「本人の甘さ」が問題ではない
医師が解説するギャンブル依存の仕組み

体験者と医師によるシンポジウム 「ギャンブル依存症とはどんな病気なのか?」 #2/4

11月28日に開催された、ギャンブル依存の問題について多方面から語り尽くすイベント「ギャンブル依存症対策推進フォーラム」に、ギャンブル依存問題に取り組む医師が集結。医学的な観点からギャンブル依存問題について考えました。借金をしても、周囲に迷惑をかけても、どうしてもギャンブルをやめられない依存者たち。本人の意思の弱さのせいだと、本人も周囲の人も思いがちですが、そんなに簡単な問題ではありません。

借金に罪悪感を感じなくなり習慣に

田中紀子氏(以下、田中):先程から貴闘力関が仰っているように、金がなきゃギャンブルができないんじゃないかっていうこと、実はそれは私たちのセオリーとして昔から言われていることなんです。

次のスライドを開けていただけますか。森田先生、これを解説していただけますか。まずお金を周りの人たちが貸さないというすごく大切だという話だったと思うので、その辺をひと言言っていただけるとありがたいです。

森田展彰氏(以下、森田):そうですね、僕はほかの薬物依存の治療もやっているんですけれど。ここにあるように(ギャンブル依存者のギャンブル)開始時の年齢は20.2歳という平均値になっています。僕たちが別に調査したときには、もっと早いピークもあったんですけど、大学生もしくは大学生より前の人、非常に早い時期にもうそういう問題に……。

さっきの話で言えば、ギャンブルにのみ喜びを感じてほかのことにはあまり(喜びを)感じないようになってしまっていて、そういうなかで借金をすることがだんだん平気になってくるので、例えば3番目のところ。

最初はそれなりにバランスを取ろうという時期が貴闘力さんのお話にもありましたけども、やっぱり借金が始まってしまうと。

借金というのは、ある意味で習慣化してくると借金自体が苦にならないというか、借金は自分のお金なんだみたいな感じになることが多くて、結局考え方の優先順位がどんどん変わってくるので、それはさっき蒲生先生が仰ったような脳の働きがおかしくなってくるからというのが1つあると思うんです。

とにかくギャンブルを続けていくことだけが一番大事で、それ以外のことは優先順位が下がってくるので、だんだん借金も平気になりますし、嘘を幾らでもついてもよくなっていく。

ギャンブル依存が生み出す負のスパイラル

借金を27.8歳で開始した後は、本当に流れ落ちるように今度は借金を返すために(ギャンブルをしていく)。借金自体、元金はあってもいいんだけど、借りられなくなるほどなってしまうと、今度はギャンブルができなくなってしまうので、そうならないために必死にとにかくまわしていくということになっていくんですね。

それで初診時って書いてあるのが39歳ですから、10年以上ですね。実際に(ギャンブルが)始まってから20年ぐらい経って初診になるわけですが、ギブアップするまでにすごい時間がかかります。

その頃には人間関係も、経済的な関係も(ダメになってしまって)、自分自身にも、毎日、毎日嘘をついているということは非常にしんどい面もありますから、自己不信にもなりますし、他人も信用できないし、自分のなかでこれだけは信じれるものみたいなものが無くなってしまうというのは、すごくしんどいはずなんですね。

そうするとそういうしんどさを解消するためにギャンブルをやったりするので、本当にグルグルグルグルと回っていくスピードが速くなっていくわけです。

それで最終的には、どうにもならなくなって初診ということになります。この辺はアルコール、薬物のように健康が壊れたり、司法的に捕まったりしないので、非常に時間がかかってしまうということもあります。

それが病気だっていうことを認識しない。認識することはなかなか難しいので、何とかなるんじゃないかと思いたいということで、「否認」といますけれども、自分をコントロールできないという事実を認めたくなくて、「自分は大丈夫だ」と、問題を考えないようにしている、ということですね。

精神の弱さが問題ではない

田中:ありがとうございます。「何とかなるんじゃないか」と信じたい気持ちは、貴闘力関、ありますよね? とにかく問題はお金だと。それでこんな嘘をついちゃったとか、使っちゃいけないお金を使っちゃったとか、直面するのが怖いから現実逃避に走って、「これで一発当てて何とかするんだ」みたいなことはすごく切実にわかりますよね。

