「彼は痩せた少年でした」ベッカムとの最初の出会いをアレックス・ファーガソン氏が語る

Stanford Graduate School of Business Former Manchester United Manager Sir Alex Ferguson: Practice, Practice, Practice #1/3

プレミアリーグのマンチェスター・ユナイテッドで27年間の長きにわたって監督を務めたAlex Ferguson(アレックス・ファーガソン)氏が、Stanford Graduate School of BusinessでベンチャーキャピタリストのMichael Moritz(マイケル・モリッツ)氏と対談。サッカーの第一線で監督をし続けてきたからこそ見える、ビジネスにも通じる視点とは。このパートでは、マンチェスター・ユナイテッドが生んだ世界のスーパースター、デビッド・ベッカム選手との出会いについても語られます。

マンチェスター・ユナイテッドの「責任」

マイケル・モリッツ氏(以下、マイケル):ご紹介いたしましょう。プロフェッショナルスポーツ界の最も偉大なコーチ、アレックス・ファーガソン氏です。

(拍手)

アレックス・ファーガソン氏(以下、アレックス):どうもありがとう。

(拍手)

マイケル:今夜はとてもおしゃれですね。

アレックス:ありがとう。

マイケル:本当に。

アレックス:母がよくお世話をしてくれますもので。

マイケル:(笑)。会場を見る限り、今夜おしゃれをしているのは私たち2人だけのようですね。どうされますか、アレックスさん。もしこの会場にいる小汚い群衆が選手で、偉大なるユナイテッドのバスに乗り込みたいと言ってきたとしたら?

アレックス:そうですね、まず私は監督でしたから、皆、髪を短くしてもらわなければなりませんね。すべて剃ってしまいましょう。選手に髭を生やしたままバスに乗り込むのを許すマネージャーの気が知れませんね。まず私は許しません。

マイケル:なるほど。

アレックス:(笑)。もしそれを許すとしたら、自分の力が衰えたということになるでしょうね。私が見たいのは、マンチェスター・ユナイテッドの代表として、自分のチームにはユナイテッドのブレザー、白シャツにネクタイを身に着けてきてほしいですね。

マイケル:ではもし選手がそれに従わなかったらどうされますか?

アレックス:私は、そういうことは私たちが選手にしなければならない教育の一部だと考えています。マンチェスターユナイテッドの選手として、彼らが背負わなければならない責任です。

それは訓練です。ユナイテッドでは特に強調されていた訓練です。そして、現在も同様です。ルイス・ヴァンガールでさえも、です。みんな格好よく。もちろん彼らは選手でなく監督席に座っている人ですけど、私はブレザーにフランネルが好きですね。私のスタイルです。

マイケル:なるほど。

アレックス:髭を生やしている人たち、すみませんね。

一同:(笑)

マイケル:剃ることをお勧めなさるでしょう?

ユースの再構築が重要

マイケル:さて、土曜日の試合はご覧になられましたか? エバートンの試合です。

アレックス:ええ。

マイケル:どう思われますか?

アレックス:とてもよくやったと思いますよ。実際私は厳しい試合になると思っていました。それにエバートンも一番強いチームを出してきましたからね。たしか、過去3年負けてきましたから、難しい試合になると思ったのですが、楽に勝っていましたね。完全にコントロールしていましたし、システムを少し変えてやっていましたね。

エバートンは参っていましたね。敗北からユナイテッドが復活する様子を見て、私は嬉しかったですね。アーセナルには悪い負け方をしましたからね。その次の試合で勝利を挙げましたから、批評家たちに最善のアピールができましたし、同時に、敗北を乗り越える決意をしたという表れにもなりましたね。

クラブ・ユナイテッドにとってこれは簡単なことではないのですよ。なぜなら、負ければ見出しを飾ることになり、勝てば裏表紙に載るのですから。そんな違いがあるのです。

マイケル:裏表紙に載ったほうがいいのですね。私が正しく数えていれば、土曜日のチームは選手18名のうち、あなたがサインした選手8名が出ていたと思うのですが、団結したチームを作るために皆をまとめるには、どれくらいの時間がかかりますか? 年間必要ですか、それともシーズン内でできますか?

