「薬ネット販売」は規制改革の突破口

関口:ちょっと抽象的な話をしていってもなんですので、少し個別、具体例をやっていきたいと思うんですけれども。三木谷さんがこれまで戦ってきたものいろいろあるわけなんですが、最近で言うと薬の問題ってありますよね。

三木谷:ハハハ(笑)。

関口:これもある人に言わせると、楽天のなかに占める薬の売上なんて1%もたぶんないんじゃないかと。ですね? それしかないものに、なんであんなに固執してやるのと。そのあたり、どうなんでしょうか。

三木谷:いま産業競争力会議で言ってるのは、「対面・書面原則の撤廃」っていうのを言っているんですね。たとえば、薬の販売もそうですけども、たとえば遠隔医療、これは基本的にはどこにも書いてないんですけども、禁止されてるんですよね。それから遠隔教育も、正式な単位としては、文科省のガイドラインで認められないと。それから色んな政府の関係のファイリングにしてもですね、すべて基本的には「対面書面」というものが中心になってるんですよね。まあ、欧米なんか行くと、どちらかと言うとデジタル・ファーストじゃないですけど、インターネットがあって、一応、補完的にそういう紙も仕方ないねっていうことになっているんで。それの一番象徴的なものが薬のネット販売っていうことだと思うんですよ。

で、まったくわけのわからない、最高裁でケンコーコムさんが勝訴されたんですけれども。そういうことがあっても、また未だになんかよくわかんない理由をつけてやっぱり対面販売ではなくて、代理で買ってもいいんだけれども対面じゃないといけない、とかですね。それから薬剤師の人は基本的に診断しちゃいけない、診療しちゃいけないんですけれども、やっぱり薬剤師が対面で売るんだと。子どもが買いに来て渡してもいいんですけど対面なんだ、ということでね。大変正直に言って「意味がわかんねえ」というなかにあって。もうこんなもん通せないんだったら、総理とか内閣府にも言っているんですけれども、こんなもん通せないんだったら、規制改革なんかできませんよ、ということがひとつ。

それから、この対面書面原則を撤廃することによって、ものすごいビジネス・ポシビリティ(可能性)が皆さんの前にできるわけですよね。これは極めて重要な話で、一番大きな、ちっちゃいけど最初の砦が、この薬の問題だと思っているっていうことです。

関口:そういう意味ではかなり象徴的なものだと思うんで、それを正面突破し、裁判所の判断も含めてですね、勝ったということで言ってもいいと思うんですね。まあ、役所側がまた四の五の……。

三木谷:すごいんですよ、このわけのわからないファイトバックが、本当に。

外圧によってではなく、日本が自ら変わる革命を

関口:ちゃんとテレビ会議システムを入れなきゃいけないとか、色んなことを言ってるんですけれども。そういうのをご覧になってですね、熊谷さんからご覧になって、この次の第二の矢と言いますか、第二のテーマ。ここをやっぱり突破したいと。さっき税金の話ありましたけど。どの辺に球を投げていこうと考えてらっしゃいますか? 第二のテーマですね。今、薬の話ありましたけども、規制改革ということで考えたときに、どの辺にその規制改革を打ち破るために、テーマを政府にぶつけたいかということですね。

熊谷:ちょっと考えてもよろしいでしょうか。すいません。先にちょっと飛ばしていただいて。スルーでお願いします(笑)。

関口:じゃああの、森川さんにお聞きしたかったんで。じゃあ森川さんからご覧になって、森川さんは大企業とベンチャーと両方経験なさって、それからメディアも経験されてるということで言うと、日本のここを変えなきゃいけないということで考えますと、どういう点になりますかね?

