WWD2年目記者が就職面接を疑似体験

村上要氏(以下、村上):じゃあスミタさん、みなさんに向かって自己紹介をお願いします。

スミタタカヒロ氏(以下、スミタ):東京大学の医学部から参りました、スミタタカヒロと申します。

村上:むかつくなぁと思うけど、本当なんですよ(笑)。東京大学の医学部を卒業して、なぜかうちの会社に入ってしまったというちょっと変わりものです(笑)。よろしくお願いします。では、さっそくスミタさん席についてください。

スミタ:失礼いたします。

村上:ここは長谷部さんメインにお伺いしていきたいと思います。長谷部さん、御社が面接の時によく学生に投げかける質問をスミタに向かって2つほどお願いできますでしょうか。ちゃんと1つ1つに対してスミタが答えていきますので、よろしくお願いいたします。

長谷部彰氏(以下、長谷部):今、自己紹介で東京大学にいらっしゃったということで非常に気になったので質問させていただきたいと思います。いつもしているんですが、スミタさんは入社された場合、当社でまずなにをやりたくて、10年後はなにをしたいかということを教えていただけますか。

スミタ:非常に興味があるのが、一口にアパレル企業といってもセレクトショップであったり、百貨店ブランドであったり、路面店、インショップなどいろんな業態があると思います。それぞれがどういったビジネスをやっているか、どういう強みがあるかということをきちんと学んでみたいと思っています。それを踏まえて10年後、いろんな経験をつけてから新業態であったり、新しいブランドの立ち上げだったりに携われればと思っています。

長谷部:なるほど。わかりました。

村上:もう1つなにか。

長谷部:そしたら、医学部ということで逆に気になりますので。今一番はまっていることはなんでしょうか。

スミタ:まったく医学部とは関係ないのですが、本が好きで、昔から本屋めぐりが好きで、そのなかでも最近は小さな本屋を探すことにはまっております。駅前の本屋さんには毎日行くのですが、休みの日に1日使って例えば神楽坂とか下北沢とか、そういったところの本屋さんを探しています。小さい本屋さんだと本の数も少ないので、その店がどういうセレクトで本を選んでいるのかに注目しつつ、ついつい本を買ってしまいます。

長谷部:ご自身でいろいろ調べて本屋さんをまわっているということですかね。

スミタ:もちろん調べることもあるんですが、実際に町をめぐっていると意外と古本屋さんがあるなということを最近すごく思います。実際に本屋さんに入ってみても、なにか欲しい本があるというわけではなく、お店の方にお話を聞いて「おもしろいから買ってみよう」という流れで買ってしまうことが一番多いです。

長谷部:わかりました。ありがとうございます。

どんなビジョンを持っているのか

村上:はい。ありがとうございます。長谷部さん、今の2つの質問なんですけれども、それぞれ学生のどんなところを見るために質問をスミタに投げかけたのか教えていただけますか?

長谷部:最初の入社した時と、10年後というのは、学生さんが弊社に入社した時にどんなビジョンをお持ちただいているのかということを見させていただきます。

やはり将来なにを目的にしていて、それに対してまずどんな目標を持っているのかということを確認させていただかないと。目的・目標がないまま入社いただくと、なかなか仕事に対して前向きになれなかったり、目標を見失って投げやりになってしまう方もいらっしゃるので、そこは注意深く確認するようにはしています。

村上:なるほど。御社にとって整合性というか、正しいビジョンじゃなくても全然いいんですかね。

長谷部:はい。やはり本人がなにをしたいかが明確になっていることが大事かなと思います。

村上:なるほど。2つ目のはまっていることとは。

長谷部:これはやはり本人の興味関心がどういうところに向いているかということを、単純に私たちどもとしても質問したいということと、興味があることに対してどこまで深掘りしていくかということと、どれだけ探究心をもって調べたりするかということ。これは実際に仕事をする時に非常に連動してきます。そこを確認させていただいています。

村上:なるほど。単純に興味を知りたいというわけではなくて、本人がどのくらい突き詰めているかと、そういう姿勢も見抜くための質問だったわけですね。ありがとうございます。

田中さん、今のやり取りを見ていて受験生スミタはいかがだったでしょうか。

田中春菜氏(以下、田中):スミタさん、やはりすごく優等生的に答えていてすごいなと聞きいってしまったんですけど(笑)。本当にいいなと思ったのが10年後です。なかなかイメージがつかないかなと思っていて、みなさんも就活の準備の時には5年後、10年後というビジョンを描かれると思うんですけれども、なかなかスラスラ答えることって難しいと思うんですね。

スミタさんはすごく素敵に答えていましたけれども、みなさんこういう予想していなかった質問とか、ちょっと答えにくいなという質問が出た時でも、答えようとする意欲だったりとか、考えようとする意欲ってすごく大事だなと思うんです。なので、そこがスミタさんはすごくできていらっしゃるけれども、みなさんの場合は留意していただければと思いました。

それと、本屋さんの話のところもすごくキャラクターが見えていいなと思っていて、ファッションだけじゃない引き出しだったりとか、人と関わろうとする。本屋さんとお話をするのが楽しいとか、コミュニケーション好きというのはファッション業界においても重要なことなんじゃないかなと思うので、とても好感が持てました。

面接官にはどんな質問をすると好印象?

