仕事と育児の両立で大事なことは職場へのシェア

司会:子育てをし、家庭を大事にしながら、仕事の仕方で気をつけている点や、ファザーリング・ジャパンの中のベストプラクティス、こんなふうにうまく両立させてる方がいますよというのは何かありますか?

西村創一朗氏(以下、西村):誰にでも当てはまるベストプラクティスって正直ないんですけど、一番大事なのは職場でシェアをしまくることだと思ってます。

具体的に言うと、自分は家族をとても大事にしているとかっていうことを、黙ってそそくさと帰っていくみたいになると、やっぱり自分もうしろめたくなってつらいし、「何であいつ帰るんだろう」ってみたいな状況になってくると思うんですけど。

「今日はお迎えがあるので帰ります」とか、ちゃんとシェアするとやっぱり伝わるので。お互いさまの世界で、そのかわり自分ができることはやるという形でシェアをすることがすごく大事かなと思ってます。

あともう1つは、終電から逆算して仕事をしちゃうことってリクルートに限らず起きてることだと思うんですけど。「ロスタイムで仕事をしない」っていう考え方かなと思っています。

90分っていう試合の中でどう決めるかじゃないですけれども、もう今日は19時に帰るって決めたら絶対帰るんだと。そこまでに試合決まらなかったら負けだと思って帰るっていうのをすでにやっているっていう先輩がいました。

ちょうど入社2年目のまさに悩んでいたときに、まずは週に1回は必ず19時に帰るっていうことを徹底し、それを週2、週3、週4っていう形で帰る時間を早くする。もうお尻を決めるみたいなことは意識するようにやってましたし、今もやってますね。僕のスケジュールを見ると、19時以降は予定を入れない。「ブロック」って書いてるので。

どんなに遅く帰っても必ず夫婦で話す

高橋ゆき氏(以下、高橋):質問。育休を取得しないと決めて、他の形で自分が夫婦としての幸せ度をきちんと構築されるという選択をされたということなんですけど、それはすばらしいなと思うんですが、特に変えたところとか意識して努力しているところはどういうところですか。7時以降のお話だけじゃなくて。

西村:もうそれこそ自分自身がイクメンだとはまったく思ってないんですけれども、本当に特にこれまでと変えたことって実はそんなに大きくはなくて。もちろん妻が妊婦なので、それこそ皿洗いとか、週末はご飯作るとか、朝はご飯作って送り迎えするとかは当然のこととしてやるんですけど。洗濯物干すにも大変なので。

できることはどんどん引き受けてやっていくのはできるかなと思っています。でも当然僕が仕事が忙しくて難しいこともあるので、そのときはやってもらったりするんですけど。一番大事なのは、本当に毎日、どんなに遅く帰っても1日30分か1時間ぐらいは話すことですね。

高橋:妻と。

西村:はい。

高橋:偉いですね。

西村:偉いというか、僕が話すのが好きっていうのもあるんですけど、だから妻が僕にやってほしいって思ったことは言ってくれるし、妻にも思ったことは言うし。会話の量がたぶん他の夫婦の方よりももしかしたら多いのかもしれないですね。

高橋:どうですか? 長尾さん。

育休は家庭のタスクを分業できるのがメリット

長尾:会話の量はすごい大事なところだと思ってるんですけど、うちの場合は、家事とか家にまつわるいろいろなタスクがあると思うんですけど、育休を取ったことで得られたのって、そのタスクを完全に分業できる良さですね。

高橋:いいですね。

長尾:いまも奥さんは毎日働いていて、18時に保育園に迎えに行って、そのあと子どもにご飯食べさせて、風呂に入れて、着替えさせて、歯みがきして、寝かしつけして。だいたい僕が会社から帰るのはそのあとになるんです。

だから、「家事とかはできたらやってくれていいし、できなかったら全部残しといていいよ」って言ってるんです、洗いものとか洗濯ものとか掃除とか。そういうのは自由に片手間でいいって言っていて。

ただ、僕も深夜まで働いて帰ってそれをやるのはしんどいので、21時で仕事を切り上げるようにしてるので、帰って、家事があれば全部やるように、最近変えたというか、育休後にやっています。

高橋:でもちょっと戻っちゃうんですけど、長尾さんのとこでは3か月間お仕事しなかったわけですから、それは家でまったくしなかったんですか?

長尾:仕事ですか?

高橋:はい。

長尾:しなかったです。

高橋:すごいですね。もともと仕事はあんまり好きじゃないんですか?

長尾:仕事は全然好きじゃないです笑。

高橋:それは冗談だけど。どうしてもやっぱりメール開いちゃおうかなとか。職場の周りの方々も協力してくれたんですか?

