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新卒・若手を登用する抜てき人事の成果

事業創出・グローバル展開の罠 #4/5

IVS 2015 Spring Miyazaki
に開催

2015年6月12日に開催されたIVS 2015 Springの本セッションに、グリー・青柳直樹氏、サイバーエージェント・宮﨑聡氏、ネクスト・井上高志氏が登壇。モデレーターを務める立命館大学准教授・琴坂将広氏の進行で「事業創出・グローバル展開の罠」をテーマにディスカッションをしました。本パートでは、組織の鍵となる人材の育成や社員のモチベーションを保つ方法について、グリーとサイバーエージェントで行っているチーム作りや新卒・若手社員にプロジェクトを任せる抜てき人事の仕組みを紹介しました。

若手に失敗から学ばせる抜てき人事

琴坂将広氏(以下、琴坂):確かに、チームというか人材ってやっぱり重要だと思うんですね。事業創出においてもグローバル展開においても、最後はこれがカギになると思うんですがそれをどう……。「買ってくる」かもしれないし、「育てる」かもしれないし、「辞めさせない」かもしれないし、「採用する」かもしれないですけど、どういった努力をされてるんでしょうか?

もちろん、会社として組織の仕組みがあると思うんですけど、それ以外に人をattractするとかmotivateするとか、そこらへんの努力、工夫というか。もしくは失敗とか。

宮﨑聡氏(以下、宮﨑):事業責任者ですか?

琴坂:そうですね。

宮﨑:それはインセンティブとかそういうこと……?

琴坂:インセンティブでもいいですし、もしかしたら泣き落としかもしれないですし、飲み会かもしれないですし、情かもしれないですし。

宮﨑:事業責任者をやる気にさせる?

琴坂:やる気にさせる、採用する、育てる。

宮﨑:わりとうちは、事業責任者を新卒に任せるとか中途に任せるとかそういう視点では決めていないです。結果として、どうしても新卒出身者のほうが多いんですけど。基本的なスタンスは、優秀で今の役割で大きな成果を出していて「事業やりたい」という人に、基本的にはワンチャン提供してみるというのを、意識的にやるようにしています。

今はネット業界もわりと収斂、成熟してきてるので、その中で若手が企業を立ち上げてうまくいく確率って減ってるような気もするんですけど、そこは意識的に「できるだけ早く経験を積んで2巡目でもいいから当てられる人材に育てる」という視点で抜てき人事はやめないようにしています。

琴坂:失敗から学ばせる。

宮﨑:そういうのがやっぱり大きいと思います。もともとそういうふうにしてきてましたし、そういう文化、カルチャーを作ってるので、そこはやめずにむしろ押し出していこうという意識でやっています。

戦力を分散させずに勝たせるチーム作り

青柳直樹氏(以下、青柳):motivateするとき、特に新規事業とか海外事業についてのモチベーションの源泉は、良質なチャレンジがどれくらい大きいかというところに尽きるなと思っているし、それにattractされない人はあまり向いていない。

うちの会社の場合は、その人たちをmotivateし続けることについては、撤退みたいな厳しい判断のときを除いてあまり問題を感じたことはありません。

ただ、モチベーションが高いことを前提としながらちゃんとteam upさせてやるというのは重要だなと思いました。アメリカでは買収も使えたし、一緒にいた同僚……今取締役になってる荒木(英士)とかもいたんですけど、自分と明らかに強みが違う人がチームに何人かいた。成功のためのピースといったらアレですけど、経営チームもそうだしミドルマネージメントも揃っていた。

それに対して、数が増えてくるとどうしてもマネージメントキャパシティの限界というのがあって。例えば新卒で抜てきした若手経営者のところに、そういう人を立ててちゃんとサポートをやってやろうという大人プレイができる人、エゴが大きくないけど頑張ってくれる中堅みたいな人を配した場合とそうでない場合で、結構結果が変わったなというのを見ました。

ある程度戦力を分散させずにちゃんと勝たせる。その上で、その中の一部のメンバーはまた違うところでチャレンジするし。そういう、ある程度最低限の環境、チームを作ってあげるところまでは、事業責任者たちじゃなくてマネージメントの仕事だなと。