村上:よかったです。ありがとうございます。それでは、スミタは2つの企業からも印象がよかったようです。面接って受験生のことを一方的に聞くだけではなくて、受験生にとっても企業を知るいいチャンスなのかなと思っていまして、今度は学生のほうからも質問を受け付けてみたいなと思っています。

お2人の企業もやっぱり面接の時なんかには学生から質問を受け付けることがあるかと思います。 今度は田中さんから聞いてみようかな。学生からどんなことを聞いてほしいだとか、逆に学生側からどんなことを聞くべきなのかというのがあったら教えてください。

田中:どんなことを聞くべきか、聞かなければいけないのかというノウハウみたいなことは、正直弊社の場合は全然気にしていなくて、本当に純粋に、自分がこの企業で働くとしたらどこが気になるのかとか、本当に気になったこと、興味を持ったことを聞いてもらいたいなと思っています。

面接は、学校のテストだったりとは全然違っていて、お互いのマッチングとかフィッティングの場だと思うんですね。なので、実際に興味を持っているのかなというのも見ているんですよ。「何か質問はありますか?」とこちらから投げかけて、本当に質問がなければいいかもしれないんですけれども、やっぱり「質問があります」と言ってくださったほうが興味あるんだなとか、前のめり感だとか、意欲があるのを感じて、非常に好感が持てます。

村上:なるほど。わかりました。長谷部さん、いかがでしょうか。

長谷部:そうですね。まさに田中さんがおっしゃった通りだと思います。それプラス、聞いてほしい質問というのは特にないんですけれど、やはり今学生さんが聞いておいたほうがいいのかなと思うのは、たとえばうちもけっこうあるんですが、人事担当の人に質問ですが「この業界の仕事としてなにが楽しいですか」ということ。

結局そこの裏にあるのは、人事の面接官がちゃんと業界、会社に誇りを持って働いているかというところであって、やっぱり人事の人間がイキイキと自信を持って答えるということが、極めて信用できるのかなと思います。

村上:なるほど。じゃあ学生のみんなはそういう質問を通して、「企業を見抜けばいい!」くらいの感じなんですね(笑)。ありがとうございます。ではスミタさん、今の話を踏まえて田中さんになにか1つ質問をしてもらえますでしょうか。

学生の間にやっておくべきことは

スミタ:はい。非常に気になるのは、これから社会人になるにあたって社会人の方の意見もすごく聞いておきたいのですが、今、学生の間にやっておいたほうがいいことがあれば教えていただけますか?

村上:よく聞かれる質問だとは思いますが、田中さんそれに対して何かありますか?

田中:はい。本音をいうと「ものすごく思いっきり遊んでおいてください」ということなんですけれども(笑)、もう少し真面目にお答えすると、「アパレルに限らずいろんな会社のサービスを受けておいてください」ということをお伝えしています。学生の間は社会人ではないので、本当に純粋な消費者の目でいろいろなサービスを受けることができると思うんです。

たとえばそれはアパレルだけじゃなくてホテルだったりとか、あとは飲食店だったり。飲食店にしても居酒屋だったりカフェだったり、ちょっと高級なお店だったりというところで、自分がいいなと感じた接客サービスだったりコミュニケーションの取り方だったり、そういったものをうんと貯蓄、貯めておいていただいて、それを自社に入ってからいろいろ提案できるように、引き出せるようにいっぱい詰め込んでおいていただきたいなと思っています。

村上:ありがとうございます。長谷部さん、今の質問はいかがですか?

長谷部:まさにこれも田中さんがおっしゃったとおりで、私もいろんなことを経験してほしいなと思います。よく言うのが、基本的に学生さんは同じくらいの年の方と話していて、バイト先には上の方がいるかもしれませんが、なかなか年配の方とお話する機会がないと思うんですね。

実際に入社されますと、たとえば20代で入られても役職の方は40代、50代、今は60代の方もいるなかで、いろんな年代の方と会話をしていただく、ということが出てくる。たとえば敬語が突然いるとかも含めて、その人の物の考え方をなんとなく知るとか、そういうことをやっておくと、入社してから社内のいろんな年代層に対して違和感なく。

村上:なるほど。社内コミュニケーションも円滑になるし、ましてやこれからいろいろご提案していくお客様は必ずしもスミタと同年代というわけではないから、そういう人たちの気持ちを理解する上でもいろんな年代の人とのコミュニケーションをとる必要があるという感じですね。ありがとうございました。

ということでこういう感じで面接が進んでいくと、きっと会社は受験生のことを、受験生になるみなさんは会社のことを理解しあえるのではないかなと思っているので、今みたいな感じで頭に思い描きながら、ぜひ面接に臨む練習をしてみていただければと思います。スミタさん、ありがとうございました。では、最後に挨拶、そして退室をお願いいたします。

スミタ:失礼いたします。ありがとうございました。

村上:ちなみに向さんは、親心として今の面接をどのようにご覧になったのでしょうか(笑)。

向千鶴氏(以下、向井):親心のような気持ちになりました(笑)。そうですね。よくやったんじゃないかなと思います。考えていることを話しながら深めようとしているところ。田中さん、長谷部さんがおっしゃっていたことと近いんですけど、「これを言えばいいや」ではなく、悩みながらも話そうとしているというところは、すごく感じられて共感を覚えるので、それはどんな質問に対しても一緒ですけど、みなさんにも期待するところです。