大阪市長退任にあたっての感想

司会:それでは質問をお受けします。ではまず、幹事社の毎日新聞さん。

記者:毎日新聞のヒラカワです。幹事社として2点質問します。市長退任にあたっての率直なご感想と市政運営、4年間を託された市民へのメッセージをお願いします。

橋下:まず市民のみなさんには住民投票をはじめ、その他の選挙を通じて非常に重要な判断を下していただいたことには本当に感謝いたしますし、僕からの問題提起というのは市民のみなさんに負担を負ってもらう、ある意味我慢をしてもらうところもたくさんありました。

そういうところについてご負担、ご迷惑、ご苦労をおかけしたというところは申し訳ないと思っていますが、それでも市民や府民のみなさんの多くが、僕が考えている大阪の将来像といいますか、そういうところに向かってみんなで「橋下、やっていることは問題があるかわからないけれど、それでも前に向かって進んでいこうよ」という形で支えてくださったことに非常に感謝していますね。

あとは文句も言わせてもらってもいいですか? 読売の記事もそうですけど、本当になんでメディアというのは統計学の基礎も知らないのかなと思うんですが。

僕の任期中の数字の変化を出してもらうのはいいんですよ。僕がやったことが大阪をバラ色に変えたなんて思いませんよ。でも統計学をやるときには前の府政、市政との比較をやってもらわないと。

これは大阪がリーマンショック後、どん底のところで僕が引き継いで、それに対して「横ばいだから大したことない」「企業の流出もじゃっかん止まったくらいだ」と、そんなことで評価をされるわけですよ。僕がいきなりV字回復をさせたというわけではないけれども、前の状況と比較して欲しいと思いますよ。

はっきり言ってこ8年間は急に大阪がどんどん伸ばしたというわけではないですよ。以前どん底まで下がってた、それこそ直角まで落ちてきたいろんな大阪の数字をなんとか下げ止めたというところがある意味僕の役割であって、次の松井、吉村体制は僕がなんとか下げ止めたんで、次は上に向かって進んでいってくださいよというところですから。

僕が任期中にやったところで評価するのはいいんですが、もう少し政治の評価というのはロングスパンで。

僕は悪い部分は悪いと言ってもらっていいんだけど、以前と今を比較してもらってどうなんだというところはもっとちゃんと検証してもらいたいなと思いますけど。

感想でしたっけ? 感想なんて言ってもしょうがないんでね。市民のみなさんには本当に感謝しています。

8年間の記者クラブとの戦い

記者:ABCのキハラです。市長、長い間お疲れ様でした。

橋下:いえいえ。キハラさんも。8年のうち、間ちょっと抜けましたけどね。

記者:8年間、いろいろなものと戦ってこられたと思います。組織、団体、個人と戦ってこられたと思いますが一番手強かった相手は誰でしょうか。

橋下:キハラさん。

記者:それは光栄ですけども。

橋下:キハラさん。オクダさん。朝日新聞、毎日新聞みんな。メディア手強かったですども、みんな良かったですよ。みなさんは住民の代表なんでね。僕は全員と会話するわけにはいきませんから。僕はこれからも繰り返し、メディア批判を機会があれば言っていきたいと思いますけど。

政治家なんて現代社会で、地方部だったら各有権者とコミュニケーションをとれますが、都市部においては無理な話で、議会とメディアというのが有権者の代表で。

そういう意味では大阪府政記者クラブ、市政記者クラブ、勉強していない記者も中にはいましたけど、でもみんなしっかり勉強されて、いい指摘も受けて、その場で府政・市政を変えたこともあるし、議論を通じて自分の考えを改めなきゃいけないなと思うこともありました。それは何が手強かったかといえば、府政記者クラブ、市政記者クラブが手強かったですね。

改革をやれば反発が起こるのは当たり前

記者:メディア以外ではいかがでしょうか?

橋下:いやぁ、あとはもう別に……何か喧嘩しているわけでもないんでね。

記者:敵を作りすぎたという気持ちはないでしょうか?