機会を提議してチームを社内から異動で呼んでくるみたいなこととか、各部門の人といろいろ調整するとか、新卒の子とかだと事業責任者でもできませんから(笑)。

そういったところをやってあげるのはマネージメントの仕事で、その先はうまくいけば基本的にその人たちの手柄だし、うまくいかなかったら俺らの環境(づくり)が悪かったなと思ってます。

やる気のある社員をピックアップする仕組み

琴坂:コツとかあるのでしょうか? こういうやり方、方法論とか。みなさんご自身の経験の中で、人を発見してチームを作るときに「ここを見てる」とか「これがキー」とか、「こうやって選ぶと失敗」「こういうチームは失敗、こうやったらうまくいく」みたいなエッセンスはありますか。

井上高志氏(以下、井上)青柳さんが言ったとおりで、たぶん自分の意志があることがすごく大事だと思います。我々も「ジギョつく」みたいに事業提案制度があって年間100件くらい上がってくるんですけど、それは自分の手挙げ制ですよね。手を挙げて「これをやりたい」と言わせる環境を作ること。

中には「会社としてここの事業領域をやるべきだ」と役員たちが決める領域があって、その場合には「こういうのやるけど手を挙げろ」っていう公募をする。ここも手挙げ制で応募させるんですね。

あとは、その周りのサポートチーム、フォローアップチームみたいなのがいて、その人1人だけではできない部分をサポートするチームがついていく。それで、たくさん作っていこうとすると。

最近僕が意識してやろうとしているのは、事業の最初の頃は「ほめて、おだてて、その気にさせる」(笑)。「お前すげえな、天才だな」とか「よく気づいたねこんなところ」とか、どんどんほめておだてて「俺ってすごくイケてる」みたいに洗脳していくみたいな。

琴坂:大学生も同じです(笑)。

井上:子育てとかも一緒ですよね。そういうのは今ちょっと実践してます。

宮﨑:強い意志は絶対に必要だと思います。プラス、チームをつくるときは強みがかぶらないようにしたほうが良いと思います。

強い意志という部分だと、うちだと人事の新しい制度でGEPPO(ゲッポー)というのがあります。社員に毎月の月初3営業日くらいに人事からメールが飛んできて、フォーム(に入力する形式)なんですけど。

「先月にあなたがやったこと」とか「それを達成したかしてないか」「その天気はどうか」、要は自分のコンディションが晴れなのか曇りなのか雨なのか、みたいなのを可視化できるように自分で書かせているものです

それだけだとみんな飽きちゃうので、そこに例えば「中長期で自分がチャレンジしたいことは何ですか?」とか強い意思を引き出すような質問を定期的に聞くようにしてるんです。たまに「将来チャレンジしたい分野はありますか? あれば具体的に教えてください」ってフリーコメントにしているんですけど、わりとしっかり回答してくれます

そこに強い意思を書いてくる人たちを人事でピックアップして役員が事業分野で人選したいときの「おすすめリスト」にしてもらってるんですね。

例えば「教育系の新規事業をやるんだけど誰かいる?」といったときに、普通の会社だと「あいつ教育やりたいって言ってました」みたいな声が大きい人だけピックアップされるんですけど、意外に声はでかくないんだけど思ってることは大きい熱量の高い人っているじゃないですか。そういう人も漏れないように可視化するってことは意識的にやってたりします。

青柳:確かに声を拾う仕組みって大事で、結構私は面談マニアで過去1年で400人くらいは面談してるんです(笑)。ランチとかで1000人くらいに会ってると思うんですけどね。そういったところで「僕は中国やりたいんですよ」と言ってた子に、ぜんぜん違う広告の事業をやってくれと異動させたことがあるんですね。

それが去年の夏くらいだったんですけど、今中国の事業が小さいけれどあるというときに、自分もしくはHR部門で引っかかりまして「あいつはどうやらこの半年すごく頑張ったらしいな」という形で引き上げてあげる。そうすると、非常にうまく頑張ってくれるということがあって。それをみんな見ているので、「ちゃんと自分の思いが伝わるな」と。

一度見送った案でもブラッシュアップで実を結ぶ

青柳:これは宮﨑さんに聞きたかったんですけど、うちの会社も2014年からゲーム以外の新規事業の創出をやっていて、もう4回くらい新規事業の提案会議をしてるんです。最初の1回目は「まず役員でやろう」ということでやりました。

