2024.10.21
お互い疑心暗鬼になりがちな、経営企画と事業部の壁 組織に「分断」が生まれる要因と打開策
Stanford Graduate School of Business Advancing Women's Leadership: Blocking Bias at Work(全4記事)
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シェリー・コレル氏:こんにちは。ようこそみなさん。お会いできて嬉しいです。席に余裕がありますから、前の方に来てくださいね。
今日私が同僚のロリ・マッケンジーとともにお話したいのは、女性のリーダーシップをどのように進歩させることができるかということです。
そのためにまず我々がやることは、今日のアメリカの、女性のリーダーシップにおいて、我々がどの位置にいるのかという感覚を掴むことです。
こちらのスライドをざっと見ていただくと、女性の地位がいかに低いかがおわかりいただけると思います。
(「FORTUNE」に選ばれた500人のCEOのうち、約4.5パーセントが女性)(アメリカの執行役員のうち、14パーセントが女性)(アメリカの国会議員のうち、18パーセントが女性)(アメリカの研究大学の総長のうち、17.2パーセントが女性)(有色人種の女性の割合は、さらに低い)この社会のあらゆるセクターのトップレベルにおいて、女性は過小評価され続けてきました。
最初の2点は、企業セクターにおける女性の死を表しています。3点目を見てみると、議会における女性の割合はたった18パーセントだということがわかります。
こちらは議会に女性が入る分岐点となった1年後でしたが、いまだに18パーセントしかありません。
大学の学長においても、たったの17パーセントしかありません。これらの数字も低いですが、もしドリルダウンして有色人種の女性に焦点を当てたら、さらに低くなるでしょう。
これらはある面では驚くべきことですね。女性が男性の数を上回り始め、学士号を取得し始めてから30年にもなるのに。
ここにいる1980年か1985年の卒業生の方々は、ちょうどその転換期に大学にいらっしゃいました。たとえば1990年卒業の方だったら、当時の人たちは女性のリーダーシップに起ころうとしていることに対して、とても楽天的でした。
事実として当時のジェンダーの平等性に関する本を読むと、最終章に「いま沢山の女性が大学に入り、学士号を取ろうとしている。あとは時間の問題だ」と書いてあります。
ところが30年後、我々はこのスライドの数字が表すような状況にいます。なぜこれが問題なのかは、女性のリーダーシップについて話に来る人々にとっては明確かもしれません。
でも私はこれに加えて、社会的なコストも女性にとって問題であることを指摘したいのです。我々は、何が重要な問いなのか、何が企業や政府、大学によって解決されていないのか、なぜ女性の声がもっと尊重されないのかといったことを自問自答しないといけません。
もしくは、これの良い面を考えます。企業や政府、大学で、女性の才能をすべて引き出し、社会に還元できていたのかどうかと。
これが本日みなさんにお話したいことです。このスライドの数字は、あらゆる理由から明らかに低いものです。
私は大学1年生向けの問題解決の授業をしており、この問題の原因と対処法について、1学期をまるまる議論に費やします。
本日は私が本当に重要だと考えるたった1つの障壁に焦点を当てたいと思います。ジェンダーや仕事に対するステレオタイプを描き出すのですが、これは職場での女性の評価に対するバイアスにつながるものです。
これからその問題の描写に少し時間を割き、我々が思っている以上に重大な問題であるということをお伝えします。
そしてロリ・マッケンジーにバトンタッチします。彼女はそういったバイアスを乗り越えるためのツールについて、それから女性と男性の才能をフルに活かせる職場づくりについて、お話してくれます。
では、ある研究の話から始めましょう。これはみなさんもお聞きになったことがあるかもしれません。発表された時はかなり注目を集めましたから。今日みなさんと共有したいことを、本当によく表しています。
このスライドが示しているように、これはオーケストラに関する研究で、団員の雇用についてのものです。
70年代から80年代にかけてのアメリカでは、女性はすべてのオーケストラの団員のうち5パーセントに過ぎませんでした。本当に男性社会だったんですね。
我々はクレイマン・ジェンダー研究所で多くの研究を行なってきましたが、これは今日のものと比べると男性的です。
この国のメジャーなオーケストラは、オーディションの過程で女性に対するバイアスが働いていたというのが、こんなにも女性が少ない理由の1つではないかと、考えるようになりました。
70年代や80年代には、そのような考え方が馬鹿らしいと思う人や、それが正解であることを疑う人が沢山いたはずです。
さて、これらのオーケストラが何をしたのかというと、ただ良し悪しのディベートをするだけでなく、実験をして正解を見つけることにしたのです。我々は協力してくださる企業に、実験をするようにといつも働きかけています。
実験では、オーケストラは、オーディションを受けるミュージシャンと審査員の間に幕を挟みました
これで審査員は、ミュージシャンが男性か女性かを判別することが出来なくなりました。
実験を素晴らしいものにするために、彼らは床にカーペットも敷く必要があるということに気がつきました。ヒールの音がしてしまいますからね。
このようにして彼らはミュージシャンが何者なのかを悟られない、素晴らしいオーディションをつくりました。結果はなかなかドラマティックなものでした。
幕を挟んだことにより、一次審査を通過した女性の比率が50パーセントを超えたのです。とても大きな違いを生みました。
さて、ここで一気に現在まで話を進めると、トップオーケストラにおける女性の割合は25パーセントで、全体では40パーセントです。いまだに同等ではありませんが、幕が大きな役割を果たしたのは間違いありません。
この例を引き合いに出したのは、私が話したい2つのことを表しているからです。1つ目はジェンダーに対するステレオタイプがいかに女性の評価に影響を与えるかということ。この幕がなければ、女性は実際の能力と同等には評価されなかったのです。
2つ目は、あの幕です。女性の評価に対するステレオタイプの、ネガティブな効果を防ぐツールになります。
でも、この後もずっとこんな幕についてお話するわけではありません。我々はもっとクリエイティブにならないといけませんよね? ところが我々の多くは幕の後ろで仕事人生を生きることができなかったんです。
でもこのバイアスを越えるのを手助けするツールがあるんです。それを今日お話します。
これを私の結論としてまとめたいと思います。
しかし全体を通して、私はもう一つの筋を加えたいのです。それはこれらのステレオタイプが女性のリーダーシップを制限するだけでなく、能力主義の職場をつくるのを阻害するということです。
能力主義の職場は、革新と発見に不可欠なのです。どういうことかというと、もし職場や大学において、我々が望むだけ革新的になれるとしたら? 科学的発見をできるとしたら?
