全体最適と部分最適とは何か

中山陽平氏:今回はタイトルにもありますとおり、全体最適と部分最適ということについてお伝えできればと思います。これはITというかマーケティングの分野でも最近良く聞くワードだと思うんですね。

だいたいの場合が「部分最適ではなく全体最適を考えて全体としての正解に結びつくようなWEBマーケティングをしていきましょう」というような書き方じゃないかなと思います。

とはいえ全体最適と部分最適というのはあまり一般的な言葉ではないですし、具体的に何をどう考えればいいのかというのはわかりづらい部分かなと思いますので、その辺りについて「こういうふうに捉えればいいんだよ」ということをお伝えできればと思います。

まず全体最適と部分最適なんですけども、ワードとして流行る前からある言葉ではあるんですね。大きく2つの観点から語られることが多い言葉です。

1つは、元々こっちのほうが多かったと思うんですが、全体最適と部分最適を、組織とか人の観点から語る。たとえばある企業が利益を追求しているわけですけども、その中で全体のコストダウンを図るために「ここではこうしてね、あそこではこうしてね」というときに、ある部門では作業量が増えてしまう、工数が増えてしまう。でも全体として見たら工数が減るからやりましょう、と。

全体最適の観点でいえば、全体として改善しているわけですから、やりましょうと言うわけですけども、該当の部門の人が「いや、うちは工数が増えるから嫌だ」というふうに言ってしまう。

そういう場合に「部分最適で見るんじゃなくて、あなたの部門のことだけ見るんじゃなくて、全体を見て、全体最適を考えてやっていこうよ」みたいな。そういう観点で言われることが多かった言葉ですね。

セクショナリズムとかを廃する。あるいは自分だけじゃなくて全体、会社というところを離れて「三方良し」みたいな、社会に貢献しているかどうかなども含めて語っている方もいたかなと思います。

WebマーケターはWebのことだけ考えていてはいけない

マーケティングに関しては、そういうところよりも、どちらかというとWebに関しては、施策の視野の範囲というところで語られることが多いです。

ぶっちゃけて、一番根本的な部分で言えば、Webというものにいきなり焦点を当ててしまっていいのかと。ある企業のお手伝いをするときに、「Webマーケティングやりたいんです」と言われたからといって、「じゃあ、Webでこれだけのことができます」と考えてしまっていいのか。

そうではなくて、リアルのダイレクト・マーケティング、DMとかチラシとかタウン誌とかPRとか、お金が使える媒体であればマスメディアとか、それから口コミとか、Webとは関係ない全体までいったん視野に入れたうえで、「じゃあ、Webではどこまでやるのか」「もしかしたら、そもそもWebじゃなくて商品開発とかに結びつけたほうがいいんじゃないのか」とか、全体を大きく捉えてWebでやることを考えましょう、というようなことが多いと思います。

それが全体最適というものですね。

またWebに関しても、いきなり「じゃあホームページを作りましょう」とか「SEOをやりましょう」「リスティング広告をやりましょう」あるいは「ソーシャルメディアが今こうなってるから、やりましょう」というふうに手段から入るのではなくて、基本的な手段全てを見て、その中で一番費用対効果が高い、あるいはインパクトが大きいようなものから順番にやっていくようにしましょう。

個別の、今行っている施策の改善、たとえば今リスティング広告をやっているんだったら、そこの改善をひたすらしましょう、といきなり決めつけるのではなくて、全体を見て、それを行なうべきか考えて、行なうべきだったらやりましょう。

というふうに、トータルの戦略を見て、その中で優先順位を考える、そしてボトルネックになっている部分ですとか、インパクトのある部分を改善する、そういったところを攻めていきましょうというのが全体最適の観点だと言われています。

逆に部分最適というのは、とりあえず今、検索流入が少ないからとにかく改善しましょうとか、他を検討しないままに何か1個の施策とか分野に関してのみ考えていく。そういったものを部分最適と呼んだりします。

狭い範囲のことばかり考えると視野が狭まる

基本的には、三方良しのような広い範囲のことを考えるのはなかなか難しいというか、そこまで考えてもあまり精度が上がらないので、一番最初はWebに関しては「Webマーケティング」という全体の世界の中で何をすべきかという観点から始めるのが基本的な考え方かなと思います。

いろいろな手法がありますし、みなさんが所属している会社によっては、こういう施策しか提案できない、ということもあると思います。いろいろな状況があると思うんですけども、その中でできるだけ全体をいったん把握して、その上で、「自分たちができることはこういうふうになっているので、これをやりましょう」と言えることが大事です。

