吉村氏独自の市政方針

記者8:ABCのキハラです。当選おめでとうございます。吉村さんから伺いたいんですが、橋下市長の後継ですので、当然橋下路線の継承をするというのはわかるんですが、やはり新市長なので、吉村カラーというものも市民は期待すると思いますが、吉村カラーはなんでしょうか?

吉村洋文氏(以下、吉村):継承する部分以外ということですかね? やはり、この大阪の経済をよくしないといけないと思ってまして。大阪はいいところがたくさんあるんですよ。技術にしても、なんにしても。

ミナミもそうですけど、食文化もそうですし、いろんな文化であったり、あるいは観光の強みであったり、ポテンシャルはすごい高いと思ってます。

この役所内部の改革は、当然継承路線として私もその考え方で続けていくんですけれども。良さの部分はもっとトップセールスというか、そういったことを今までもやってますけれども、それをもっと広げていきたいと思ってます。

橋下市長ご自身、やはり私も役所の中にいて思いましたけれども、根本、役所内部の改革にだいぶ時間を取られるというか、そういったところがあったと思うんですよね。それぐらい私、橋下市政が誕生する前の大阪市役所というのは問題があったと思っていますので。

その点については、だいぶ改善されてきたということが大きくありますから、私にはその改善を続けるとともに、残された自分の中の力としては止まってる改革を続けるというのがもう1つです。

この大阪の顔としてもっともっと大阪の良さをアピールしていって、明るい大阪というか、元気のあるような大阪。抽象的な表現になりますけども。そういったトップセールスのようなことは力を入れてやっていきたいと思ってます。制度の都構想の議論も当然続けますけどね。

大阪市長に就任するまでの準備とマニフェストの実行

記者8:就任まで1ヵ月近くありますけれども、どのような準備をされて、なにから取り組まれるおつもりですか?

吉村:橋下市長のときもそうですけれども、まずは現状の役所の中身で、市長として判断しなければいけないこととか、今現状で動いてるところの把握というのは、市長就任までにしっかりして、市長になったら判断できるように。そんな準備をしてきたいと思ってます。そんなに時間がないですから、それを早速とりかかっていきたいと思ってます。

記者8:松井さんにお伺いします。知事は2期目なので、今週にはもう2期が始まりますけれども、あるとすれば、1期目の反省点を踏まえて、2期目はどういう方針、どういうカラーを打ち出していきたいとお考えですか?

松井:これはもう現職ですから、1期目にやってきた課題や今議会に出している案件などをまとめていくだけです。

成長戦略については、橋下市長と僕とでまとめた10年プランを確実に実施していってますから、少しでも前倒しして答えが出せる、結果を出していけるように、吉村新市長としっかりとタッグを組んで進めたいと思ってます。

吉村:それとちょっと加えて、今回マニフェストでお約束したことというのがあります。「中学校の給食をおいしい給食にしてよ」とか、そういう声も多くて、「おいしい給食を実現する」というようなことも当然言ってますし、「子供たちの医療費助成を18歳まで伸ばす」ということを言ったりもしてますんで。そういったこのマニフェストに掲げてお約束したこと、それを着実に実行していくということも大切なことだと思ってます。

二度と「府市合わせ」と呼ばれる時代に戻さない

記者8:もう1つだけすみません。少し意地悪な質問かもしれませんが、前回のマニフェストは9割を達成したということをずっとPRされてたと思うんですが、「もう9割も達成してしまったんであれば、次はなにをするんですか?」とお伺いしたら、どうお答えになりますか?

松井:先ほどから議論になってます、二重行政を完全に解消することです。広域を一元化しいくことです。これが、やはり積み残している課題です。人による二重行政の解消では、人が変わった時に元に戻ってしまう。二度と「府市合わせ」と呼ばれる時代に戻さないための制度をしっかりつくりあげたいと思ってます。

吉村:今回、当然方向性は一緒ですけど、新たなマニフェストを掲げてますので、4年前のマニフェストと同じマニフェストではありません。そこで新たに掲げてることは着実に実行するということですし、進めてできなかったようなこと、地下鉄の民営化なんかもそうですけども、そういったことについては進めていきたいと思ってます。

記者8:はい、ありがとうございました。

慰安婦像建設問題をはじめとする大阪市と海外都市の関係

記者9:英字新聞ジャパンタイムズのエディー・ジョンソンです。吉村さんにお伺いします。

大阪市の海外戦略について、橋下市長はいろいろ海外に行ってるけど、海外にもよく批判されてました。特に慰安婦の問題とか。ご存知のように、サンフランシスコ市議会は慰安婦像を建設するように決議を可決しましたので、そういうサンフランシスコ市議会の関係はどう考えてるのかお伺いしたいのですが。

吉村:この件については、私、橋下市政を継承するという立場ですので、そこは同じような考え方で進めていきたいと思ってます。ただ、国政課題についてどこまで関与するのかという点については、私自身はある程度、大阪を中心にして「大阪市政」。これをしっかりと取り組んでいきたいと思ってます。

記者9:関西の総領事たちを集めて、関西の在大阪外国商工会議所の人たちは、やはり橋下市長に会いたかったけど、橋下市長は断りました。吉村市長だったら総領事たち外国の方にはよく会うつもりでしょうか?