橋下:ないですよ! 行政の世界で改革をやろうと思えば反対する人は出てくるんですから。だってか改革なんていうのは、補助金を、お金の使い方を変えるってことですから。一番重要なのは予算の使い方を変えるってことですから。

今までもらっていた人にとっては、反対ってなるのは当たり前じゃないですか。敵を作りすぎたもなにも、改革をするとなれば反発がどんどん出てくるのは当たり前だと思いますよ。

今までは改革じゃなくて、予算が与えられたところはそのまま放置しておいて、高度成長時代は新しい財源を分配する政治だったんでね、だから朝日新聞とか毎日新聞が言うように、対話と協調の政治というのが成り立ったんですよ。

でも限られた財源の中で政治をやろうと思えば、必ずそこに反発が出てきて、絶対に認められない。この補助金の引き上げは認められないという、そういう主張は必ず出てくるんですから。これは敵でもなんでもなくて、これは改革をやるには当然生じうる事態だと思ってますから。僕は敵だとは思ってないし、コンチクショーとも思っていないですから。

府政記者クラブ、市政記者クラブの人はこうやって直に議論するんでね、記者クラブのほうが間違っていると思えばバッと言っていけるんだけど……一番はコメンテーターたちですね。僕はどう評価されてもいいんですよ。「大阪府政、大阪市政、ここが問題だ」「このやり方が間違ってる」ってそれはいいんですけど。

一番腹立つのは「何もやっていない無駄な8年間だった」って。「あんたのコメンテーター期間のほうが無駄だろ」っていうんですよ、本当に。無駄っていうのはこんなに失礼な話はないですよ。僕は間違っていたこともあるかもわからないけど、やってきたことは間違いないので。これを全部無駄だと言ったら、これは政治の全否定になりますよ。

そういうことを平気で言うコメンテーターをメディアが使い続けることについて、そこだけは腹立つなという思いもありますけど。あとは別に、感情的に何か思うところはないです。

8年間のテーマは「住民サービスの転換」

記者:朝日新聞のイノウエです。改めて8年間の府市政を振り返ってみて、ご自身の評価はいかがでしょうか?

橋下:いや、評価は自分でやることじゃないですから。これも読売新聞の検証も、アラを探そうと思うからああいう話になるのかなと思うんですけど、大阪府政、大阪市政が景気や雇用の第一次責任者なのかというところもしっかりと見て、本当に反対のための反対論になるなと思うんですけど、ふだん僕が国政的なことを発言すると、「自治体の長として違うじゃないか」とか「もっと住民の暮らしを見ろ」とか「地に足のついた政治や行政をやれ」って言うわけですよ。

それで検証を見てみたら、工場の誘致とか、企業の流出どうのこうのって……企業の流出なんていうのは、流出状況を見てもしょうがないわけですよ。だって新規に事業を起こされているなんてのは大阪にたくさんあるんですよ。

だから新規事業者数とか、そういうもののトータルの中で、大阪府内に入ってきた企業と出ていった企業というのもひとつの要素としてあるのに、企業が入ってきた、出ていったってそんなミクロなところだけとらえられても……それだったら大阪全体のGDPとか大阪全体の経済の状況と国の役割、地方の役割っていうところもしっかり分析してもらわないと。

それで「地に足のついた政治や行政をやれ」って言われるのは、大阪市長としての住民サービスのところでしょ? 今税収が増え続けているわけではないですから、やっぱり一番検証をやってもらいたかったのは、どういうサービスをやめて、新しいサービスにしたのかっていう転換の是非について僕は徹底的に検証してもらいたかったなと思います。

これはやっぱり、自分の考え方が100パーセント正しいとは思っていないのでね。読売新聞の検証は市長が全部できることではないし、国との役割もあるんだし、仮に僕が雇用を増やした、有効求人倍率を増やしたと。たぶん読売新聞はそれをけずっているんですよ。その数字は。

なぜかというと、それはアベノミクス効果だって思っていると思うんで。雇用とか有効求人倍率の数字はけずっておいて、工場の立地数とか企業の流出数だけ持ってきて、いったい知事と市長の仕事とどんだけ関わりがあるんだと。

やっぱり自治体の長の一番の仕事は住民サービスであって、限られた財源なわけですから。新規の事業、新規の事業というわけにはいかないわけですよ。僕の大阪府政、大阪市政のテーマは「住民サービスの転換」ですよ。これをずっと挑戦してきたわけです。