貴闘力:わかりますね。一発当てて何とかなったことが3回あったんですよ。

(会場笑)

3回あったんですよね。3回当てて、全部きれいにチャラになったんですよ。神様がここでやめとけよっていう、チャラになったところでやめとけばいいのに、そこでまたやってしまうと。

相撲の神様に愛されてたのになと思っていたのに、結局、足で蹴られましたけどね。本当に言ってることは利にかなっていると思いますよ。俺も「絶対に精神力でカバーしてやる」と思っていたんですけど、やっぱりなかなか難しいですね。

田中:精神力はめちゃくちゃあるはずですよね。お相撲であそこまで行ったっていうことは。やっぱり普通の人だったらそこまで、絶対行かれないわけですし。うちの夫が貴闘力さんの大ファンなんで、先程、熱く語ってましたけれど。優勝とかっていうのは(普通の人には)ありえないですよね。

貴闘力:尋常以上の練習をしていましたからね。死ぬ一歩手前の練習もしてましたから。それで「俺は精神力がある」と自分でも思っていたのに、やっぱりお金でずるずるいって、借金が1億を超えるともう死にたくなるんですよね。「このまま死んだら楽やろな」とか思いながら。それができないところもあるし、こればっかりは……。結局お金を持たないことが1番ですよね。お金を触らせないと。

手元のお金はすべてギャンブルへ

田中:周りの人たちが、ギャンブル依存症という病気に気が付いて、貴闘力関がさっきから仰ったように、心を鬼にしてお金を出さないというのはすごく大切なことなんです。

この図にもあるように、ギャンブルを開始した年齢から、20年近い時間が流れないと周りの人たちも気が付かないで、適切な治療に繋げようとしないんですね。まさかそんなことはないだろうとか、ギャンブルをやめられない病気であると思っていないことがこの病気を悪循環に陥らせる一番の状況かなと思います。

私は女性だったので、にっちもさっちもいかなくなるまでが、ギャンブルを開始してから早かったんですね。女性のほうが底をつくのが早いと言われてるんですけれど。私は10年ぐらいでにっちもさっちもいかなくなりました。

貴闘力関は、ギャンブルが激しくなっていって、借金始めたのはだいたい何年ぐらいでしたか? バーッとギャンブルをやりだして。

貴闘力:結構稼いでましたからね。

田中:そうですよね。

貴闘力:稼いでたんですけど、25、6歳ぐらいになってから、1回きれいになって、また借金して……。裏カジノで5,000万円負けたりとかして、どうしようもできなくなったりとか。もうどうやって生きていこうかなとかね。そういういろんなことが繰り返し繰り返しあって、26、7歳ぐらいのときになったら、お金なんて無かったですね。

表向きには、年収4,000万円とか5,000万円とかってなってるんだけど、家には最低限のお金だけは入れないといけないので、それ以外は結局全部使ってました。

田中:その辺、ギャンブル依存症には誤解もあって、ギャンブル依存症になる人たちは、どちらかというとあまり年収がない人だとか、そういう一発逆転で生活を何とかしようとしている人だろう、みたいな誤解があるんです。

でも、実は年収の高い人たちも、ギャンブル依存症になっていく。ギャンブルをやらなければ十分生活は回るのにっていう人たちも、すごく多いのかなって思います。

巨人軍・野球賭博問題から考える

今回先生方にお越しいただいていて、たくさんのギャンブル依存症者を治療にあたっていると思うので、よく言われることっていうのを見てください。次のスライドをお願いします。

今年本当に話題になったのが、この巨人軍の野球賭博の件かと思います。診断が出ているわけではないので、福田選手がギャンブル依存症だったかどうかということは、明確にはお答えできないと思うんですけれど。私たちが否認という、ギャンブラーがよく言う特徴的なことを福田選手も仰ってるなと思います。

実は、福田選手が「野球バカなのでこれから自分は何をやっていったらいいんだろう」みたいなことを言ってるっていうところで、「貴闘力関の焼肉屋さんで働かせてもらえばいいのに」と、ネットで流れていましたので、もしオファーがあったら是非とも(笑)。どうですかそれ?

