SM界の巨匠 団鬼六氏とは何者なのか

山田玲司氏(以下、山田):(「エロい台詞は何か」ということについて)今回、この「見ないで」っていうのをずーっと書いてきたおじちゃんが団鬼六先生なわけですよ。

おっくん:ほー!

ニンニン:へー。

山田:そうなんですよ。俺がなんで団鬼六さんについて言いたかったかというと、怖いじゃんこのオジさん。この人知らないじゃん。ニンニンとか全然知らないでしょ? どういう人かっつーとね、有名なのがこれ『花と蛇』ですわ。SM界の巨匠中の巨匠なの。ヤクザの親分みたいでしょ。でもすっごい優しいの、この人。何回か会ったって話したじゃん。でもね、この人、SM界の巨人なんだけど、将棋の棋士でもあるの。

花と蛇〈1〉誘拐の巻 (幻冬舎アウトロー文庫)

おっくん:え?

山田:この人『将棋ジャーナル』買い取って、潰してるの。

おっくん・ニンニン:へー!

山田:その後プロ直前まで昇りつめた、すごい人なの。超博打打ち、超ギャンブラー。まあ言ってみれば、なんつーのかな、不良ですわ。デカダンなのこの人。もともと文学青年で。とどめがね、玄関に入って、こういう感じの写真がありますから。

団さんの家。この人ね、刺青マニアなの。刺青見るの好きなの。

ニンニン:へー。

山田:すごい。もう粋なの。完全にヤクザじゃん。危ない感じ。でもめちゃめちゃ優しい人だったのこの人。なんでかっつーと、めちゃめちゃインテリなんだよね。まあ『花と蛇』ってリメイクされて。

おっくん:何回もね。

山田:あの人、えーと。

おっくん:杉本彩?

山田:そうそう、杉本さんが最近だとワーってなって。実は超最近だとこの人だな。小向さんな。

おっくん:あ、しみちゃん好きなやつ。

しみちゃん:おい!

団鬼六氏の生い立ち

山田:この人がやったりなんかして話題になって。この人(団鬼六)もともと『奇譚クラブ』っていうさ、昔の変態雑誌があって、こんなん。こんなん経由の人なの。(ニンニン)知らないよね。知ってるわけないよね。

そういう歴史がありましてですね。俺、今回エロコンテンツをなんでやりたいかっていうと、「団鬼六とは何だ」って話するね。この人ね、もともと滋賀県の彦根の生まれなの。

おっくん:あっ、ひこにゃん!

山田:ひこにゃんなんだよ。ひこにゃん……の末裔ですわ。

おっくん:末裔なの!?

山田:いいかげんにしろよ! うちの、親父方の先祖は彦根なんだよ、実は。家は近江商人なんで。だからルーツ一緒だなーと思って嬉しくて。でもともとこの人ね、おじいちゃんが映画館やってんだよね。で潰してんの。

おっくん:また潰してんすか。

山田:そう。お父さんが相場でいろいろ潰してんの。結局、この人は英語が堪能で、関西学院大学ってとこ行って。実は学校の先生やってる、勉強もできる、翻訳もできるっていうそいういう人なんだよ、団鬼六さんて。

おっくん:インテリなんですね。

山田:それで早い時期に、博打小説で一発当てんの。でこれが映画化になって、それで20代の半ばくらいで大金持ちになるの。そんで上京してきて新橋にキャバレー開くんだよ。30人か40人のすごい数の女の人を雇って、大騒ぎして全員とヤルっていう。そんで経営がなかなかうまくいかなくなって、でボロボロになっていくんだけど、そこで一旦借金だらけになって三浦半島に逃げる。

これね、俺、前ここで言ったことあるよね? 三浦に逃げたって話。団さんの話したことなかったっけ。

おっくん:いや、してないと思いますよ。

山田:なんで団鬼六かっつーと、俺『絶望に効くクスリ』っていうこのシリーズでですね、対談してる人300人以上いるんですけど、その中でのTOP3、4くらいの人がいるんですけど、それが五味太郎、団鬼六、森毅、河合隼雄。河合先生と森先生っつーのはどっかねー、七福神みたいな感じなの。

絶望に効くクスリ―ONE ON ONE (Vol.1) (YOUNG SUNDAY COMICS SPECIAL)

おっくん:あー。

山田:だから福禄寿に会いましたみたいな、寿老人に会いましたみたいな、仙人みたいな人に会った感なんだけど、そのくらいのレベルが高いんだけど、五味さんと団さんって本物のデカダン。不良なの。