長尾:はい。けっこう会社のほうから、育休を取ってる期間に、その取得者には絶対に業務上の連絡をしちゃいけないってきつく言われてたみたいです。なので1回もなかったですけど。

高橋:ということはもう24時間好きなだけ育児だとか子育ての方針とか家づくりとか、どうやって人生を歩んでいこうかとか、そんな話に必然的になるわけですよね。

長尾:ああ、そうですね。

高橋:すてきですね。

長尾:それは育休取る前にやりましたね。

高橋:取る前に。

長尾:どういう目的で取るかとか、話し合って決めました。

高橋:私はいま、西村君に3人目の子が生まれて、1歳の誕生日を迎える直前の3か月、育休を取らせてあげたいなと。

(会場笑)

西村:はい。

長尾:何のために取るかっていうビジョンを決めて、取れたら、それを取ったあと、死ぬまで35年ぐらいあると思いますけど、35年間に効いてくる。35年間の家族とか夫婦の関係を良くするために、すごい大事な3か月だったと思いました。だから取ったほうがいいと思うな。

(会場笑)

西村:うちの場合は経済的な理由だったんですよね。とは言っても入社5年目のまだ若手の収入の中でどうやってやってくかっていう中で、取らない方法でやっていこうって夫婦で決めたっていう感じでしたね。

香港の現地法人に就職し、夫婦で移住

司会:ありがとうございます。では最後に3つ目のテーマで、ゆきさんにお伺いできればと思うんですけれども。育児をしながら仕事を両立するにはどうしたらいいだろうと。

僕、ゆきさんの家事代行を日本に持ってこられたときの話がすごく好きで。もともと香港でお仕事と生活をされていらっしゃったんですけれども。そのときのご自身の経験から日本に帰ってこられて、家事代行を広められてというお話をお聞かせいただけないでしょうか。また、実際に利用されてる方が幸せに家庭と仕事を両立させてる例などもお話しいただければと思います。

高橋:はい、わかりました。ありがとうございます。あらためまして、高橋ゆきと申します。私は20年前に実は香港という場所にご縁があって、現地の会社、いわゆる現地法人に「うちで働かないか」と日本にいながら声をかけていただいて、なかなか決意が固まらなかったんですけど。

なんと当時ホテルマンをやっていた夫が「行こうよ」と背中を押してくれまして、「え?」ってすごいびっくりしたんですけど。「じゃ遠距離夫婦やるの? 海を挟んで」って言ったら、「いやいや僕もついていくよ」と言われて、「え? あなた会社は?」って言ったら、「もう辞めてきた」とか言って。「2週間前に辞表を出してきた」とか。「だからいま、お昼で帰ってきてるんだ」と。

(会場笑)

なんと夫は私に相談するとたぶん反対されるだろうということで、勝手に辞めてから行くぞということで、何と一緒に海を渡りました。そんな決断をしたケンジくん、君もすばらしい日本男性だということで、その香港人の社長が夫婦そろって同じ会社の別のディビジョンで採用してくださったんですね。

朝、2人で出勤をして。香港もちゃんとタイムカードっていうものもありまして、当時、20年前ですけれども。どちらかが走っていって2人分押す。残ったほうはパンを買っていくとかデイリーで仲良くやってたんですけども。

上司に妊娠を告げたときの意外な反応

ワーキングビザが降りるか否かっていうときにうれしいハプニングが高橋家にありました。それが私の第1子妊娠です。20年前の東京のど真ん中でいわゆる仕事をオフィスレディとしてやっていた私は、たくさんの先輩たちが「結婚が決まった」と上司に言うと、「おめでとう」って言ってくれるんだけど。

「妊娠しました」って言うと、「ああ、おめでとう」って言われながらも裏で部長とかが「いや、もうきっとタナカ君は戻ってこないから後任どうする?」とか、「今、彼女に任せようと思ってたプロジェクト、ちょっと他の人がいいんじゃないか」とか、とんでもない発言をいたるところで耳にしていたので、これはまいったと。

まさか香港にまで呼んでもらってお世話になっている会社やチームに、何の貢献もできていないのに「妊娠しました」とか言えないなと、なんと妊娠6か月までずっと打ち明けずに、夫と2人だけの秘密プロジェクトでAラインのブラウスを着たりとかワンピースを着ていました。

でもそのうちお腹だけじゃなくて、二の腕とか顔とかも全部ふっくらしてきて、いよいよ社長に「ゆき、どうしたんだ?」って「生き生きして血色もいいぞ」って言われたので、ここで打ち明けなくてどこで打ち明けるっていうことでカミングアウトしたんです。

そしたらすごいびっくりしたのが、社長さんは私の手をがっと握って「おめでとう!」って本気で言ってくれただけじゃなくて、何とがばっと抱き寄せてくれてハグしてくれて。「これで君はもっとビューティフルワークができるね」と言ってくれて。その意味がもう年々わかるようになってきて奥が深いなって思うんだけれども。

社長が言っていることの理解ができず、自分の英語力が落ちてるのか、理解力が落ちてるのか、たぶん伝わってないんだろうと思って、何度も自分が妊娠したことを言ったら、笑いながら「わかってるよ」って言って。

「君は安心して産んで、みんなで育てて2倍以上働いて、4倍以上の成果を僕の会社を通じて社会に貢献できる大人であれ」みたいなことをおっしゃるんですね。もっと頭が混乱しちゃって、どうしたからそんなことができるんだか、「私の両親も兄妹も友達もみんな日本ですよ」と。生まれてくる子どもをもって、一生懸命、いま以上に2倍働けってすごいなと。

そしたら社長がおっしゃるのは「いや、この香港には僕たち香港人の暮らしの縁の下の力持ちをやってくれている人がいてね」と。「誰ですか?」って言ったら……この中に香港に行ったことある人はいますか? 旅行とかで。

(会場挙手)