「春畝(しゅんぽ)」という名を持つ永田町の有名人

伊藤ようすけ氏(以下、伊藤):これごめん、差し支えない範囲でちょっと質問が来たんですけど、仕入れ値はいくらぐらいなんですか?

葉山彩子氏(以下、葉山):仕入れ値は内緒ですね。

伊藤:内緒ですって。

(会場笑)

ふくだ峰之氏(以下、ふくだ):そら当たり前やないですか。

葉山:すごく高い場合もありますし、思いのほか安く手に入るというときもあります。だけどそれは関係なく、うちはお客さまが(値段を)決めるオークションというところに出してしまいますので。

ふくだ:ちょっと、今日はもう1個用意していただいているんです。

伊藤:マジすか。

葉山:はい。

ふくだ:これがまたすごいよ。僕らの業界的に言えば。

葉山:たぶんお好みかなと思って持ってきたんです。

ふくだ:僕らの業界的に。

伊藤:どういうこと?

ふくだ:いや、楽しみにして。うちらの業界。

伊藤:永田町業界では?

ふくだ:業界では、大変なもんですよ。いいですよ、大切なものだからゆっくり巻いてください。

伊藤:それも高さがありますか。

葉山:そちらは小になります。

ふくだ:さて、質問です。これは誰の書でしょう?

伊藤:ここに書いてるんですよね……これ、何て読むんだ?

葉山:これは春畝(しゅんぽ)という名を持っている方なんですけれど。

伊藤:そういう名前を持っていらっしゃる方。

葉山:はい、そうなんです。

伊藤:春畝、わかりますかね。

もう答え出てますか?

葉山:吉田松陰……おしいです。吉田松陰に、「君は政治の才能がある」と言われた方の書だそうです。さあ、誰でしょう?

伊藤:さあ、誰でしょう。吉田松陰は近いです。

葉山:近いですよね。師匠だったらしいです。

伊藤:(伊藤)博文?

葉山:はい、あたりです。伊藤博文。

伊藤:伊藤博文、正解。

(会場拍手)

伊藤:これ、伊藤博文さんが書いたんですか。

葉山:そうですね。伊藤というふうに名が入っておりますので。

ふくだ:初代内閣総理大臣ですよ。僕らの業界的には。今、安倍総理が第何代かちょっとわからないけど、安倍総理の大先輩。

葉山:同郷でいらっしゃいますね。山口県出身の方ですもんね。

伊藤:これ、永田町に売れそうって感じ。これ、じゃあすごいもんじゃないですか

ふくだ:その内ふくだ事務所に飾ってあるかもしれませんね。

葉山:オークションで買ってくださいね。出しますので。

伊藤博文氏の書をめぐるオークション

伊藤:ちなみに、中身は何て書いてあったんですか?

葉山:中身は漢詩なんですよ。私もちょっと解読してない。

伊藤:漢詩、これちょっと僕に教えてください。

ふくだ:これは僕らの業界的には非常におもしろいね。さっき言ったじゃないですか。「何て書いてあるの?」じゃなくて、これはデザインですから。

伊藤:なるほど。

ふくだ:今ここで説明すると、もったいないじゃないですか。だから、これを購入された方が、自分で調べていくとこに楽しさがあるわけです。伊藤博文ですよ。

伊藤:想像しただけで、すごいお値段なんでしょうね。ちなみに、いつオークションに出すんですか?

葉山:いや、まだ決めてないです。

伊藤:ちょっと参加してみようかな。

葉山:ぜひ。

ふくだ:いつオークションに出すか、ここで宣言してくださいよ。それで、みんなで参加するという。なぜかというと、これは政治に興味ある人たちが観てるから、みんな参加すると思いますよ。初代総理だから。

葉山:そうですね。初代総理にかかわらず、政治に関係のあった方々の書というのがたくさんあると思うので、また、好きな方、漢詩に詳しい方とかいらっしゃると思いますので。本当に、私のほうが教えていただきたいというぐらいですよね。

ふくだ:オークションはいつやりますか?

