シリコンバレーのVC「500 Startups」創設者が日本のスタートアップに見出した可能性とは

DAVE MCCLURE氏と500のストーリー

Tech in Asia 2015
に開催

2015年9月8日に開催された「Tech in Asia Tokyo 2015」に500 Startups・Dave McCulure(デイブ・マクルーア)氏が登壇。シリコンバレーに拠点を持ち、主にシード期のベンチャーへの投資や日本のスタートアップ支援を行ってきたDave氏が「DAVE MCCLURE氏と500のストーリー」をテーマに、世界各国拡大する投資活動と「500 Startups Japan」の設立について今後の展望を語りました。

DAVE MCCLURE氏と500のストーリー

デビッド・コービン氏(以下、デビッド):今日は「初めてのファンドをどうやって始めるか」ということについて聞きたいのですが、あなたたちがユニークなのは、自分自身もスタートアップであるということですよね。

デイブ・マクルーア氏(以下、デイブ):まさに最初のね。

デビッド:創始者に質問したいのは、「なぜこの業界に人生を捧げることにしたのか」ということです。

デイブ:人生を全部捧げてるかどうかはわかりませんが、私は最初、プログラマーで、その後に事業家になりました。Paypalでマーケティングをしていたこともあります。

デビッド:どちらかというと創始者寄りで……我々がちょっと変わった投資家だと考える理由はいくつかあります。

創始者が必要なのはお金だけではなかったりしますし。我々はそんな、外側にいる創始者になりたかった。

デビッド:最初はみんな失敗するとか言いますが、あなたも……。

デイブ:先週とかね(笑)。

デビッド:あなたが失敗するって意味じゃありませんよ。ただ、そんな考えを覆すような何かってありますか? どんなことをしていたんですか?

デイブ:まず、資金集めはそもそも簡単じゃないです。ここにいる日本の投資家たちにも助けていただきました。

デビッド:規模はどのくらい?

デ―ブ:2,900万です。でも最初のほうは500万にも満たなかったくらいです。

デビッド:なぜそんなに難しかった?

デイブ:最初はとにかく難しいんです。投資ファンドは多くても、基金を始める人は少ない。

Paypalで働いていたときもお金が十分になかった。妻がGoogleで働いていたのにも関わらずです。やり始めは本当に大変なんです。貯金も切り崩して大金を集める。最初は他を引きつける魅力もありませんしね。

デビッド:でも、もう3つやってますよね。以前よりは簡単になりましたか?

デイブ:そうですね、メイン3つで2億ほど。比較的簡単にはなりましたよ。ただし業界によって様々なアプローチをしているので、それを説明するのは難しいと思います。

デビッド:説明とかはどんな感じなんですか?

デイブ:出来るだけ数多く投資をしています。小さな決算をいくつもします。1200くらいはしましたね。

デビッド:4ヵ月前は9〜50とかだったのに?

デイブ:でも忙しかったですよ。やはりリターンを求めるという性質上、お金は儲けたほうがいいです。ただし、みんな大きなリターンを求めていて、そういうのはたまにしか起こらない。いい投資家でも2パーセント位しか時間を割いてくれない。

デビッド:いまのところ、ファイナンスの人間にはいいふうにきこえますね。

デイブ:統計学とか数学とかやったことのある人には、しっくり話だとは思いますね。

デビッド:でも自信がない人が多い。なんででしょうか?

デイブ:ファンド投資家のイメージのせいだと思います。30〜40程の会社から、1日1〜2個の決定を下す。そんなものだと思ってしまっているからです。

たった100社から選ぶのはギャンブルに等しい。だから我々は少なくとも数百社は見るようにしています。そのほうが予想もしやすいですからね。

シリコンバレーからグローバルに投資する理由

デビッド:いろんなところにお金を使っているわけですね。最近ではあなた方は、海外投資基金だと思われてきてますよね?

デイブ:今はまだ少数ですし、アメリカ国外で多く活動していますので。

デビッド:それは計画していたのですか? もしくはアメリカのマーケットの動きに関係したものなのでしょうか?