ベストなアイデアとベストな才能をトップに持ち上げることが不可欠なのです。そうならなければ、女性のリーダーシップに加えて、能力主義というゴールへの道まで阻害されてしまいます。
では、これがどのように働くかについてお話しましょう。私の仕事は社会科学をレビューすることなので、みなさんに素晴らしい研究をご紹介します。
その前に、バイアスという言葉自体についてお話ししたいと思います。バイアスとは、普通嫌われる言葉ですよね。
それには醜い言外の意味があり、さも誰かのことを性差別主義者だとか民族差別主義者だと呼んでいるかのようです。
でも今日私が使うのはそのような意味ではありません。単純に「意思決定におけるエラー」という意味でお話をします。
もう一度オーケストラについて考えると、できるだけ良いミュージシャンを雇いたいとすべての審査員が思っているのであれば、そのエラーは最小になるはずです。
彼らは女性を差別するために朝起きて来たわけではなく、出来るだけ良いミュージシャンを雇いたかったんですからね。しかし彼らがミュージシャンのジェンダーを一旦知ってしまうと、その人物の能力の見方に影響が出てしまうのです。
今日我々が見ていくのは、誰しもがこのようなバイアスにかかる傾向にあるということです。無意識のバイアスです。これは悪いニュースです。
良いニュースは、我々は適切な位置に自分自身を置いて、これらのバイアスから防ぐことができるということです。
だから私はいつもこれを、「非難なしの責任あるメッセージ」と表現しています。
これがバイアスというものです。これは、ステレオタイプがどのように働くと教えてくれるでしょうか?
今日我々が話すステレオタイプの鍵となるのは、情報プロセスにおいて認識のショートカットとして考えられるステレオタイプの機能です。
もう一度オーケストラについて話をさせてください。そのオーケストラが2人か3人の枠に対して、100人のミュージシャンをオーディションすると想像してみてください。
これはメジャーなオーケストラでは珍しいことではありません。もしみなさんがその審査員だったら、沢山の情報を処理しないといけないですよね。100人がパフォーマンスをしますから。
その情報をそのまま保たなければいけません。そんな文脈では、当然のことながらすべての情報処理を手助けしてくれるショートカットを探してしまいます。
これは悪いことではありません。というのも、忙しい現代の情報処理の過程で、ショートカットのようなものなしに仕事を終えられる人などいないからです。
しかし残念ながら、ジェンダーやその他のカテゴリの人々に対するステレオタイプは、そのようなショートカットとして機能してしまい、それが機能すると、望まざる結果が生み出されてしまうのです。
では、これはどのように機能するのでしょうか?