吉村:特に外交問題に関して、私、大阪市長ですのでやっぱり大阪市政に専念するというとこもありますから。特に現段階で会うということは考えてないです。

記者9:はい、わかりました。

都構想の再挑戦について

記者10:ABCのヨコヤマと申します。「都構想の再挑戦、設計図を作りなおす」ということをおっしゃっていましたが、前回の住民投票の否決、そして今回、選挙戦でさまざまな人の声を聞いたと思います。前回の問題点を今後どう修正、改善していこうかというのをこれから議論されると思うんですが、現時点でそれぞれどうお考えかというのをお聞かせ願えますでしょうか?

松井:その問題点を膝詰めで聞きたいということで、「議論を続けさせてほしい」と言ってるわけです。前回も、我々が自信のないものを出したわけではありません。これは役所の職員、大阪府大阪市共々に優秀な職員がみんな集まって、国とも協議をしてる中で作り上げた設計図で、提案する限りは自信のあるものを出させていただいたわけです。

でも、住民のみなさんからは否決をされた。ここは謙虚に受け止めるのは当然なんで、住民のみなさん方の生の声として、何がダメだったのか。例えば区割りなのか、区の名前なのか、基礎自治体としての権限が緩かったのか、弱かったのか。

そういうところをまず第一歩として、住民のみなさんの生の声を聞いて「これから設計図を作り変えさせてほしい」と言ってるわけです。

我々は我々なりに、現時点ではこれが一番いいものだと思って提案をしたわけです。ところが、住民のみなさんの声は違ったわけですから、そこは真摯に受け止めて、謙虚に住民の声を聞いていくというのは当然だと思います。

吉村:基本的には同じですけれども、その当時は、僕らはあれがベストだったと思ってます。ただ、「議論が足りないんじゃないか?」という反対の意見も当時あったと思うんですよね。

我々はベストなんだと思って出して、そして今振り返って考えたら、70万の方はやっぱり反対された。そこが一番重たいと思ってます。ですので、その反対された理由も含めて、修正する議論を進めていくと。

どこが問題あったのかとか(の議論)も含めて、そういったことは住民とやったからこそできることだと思ってますんで、振り返って70万の方の意見をしっかり聞いて、より多くの市民のみなさんが理解いただける案を作っていく。

最終的には大阪の府市合わせをなくして、大阪の成長させて、よりよい大阪を作っていくというのが僕らの目的ですんでね。それを、やっていきたいと思ってます。

維新の会の法律顧問に就く橋下氏との今後の関係

記者:もう1つお伺いしたんですが、今後大阪市を松井さん、吉村さんで指導して引っ張っていくと思うんですが、橋下さんが、いったん政治家を引退されるということで、今後さまざな局面があると思うんですが、そういうときに相談であったり、意見を聞いたりするということは今後出てくるんでしょうか?

松井:それは法律顧問として維新の党、維新の会に関わってもらうわけですから、いろんな相談をしますよ。

吉村:そうですね。前の記者会見のときでも法律政策顧問に就くとご自身で言ってますんでね。だから政策面についてもそうですけれども、やはり相談するところは相談してよりよいものを作って行くのが僕らの目的ですんでね。

政治パワーとかそういうのじゃなくて、よりよいものを作っていくためにいろんな意見を聞いて進めていくというのは当たり前のことですし、市長自身も法律政策顧問、よくアメリカであるような新しい形に挑戦したいとおっしゃってますんで、ぜひそれは協力して最終的には大阪のためになるようなことをやっていきたいと思ってます。

記者10:ありがとうございました。

橋下市長時代の強引な政治手法を改める?

記者11:すみません。毎日新聞クマガイです。吉村さんにお聞きしたいんですが、選挙中、「橋下市長を乗り越える」ということをおっしゃっていたと思うんですが、それは先ほど質問があったのと同じ答えですか? 「吉村カラーを出していきたい」ということでしょうか?

