片頭痛は、ただの頭痛とはまったく違うもの

ハンク・グリーン氏:片頭痛を経験したことのない人は、片頭痛とは頭痛のひどいもの程度に思っているかもしれません。しかし、自分で一度でも経験したり、片頭痛で悩んでいる人が身近にいたりすれば、そんなものではないことがよくわかります。単なる頭痛よりずっとたちが悪く、ずっと複雑なものなのです。

片頭痛は、正確に言えば、脳そのものに影響を及ぼしている、中枢神経システムの多症状疾患なのです。しかし、ひどい頭痛がその一番の特徴で、もっとも目立ち、わかりやすい症状であることは確かです。

しかし、通常の頭痛と違うのは、まず、痛みの継続時間です。4時間から長い時は数日続くこともあるのです。それにいろいろな随伴症状がある点でも違います。

片頭痛を患っている人は大抵、光、音、時には匂いにも過敏になります。さらに、吐き気、嘔吐、失神を伴うこともあるのです。片頭痛の苦しみから救われたければ、ただ、暗く静かな部屋で安静に過ごし、症状が治まるのを待つ以外ないのです。

片頭痛のたちの悪さそれだけにとどまらず、頭痛の前後にもいろいろな問題を起こすのです。人によって異なりますが、片頭痛は予兆として、軽度の便秘、異常な食欲、肩凝り、止まらない生あくび、というような症状が現れることがあります。

症状が悪化するにつれて、前兆と呼ばれる段階に入っていきます。その段階では、視覚の異常、例えば、ものや光がぼやけたり、ものが二重に見えたり、視野が見えにくくなったりします。また、手足の先がチクチク痛んだり、脱力感に見舞われたり、ろれつが回らなくなったりすることもあります。

このようなことを聞くと、脳卒中の症状によく似ていると思われませんか。実際、片頭痛は脳卒中と共通点が多いので、検査してみないとどちらか判断できない場合もあるのです。

片頭痛は、さらに、頭痛が去った後も、症状が続きます。大抵の場合、脱力感とか疲労感が数時間から数日続くのです。

片頭痛の原因は、未だによくわかっていない

こんなひどい目には誰も会いたくないですよね。では、何が原因で起こるのでしょうか。防ぐことはできるのでしょうか。起こった時に何か治療法はあるのでしょうか。

片頭痛はおそらく脳のセラトニンのレベルの急激な低下によって起こるというのが医学会の定説です。セラトニンというのは睡眠とか情緒を調整するのに重要な役割を果たす神経伝達物質です。そして、一旦バランスが崩れると様々な症状を引き起こすのです。

しかし、どうしてバランスが崩れるかは複雑で、よく分かっていません。ただ、遺伝がもっとも重要な因子の一つであるということは分かっています。両親あるいは片方の親が片頭痛持ちであれば、恐らくあなたもそうなる可能性が高いのです。

また、なぜだか理由ははっきりしませんが、女性の方が男性よりずっと片頭痛にかかりやすいのです。女性はホルモン変化が不安定になる時を多く経験します。たとえば、思春期、月経、排卵、妊娠、ホルモン避妊薬の使用、ホルモンの補充、閉経期などです。それらが関係しているのかもしれません。

それ以外のことはよく分かっておらず、原因は人さまざまです。ストレス、活動レベル、睡眠スケジュール、その他セラトニンと関係する事柄の何かがが原因になっていることも多いでしょう。

また、眩しい光、大きな音、とても強い匂い、あるいは天候といった、まったく関連のないように思われることが引き金になっていることもあるようです。

治療の面でも、単なる頭痛とは異なります。頭痛自体を和らげるのには、鎮痛剤を使うかもしれませんが、あまり効果が期待できない場合もよくあります。それで、鎮痛剤に加えて、脳の血管の収縮、血圧、セラトニンのレベル、炎症などをコントロールする薬を使って、痛みの原因そのものを取り除く治療をすることになります。

そういうわけで、片頭痛はただの頭痛とは大違いということがお分かりになったと思います。今度片頭痛にかかっている人と会った時、そのことを忘れないでください。とてもひどい状態の時は、暗い部屋で一人じっとさせてあげることが、一番の親切です。SciShowを見るのは構いませんが、できるだけ静かに見てくださいね。