないと。理由は兄貴は小学校を出て世の中のことを知る。世の中のことを知るのが早かった。自分は中学まで行って勉強しちゃった。だから、かなわない。

したがって、日本じゃなくて世界をやろうと言って、スリーオーシャン、インド洋、太平洋、大西洋と。「こっちは俺が先にやるぞ」と言って、三洋という名前がついた。それから五十数年たってみると、なんとその三洋が松下に吸収されて、名前もパナソニックに変わって三洋はなくなっちゃった。これも歴史の因縁ですよね。

そのぐらいやっぱり世の中に早く出て、お客さんの考えとか言い分を肌で感じるのは重要なことですね。

3つのクラウドが重要な意味を持っている

大前創希:いまの時代の中で、やはり学校で学ぶ、頭の中に詰め込むところを重要視するのではなくて、やはり自分で考えて、人といろいろとコミュニケーションしていきながら、自分で答えを導いていく人間像が、この時代2015年に求められているところですね。

今日はクラウドを使ったお話もあると思いますので、最近よくクラウド系のセミナーに出ているという噂を聞いておりますので、これらのことについて少し話をしていきたいなと思いますが、ちょっと違うクラウドが混ざってるんですけども、クラウドコンピューティング、ソーシング、ファンディング。

大前研一:日本の講演のときはオジンギャグ使って3つのクラウドって言うと、「うん、なるほど」って思ってもらえるんだけど、英語だと最初のクラウドは、Amazonがそうですね、クラウドはLなんですね、雲のほうのクラウド。

それから2番目のクラウドソーシング、これは今日、吉田浩一郎君が来てますけども、クラウドワークス、群衆という意味のクラウドですね。だからRなんですね。それから最近ずいぶん機能するようになってきたクラウドファンディング。これも群衆、一般の人、クラウドですね。

だから英語ではこのジョークが通じないんです。日本のオジンギャングで私が考えたんですけど。3つのクラウドと言って、この3つはしかしながら非常に重要な意味合いを持っています。3つ一緒に考えたほうがいと思います。理由は小は大を制す可能性がある。

つまり、このクラウドを使うことによって大会社とか大組織、うんと先に行ってる人よりも、個人でも、小さな会社でも、田舎にいても克服することができるということですね。

だから一番下にあるファンディング。これもKickstarterみたいな会社がありますけども、Kickstarterが最近集めたお金というのは、一番おもしろいヤツはこの時計ですよね。「Pebble」っていうんですけども、24億円を集めてます。

だからクラウドファンディングの場合には、あなたに資本家になってくださいとエクイティを募集するわけですけれども、同時に「こういう商品を作りたいと思ってますので、できたらあなたには、これを送ります」と。そして送って「あなたは資本家です」ということですね。

だから、エンジェルがああいうサイトを見ていると、おもしろいアイデアがいっぱいあって、ここに50万円とか100万円とか乗っけていくと、全部足して24〜25億円も集まるようになってきた。

2番はクールボックスですね。要するにアイスボックスだけども、そこにUSBが挿し込めたり、いろいろな機能のついたやつで、「こんなアイスボックスは必要ないですか?」「キャンプに行くとき、これいいね」と。できあがったらそれを1つもらって、プラス資本を握れる。

だめもとでも商品あるからいいかと。いま日本の地方納税で牛肉がもらえるとか、桃がもらえるのと同じように、クラウドファンディングが非常に機能するようになってきてます。

パワーポイント資料の英訳はoDeskが便利

それからクラウドソーシング。これはおそらく最も重要なやり方ですね。要するに自分の目の前にいる人じゃない人。会社の同僚じゃない人。下請けでも、外注でもない人。見も知らぬ人に、いろいろ仕事を手伝ってもらうやり方です。

大前創希:発注したことがありますよね。

大前研一:僕を「oDesk」っていうのを年中使ってるけども、oDeskがいま世界で一番でかい。日本では今日来たと聞いておりますけども、吉田さんのところのクラウドワークス。去年の12月12日に上場してますけども、おもしろい会社です。

それはどういうコンセプトかというと、私の場合は日本語でパワーポイントをつくる。誰か英語にしてくれないかなというときに出します。そうすると日本語のパワーポイントを英語に直してくれる。しかもきれいに英語の体裁でやってくれる。こういうやつが一斉に何十人から、「私がやります」と来るんですね。

大半の人は日本人なんです。海外に住んでる日本人。でも、その人たちはたぶん海外に出向している旦那さんにくっついて行って、大学の頃は旦那より成績が良かった頭のいい奥さん。そういう人がアゼルバイジャンで悶々としてる。ボーンと仕事が来た。やってあげよう。

こっちは、その人が信頼できるのかどうかわからないけども、ヤフーオークションと同じように、この人を使った人のいろいろな評価が書いてあるんだよ。そこでチェックするのと同時に、私の場合だったら最初の3枚だけ候補者5人に送ってやってもらう。その中の一番感覚が合う人に頼んで、あとをお願いします。

福島第一の原発の分析も出しましたけども、これを英語にしてくれと言われて280ページ。1人事故調をやりましたけど、280ページ。全部oDeskを使ってやりました。

だから、そういうときには非常に便利ですし、皆さんが会社のパンフレットを作った。それをバハサマレー、マレー語にしたいとかね。インドネシアで使えるようにしたいとか、ロシアに売り込みたいとか。そういうときも、これを使うと一瞬にしてできます。日本の変なエージェントを呼んで頼むよりも、値段は10分の1以下。スピードもものすごい早い。