みんなが「こうなんだから」って言うと「ふざけんなよ、冗談じゃねえよ」っていう。なんつーのかな、何ともかっこいい自由人。俺からして。いっぱい会った中で、これすっげーなって思ったのが団鬼六。だから絶対にこの人のことをいつか言わないといけないなと思ってて。

『花と蛇』は中学校の授業中に書かれた

山田:なんで団鬼六に惹かれたかって話なんだけど。あのね、借金背負って、東京から逃げてんだよ。

おっくん:はいはい。

山田:でもね、神奈川県の三浦半島だよ。なんでそんな微妙なとこに逃げんだよっていう(笑)。捕まるよ! 捕まるよ鬼六さん! っていう。三浦半島の先端で何やってたかっていうと、中学の先生やるかんね。

ニンニン:へえ。

山田:そうなの。中学の先生でそれやりながら、まだ借金返済しなきゃいけないからっていろいろあるんで、何するかっつーと、この人エロ小説をまた書き始める。どこで書くかっつーと、教壇で書く。だから授業中に書く。それで書き終わったやつがさっき出した『花と蛇』ですわ。

『花と蛇』書いて、その教室の一番前の席にいる生徒に原稿と封筒渡して「送ってこい」と。生徒に送らせたの。その話を聞いた時に俺、「団さん、一時は夢みたいな生活をしてたわけで、逃げてきてそんな生活してて辛くなかったですか?」って聞いたら「そん時が一番楽しかったよね」って言うの団さん。

そん時に「あれ、ちょっとやばいなこの人」と思って。この人のSM理論てのがあって、いわゆる人生下り坂ん時はMになれ。上り坂の時はSになれ。っていうやつで、要するにどっちにしたって快楽や。っていう考え方の人なんだよ、この人って。これはなんじゃいと思った時に、こっから時代をさらに下ります。今から、最悪な状態になっていきます、日本は。良いことないすからね、これから。

おっくん:これからね。下ると。

快楽は束縛の中にある

山田:この10年振り返っても良いことなんかないんだよ。とにかく奈落の底に落ちてく。何か良いことが起こる要素があるかっていったら本当に無い。でも悲惨なことになるだろうなっていう(予感はある)。

例えば国立競技場3000億円っていう話題とかどーなんのこれ? って話じゃん。なに川内原発再稼働って、隣で噴火してんのにとか。そういうやつ全部考えても、これからね、日本の未来はWow Wow Wow Wowですかって話じゃない。このあと。

おっくん:ふる、古いなーまた。

山田:あの時代ですら世界は羨まなかったけど、カウンター入れたかったんだと思う。あの気分としては、99年の。それで2000年を迎えたかったんだよ。それくらい、地獄の底に一直線だったの。問題は、じゃあどっちって。俺たち時代を良くできんのかって話なの。

おっくん:うん。

山田:俺たち政権変えられんのかって話なの。全部責任とれんのか。なんとか電力会社に責任取らせるようなことできんのか俺たちっていうと、これもなかなか難しい。みんな頑張ってるけど。それから戦争法案通そうとしてる。止められんの? 止めようとしてるよ、でも難しい。

もしかしてダメかもしれない。これ団さんが生きてた時代にかぶるんだよ。団さんは、時代が真っ暗になってきた時代を生きてきた人なんだよ。この人が手にしたスキル、デカダン。ていうやつがエロとクロスするわけなんだけど、これが「なかなか最高だな」って俺、最近思ってて。

最近時代が暗いから俺もだんだん鬱になってくわけ。だけど……団さんの写真飾ってんのね、俺。団さんを思い出すとちょっと幸せな気持ちになるの。この人だったら、多分この状態でも笑ってんだろうなって思うわけよ。

おっくん:はーー。

山田:てことなの。で基本的にルーザーなの。この人が言ってんのが、快楽っていうのは束縛の中にある。縛りの中にある。だから「見つかるかもしんないけど、俺は今エロ小説書いてんだよね、教壇で。ふっふっふっ」って言ってる時が一番楽しくて、要は抑圧。

「警察が来てるかもしんない!」とか言ってる時が一番おもしろいよねっていう考え方なの。この考え方ってすんげえ強い。だからマイナスの時ほど「盛り上がっていたねー」っていう「ウッシッシ」理論。

「ウッシッシ」て笑うのこの人。だからこの「ウッシッシ」理論に学びたいなと思って。そんな感じっすわ。