それは結果的に、状況によっては特定の手段しかご提案できないこともありますけども、そういうひとつ上の目線、全体からの目線で見てプレゼンテーションを行なうと、お客さんも納得してもらいやすいですし、社内でも話が通じやすい。

それから、それ以外の施策を行なおうというときに繋げやすい。いろいろなメリットがありますし、みなさんとしても、いろいろなことを考えるチャンスにもなりますので、とてもいいんじゃないかと思います。

ある企業の問い合わせを増やそうと思った時に、いきなりアカウントの構築からはじめようというふうに、同じことばかりひたすらやっていると、どうしても自分のスキルの幅も狭まっていきますし、こういうのは習慣なので、自然と自分の守備範囲が無意識に決まってしまいます。

そうすると発想の幅が非常に狭まってしまうんですね。自分を縛っている無意識の枷を外すのって、ものすごく難しいので、枷がつかないように普段から幅広い視点で考えておくことが大事です。

意識に上がっているうちはいいんですね。「自分って本当にSEOのことしか考えてないな。仕方ないなあ」と思っているうちはいいんですけども、それを忘れてしまって、「これだったらこういうキーワードを狙って、こういうことをすればいいんじゃないの」と、無意識に考えてしまうようになると、後で苦労します。

なので、特に初めての方というのは、自分が提案できない内容であったとしても、最初は広く考えて、その上で「うちの会社としてはこれができるんだから、これをやっていこうかな」という順番で考えていくことを強くおすすめします。

無意識に引っ張られて活躍の場を狭めないように

本当に人間って潜在意識に落ち込んじゃうと無意識に引っ張られていっちゃうので、どんどん悪い意味での尖ったスキルを持った人間になっちゃいます。でもやっぱりWebの世界っていうのはある程度ジェネラリストじゃないと、なかなかいい提案ができないと思います。

特定の手段をひたすらやっていくというのは、ジェネラリストの元で上手く使ってもらえるというか、よく切れる刀になる。そういう発想ならいいんですけど、今Webを活用しなくちゃいけない企業というのは、トータルでよくわかっていませんから、いろいろなことに対して幅広くわかって、その上で施策を提案してくれる人を探しています。

ということで、自分の将来のスキルセットを考えていく上でも、伸びしろがあるのは、やっぱりジェネラルなかたちですので、ぜひとも意識の下に沈み込む前に、全体を考えて、その上で施策を提案していくと、きっといいんじゃないかなと思います。

ということで、全体最適と部分最適については、とにかくそこですね。概念としては、調べていただけたらいろいろ出てくると思いますので、それを見ていただけたらいいと思います。

みなさんにぜひおすすめしたいのは、出てきたものを、そういうものなんだなと考えるのではなく、自分の状況的には難しいなどと考えるのではなくて、自らのスキルセットとか将来像のために、視野を常に広く持っておく。

そういう考えを常に頭のなかに置いていただけたらいいんじゃないかなと思います。いつ、どこで、いろんなことが役に立つかわからないです。

ということで、今回の全体最適と部分最適の話は以上になります。

いろいろな部門を実際に経験してみるのもよし

Webに関してもそうですけど、なんでも、本当は全部体験してみるのがいいんですよね。もちろんお客さん自身のご商売を体験できれば一番いいですし、そうじゃなくても会社の中にいろんな部門があると思うので、自分に全然関係のない部門でも、経験しておくと、「会社ってこういうふうに動いているんだな」とか、「こういうところがいつも問題になったり、厄介なことになったりするんだな」とか、それから取引先とのやり取りで「こういうところがネックになってしまうんだな」とか「こういうことが喜ばれるんだな」とか、そういうことって体験しなければわからない部分があるので。

できれば、そいういうところをいったん総なめするくらいの勢いで、いろんな部門をぐるぐる回っちゃったほうが、最終的にゼネラリストとしての視点って、ものすごく広がるんですよね。

そういうことがわかっていると、相手の気持になれるので、用意する資料の内容とか、「こういうときには、こういうことを伝えてもらえれば上手くいきますよ」とかも含めて、相手に提案できる。

そうすると、相手が動きやすくなりますし、動いてくれれば、それによって成約に繋がったり、お客さん自身の成果につながったりして、ビジネス的なプラスにもなります。

どうしても相手業界って、自分のやっていることにエリアを絞りがちなので、そうではなくて、幅広いことを体験してもらえたらと思います。

こう言ってはなんですけど、ある程度年齢の若いうちにしかできない部分でもあると思うので、チャンスだと思って、やれる方はいろいろやっていただけたらいいんじゃないかと思います。