違法なギャンブルに手を出して

貴闘力忠茂氏(以下、貴闘力):引きずられて、またギャンブルの道に入ったら、ズルズルズルズルと負けだして。そうして、もう、どうしようもないようなかたちになりました。

大鵬親方には「一切ギャンブルしません」ということを言ってましたんで、隠れてこっそりやらないといけなくなるじゃないですか。

それで、一番いけない……表立って、競輪とか競馬とか競艇をやってるぶんには、別に自業自得で。借金しようが自業自得で、俺はクビになることはなかったんですけど。国のテラ銭を払わないギャンブルっていうのは、日本全国どこでも違法なんですよね。

だから、そこで、野球賭博にハマりまして、こっそりやってました。自分では「やめとこ、悪いなあ」ということもわかってはいたんですけど、「身内同士でやってるんやし、わからんからええやろ」と。

別にヤクザも入ってないわけだし。「お金が身内同士でまわってるんだから、まあ別に」と思ってて、思ってた矢先に……。一切そういういかがわしい人とは付き合ってはなかったんですけど。身内でやっても、違法は違法ですからね。それで……。

その前に、実は布石があって。貴乃花、知ってます? 貴乃花、いるじゃないですか。貴乃花が「理事選入る」と言ったときに、俺も調子乗って、協力したんですよね。そしたら、普通は、相撲協会ってみんな助けるんですけど、そのときは、俺と貴乃花とかだけが、敵に回っちゃったんです。

そのときに、貴乃花も言ってたんです。「ギャンブルだけはやめてくれ」と。「違法なギャンブルとか、そういうは絶対にやめてくれよ」と。「絶対、足元すくわれるから、絶対やめろよ」って言われて、「うんうん」って言ってたのに、まだずっとやってました。

(会場笑)

「お前、頼むからやめろ」「絶対、間違いなく足元すくわれるんやから」と言われた矢先に、足元、パコーンとすくわれて。それで一番大好きな相撲協会(から処分を受け)、相撲もできないようになりました。

大好きな相撲界からの追放、離婚

ほんとに「なんでこんなにアホなことしたんやろな」と思ったんですけど、後の祭りですよね。「ほら、お前、言ったやろ」ってみんなに言われたけど、「まあ、しょうがないよな」と。

まあ、自分がやったことですからね、しょうがない。それで、一銭のお金もなくなりました。

大鵬親方も、「お前、さんざん言ったのに、俺がさんざん助け舟出して、さんざん助けてやったのに、もうあかん」って言って、「嫁と別れてくれ」と言われたから、それは、もう大嶽部屋もつぶすわけにはいかんので、「辞めます」と。

離婚をしまして、辞めることになりました。種も一銭もないし、どうしようもないんで、「うーん……」って思ってたんですけど、助けてくれる人が1人、地元の人でいたんです。1,000万円貸してくれて、「これでなんか商売でもせえ」と。

んで、その「商売でもせえ」と言ってくれた金も、またギャンブルで使ってもたんですよね。

(会場笑)

金、ほんとに一銭もなくなって「どないんするんや」と。その人には口が裂けても言えないから、今でも言ってないんです。

(会場爆笑)

引退力士の就職先に 焼肉屋をオープン

今でも、言ったら怒られるから。1,000万円ないから、どうしようかなと思ったんですけど、自分、将来、相撲の親方になったときに、辞めた力士はどないするんやということで、焼肉屋とか、お寿司屋さんとか、あと、体の整体とか。

せっかく体もでかいのに、料理もできないし、あと、体の整体を診たりするのもできない、でも人相だけが悪いってなったら、警備会社行って、警備するくらいしかできることがないじゃないですか。相撲辞めたら、この3つはものすごい商売なるなとずっと思ってたんです。

それで、相撲、クビになったんで、「何やろうかな」と思ってたんですけど、たまたま、近所の焼肉屋がつぶれて、「ただでやらしてくれる」って言うんで、「これはしめたもんや!」って思って。

保証金だけ、近所の病院の先生に頭下げて借りて、それで150万円でお店をしたんですよね。そしたら、クビになったときに、みんなが判官びいきで「助けたろか!」って人がいっぱいいて、そこで月1,000万円くらい売り上げがあったんですね。