森川:そうですね。やっぱり世の中って常に変化してるじゃないですか。いろんな国の歴史を見ると、変わるサイクルっていうのがいくつかあると思うんですよね。ま、経済もそうだと思うんですけど。で、日本は過去色々と振り返ると、やっぱり変わるタイミングが、何か外圧があって変わることっていうのが、圧倒的に多かったのかなと。で、今回はそれを、変わるエンジンを作ろうとしてることだと思うんですよ。

で、変わりたくない文化がある国ほど、変えるのっていうのは大変で。ある意味、昔の車で言うと「押し掛け」っていうのがありますよね。なかなか動かない車をブルンブルンとやって押していくみたいな。まあ(会場の)皆さん知らないかもしれないんですけれども。それに近いものがもし日本にできたとしたら、これはたぶん革命に近いようなことになるんじゃないかなっていう期待をしていまして。なので今回、ITというものとか、経済を変えるとか、こういう団体も含めて、そういうものができたら、あとで振り返ったときに歴史の教科書に載るような、そんなことになるんじゃないかという期待をしています。

日本のなかでケンカしててもしょうがない

関口:そういう意味で言うと、森川さんがやっていらっしゃるのは、ある意味での通信革命だと思うんですよね。で、LINEの前にSkypeって今もありますけど、これが出てきたときには日本の通信業界はもう総反対。そんなものはフリーライダーであるということで言ってたんですが。ある段階から、スマホを売ろうとした瞬間から「禁断のアプリ」とか言って、コロっと変わったと。で、今回はdocomoさんとLINEが提携をすると。だいぶ世の中変わったなと思うんですけど。そのあたりどうご覧になりますかね。

森川:そうですね、僕の性格上、敵は作らないという性格なもんですから(笑)。あまりお互い、戦ってもしょうがないんですよね。結局僕たちがやらなきゃいけないのは、中で戦うことじゃなくて、外と戦わなきゃいけないことなので。日本のなかで喧嘩しても、正直しょうがないのかなということを考えると。お互い、強いところと組むことで、どう世界で勝てるのかっていうことを、もっともっとポジティブに考えたいなと思うので。それはまあ企業同士もそうだし、政府との関係もそうだし、なるべく強い部分を、手を取り合って新しい価値を作るっていうことができたらなとは思っています。

関口:そうしますと、通信業界とかどっからか足を引っ張られたりとか、そういうのはあまりないですか? 今は。

森川:あの、そういうことは考えないようにしてますね。はい、常にポジティブに、前向きに考えるようにしてます。

関口:まあいい方向だと思うんですけども。日本では2006年頃っていうのが結構揉めた時期でありまして。ちょうど小泉・竹中改革のときでありまして。いろんな貧富の格差が開いたとか、いろいろ後で言われるわけなんですけれども。私からすると、そのときはどんどん規制緩和とか進んで、新しいものを産み出して、日本の経済も少しよくなって、少なくとも大学生が就職口に困るというようなことは、たぶんなかったと思うんですよね。

そのあとのむしろ、政権の運営のほうが問題じゃなかったかと。そのきっかけが安倍さんであってですね。このあいだ、安倍さんにも申し上げたんですが、安倍さんが(総理に)なって安倍さんが放り出したあたりから、日本が多分おかしくなったという意味で言うと、彼は時計を2006年に戻してですね、もう一回、自分でやろうと思ったことをやろうと今されていると思うんです。

インタラクティブ性のないメディアはダメ

関口:で、そのときにもうひとつ、テーマになったのが、いわゆるメディアの話。これは堀江さんとか三木谷さんが口火を切った話だと思うんですけども。いわゆる通信と放送の融合っていうのがありまして。これ、ずっと言われてるんですけれども、日本はなかなか進まないと。で、今回も総務省を中心に、スマートテレビとか、4K8Kのテレビとか、今言ってるんですけれども。世界のインターネットの流れと比べると、どうもちょっと流れが違うんじゃないかなという気もするんですけど。その辺、三木谷さんご覧になってどうでしょうか?

