――ネットと新聞の求人広告で集められた応募者たちが、面接官とウェブカメラ越しに面接を行うシーン。

面接官:こんにちは。お待たせしました。

応募者たち:こんにちは。はじめまして。

面接官:この面接を受けたことが有りますか?

(首を横にふる応募者たち)

面接官:まずは仕事の内容からお伝えします。これは簡単な仕事ではありません。とても重要な仕事です。

役職は現場総監督です。でも実際はこの役にとどまりません。仕事上の責任はとっても広範囲です。あなたが任される役職はとても流動的です。さらにほぼ全ての時間、立って作業します。立ち作業と屈んだ姿勢で作業し、とても体力を必要とします。

応募者A:わ……わかりました。

応募者B:大変そうね。

応募者C:何時間くらい?

面接官:週に135時間かそれ以上、基本的に週7日、毎日24時間。

応募者D:でも、途中で座ったり出来るんですよね?

面接官:休憩時間についてですか?

応募者D:はい。

面接官:休憩時間はありません。

応募者E:それは合法なの?

面接官:もちろんです。

応募者E:わかりました。ランチは?

面接官:ランチは全ての同僚が食べ終わったあとです。

応募者A:いや、それは、ちょっとヒドく無いかな?

応募者F:ダメよ。そんなのおかしいわ。

面接官:この職位は交渉力と交際力が求められます。そして私達が必要としているのは、医学と金融学と栄養学に通じている人物です。複数の役職を兼任することが求められます。

常に周りに注意を払い、時には同僚と徹夜ということも。一睡もすることなく。大変な仕事をするのですから、あなたのプライベートな時間は諦めてもらいます。事実上、休みなしです。

クリスマス、感謝祭、正月、などでは、仕事量がもっと増えます。やりがいのある仕事でしょ?

(応募者たちが口々に)

応募者G:とってもクールね! ……ヒドい話。笑えないジョークだわ。

応募者D:寝る時間は?

面接官:ありません。

応募者H:もうなんでもやらされるってこと?

面接官:そういうことです。

応募者F:1年365日?

面接官:はい。

応募者F:NO! 非人道的よ。

応募者G:狂ってるわ。

面接官:あなたが作る人間関係や同僚を助けるといったことは、お金に換算されません。それで、給料ですが、あなたがこの役職で得られる給料は「0」です。

応募者D:な、なんだって?

応募者F:信じられない。ただ働きってこと?

面接官:ボランティアのような感じで完全無給です。

応募者たち:ありえないわ!

面接官:もし私が、現実に、今この瞬間もまさに、この職についている人がいるといったら? 数十億人くらいね。

応募者C:いったい誰?

面接官:お母さんですよ。

応募者たち:(笑)。

応募者I:その通りだ、すごい。

面接官:願いをなんでも聞いてくれたんじゃない?

応募者H:OH MY GOD……お母さん最高!

応募者A:そうよ、無料で24時間ずっとよ。

応募者I:母さんを思い出したよ。

面接官:どんなことを?

応募者I:毎晩の、いや全てのことをさ。

応募者G:お母さんありがとう。ありがとうなんて言ったことなかったけど、本当に本当に、心から感謝しています。

応募者F:ママ、ありがとう。ママがしてくれたこと全てに。心から愛してるわ。本当にどんな時だって、いつも傍にいてくれた。私のママは最高だわ。