それで、せっかくみんなが応援してくれてるんやから「もうギャンブルはやめよう」と思って、1年間やめたんですよ。ほんとに、1年間やめて。

しかし、まだギャンブル沼は続く

1年間やめたんですけど「正月も休まずお店をやるぞ」って言ってたのを、みんなが「もう、しんどいから休みましょ」って言うから、(12月)29日から休んだんですよ。1月3日まで。そしたら、俺、暇じゃないですか。

(会場笑)

「暇やなあ」と思って、たまたま銀行に入れなきゃいけない金を300万円くらい持ってたから、「どうしようかな」と思って、それで韓国(にギャンブルをしに)行ってしまったんです。

(会場爆笑)

「また、アホなことしてるな、おれは!」って思って、調子乗って行ったら、またそれが勝ってまうんですよ。1年間、ずっと運を貯めてるから。

(会場笑)

運を貯めてるから勝ってしまって、1,000万円くらい持って帰ったんですね。で、それを、貯めときゃいいのに、それでみんなに還元してあげればいいのに、それをまた種銭として、ずーっと使ってね。

年末になると、また税金納めないといけないじゃないですか。結局、その金すらなくなってしまって、また、それで「ハァ……」とか思いながら。従業員もそのときになったら、40人も50人もいましたんで、それはもう1000万くらい足らんかったんですよ。

「なんでこんなアホなことしてんだろうな」って思って。自分で自分が負けるのは、自業自得でしょうがないじゃないですか。自分が負けてるんだから。自分が借金して、自分が払えばいいんだけど。

それが大事な、自分を慕ってくれてる大事な社員の……。社員に子供もいるし、いっぱいおるんですよ。その金を払えなかった自分がすっごい情けなくなりまして。もう、いろんなところから、お金を借りて、それだけは払ったんです。

だから、「こんなことしたらいかんな」と思って。それでギャンブルはすっかりやめました。「やめました」って言っても、まだ1年半くらいしかたってないんですけど。

(会場笑)

ギャンブルが頭から離れない

だから、ほんとにギャンブルしたくて、今でもすっごいウズウズしてるんですね。3時くらいになったら、競馬番組見て、「おれやったらこれ買うのにな」とか思って。それがまた、当たるんですよ!

(会場爆笑)

G1の競馬見て、馬見て、「あ、これと、これと、これがいいな。これ、ボックスで1万円買ったつもりで見てよ」って思ったら、それが8万6000円ついて、「買ってたらこれ、860万円やんけ!」とか思いながら。

(会場笑)

「買わなきゃ当たるよなあ」って思って。

(会場笑)

「やっとけばな」とか。でも、やっぱりギャンブルは、やったら損しますよね、絶対。だって、親玉がいるんですよ。競馬やってたら、農林水産省の中央競馬会がしっかりテラ銭も稼ぐし、ねえ?

宝くじあるじゃないですか、宝くじ。あんなに有名芸能人とか入れて「1億円当たります! 当たります!」って言いながら、50%以上、テラ銭抜いてるんですよ。ね? 「誰が儲かんの?」っていうことを考えれば、話は簡単なんですけど。

パチンコでもそうじゃないですか。3回に1回は勝たせるけど、2回は勝たせないんですよ。それはなぜかと言うと、給料払わないといけないし、パチンコ台も高い金出して買わないけないし、電気代も払わないけないし、儲けないといけない。

勝つことあるわけないじゃないですか。そんなんわかっててやる、おれらのほうがアホなんですけど。でも、やっぱりそういうことを考えてもね、「いや、おれだけは、もしかしたら勝てるんちゃうか」とか、そういうことを考えながらやるから、アホなんですけど。

身近にギャンブル依存の人がいたとしたら

でも、今回きっぱりと、1年半、何にもやってないんですけど。自分が言うのもなんなんですけど、お金が借りれるところがなかったら、博打はやらないというか、やれないんですよ。