三木谷:なかなかメンバー的にしゃべりづらいんですけども(笑)。たとえば、電子出版やってるじゃないですか。で、アメリカの書籍マーケットっていうのは毎年10~15%ぐらい減衰していったんですよ。みんな本を読まなくなって。ところが電子書籍っていうのが出てきて、みんなさらに小さくなるのかなと思ったらですね、いきなり今度は10~15%で、アメリカの書籍マーケットっていうのは大きくなっていってるということで。

やっぱりメディアっていうもの自体が、インタラクティブ性がないものっていうのは結構厳しくなってきましたよね。それは電子書籍であれ、放送コンテンツであれ、何でも一緒だと思うんですけれども。LINEもそうなんですけど。やっぱりコミュニケーション自体が、基本的にエンターテイメントの大きな源泉になってきてると思うんですよ。だから我々がやってる電子書籍でも、今の電子書籍から、将来的にはよりインタラクティブで、よりSNS的な電子コンテンツに変わっていくだろうっていうことでやっていて。

私が思っているのは、色んな話を聞いてると、「水は低いほうに流れるんだ」と。どんなにせき止めても。だから「前のめりで、多少今損しても、先んじてやるんだ」というふうに見えるんですけれども。どうしても日本のメディアの人は、「いや、そこの水を、なんとかダムを作ってせき止めるぞ」という感覚がしていて。せっかくチャンスで売上げをガンガン伸ばすチャンスなんで、もっとこうインターネットにシフトして、テレビの画面をどうやって守るんじゃなくて。「スマホとかパソコンとかタブレットも俺たちの画面にできるじゃん!」と思って前向きにやったほうがいいと思うんですけど、そんなことないんですかね。

テレビは常に「受け身」のメディア

関口:じゃあ、亀山さんお願いします。

亀山:まさにそのとおりだと思いますね。それに対してはまったく異論ないし。僕らはテレビの番組は作っていますけど、テレビジョンは作っていませんから。先ほどの4k8kとか言われても、我々が出したイノベーションの技術ではなくて、要するに技術会社、テレビジョンセットを作っている会社だったり、カメラを作ってる会社だったりが作ってる技術。ですから僕、ドラマとか作っていまして、いきなりハイビジョンされたときに、セットの釘が目立つから、セットの作り方をどう変えたらいいのかとか。大画面テレビになっていったときに、アップのサイズはどのサイズにしたらいいのかって、真剣に現場で考えるんですね。

で、大画面テレビになったときに、これからアップが多くなると、当然テレビってアップが多いんですけど、嫌われるって思ったんですよね。つまり役者の顔ばっかりはうざいと。それで引き画を多くすると、数字が下がったんですよ、視聴率が。なぜかというと大画面テレビをお茶の間に置いといて、そのときあった14インチ、まあ、20インチ以下のテレビを子どもさんが自分の部屋に持っていけたんですね。で、本来茶の間で皆で見ているはずのテレビじゃなくて、自分の部屋の同じ画面の大きさのテレビを見始めたんですよ。だから普通にアップに戻したら、また数字が上がってくるわけですよね。「なんだ変えなくてよかったんだ」ってことを常にやる。ですから、テレビ局って実はかなり受け身だと思います。

経団連の発表のみが今までは経済の動向の発表だって、それを記事にすればよかったんですね、テレビの記者さんたちは。だけどもう1個ここに価値が生まれたときに、彼らは取材してきたら、考えなければいけないわけですよね。

つまり今メディアって考える人を作らないと、何が正しいかじゃなくて、何を発信するか、それによって世の中が変わるっていう、なんて言うんですかね、意識を持って、正義感を持って、それを考える人を育てなきゃダメなんだろうなって、今ふと思いました。与えられたものを間違いなく伝えるだけじゃなくて、考えて報じていくっていう。

これは自分がドラマ作っていたときに、考えたけど失敗して、いざ前のままに戻してみたら数字が戻ったっていうのと同じことで。イノベーションとか技術革新に対しては、常にテレビは受け身ですから。今回に関してはというか、この場に僕がいること自体が2006年からすると歴史的瞬間なんで、皆さんそれに立ち会っているっていうことだけはご理解をいただきたいなというふうに思うんですけど。ですからちょっと開いていかないと、開いていかないとっていうか、もう遅いんですけれど、早めにどんどんスピード感でやっていきたいと思っています。