貴闘力:そのために俺は焼肉屋をやってるんですよ。

(会場笑)

焼肉屋と寿司屋といろんなことをやってるんですよ。

田中:そういう社会復帰とかで、やはり気持ちがわかる人たちがサポートしてあげるということは、大切かなと思います。

貴闘力:でも金を預けるのは怖いですね。

田中:そうですね(笑)。

貴闘力:お金を預けるのはちょっと怖いかもしれない。

田中:その担当にはしないほうがいいかなと思います(笑)。

「自分の甘さを後悔している」

では冗談はさておき、ここに福田選手のコメントが出ていて、涙ぐみながら「軽はずみに初めてしまった。その後もどうしてもやめられなかった。自分の甘さを後悔している」と語ったっていうことと、あともう1つ報道されているのが、「チーム内でも大のギャンブル好きとして有名だった。パチンコに麻雀、競馬……様々なギャンブルに手を出していた」っていうっていうことが、記事のなかに書かれていたんですね。

こういうように、やめられないのは自分の甘さで、ちゃんと本気でやめよう、みたいなことが、ずっと続いてしまう。そのあたりの、ギャンブラーの否認。否認というのは、自分はギャンブル依存症だと認めるのが嫌、認められないんですね。

そのあたり、普段(ギャンブル依存者を)診療していて、どんなところにご苦労があるのかなということを、ひと言ずつ、佐藤先生からお願いできますか? 否認の病。皆さんどういう感じで来るんですか? 家族に連れてこられる方とかが多いんですよね。

佐藤拓氏(以下、佐藤):そうですね。ご自身でいらっしゃる方もいますけれども、やはりご家族といらっしゃる方が多いですね。ギャンブルでこれほど問題を繰り返しても、それでもやめないということに関して、ご本人がどのようなことを診療で仰るかというのは、本当にいろんな方がいらっしゃるんですけれど。

ギャンブルに限らず、依存症の問題のなかで1つ仮説が言われていて。「自己治療仮説」という仮説があるんですね。なぜ依存症の対象物にはまっているか。もしくはギャンブルという行為にはまっていくか。

私たちは普段生活していくなかで、様々な困ったことに出くわしたりとか、いろんなことにストレスを感じているかと思うんですけど、そのなかで何かにのめり込んでいくという行為そのものが、何かしらその方々にとって、少し治療的な意味合いが、おそらく含まれているんじゃないかと思うんです。

お酒に酔って気分転換を図るとか、例えばギャンブルによって不安を少し打ち消して、自己肯定感を高めるとか、そういった効能みたいなことがあると思うんです。本人なりに人生のなかでいろいろありながら、何とか頑張ってバランスをとりながらやっているという側面がこういう依存の問題の背後にあるんだっていうことを理解しておく必要があるんですね。

そうじゃなくて、「あなたはこれだけ迷惑をかけて、何やってるんですか!」と診療の場で私が言ってしまったら、たぶんその方は絶対に二度と(診察に)来なくなると思うんです。

そういった側面があるんだと、ある程度理解してあげること。実際に自分の問題を掘り下げて考えていくきっかけとして、むしろそこにある程度理解を示してあげることが非常に必要なんじゃないかなと思っています。

田中:なるほど。ギャンブルにそれほどまでにのめり込んでしまった裏には何があるのかなということを、本人が話しやすくなるとか、気づきやすくなるためのサポートを先生は診療のなかでされている、と。

自己治療というのは、例えば自分の不安感とか、あとは例えば昔、虐待なんかの問題があったりとかしたときに、ギャンブルに夢中になることでそれを考えなくて済むっていうことで、それは1つありますよね。

私は家がものすごく貧乏だったので、普通の人たちがたやすく手に入れられるものが手に入れられないわけですね。ランドセルを買ってもらえないとか。そういう恥の思い出を考えたくなくて、ギャンブルにのめり込んでいたっていうところが、言われてみるとあるのかなと思います。

たまに当たるからハマる 脳のメカニズム

蒲生先生はどうですか? ギャンブラーの診察に当たっていて、貴闘力さんのお話でもいいですけど。

蒲生裕司氏(以下、蒲生):ここに「どうしてもやめられなかった」とありますけど、そもそもの生き物の行動を考えると、ギャンブルで当たるっていうのは、たまに当たるわけです。毎回当たるのは仕事ですから。たまに当たるからギャンブルなんです。それでたまに当たる行動っていうのは、当たらなくなった後にやめられない。これは鼠だろうが鳩だろうが、みんな一緒です。