アレックス:もし、現在試合に出ている選手と前シーズンからの5人、今年からの5人となると難しいですね。特に、選手たちは海外から来ていますからね。ディビジョンは特に非常に難しいですね。我々は海外から選手を呼んでくるときは、初めのシーズンは慣れてもらって、セカンドシーズンはまあまあという感じで良いとしています。

しかし1、2の選手は初めからとても素晴らしくて、我々が驚くこともあります。私の時は、もちろんルイス・ヴァンガールの時とは状況が違って、私は年功がありました。私は27年間あそこにいましたからね。

私がユナイテッドに行って初めの仕事は、あのサッカークラブの基礎を築くことでした。私が思うには、ほとんどのマネージャーは、簡単に言うとチームの事を考えると思うのです。特に初めのチームは、業界ではきちんとした成果を出すことになっています。

私はそのように考えたことは一度もありません。私はクラブのユースを再構築することによって基礎が築かれると思いますし、若い選手にチャンスが与えられると思うのです。私の決意は変わることがありません。私は初日にディレクターにそれをそのまま伝えました。

もちろん、初めのチームに関して心配もしました。2番目もそう。私はゆっくりと時間をかけました。若い選手のスカウトと選考と指導に一番集中しました。

勝利以外は考えたことがない

マイケル:なるほど。エバートンの試合が終わった時点で、ユナイテッドはイングリッシュ・プレミアリーグで第3位にいます。10月も末ですし、この会場の人たちはビジネス学校に関わる人たちです。

ビジネスで重要なことは予想をすることです。今日ユナイテッドを監督しているとして、まだシーズンが長く続くということを予期できたでしょうか? クリスマスも試合をしなければなりませんし、他にも大会やチャンピオンシップもあります。今現在3位だということを踏まえたうえで、今シーズンの終わりには結局どこまでいけるかという予想をどのようにされますか?

アレックス:そうですね、具体的に考えるならば、私のアバディーンでの仕事を考えられるかもしれません。アバディーンはスコットランドの北部にあり、サッカー選手の中心部からは離れています。私は予想を築きあげなければなりませんでした。選手のためにも。

しかしユナイテッドの場合は、クラブにやってくるすべての選手への期待に溢れています。土曜日の試合後にも、彼らは期待を背負っているのです。彼らの予想は勝利です。それは絶対的で、ヨーロピアンカップであっても、ただの大会であっても、彼らは必ず勝たなければならないのです。

それが彼らの考え方です。勝利1つに絞られています。疑問の余地はありません。私はマスコミに対して一度も、必ずヨーロピアンカップで勝つとか、そういった話をしたことはありません。記者会見ではいつも、何かと勝利できたらいいですね、というようにしか言いません。調子に乗ったことを言って、ヘッドラインを飾ったりしたくないのでね。

しかし、心の底では、すべての試合に勝つつもりでいます。それが私のメンタリティーです。私は試合に負ける予想をすることなど、一度たりともありません。

1月にはリーグの結果を予測できている

マイケル:なるほど。では今年リーグ優勝する可能性があると、現段階で選手たちに話されますか?

アレックス:いやいや。

マイケル:個人的にはいつ頃から計算予想されるのですか?

アレックス:信じられないと思いますが、毎年1月初頭です。以前は対戦相手すべてが分かりましたから、対戦相手の戦いのポイントを予測していました。それに予測が大きく外れたことは一度もありませんでした。本当に。

あるときには、ある対戦相手に対しては3ポイント取らなくてはならないだろうと考えましたが、それもかなり正確な予想になりました。毎年それをしていましたよ。それが勝利に導いたのでしょう。チャレンジでしたね。

マイケル:各トップクラブやリーグすべてにおいて、毎回考慮されますか?

アレックス:トップクラブに対してはそうします。トップ4クラブですね。1月1日までには主なチャレンジが誰になるかが分かるのです。それで以前は、それを自分の胸の内にとどめ、誰にも話しませんでした。私は大きく外すことはありませんでした。

マイケル:それはすばらしいですね。

アレックス:我々が負けた年も分かっていました。チャレンジの中での危険についても分かっていました。

マイケル:1月にはほぼ正確に、ユナイテッドがシーズン末にはどうなるか、いくつもの点で予期できるとのことですね。

アレックス:そうですね。

アレックス・ファーガソンのキャリアを振り返る

マイケル:少し話題が変わりますが、ビジネス全てにおいて2つの事は関連があると言われています。1つは才能を見極め判断することで、もう1つは鍛錬することです。そこで少し過去に戻ってください。1957年です。そこには揉み上げを伸ばした青年がいました。

アレックス:(笑)。

マイケル:彼はアレックス・ファーガソンといって、クイーンズパークというグラスゴーにあるスコットランドのクラブで初めのシーズンを迎えようとしていました。この選手の才能をどう評価されますか?

会場:(笑)。

アレックス:そうですね、飛びぬけていますかね。

会場:(笑)。

アレックス:私はスキルス・スコットランド・グラスゴー、スコットランドユース、スコティッシュ・アマチュア、そして全スコットランドのチームでプレーしたことのある数少ない選手のうちの1人でした。しかし私は特に目立った選手ではありませんでしたが、よくゴールを決める選手でした。実際、ユナイテッドにいた頃は、ほとんど毎朝ビデオ解析室に入っていました。

ある朝、我々のゴールキーパーのコーチであるエリック・スティールがこう言いました。「ちょうどあなたのゴールスコアの記録を出していたところですよ」彼が言うには、記録がなかなかすごくて、300試合中179ゴール決めていたとか言うんです。