つまり、これって使ってなんぼなんです。使ってみることが重要でね。そういうのがあるという知識だけじゃなくて、もちろんoDeskの中核的なものはコーディングですから。要するにシステム作ったりするところなんですけども。

だから、もう少しサイエンティフィックでR&Dに近いところは、また全然別のサイトがいくつかあります。NineSigmaとかがあります。ですから使い方は、ものによってどういうクラウドが集まっているかをよく知ること。

Amazonがクラウドコンピューターを握った

それから、もう1つクラウドソーシングじゃないんだけど、LinkedInですね。LinkedInは、やっぱりこういうSNSみたいな形態をとりながら、世界最大の就職サイトになったわけよ。要するに、エンジニアのプロフェッショナルの人たちがグループで集まってて、誰がどういう能力があるかわかってる。

「俺、会社が嫌だから辞めたいんだよね」なんて言ったら、「君のような人だったら、この会社が採ってくると思うよ、紹介しようか」。あるいは「うちに来てくれないか」と、結果的にリクルートとかアデコのようなリクルート会社、20世紀型の会社じゃなくて、この領域で人材紹介では圧倒的に強くなってる。

だから入ってる人は少ないけれども、時価総額は高くなるのは、こういう理由ですね。つまり、プロの同類の人が集まってるんです。これもやっぱりクラウドソーシングというか、クラウドを使った就職サイト。普段いろいろとチャットしながら、その人の考え方とか能力がわかってるので、「彼みたいな人がうちにいたらいいよな」ということになってくるわけですね。ですから意外にクラウドソーシングの範囲は広がってると思います。

最後のクラウドコンピューティングですけど、これはまさにAmazonがいま非常に世界的に強いので、気が付いてみたらアマゾンが、その他のクラウドコンピューティングの会社を全部足したよりも強いことがわかって、いま証券市場ではAmazonという会社の時価総額、はじけないよなと。

クラウドコンピューティングを握っちゃった。断トツ50パーセント以上だと。残るすべてを足しても、Amazonのほうがでかくなってる。気が付いたらAmazonだった。時価総額に直したらいくらですか。誰もいま計算できないです。

ジェフ・ベゾフは、赤字でも平気でやっちゃう人ですから、なんとなくそこはディスカウントになってるんだけど、これ握ったらでかいよね。だから、ほとんどいままで気が付かなかったけど、ひたすら自分のところが表側がリテールになるという。本を売ったりいろいろなもの売ってる間に、バックエンドでこれを充実してたということですね。

大前創希:いまちょうどキーワードが出ましたから、少しだけ飛ばしまして、いまの時代、個人がすべてですよと。勝ちはステージ演出で決まるという話が、ちょうど前話してたときに出たんですけれども。

個人がすべてで、ステージ演出で決まるというのは、ジェフ・ベゾスを代表した人間性による部分があると思いますけども、そこってどういう意味なんでしょうかね。

21世紀は個人が国を負かす時代

大前研一:20世紀というのはグループで団結して一生懸命やることが非常に重要だったわけですけれども、もちろんその経営者個人の力も非常に大きな影響力があったけども、21世紀になってみるとスティーブ・ジョブズが死んじゃって、「ああいう人はもう出ないよね」と言ってたら、いつの間にかイーロン・マスクが出てきて、ジャック・ドーシーが出てきて、ベゾスもすごいとなっている。

考えてみると、いまは個人が国を負かす。日本がいま負けている産業を見ると、ほとんど全部、個人にやられてます。よくそこで間違えるのは、「アメリカってすごいよな」と言うんだけれども、実はいまから20年〜25年前のアメリカは、リサーチが3つの場所で行なわれたんです。

MITに行ったんだけど、あそこの128号線、ボストン、これが1つの極。もう1つはノースカロライナ、ローリーとかですね。それからシリコンバレーと言われてたんですけど、いまこの2つは見る影もない。

それから一時、ワシントン郊外にAOLが出てきて、ワシントン郊外も第4の極だと言ってる時代があったけども、いまはベイエリアだけです。あれが唯一のステージになって、世界中から我も我もと思う人は、みんなシリコンバレーというよりもベイエリアに来るんです。

その理由は、あそこで認められるとお金がつく。何しろ、いわゆるスーパーエンジェルと言われてるホロウィッツとかマーク・アンドリーセンのような人たち、ネットスケープを作ったのがアンドリーセンですけども、ああいう人が金を持ってて、目利き、鼻利きで、ずっと「あいついいぞ、あの会社だ」と金を入れる。だから金がドンとくるわけですよ。

そこに弁護士がついて、いろいろなアドバイザーがついて、あっという間にファンドが集まってくる場所は、シリコンバレーしかなくなっちゃった。でも、シリコンバレーは生活環境が悪いし、住宅が高いので、サンフランシスコのほうにどんどん来てるんですね。

ですからセールスフォース・ドットコムはサンフランシスコにあるんですけども、サンフランシスコからシリコンバレーのサンノゼまで、これがベイエリアですね、ここだけです。あとは閑古鳥です。だから、そこに人が集まってくる。どういう人が集まってくるかっていうと、アメリカ中から集まってくるけれども、もう1つはインド、イスラエル、台湾です。これがベイエリアの三大外国人ですね。