デイブ:あえて国際的に投資するようにしています。最初の国は日本でした。ここ2〜3年で明らかになってきたことは、国際的な投資をする人がシリコンバレーにはそんなにいないということです。

そのおかげで、我々はシリコンバレーに資源を持ちつつ海外に詳しいというユニークなポジションとなっています。シリコンバレーでもイノベーションは起こっていますが、成長しているもののほとんどは外の世界で起こっています。

デビッド:投資活動の規模はどうやってはかっていくのですか? 新たな市場に参入する度に、信頼や人間関係を獲得していかなければいけませんよね?

デイブ:たしかにそうですね。我々のチームのほとんどは現地語を話す人で、合計20ヵ国語以上、約17ヵ国からのスタッフがいます。なのでスケールについては考えています。5人から85人まで増えました。我々は決算以外のサービスも考えています。

デビッド:5年で5〜85人ですか。よっぽど何か一貫したスタイルがあるんですね。

デイブ:そうですね。我々のプロモート内容は非常にベーシックです。機能的な商品であったり成長戦略であったり。

デビッド:投資のアイデアが一貫しているというのはわかります。でもそのせいでトラブルになったりはしないんですか? アメリカでは未だに「彼らは何してるの?」なんて言ってる人がいますし。

投資家としての日本との関わり

デイブ:変かもしれませんが、楽しいということが我々にとって重要な価値観になっています。#hfgst(楽しく仕事をやっつける)というブランドのテーマがあって、本当に取り組みたい仕事に取り組めています。楽しんで働く人を求めていますし、楽しいと思えないことに給料を払いたくはありません。それだと環境も良くないですから。

必ずしも適切なアプローチである必要もありません。自分の印象をよく見せるためにいいスーツを着るとかいうプレッシャーをかけたくないので。我々はかなり近づきやすい投資家だと思いますよ。

デビッド:親しみやすいっていうのは人は好みますよね。ところで世界での事業経験はどんなものがあるのでしょうか? 私たちは日本には詳しいですが、ロンドンや東南アジアなど、同じようなことが起こったりしているのでしょうか?

デイブ:ビジネスモデルには類似があります。各地で成功する方法というのはあります。

でも文化は違いますし、比較的カタい文化もあります。それに関しては、ロンドンなどと比較すると日本は難しい部分でもあります。ビジネスの前に、社会で求められるものというのがより多くあります。

デビッド:事業家になる際にということですか?

デイブ:そうです。そういった国で成功するのは難しいです。スタートアップというのは、いかに失敗を受け入れて乗り越えていくかということなので、メンツを気にしすぎる国ではペースが遅れてしまいます。メンツか保身、選べるのはどちらか1つなんですね。

2年前大阪で話していた時の日本は、人口減少や津波などでまるで火だるまのようだったのですが、それでも永遠に考えなければならないことではないです。変化を起こす必要があるのです。たしか当時、「時間はひりだすもの」というようなことを言った覚えがあります。

日本の社会にはそれはもう何かとたくさんあるのですが、私の妻は日本人で、子供は日本人のハーフ。投資家たちも日本人ですし、私にとって日本は繋がりの強い場所です。すぐにでも変わらなければ行けないことが確実にあります。そうしないと多くの困難に直面します。 

事業家であるということは、その現状を変える機会なのです。伝統的な価値観にとらわれすぎると、進歩は遅れてしまいます。日本の事業が繁栄していくためには、目に見えて透明に失敗することを容認する必要があります。そのためには変えなければいけないことはまだあります。

創業者と投資家とのバランス

デビッド:ではどうやって創始者に近づくのか教えていただけますか?

デイブ:失敗すればいいというものでもありませんが、成功への必須条件だとは思います。失敗続きの話は聞こえのいいものでもありませんしね。時には苦渋の選択を迫られる時もあります。

できればみんなサポートしたいけれど、そういうわけにはいかない。そういうステージにたどり着くのに苦労する人もいますし、また、我々も失敗することに対してお金を使いたいとは思わない。

効率重視で、しっかり利益があるかどうかが大事です。そういうものにはこっちも投資したくなります。

デビッド:だとすると、興味深い矛盾が見えたのですが、あなたは投資家でありながら創始者でもある。そのバランスはどうやってとるのでしょうか?