吉村:そうです。表現の仕方だと思うんですけども、今よりもいい制度を作っていくのが政治家の役割だと思ってますから、今止まってることを一歩でも二歩でも進めていくというのがまず1つ必要でしょうし。

やはりその役所改革ということに市長はだいぶ大きく労力を使って、役所を変えてきた。私も身近で見て思ってます。そこはある程度、継承しながら進んでいるとこもありますから、大阪の内外に大阪のいいところを出していくアピールというか、セールスはやっていきたいと思いますし、住民サービスの点でも、給食なんかも今は「おいしくないね」と言われたりして、残食率もあったりしますから、そういうところ改善しながら進めて。要は、今よりもいい制度を進めていくということですね。

記者11:松井幹事長にお聞きしたいんですけども、この選挙期間中、「強引な手法というのを改める」とおっしゃっていたと思うんですが、これはそのまま受け取ってもいいんでしょうか? 議会対応などでということでしょうか?

松井:そのまま受け取っていただいて結構ですし、強引ということでいろいろ批判されてきましたけど、やはり議会のみなさんに答えを求めるときに1つの手段として、いくら丁寧に協議してもまとまらないときは結果を出すために、強引な手段というのも必要なときもあったということです。

今回、新たにこういう民意をいただいたわけで、そういう民意を議会のみなさんも受け止めていただけるわけですから、最初から我々も強引にいこうなんて思っておりません。丁寧に説明するのは当然だし、話し合いもします。

でも、答えを出していただかないときには、ありとあらゆる政治手法を使っていこうと思います。

都構想が実現したら大阪市は廃止になる

記者11:今回の選挙戦を振り返って、自民党推薦の候補が共産党の支援を受けていたことを批判されてましたが、松井幹事長は古巣の自民党、大阪府連をどうご覧になってるでしょうか?

松井:どうご覧になってるというか、これはもう自民党と共産党はやはり組んだらダメだと僕は思ってますよ。もう、野合談合でしかないと思います。

記者11:先ほど話が出た橋下市長の法律顧問就任の件ですが、橋下法律顧問の言うこととお二人の意見が食い違った場合はどうするつもりでしょうか?

松井:法律政策顧問ですから、意思決定に橋下法律政策顧問が関与することではありません。あくまでもいろんな法律政策においての相談をさせていただくということです。

記者11:ありがとうございます。

記者12:読売テレビのヤマカワです。2点質問させていただきます。今回のダブル選挙で都構想の再挑戦が大きな争点になりまして、これが民意を得たという結果だというご認識だと思いますけれども。

これから設計図を作りなおすということですが、大阪都構想を実現させようということになれば大阪市を廃止するということは避けられないということになります。今回の選挙結果を受けて、これは大阪市を廃止するという民意を得たとお二方はご理解されてますでしょうか?

松井:「都構想の議論は続けていいよ」という民意は受けたと思います。ヤマカワさん自身も番組で「都構想は大阪市を廃止する法案じゃないか」とはっきりおっしゃってたわけですから、そのことが争点になってる限りは、都構想の議論は続けていくということは市民のみなさんが理解いただけたと僕は思ってます。

吉村:よく「大阪市を廃止する」と一言でおっしゃるんですけれども、「じゃあ、大阪市の中身ってなんなんですか」という議論が足りてないんですよ。大阪市の中身として、大阪市役所という行政組織という部分と、住民のみなさまから見たら受けている住民サービスという部分であったり、あるいは地域のコミュニティであったり。

それをひっくるめた中で、市民の目から見た大阪市なんですよ。だから「大阪市を廃止する」って言ったらあたかも全てが全部なくなるかのようなことを、特に5月17日も言われましたけれども、そこは違ってて、僕は分けて考える必要があると思ってます。

行政組織の大阪市役所という意味では、大阪都構想ではそれぞれの特別区と大阪都庁に分かれるわけですから、大阪行政組織としての大阪市役所はなくなります。だけれども、大阪市役所が提供してる行政サービスについては、それぞれ大阪都庁と特別区役所でやるわけですから、その行政サービスはなくなってないわけです。

それを住民が受けるわけですから、そういう意味ではなくならない。地域のコミュニティもなくなるわけではない。ですので、そこは一緒くたにして大阪市をなくすんじゃなくて、大阪市役所という役所、組織が新たに再編される特別区と大阪都庁で引き継ぐということであれば、そのとおりそういった意味を示されてるんだと思ってます。

だから民意を前提にして、議論を続けてもいいよという判断だと思いますんで、修正する議論を続けていきたいと思ってます。ですので、一言に「大阪市がなくなる」と言うと、それはミスリードに繋がるんじゃないのかなと思ってます。大阪市役所の話、行政組織の話だと思ってます。

記者12:そうしますと、行政組織、いわゆる政令市としての大阪市というのは、廃止していく前提で吉村さんはこれから市政を運営されるということですか?