そこで私が言いました。「それはリーグでのゴール記録だけですよ。大会記録はどこ行ったんだ? 捜してこよう」しかし見つけることはできませんでした。大会ゴール記録は全く見つかりませんでした。なぜか知りませんが。

しかし私はゴールを決める選手でした。何にも優勝しませんでしたがキャリアは立派だったのです。セルティックが独占状態だったときに、私はランジャーズに行きました。彼らはちょうどジョック・ステインの下でヨーロピアンカップ優勝したところで、素晴らしいチームでした。そして倒すべき敵がいました。しかし私はそれを楽しめました。良いキャリアになりました。

選手にとってはプレーしている時が人生で一番いい時なのです。ですから私は自分の選手に、引退してコーチになるように勧めたりはしません。私は彼らにバッジを取るように勧めます。私はエンジニアで、後にフルタイムでサッカーをするようになりました。

私は22歳になるまでツールを作るエンジニアで、サッカーはパートタイムで行なっていました。その時私は決心したのです。もうエンジニアに戻らない、と。

8度の退場を記録した選手時代

アレックス:それで、自分の全ての監督のバッジを取り、試合に残る準備をしました。誰でもそうですが、何かをしたいと思うなら、準備をしなくてはなりません。何かの勉強をするとか、私の場合では監督のバッジを取るとか、私は大事なことだと思いますよ。

マイケル:若きアレックス・ファーガソン選手はフィールドでは、どんな態度だったのでしょうか?

アレックス:私の息子ジェイソンからの質問でしょう。悪かったです。

マイケル:何ですって?

アレックス:悪かったんです。

マイケル:そうですか。(笑)

会場:(笑)

アレックス:8回退場になりました。

マイケル:何ですって?(笑)

会場:(笑)

アレックス:分かりましたよ。でも私は誤解されていたのです。

一同:(笑)(拍手)

マイケル:なぜ退場になったのか、何か覚えていませんか?

アレックス:毎回全部覚えていますよ。

マイケル:そうですか。

アレックス:ええ。ほとんど復讐ですね。それか、遅いタックルか何かでしょう。または相手の顎に肘を突いたりとか、そんな感じですよ。

会場:(笑)

アレックス:私は走り方がおかしくて、このように肘を突きだして走るものですから。それでいつもトラブルに巻き込まれてしまったわけです(笑)。マットがそこで笑ってますよ。私は肘のせいでトラブルに巻き込まれていた、そうなんです。

マイケル:肘のせいですね。

アレックス:はい。

デビッド・ベッカムとの出会い

マイケル:では、それから何十年か後に、他の人の才能を判断することになった件についてお話をしましょう。特に2人の選手についてお伺いしましょう。デビッド・ベッカムと、もう1人については後にお聞きしましょう。では、ベッカムとは初めどのように出会ったのでしょうか、彼はその時いくつでしたか? 初めて彼をご覧になった時、彼はどのような選手でしたか?

アレックス:そうですね、デビッドと出会ったきかっけは、デビッドの住んでいた地域のロンドンでのスカウトでした。マルコルム・フィジェンという校長先生がデビッドに目をつけたのですが、インパクトを与えたのはボビー・チャールトンの方でした。

ボビーはその時サッカー学校を持っていて、ベッカムはバルセロナにあるボビーのサッカー学校への籍を獲得しました。ボビーが帰ってきたときに、あなたが必要としている子供を見つけた、と言ってきました。それで私はチーフスカウトに聞いてみました。彼は「もちろん、彼は来月ここに来る」と言いました。実はちょうど偶然そうなったのです。それが始まりとなりました。

彼はその時11歳でした。彼は小柄で痩せていて、背が低く、体格など全くありませんでした。しかし彼には素晴らしい才能がありました。ボールのコントロール、蹴ることは本当に彼の得意分野でした。それに、彼の両親はユナイテッドのファンでした。彼の祖父はトッテナムのファンでしたが、彼と両親はユナイテッドのファンだったんです。それで彼は試合を見に来たことがありました。

我々が彼と連絡を取った後は、私たちがロンドンに来る度に彼を試合に招待しました。実際、ロンドンのその地域であったウェストハムの試合では、彼はボールボーイを務めました。彼は確かにユナイテッドに来るつもりでした。彼はトッテナムでしばらくトレーニングを受け、確か、フーラムかどこかでもトレーニングを受けました。彼はユナイテッドに来たいと思っていたので、ずっとユナイテッドに来る定めだったのです。

そして92年クラスはユースカップで優勝したのですが、デビッドはまだ小さかったので、セミファイナルまでチームに混ざることができなかったのです。そして数カ月のうちに、しゅっと背が伸びて6フィート(約182センチ)になり、痩せていましたが、成人の体ではありませんからね。

会場:(笑)。

アレックス:そうなんですよ、彼は痩せた少年でした。

会場:(笑)。

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