だから、ギャンブル依存症で苦しんでる人間には、絶対に金を貸さないことなんですよ。金を貸さなきゃ、ギャンブルもやらない。

一昨日くらいに65歳のおばさんが「うちの息子がギャンブル依存症で」とか言って来たんですよね。悩み相談、俺に(笑)。

(会場笑)

来たんですけど。お母さんとお父さん、毎日死ぬほど働いて、家も買って、ある程度貯金も残して、今、年金で生活してて、そこそこお父さんもこぎれいな格好してご飯食べに来てたんで。

「ああ、そこそこお金は持ってんだな」と思いながら見てたら、「息子が一人息子で、仕事は一生懸命やるんだけれども、ギャンブル依存症なんです」と。

この前も「200万円(無いと)、自殺する、自殺する」とか、お母さんに言って、そのまま200万円くすねて、居なくなったと。「お母さんね、自殺するって言って、自殺する奴はそうおれへんで」と。

(会場笑)

「だから、もう、お母さん。お金を貸すから、またギャンブルするんだから、心を鬼にして、放り出してもいいから、お金を貸さないように。それで死んだら死んだで、しゃあないやんか」

「いや、貴闘力さん、他人事のように言わないでください。大事な一人息子なんですから」。「だから、そういうような優しさが、ギャンブル依存症にハメるんやで」って。

俺もそうだったんですけど、やっぱ大鵬親方っていう(存在がいて)、常に「お願いしたらなんとかなるやろ」っていう安易な気持ちがあったから、やっぱそういうふうに。

「最後は助けてくれるやろ」とか、「株売りゃ、なんとかなるやろ」とか、そういう気持ち、心の甘えがあるから、やっぱりギャンブル依存症に。まあ、「少々負けてもなんとかなるやろ」と。

でも、みなさん、お金を誰も貸さなければ、ギャンブルはしたくてもできないんですよ。お金も、最終的には借りられるところは、どこもなくなります。友達も減るし。お金借りるときの理由なんか、もう天才的にうまくなりますからね。

(会場笑)

一度地獄に堕ちないと懲りない

ほんとに、口からもう、いろんなこと言いながら、「これはこうで、あれはこうで」とか言いながらお金を借りますよね。そういうふうになってくると、もうどんどん、嘘が嘘ついて、嘘はもうずっと塊になって、もう自分は本当に言ってるか、嘘をついてるのかわからなくなってきます。

で、終いには金を借りられなくなります。そうなってくると、もう地獄になってきますよね。そういうふうにさせないためには、もう、「この人は依存症だな」って思ったら、絶対にお金は貸さないでください。

貸したら、もうないと思ってください。貸したら、もう「その人は地獄に落ちる」と思ってやってください。そしたらもう、お金を貸さなきゃ、依存症もなくなることはないだろうけど、まあ一時は自分で金稼いで、負けるぶんにはしょうがないと思ってやってもらえれば。

あと、結婚したりしてると、嫁さんとか子供とか省みずギャンブルをやってしまうから、そういう奴とは、もう離婚したほうがいいですよ。

(会場笑)

「この人、一生懸命。ギャンブルさえしなければ本当にいい人なんだよね」とか言う人、いっぱいいると思うんですよね。おれも含めて。そういう人は1回、何もかもなくして、反省させないと懲りないから。

懲りなきゃ、ギャンブル依存症治んないっすよ。いくらええこと言っても、かっこいいこと言っても、何しても、1回地獄に落ちなきゃ絶対治んないですから。1回地獄に落として、それからまた拾ってあげるのは、よしとしなきゃいけないですけど。

今、口で格好いいこといっぱい言ってますけど、そんなんじゃあ、絶対に治りません。それは間違いないです。今日はしょうもないこともいろいろ言いましたけど。時間も時間なので、この辺で話を終わらせてもらいます。

まだ、いろんなおもしろい話、いっぱいありますけど、100あるうちの2とか3くらいしか今日は話してません。もし本当に困ってたら、そのときはお店に来てください。話を聞きましょう(笑)。

(会場笑)

貴闘力:飯代はちゃんと払ってくださいね! 講演料は取らないですから(笑)。

(会場笑)

貴闘力:まあ、そんな感じで。今日はどうもありがとうございました。

(会場拍手)