葉山:うちは毎日出品してますので、バイヤーに聞いてみますが、1週間後ぐらいには出るかも。

ふくだ:わかりました。3月17日だそうです。じゃあみなさん、ぜひ。何せ伊藤博文さんですから、初代内閣総理大臣。そういう方が何を思ってあの書を書いたのかということを、購入される方は考えて。

伊藤:総理大臣になられてからなんですかね? 書かれたの。

葉山:はい、内閣総理大臣のときに書かれたみたいです。

ふくだ:ちょっと参加しましょう。オークション。

伊藤:ねえ。

ふくだ:みんなで参加しましょう。

歴史をたどるオークションの楽しみ方

伊藤:これは、いつ頃手に入れられたものなんですか? 最近ですか?

葉山:それは聞いてないんですけど、うちは仕入れたらすぐ回転していきますので。

伊藤:へえ、すごいなあ。

葉山:本当にいろんな作品があって、お好きな方が見られたら、いろんな観点から見ておもしろいと思うものが。

同郷であるとか、幕末の人が好きとか、歴史的な人が好きな人にとっては、その方に縁のある作品がたくさんあるので、本当に探してみたらおもしろいものがいっぱい見つかるかと思います。

伊藤:僕がさっきちょっと思ったのは、いわゆる骨董品というのを、投資としてやられてる方もけっこういるんですか? いやらしい話ですけど、安く買って高く売るということなんでしょうけど。そういう人達もけっこういるんですか?

葉山:いると思いますよ。そういう楽しみ方をされてる方もいらっしゃると思います。それも美術品の値打ちを高めていくという効果もあるのではないかなと思います。

伊藤:そんなに否定することじゃないと。

葉山:私は、楽しみ方は自由だと思っています。

ふくだ:今日わざわざ大阪から来ていただいたけれども、やっぱり大阪でやってる意味というのがあるわけですか?

インターネットだから、本社自体はどこでも(大丈夫)というのはあるかもしれないけれども、やっぱり大阪ですか? 商売やるのは。もともと大阪出身なんですか?

葉山:そうなんです。もともと大阪出身で、場所は「どうしてもここ」って思って決めたわけではないんですが、でも会社を構えてみてから、「南船場って何かいいところだな」って思ってます。

ちょっとお洒落な町でもあるし、昔の大阪の船場の商人って言いますので、商人の町だったということもありますし。大阪も、京都と同じように大阪画壇といって、昔、日本画の作家さんがたくさんいて、絵を描いた土地でもありますので。やっぱり自分が生まれた土地だし、ここからでいいんじゃないのというふうに。

ネットオークションから学ぶ地方ビジネスのあり方

伊藤:今、店舗はお持ち?

葉山:ショップはないです。全てインターネットに出品していますので。

ふくだ:例えば大阪じゃなくて、石川県出身だったとしたら、石川県でこの商売やってましたか?

葉山:やってましたね。インターネットはどこでもできますので。

ふくだ:伊藤さんね、ここが実は地方再生のポイントなんですよ。

伊藤:なるほど。

ふくだ:つまり、日本はIT基本法をつくったときに、いわゆる日本中でストレスなしにITが使えるようにしようと言って、光ファイバーも引いて、どこにいてもインターネット環境が安価で、ストレスなく使えるようにするということをやってきたんですね。

その結果、今があって。このインターネットができたことによって、それぞれ例えば大阪、石川県だとか、そういうところでも商売ができるというところにやっぱり意味があるんですよ。

そうじゃないと、例えばリアル店舗だけで商売をやろうと思うと、人口が少ないとこでやったら見に来る人いないじゃんという話になっちゃうし。

そういう意味では、実は地方再生って、いかにこのITCを使って地方にいながらのビジネスができていくのかという。まさに、地方の商売のあり方の1つが、今日みたいな、いわゆるオークションをネット上でやっていくとかね。こういう商売なんじゃないかなと思うんですよね。

伊藤:なるほど。

ふくだ:自分のふるさとがあって、ふるさとが好きで、そこで商売やんのが一番いいじゃない。

伊藤:東京に出てこようという気とか、さらさらないですよね?

葉山:今はぜんぜんないですね。

ふくだ:そこはないと思うよ。そこが実は重要で、そういう人が地元にいてくれないと、みんな東京に来ちゃったら……。大阪はちょっと大都会だからあれかもしれないけど。だけどやっぱり、そこの住んだところで商売をやっていこうというのができてくるのが重要なんだと思うんだよね。本当にね。

伊藤:なるほどね。

ふくだ:だからやっぱり、葉山さんはたいしたもんだよ。今日のテーマそのものだよ。

葉山:ありがとうございます。

地域に広がる骨董品市場

伊藤:ちなみに、いわゆる買い付けというのは市場があるんですよね?