デイブ:いい質問ですね。なかなか難しい。事業家なだけに共感したいというのもありますが、やはり責任感をもった判断を下さないといけない。思いやりのある投資をしているつもりではありますが、ガッツに賭けてみたり、データに基づいて賭けてみたりします。

デビッド:5年で500組もどうやって見るのでしょうか?

デ―ブ:過去5年では数は20倍位にまでなりましたが、5年後の予想というふうには明確には見てないですね。

我々は地に足が着いた予測に基づいて行動しています。1年に1人につき20の投資を行うというのは今の所可能だと考えています。

現在、その判断を下す30人のチームがあります。3〜5年で数百人の投資チームになることが不可能ではないと見ています。

今年は約400件の投資をしたので、5年だとすごい数になりますが、そんな感じでどんどんやっていくと思いますよ。うまくいくことを願っています。

投資ファンドをする機会というのは実はけっこうあります。5百万人位の規模ならなんとかいけますし、10億だと結構いけます。

デビッド:百万人単位のその規模がどれだけ意味のあることなのか説明していただけますか?

スタートアップ市場のポテンシャル

デイブ:どれくらいの人が事業家なのかということは気になることだ思います。100人の従業員を持つ事業家だと、1千万ドル規模のビジネスになります。

世界中で少なくとも100人に1人が事業家になるポテンシャルがあると考えていて、つまり人類の1%は事業家に成り得るのです。そうすると、7千万人の事業家が世界に生まれることになり、この市場というのはバカみたいに大きいのです。何十億ドルとかいう話ではなく、兆の世界なんです。

投資ファンドは簡単とか思われてたりするんですが、実際にはかなりの大金を扱っています。そしてこれからの10年で、その市場は10倍にも100倍にもなると考えていますし、そうすべきだとも思います。

投資ファンドやテクノロジー系のスタートアップにはイノベーションが存在します。それによって経済的に繁栄していくと思います。なのでどの国でも規模を大きく見てます。

デビッド:そのような大規模な経済界の動きに、自分の会社は免疫がありますか?

デイブ:上り下がりはいつでもありますが、好景気で儲かる会社があれば不景気で儲かる会社もありますからね。

デビッド:安定して投資していけそうですか?

デイブ:業界をまたぐ多様化は我々にとっては好都合です。中国とかブラジルの成長とかを気にする必要がありませんし、大きな会社があると言うのは投資家にとってもチャンスです。そういった国も金融サービスを使っていますしね。これから数年でさらなる説明がなされると思います。

「500 Startups Japan」の設立

デビッド:4ヵ月前、こうして日本に戻ってくると話していましたが……。

デイブ:そうですね、実はちょっと紹介したいことがあります。

デビッド:500 Startupsの長は誰になったんですか?

デイブ:ジェームズ・ライニーといいますが、今日本に来ています。

(会場拍手)

ジェームズ・ライニー氏(以下、ジェームズ):よろしくお願いします。

デビッド:3千万ドルの?

ジェームズ:そうです。

デビッド:29が自分の手取りで(笑)? おめでとうございます。じゃあちょっとご自身について紹介していただけますか?

ジェームズ:子供時代を長く日本で暮らしていましたので日本語が話せます。12歳のときにアメリカに引っ越して、あちらの大学を卒業後にまた日本へ戻ってきました。

最初はJP Morganで働いて、その後に共同創始者に出会い、起業しました。何度か失敗して、medium.comの日本版のようなものでようやくうまくいきました。

そこで最終的に出版されたストーリーがあり、『ビリギャル』というものなのですが、ボックスオフィスで2千4百万程にまで成長しました。

アイアンマン3で2千百万くらいでした。なかなかヒットしましたね。今頃彼らは幸せでしょう(笑)。

デビッド:そうですか、では基本的なことから聞きたいのですが、(日本に進出するにあたって)何かおもしろい名前をつけましたか?

ジェームズ:普通に500 Startups Japanというのですが、調査した所、サクラとかサムライとかオリガミみたいなのは好まれないみたいです。

デイブ:500モチとかも考えてたけどね。

ジェームス:結局その路線でネーミングはしないことにしました。

デビッド:そうなんですか。500 Startups Japanはあなただけ?