2回目、3回目、4回目とやっていて、2回目で出たリフォームの事業がいいということで(立ち上げて)これが伸びていて、最近さらに買収もして、月で1億円くらいの売上のビジネスになってます。

もう1個が「Lespas」というサブスクリプション型のフィットネスで、(月額)9800円払ったらいろんなジムに行き放題というサービスを立ち上げました。両方とも社員が出してきたアイデアで、先ほどの(サイバーエージェントの)「ジギョつくから出てきたアイデアは意外と成功確率が低い」みたいなところが気になっていまして。

我々としては、出てきた中で「これはいけるかな」と思ったものを、もちろん結構押し返して「これはダメ、これはダメ……」って何回もチャレンジさせていったら良い事業が出てきた。その事業に今注力しようと思ってるんです。

ジギョつくの仕組みは何が限界だったのでしょうか。ぜひ、答えられる範囲でお願いします。

宮﨑:ジギョつくで決まったものを「そのまま任せてみたら」規模が小さく終わっちゃうことが多いというのが結論です。

ジギョつくで通ったけど見送ったものをブラッシュアップして、後日、あした会議に持っていって再検討することもあるんですよ。ジギョつくのときは「そのままじゃできないね」って言って見送りになるんですけど、どうしてもやりたいっていう意志が強いと巻き込んで動いていくじゃないですか。

「どうしてもやりたいんだったら考えてみようか」となって詰めたものをあした会議で提案してみようとなって、ちょっと違うんですけど同じ分野、例えば「動画の○○の分野の新規事業をやります」となったときに、責任者はジギョつくで入賞経験のあって実務でも成果を出している彼、彼女でいきますというケースもあります。

そういうふうに事業案を磨いて進化させると成功確率が上がるかなと思ってまして、そういうやり方で実現して当てられていれば、ジギョつく自体が成功しなくても問題ないと思います。

もちろん、ジギョつくはいろんな形をトライしてきて、今までの形がベストだとは思ってないところがあるので、現在はNABRAという新規事業ワーキンググループを試しています。新規事業の創出は手を変え品を変え、何かをやり続けたほうがいいことは確かだと思います。

というのも、そういう枠組みがなかった場合、声が大きい人、行動力がある人だけが新規事業案を役員に直談判で持ってきたりするじゃないですか。「ちょっと時間ください」って。

でも、すべての優秀な人材にチャンスを提供するという意味ではジギョつくやNABRAのような枠組みがあることによって「そういうチャンスがあるんだったら一回出してみようかな」と思う人材もいるので、試行錯誤しながらスクラップアンドビルドすることが重要です。

やり方はいろいろあるけれども、ベストは会社の風土や時流によって常に変わって良いかなと思います。もちろん、他に良いやり方をやってる会社があれば、そこから学びたい。

国によるモチベーション管理の違い

琴坂:先ほどチームの合う(・合わない)とか意見をとるみたいなお話があったんですけど、もう1回グローバルの話と関連させてみると、国内で培ったやり方、チームマネージメント、人のモチベーション管理というのは、海外でも通用しますか? それとも海外では別のやり方があるのでしょうか

もちろん、海外というと広すぎですからアメリカを中心に考えてとか、もしくは御社のやられているところでも大丈夫なんですけど。ご自身でやられた中で、日本でやってるチームマネージメントとの違いというか。

井上:そのままでは通用してない……という現在進行形みたいな感じですね(笑)。

琴坂:現在進行形(笑)。なぜでしょうか?

井上:もともとの労働観みたいなもの、ベースが多少違ったりするので。例えばインドネシアだと欧米に近いところもあって、お給料でどんどん引き抜かれていったりする。中国も一緒ですね。日本人だと「ビジョンがこっちだから、みんなで苦しいけど頑張ろうよ!」みたいに一致団結させやすいんですけど。

あと、例えばサイバーさんがやられてるようないろんなルールとか、僕らも相当いろんな施策があるんですけど、そういうのを入れ込もうとすると「窮屈。やだ!」っていう文化もあったりするので。

相手の顔色を見ながら「これはどう?」ってちょっとずつメニュー出しをしていって、「それはいいね!」みたいに彼らに選択権を与えるという形にしないと。「これ良いからやろうよ」って無理強いして持っていこうとすると、たぶんアレルギーが出るなというのが今のところ(の状況)ですね。