葉山:そうです。

伊藤:骨董品の市場があるんですよね。それはけっこう大阪の中にもたくさんあって、東京にも当然(ある)?

葉山:あると思います。

伊藤:それぞれの地域にけっこうあるもんなんですか?

葉山:たくさんあると思います。

伊藤:だから、第2・第3の葉山さんは、出てくる可能性があるということですよね? 地方でも。東京じゃなくてもね。

ふくだ:そう。だから逆に言えば、それぞれの地域の、例えば金沢だったら金沢の骨董みたいなものがあるオークションがあったりとかね。その近くで出てくるものを、その近くの人たちがWebサイトで売るというやり方もあるかもしれないし。

そういうものが各地域にあって、そこに地域性があって、ネットで買えるとなると、相乗効果になるじゃないですか。そういうのができたらおもしろいかもしれないね。ダメですか? 商売敵になっちゃいますか?

美術品に国境は存在しない

葉山:いや、いいと思います。私は日本の国内だけにとどまらず、海外の方に日本の骨董品の良さを知ってもらうことで、逆に日本というものをよく知ってもらえたり。

音楽と一緒だなと思うんですけど、美術品にも国境がないということで、海外の方が日本のものをいいと言っていただくことで、逆に日本でメジャーになった作家もありますので。

伊藤:逆輸入ってやつですね。

葉山:そうです。ぜんぜんそれはいいと思うんですよね。どこであれ、価値を認められたことで有名になれるんであれば、作家さんもきっと喜ぶと思いますし、美術ってそういうもんだと思います。

だから、日本の中で、私の国のものだから、私の国だけでというふうにするよりは、全世界を駆け巡ってくれたほうが、美術の世界だけでも戦争は起きないじゃないかというぐらいの。

ふくだ:大きいね~。

葉山:美術品を守ろうという動きがやっぱりね。

ふくだ:だって伊藤さんさ、例えばミラノに行きましたと。ミラノの街で有名な美味しいレストランに入りましたと。(それで)トイレに行って、掛け軸があったらうれしくないですか?

伊藤:ああ~。

ふくだ:そこに日本の掛け軸があって、「ああー!」みたいな。

葉山:そうでしょう?

伊藤:そらそうですよね。

ふくだ:だからそういのが、世界に当たり前のようにあったら気持ちがいいなって。

葉山:いいと思います。

ふくだ:例えば、バカラのグラスが世界中のレストランにあるような感じで、日本の掛け軸がいろんなトイレにあったり、トイレじゃなくてもいいけどね。そういうのがあると、何か日本って身近な感じになるじゃない。

伊藤:ああいう掛け軸みたいな文化というのは、世界中に行くとどこにあるのかな?

葉山:掛け軸の文化?

伊藤:何ていうんですか……ポスターとはちょっと違うわけじゃないですか。

葉山:そうですね、はい。

伊藤:あれは日本だけ?

葉山:中国もありますね。

伊藤:中国もあるね。日本のそういう掛け軸というところだけにフィーチャーするわけじゃないですけど、どこが一番いいですかね? 他の外国に比べて。

葉山:掛け軸のよさですか? それはやっぱりみなさん、巻いて、こんなに小さくなって持ち運びが便利で、架け替えが楽。額だと、大きいものはもうそのまま動けないんでしょうけど、日本の掛け軸は季節によって掛けるものが変わりますよね。

だから、しょっちゅうみなさん掛けかえられるということがメリットというか、楽しめるということだと思います。

ふくだ:確かにそう。僕1回落選したときに、事務所にあった大きな絵画の作品を持って帰るのえらい苦労したもん。

伊藤:議員会館から?

ふくだ:そうそう。これ、掛け軸だったらくるくるって持って帰れたかもしれないけど、確かに大変だわ。大きいから。

伊藤:それちょっと切ない話ですね。

ふくだ:切ない話です。

伊藤:落選の頃の、気持ちが沈んでるからって、その重いものがなかなか出て行けないっていうね。

ふくだ:いやあ、大きいとね。だけど丸められたら、サイズが小さくなっちゃうわけだから。でも、丸めるって日本ぽいよね。何かコンパクトにしてしまうみたいなね。何かそういうの、いい感じがするな。

制作協力:VoXT