絶対零度とはどんな状態なのか?

ハンク・グリーン氏:絶対零度、まだまだ謎の多い温度です。我々はそれが数字にすると何度であるかは知っていますね、セ氏マイナス273.15度です。

19世紀にウィリアム・トムソンが熱は物質間を移動するという理論を実験しました。物質をできる限り冷たくし、暖かい物質から冷たい物質へ熱が移動するかどうかを試し、ある時点ですべての熱量は暖かい物質から抜け出し、それ以上は冷えることがないことを発見しました。

この温度は物質によってその温度が異なる融解点でも沸点でもなく、すべての物質に共通する温度なのです。彼はすべての物質における動力学的運動エネルギー量を測る熱力学温度目盛を開発し、我々は今日でも彼の目盛を使っています。

我々は絶対零度を止めようとしてきましたが失敗ばかりです。そこには量子力学が関係してくるのでとても複雑なのです。絶対零度といっても完全に物質内での動きが完全に止まった状態という意味ではないのです。ウィリアム・トマソンはゼロとは物質内の分子の動きが最小限に抑えられた状態と定義しています。

それはハイゼンベルグの不確定性原理が原因です。つまりどんな分子も運動量とその正確な場所を同時に知ることはできないという原則です。仮に物質が完全に停止した状態があると過程して、もしそれが可能なのであれば分子の運動量と正確な場所を同時に特定することができます。その場合その数字はゼロです。

しかしそれを測ることは絶対に不可能です。つまり完全なゼロをはじき出すことはできないのですが、110億分の1くらい近づけることはできます。これだけ冷たくなると不思議なことが起こり始めます。

マイナス30度ほどになると物質の伝導性は非常に高まります。物質は抵抗のない電流を帯び始めます。これは粒子加速器をつくっていたり、MRIをつくっている場合などに非常に役立ちます。この高い伝導性の発見はウィリアム・トマソンが前出の実験をして熱力学温度目盛をつくったおかげです。

皆さんこんなことを考えていませんか? この世で最も寒い場所とはどれだけ寒いのか、と。深い宇宙の先かと思われるかもしれません。もちろん宇宙は寒いですがビッグバンのマイクロ波の残りでしかありません。2.73ケルビンくらいです。ブーメラン星雲はガスを放出しつづけ、現在は1ケルビンくらいです。

現在知られている我々の世界の中で最も寒い場所、私のいる研究室はかなり寒いですよ。