吉村:よりよい提案、よりよい修正案を作っていって市民のみなさんに図りたいと思ってます。ただそれは、東京市も東京都と特別区になったわけですから、再編する新たなものがあるわけです。

だからスクラップのところだけおっしゃるんですけど、ビルドのことも一緒に言わないと、私は住民のみなさんにとって違った理解になるのかなと思ってます。

記者12:住民投票の結果は、今回のダブル選挙の結果を受けて新たに上書きされたという認識でいらっしゃるんですか?

吉村:上書きされたというか、何回も繰り返しの説明になりますけれども、先ほど申し上げたとおり、70万の反対の中には議論が足りなくて、「ただ課題はあるよね」という方がいらっしゃると思うんですよ。

そういった方からすると、今回「修正する議論を続けていったほうがいいんじゃないか」というふうにご意見いただき、票を入れてくださった方もいらっしゃると思いますので、そういった意見を真摯に受け止めて、修正してよりよりものをつくっていきたいと思ってます。

別に対立が目的ではありませんから。よりよい大阪をつくっていくためには、やはりこの府市合わせの問題とか、二重行政の問題をどう根本的に解決するのかというのを、「対立だけじゃなくて真剣に考えるべき時期に来てるんじゃないのかな?」と思っていらっしゃる有権者のみなさんが今回、多数いらっしゃったんじゃないのかなと思ってます。

おおさか維新の会としての、地方分権の実現

記者12:すみません。もう1点お願いします。お二方これから実際のリーダー、行政案の責任者として運営をされるんですけれども、一方で平仮名の「おおさか維新の会」のほうでは松井さんは幹事長でいらっしゃって、吉村さんは政策の責任者、政調会長でいらっしゃいますけれども。

平仮名、おおさか維新の会は地方分権を実現する党だということです。以前、大阪維新の会の方針の中には消費税の地方税化それから、地方交付税の廃止というものがあったと思います。

ただこれについては、新たな平仮名、おおさか維新の中には記載はないと思うんですけども、やはり地方分権を進めていくにあたっては、国との権限と財源の非常に厳しい奪い合いというのがさけられない中で、この点についてはどういう方針でこれから望んでいかれるんでしょうか?

松井:国からの地方交付税制度で、あの制度は基準財政需要額というものがあって、要は此方側が努力しないほうが交付税は増えるんですよね。そういう形のルールであれば、それはなかなか努力しようという気持ちになりません。

分権改革というのは、地方が自立して自らの意志で物事を決定していくということですから、権限と財源の委譲を求めていくというのは当然だと思ってます。今の地方交付税総額と消費税総額はほぼ2割になってるわけですから、財源という意味で消費税の財源を地方に移すべきだという考え方は変えておりません。

吉村:これについては私、国会時代に高市大臣と議論したこともあるんですけども、今の地方交付税制度は臨財債とセットになってるような状況なんですよね。(今の制度が)もたないというのは多くの政治家、知見のある政治家は気づいてるんです。

ですので、地方が自立してやって仕組みをつくっていかないといつか崩壊しますんで、我々としては消費税の地方化をして、地方が自立するような仕組みをつくっていくべきだというのは平仮名、おおさか維新の会でも、これは当然続けて訴えていくということになると思います。

記者12:これはどういうやり方で、例えば期限の目途のような、そういうイメージは何か持ってらっしゃるんですか?

松井:平仮名、おおさか維新の会は、まだ20名未満の国会議員しかいないわけですよ。相手にすれば財源を奪われるなんていうのは、霞ヶ関からしたら許せない話です。これをやりきろうと思えば、まさに20名たらずの国会議員の集団では今言われるような時期とか、そういうことを明確に言えるようなものではありません。

記者12:吉村さん、すみません。

吉村:同じです。当然、政策として訴えていきますので、多くの有権者の方が支持していただければ、また数は増えてくると思うんですけど。やっぱりこれは議論して思いましたけれども、なかなか財源を簡単に譲るようなことは絶対に霞ヶ関はやりませんから、そういった意味では政治力がないと実現するのはなかなか難しいんだろうなと。

今は政策として訴えてますけども、数を訴えて有権者のみなさんの理解を増やしていくという活動をやらなきゃいけない時期だと思ってます。

記者12:すみません、長くなりました。ありがとうございました。

制作協力:VoXT