このスライドは、ステレオタイプの研究30年分に値するまとめです。だからさっといきますね。30年ですから。
このステレオタイプに関する研究が示しているのは、我々は即座に、100分の1秒の間に、接するいかなる人も性別によってカテゴライズしてしまうということです。
その人が男性か女性かということに注意を払うということですね。それを一瞬の間にするんです。せずにはいられないんです。
アメリカでは人種に対してもこのようなカテゴライズが行なわれます。ですからジェンダーについてこれからお話することは、アメリカの人種に対しても当てはまります。
他の国では、おそらく他に即座にカテゴライズしてしまう物事があるはずですが、すべての社会で性別によるカテゴライズは共通しています。
なぜこれが重要なのでしょうか? 一旦ある人や物事をカテゴライズしてしまうと、無意識的にそれらがそのカテゴリらしくあることを期待してしまうんです。
30カ国を越えるデータを集めた研究が示しているのは、ある人を男性としてカテゴライズしたとき、より早くリーダーシップと結びつけてしまうということです。
リーダーシップと関連するすべての言葉を、無意識的に結びつけてしまうんです。一方女性の場合は、リーダーシップとの結びつきは緩やかです。しかし、サポーターやフォロワー、コントリビューターとの結びつきは早いのです。
どういうことかというと、我々は男性にはリーダーらしく振る舞うことを求めるということです。心理学的にはagenticと呼ばれます。
アクティブに行動し、物事を完結させる能力があり、決断力があるといったリーダーの振る舞いです。
一方女性には、温和さ、協調性、親切で他人を気遣うといった特性が求められます。このような協力的な人間性を期待してしまうんですね。独占的でアサーティブな女性なんて、明らかに求められていないわけです。
繰り返しになりますが、男性には無意識レベルでテクノロジーなどの男性的な仕事が得意であることを求めます。女性には女性的な仕事が得意であることを求めます。
我々の意識を生み出すこれらのステレオタイプ的な期待が重要なんです。なぜなら、これが人のパフォーマンスを審査するときの枠組みを形作るからです。
男性か女性かによって、まったく同じパフォーマンスでも少し違って見えるのです。これはオーケストラのケースからわかりましたね。
ここから起きる問題は、いつ我々が仕事の世界について考えているのか、どのようにリーダーシップを進化させることが出来るかといった問題です。これらの迅速な結びつけは職場における人の評価に影響を与えるんです。
どんな人を雇うか、誰を昇進させるか、誰をプロジェクト担当にするか。このような機会に影響を及ぼしてくるのです。また、人々の持つ影響力の大きさにも変化を与えます。
ある人が提案をしたとき、それが良いアイデアに思えるか、投資する価値があるように思えるかということです。
これらのステレオタイプが働く数種類の方法について、その例、重要なまとめまで本日お話したいと思います。どうやってこれらの影響をブロックすることができるのか、ということですね。
1つ目に、ステレオタイプは、人を判断する時の基準に影響します。ステレオタイプは、評価対象が男性か女性かによって判断基準を少し変化させることがわかっています。
または人種、白人か有色人種かによっても変化します。なぜそうなるかを、ジェンダーを一例として考えてみましょう。
女性が良いパフォーマンスを出したとき、それが男性的な分野だった場合、我々が即座に行なう関連付けとは逆に働くことになります。
そこでやりがちなのが、彼女のパフォーマンスを徹底的に調べる(extra scrutiny)ということです。たとえ彼女に畏敬の念を抱いていたとしても、そうしてしまうんです。
私はよくメアリー・バーラについてお話してきました。ジェネラル・モータースのCEOで、スタンフォードの卒業生です。ジェネラル・モータースが新しいCEOを発表したら、それは女性でした。
みなさんの場合はわかりませんが、私は驚きました。自動車業界ですからね。誰がこんなことを予想できたでしょうか。
気づいたら私は徹底的にその記事を読み込んでいました。どうやって彼女はそこまでたどり着いたのかと。もしジェネラル・モータースが発表した新しいCEOが男性だったら、ページを閉じて別のものを読んでいたでしょう。それは私にとっては目新しいニュースではないからです。
しかしこの余分な調査(extra scrutiny)は、ある状況下ではバイアスにつながることになるのです。
これに関する例をいくつかお見せしましょう。まずは心理学の例からです。
この実験では、心理学で博士号を取ったばかりの男性と女性、それぞれの履歴書を作成しました。履歴書には教師としての経験などの情報が載っています。
これをアメリカのすべての心理学部に送り、評価してくれと頼みました。重要なのは、この人物があなたの学部でテニュアトラック(終身雇用の教職員)のポジションに値するかどうか考えてくださいと依頼した点です。
半分は男性の履歴書を受け取りました。もう半分の心理学部は、女性の名前になっている点以外はまったく同じ履歴書を評価しました。
これはジェンダーの問題を見るにはとても良い方法ですよね。履歴書は同じで、違うのは名前だけです。ここでわかった事実も、なかなか衝撃的でした。
男性名の履歴書を受け取った人たちの79パーセントが「雇用に値する」とした一方、女性名の方はたったの49パーセントでした。
心配している方もいらっしゃるかもしれませんが、評価者が男性か女性かという点は問題ではありません。どちらにも同程度のバイアスが見られたからです。
これはこういった研究ではよく見られることで、時折がっかりさせられます。女性には男性よりも良い評価者であってほしいですからね。問題は、我々に共通していて、無意識的に判断に影響を与えるステレオタイプがあるということです。
この研究の2段階目では、より経験があるということ以外は同じ履歴書で実験を行ないました。リーダーシップが求められる人材についてお話していきます。
より経験豊富な候補者でわかったのは、女性の評価フォームには男性の4倍疑わしい評価のコメントが書かれるということです。たとえば「彼女がこれらの能力があるという証拠が必要だ」などです。
ここでも余分な調査(extra scrutiny)が起きているんですね。「教育の手腕を見ることなしに、このような判断をすることは不可能だ」というコメントもありました。
教授として雇う前に教育の手腕を見たいというのは、とても正統な理由ですよね。私もそう思います。しかしその基準は、男性と比べると女性の方が厳しくなるのです。
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