ジェームズ:いや、違いますよ。1ヵ月ほどでアナウンスされると思います。

デビッド:全部教えてもらえると思ってたのに。

ジェームズ:楽しみにしてて下さい。

ジェームズ:3千万ドルという大きな数字を、最初に日本のファンドとどう比較しますか?

デイブ:15〜16の投資をすると思います。特に目標としている数字はないです。将来はもっとしたいですね。

デビッド:それにしても400〜500というのは大きいですよね。

ジェームズ:経済の影響もあると思います。三千万ドルが東南アジアとかだったら五千万ドルにもなったりしますしね。

デビッド:幸先よさそうですね。

ジェームズ:投資の追加も可能ですし。たくさん投資しようと思ってます。

日本のスタートアップ界にあたえるインパクト

デビッド:そうですか。もう少し個人的なことをお聞きしたいのですが、今は投資家ですが創始者でもあったあなたが、創始者に戻らず投資をする理由って何ですか?

ジェームズ:500のスタートアップを日本で成功させるという、とてつもないインパクトを起こそうと考えています。日本はベンチャーブームだとか言われていますが、かつて資本がなかった部分だけと比較しているにすぎません。

日本の事業家たちを合計しても120億ドルの規模なので、実際アメリカの5分の1の規模しかありません。なのでまだまだポテンシャルのある人材がが存在するのです。

デビッド:日本はビジネスにとって友好的じゃない場合もありますよね。失敗をする人もいると思いますが、それについてはどうお考えですか?

ジェームズ:リスク回避というのは確かに問題ですが、最近では、事業を追求する賢い人たちは日本にもいます。リスク回避というのは、何もしなくても昇給ができたりしたバブル時代のなごりだったりもします。

デビッド:いい話ですね。

ジェームズ:そうなんです。でもそれも変わりました。大企業は解雇をしますし、かつてのメリットであった給料というのも必ずしもいいとはいえなくなってきている。保険も半額です。そうなると起業のメリットがより目立つんですね。見方というのは確実に変わって来ています。

デイブ:5年前より多くの資本が日本にはあります。投資家の入る隙があることを願いますが、3千万ドル単位の運用を考えています。最低でも100社スタートさせられたら、事業家にとってもリスクを取りやすい環境になると思います。

ジェームズ:失敗の後に職を得られないのではないかと恐れる人がいます。しかしハングリー精神やクリエイティビティを求める進んだ会社もあります。失敗しようが会社はポジティブになってきています。

デイブ:三木谷(浩史)さんなどといったすばらしいロールモデルも日本にはいますから。そういった人たちをプロモートしつつ、スタートアップを金銭的に支援していくべきだと我々は考えています。

デビッド:小さな決算でしていくというのに関して、東京以外も考えていますか? もしそうならどこでしょうか?

ジェームズ:人口の4分の1は東京にいますからね……。基本的には東京中心です。でも関西には京都大学といった優れた大学もありますので、気にはなりますね。かなりオープンに考えているので、東京という場所が絶対ではないです。

デビッド:あなた自身の価値ってどんなものですか? 投資家に「ジェームズじゃなきゃだめ」と言わせるものは何ですか?

ジェームズ:共感ということを挙げますと、投資家たちの直面する困難などの不満を私もすごく理解できますし、そういった要素は明らかにあると思います。

デイブ:日本からシリコンバレーに会社を持っていく可能性もあると思っています。サンフランシスコにあるプロジェクトに我々はまだ取り組んでいます。アメリカの様子が見たいという会社もあるでしょうし、そういったことも考えています。

デビッド:ファンドを受ける人たちが、あなたに「イエス」と言わせる要素はなにかありますか?

ジェームズ:説得力ですね。「この人に尽くしたいか」「従業員はなぜこの会社で働いているのか」といった部分について考えます。そして、人を説得するCEOとしての影響力、ビジョンの伝達能力、会社のミッションが意味のあるものか、といったことについても注目します。

デビッド:そうですか。で、誰がパートナーなんですか?

ジェームズ:秘密です(笑)。

デビッド:とにかくおめでとうございます。今日はありがとうございました。

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