琴坂:彼らに選択させる。

井上:そうですね。メニューはあって、「これは俺たちは良かったよ。でも取るか取らないかは君たち次第」みたいな感じにしてますね。

琴坂:どうですか、青柳さん。

青柳:共通の部分と、明確に違う(部分がある)。労働観とか組織観みたいなものは違うのかなと思います。私も多少程度の違いがあると思っているのは、1on1とか飲み文化みたいなところと、根回し文化かクリアなメッセージ文化かみたいなところがあって。

私は去年から日本によりベースを戻してマネージメントしてるんですが、日本のほうが「一人ひとりとちゃんと握っていく」みたいなことを、より大事にする部分があります。ただ、我々は日本でも1000人以上の仲間がいてやっているので、会社経営は握りの集合体では速いスピードでできない。

基本的に、1ヵ月に1回僕が出てスピーチする場で何をクリアに伝えるか。何がうまくいかなかったかをいかにさらけ出して、マネージメントとの距離(を縮める)とかシンクロ率を高めるかみたいなところ……これはアメリカではよりそっち(クリアにメッセージを伝えること)なので、そうしないと1on1でいくら話してもしょうがない。アメリカではそっちがメイン、日本ではよりウェットにというか。両方必要だなと。

逆に今、日本ではそういうウェットな部分だけじゃなくてトランスペアレンシーというんですかね。透明性とかそういった部分をより大切にした経営を導入していて。ここはどっちの重みが大きいかということではないんですけども、普遍的だと思っています。

社員がリーダーに求めるもの

井上さんがおっしゃったところで、(社員が)リーダーに求めるのはアメリカのほうがより「決めてくれ」って感じですね。「僕らは、君ら人事の裁量で簡単にクビにもなるし、基本的にはリーダーに言われたことを進行する」っていう。

シリコンバレーであっても、軍隊的な組織思想というものを多くの人が持っている。「Business is business」という感じなので、基本的には決めないリーダーに対してはみんなフラストレーションを持つ。

日本の場合は「一緒にこれをやろう」ということを決めて、「この山に登ることは決めたけど、どうやって登るかは君に任せたよ」というのを望む人、「ここから攻めろ!」と言われないことを望む人が多いかなと思います。

宮﨑:僕はまだ体得してる最中なんで(笑)。

琴坂:その過程で得たもの、失敗したことを。

宮﨑:何ですかね? とにかくどういう方向で事業を伸ばしていくかということを、「今後はこの戦略で伸ばす」「これをやる、みんなにはここを協力してほしい」というふうにちゃんと言い切って伝達する機会を設けることが重要だと感じています。

そして、その頻度は多めであると良いでしょうね。例えばクォーターに1回とかじゃなくて、必要に応じてすぐに時間をとることが大事だと思います。プラス、幹部とはしっかりと1on1で握っていくようなことも必要です。

半期の目標設定の進捗を確認する場合、「今お互いどういう状況にいて、このままだと達成できるのか未達成で終わるのか、未達成の場合、超えるべき壁は何か」という話ができてると、昇給面談でも納得感がありますよね。

アメリカ人は日本人よりも給与交渉してくる場合もあるので、そのときに「1on1のときに話してたよね」みたいなベースがあると楽です。実際、私自身がそういう話ができて現地の部下から信頼されるようになったのは最後のほうでしたね。

琴坂:なるほど。井上さん、今の話を聞いてどう思われますか?

井上:変わらないものもあるなというのがベースにあって。「僕らが大事にしている理念とかビジョンとかバリューはこうなんだよ」というのはちゃんと握りたいですし。たぶん世界共通で、1on1やったときに「君にとっての幸せは何?」って聞いたら喜んでいろいろしゃべるんですよね。誰でも、何人でも。

「僕は家族だ」「自分の成長だ」「こんなお店を持ちたい」とか出てくるんですけど、「それがここでできるようになればいいね」と話すことは誰とでもできるので、「君にとっての幸せは何?」というのを引き出して、こっちがちゃんと理解するのは大事だなと思いますね。マネージメントのスタイルは、押しつけて過去に失敗してるケースもあるので(笑)、そこは様子を見ながらですけど。

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