もちろん新規の財源で新規事業を増やしたものもありますけど、基本的には何かをけずって何かを増やしたということをやり続けてきたんで、その住民サービスの転換については、僕はこここそ自治体の長の検証として一番やらなきゃいけないところだと思うんですよ。

これからの政治行政に求められるのは、住民サービスの転換です。それを僕は8年間徹底してやってきたつもりです。評価については僕が何点って言えるところではないですけど、ここまで大規模に住民サービスの転換に挑戦した自治体はないと思います。

それはもう、高齢者のみなさんには申し訳ないけど、現役世代のほうにもうちょっと税の配分を増やさせてほしいと。それは、借金を増やして税の配分をするんじゃなくて、高齢者のみなさんの狙い撃ちじゃないけれども、過剰に出していた補助金を大阪に足りない教育と子育てに回したということの挑戦をやり続けてきた8年ですけどね。

一部で支持をされなかった選挙もありましたけど、多くの選挙では支持を受けたということは、国民のみなさんにきちっと説明をして、きちんとやれば納得してもられるんだなというのは、非常に自信を持った8年ですね。これ以上やれと言っても無理です。もう自分の持てる力は全部出し切ったという感じです。

だから「無駄な8年」とかほざくコメンテーターとか腹が立ってしょうがない。本当に失礼極まりないですね。

大阪都構想に未来はあるのか

記者:一方で昨日、議会の呼びかけとして「これからは修正・妥協というものをして、議会を進めていってほしい」と。それはやはりご自身がやってきたこととは違うところですか?

橋下:それはそうですよ。反発をくらうようなことはだいたい僕がやり尽くしたんで、役所の中でも反対が起こりそうな改革プランを全部まとめましたから。あとは議会のみなさんときちっと議論・協議をして、維新の会の考えが100パーセント正しいわけではないですから。そこは修正を繰り返しながらまとめていく段階だと思います。

記者:ご自身の在任中に協議して修正していくことは難しかったんでしょうか?

橋下:当たり前じゃないですか!! 今も副市長と話してますけど、20年くらいかかるようなことを数年で協議までやってまとめるなんてことは、できるわけないじゃないですか。どこまで朝日新聞は幻想集団なんですか。そんなのプロセス考えてくださいよ。

記者:結果的に、地下鉄の民営化ですとか、議会の反対もあって進まなかったりというのはこれも仕方がないと。

橋下:当たり前ですよ。改革、改革とやり続けてきた中で、そのステージは無理に決まっているじゃないですか。だいたい改革のプランを考えたときに、4年の任期じゃ全部は無理なんですから。

朝日や毎日やその他のメディアが言うように、話し合い、話し合いでやってたら他の改革も進みませんよ。それだったら進める部分はどんどん進めていって、残ったものは次に送っていくと。

記者:4年で無理ということでしたら、2期、3期ということは考えられなかったんでしょうか?

橋下:だから住民投票で僕は負けたわけじゃないですか。

記者:だけど再び都構想というのは掲げられていくわけですよね?

橋下:それは吉村さんと松井さんがやっていくわけですから。

記者:ご自身がやっていくという考えは?

橋下:もうこういうメディアとの付き合いはしんどいんで、いいです。

記者:都構想というものに未来というものはございませんか?

橋下:いや、次がしっかりやってくれたらいいと思いますよ。僕がやれるところまではやりましたんで。ここまでできたというのも、普通じゃできないところまでできたと思っていますからね。何を言われようと、「それならアンタはできますの?」っていうところですから。

もう住民投票までできたというところ、大阪都構想の協定書というのも一応できあがっているんでね。ここから反対している人たちと、話し合いをしながらまとめていくっていうのは、吉村新市長の真骨頂だと思いますよ。あの人は本当に、そういう政治家としての能力は天下一品ですから。これはもう吉村さんの領域といいますかね。

もちろん、吉村さんのだけの力ではなくて、他会派のみなさんもある程度そういう意識を持ってくれていると思いますけどね。

記者:最後の質問になりますけど、ここで退くことについて未練や悔いはありませんか。

橋下:え?

記者:未練や悔いはありませんか。

橋下:ないですよ。