たまに当たる行動っていうのは、なかなか当たらなくなったときに切りにくいんですね。これは当たり前なんです。

「自分の甘さを」って書いてますけれど……、甘さは関係ないです。

我々って、割と将来に高い価値が待っているから今はここを我慢して、やらずにがんばろう、とか。今ここでかんばっておけば、将来こうなる、とか。貴闘力さんも、きっとここで一生懸命稽古しておけば、地位が上がるとがんばっていたと思うんですよ。

そうなんですけれど、あまり先過ぎるものに対しては、価値が下がってきちゃうんですね。価値が下がっているところに、目先にギャンブルという誘惑をもたらすものが現れると、一気に価値の逆転が起こって、将来大事なものの価値が下がって、目先のものがポンと上がってしまう現象が起こる。

これは脳のメカニズムとして、そういうことが起こるので、やっぱり甘さは関係ないですね。がんばっていた人だろうがなんだろうが、一旦、ギャンブラーの脳になってしまうと、ギャンブルに対する感受性がポンと上がってしまって。将来の大事なものの価値がガッと下がっちゃうっていうのはありますね。

それに対して脳がいろんな言い訳つくとか、いとも簡単にやってのけますから。ここに、甘さを後悔していると書かれていますけど、そんなことはないよと言ってあげたい気がしますね。

マスコミ報道の在り方も変わってほしい

田中:本当に言ってあげたいなと思うんですけど、やっぱり貴闘力関もこの問題のことを叩かれたときに、すごく「甘い」とか言われましたよね、いろいろ、きっとマスコミの皆さんとかにも。

貴闘力:無茶苦茶叩かれましたよ。

(会場笑)

ずっと逃げてました。

田中:今日はマスコミの皆さんがいっぱい来ていらっしゃいますが、私は報道の在り方っていうところでも、本人の甘さみたいなこと一辺倒だと社会ってなかなか変わっていかないのかなと思っています。やはりギャンブル依存症の疑いもあったんじゃないかっていうところで、意思の力だけでは解決できない問題なんだっていうことが、常識的に広まってくるとよいなと思っているんです。

自己責任みたいなことがすごく好きな国民性ではあると思いますし、確かに責任が全くないとは思っていないですけれど、でも自己責任だけでは、社会全体の利益っていうことを考えたときに、あまりみんなにとって得になることは無いのかなって思っています。

なので、こういう落としどころ(「本人の甘さ」)にすると、すごく記事としてまとめやすいし、一般の人たちもみんな納得するってことがあって、ついついこうなってしまうのはわかるんですけれども、少し病気の観点というのも、もしかして依存症かもしれないということも出していただければと思います。

だって、(福田選手は)すごく大切なものを失ったと思うんですね。天下の巨人軍の選手なわけですし。貴闘力関も本当に親方として名門ですもんね。相撲部屋として。

貴闘力:そうですね。大鵬の後を継いだわけですから。じっとこっそりしておけば、ねぇ。貴乃花が理事長になったら、その下ぐらいのポジションに行ってたかもしれないです。相撲を何とかしたいという気持ちはあったけど、さっき言われたように、遠くの1億円より目先の100万円ぐらいをすぐあれしちゃうから。

志をせっかく高く持ってるのに、目先の勝ち負けの100万円、200万円を優先してしまった自分がバカだったんですけど。でも治らないですからね、これは。

治らないから正直な話、どこか強制収容所とか入れて、3年ぐらいずっとそこに入れといて、そこで働かせておいて、その残ったお金を全部親御さんとか奥さんとかに全部入れるとかね。

いい商売になるじゃないですか、そうしたらね(笑)。そこから幾らかテラ銭抜いて、儲かりそうな感じが。539万人いるんですよ。それ全部収容所に入れたら、結構いい金になるよね。

こいつは依存症だとか言って全部放り込んどいて、そこで死ぬほど働かせておいて。どうですかね? 冗談ですよ(笑)

(会場笑)

田中:いえいえ、そういう施設も、日本だとすごくお金ばかりかかるので大変ですよね。

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