2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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庄野裕晃氏(以下、庄野):日本からはNOSIGNERの太刀川さんお願いします。
太刀川英輔氏(以下、太刀川):素晴らしいお話でしたね。とても勢いのある都市のお話を伺い、ケーススタディとして非常に参考になったと思います。あらためて都市について考えてみましょう。
都市は何のためにあるのでしょうか? 大阪は貿易によって発展した典型的な都市です、安いものを高く売って利益を得る貿易は、都市の重要な機能でもあります。
同じように発展してきたのがシンガポールです。こうした都市は交易にふさわしい流動性を持っている必要があるため、海や川に面しています。
都市が持つ他の機能についても考えてみましょう。京都には海がありません。京都は三方を山に囲まれている砦でした。コミュニティーをきちんと守ることができる場所をつくり、コミュニティーを安定させるという機能があるのです。類似例として城壁に守られていたローマが挙げられます。
次に流動性の高さから、さまざまなコンテンツが集まる場所として都市がある場合があります。そうやって発展した都市の大事な機能に、投資があります。例えば不動産に投資をして利回りを得られるかどうかが、都市の発展にとって重要なのです。
東京は多くの投資によって発展してきました。それはシンガポールもバンコクも同じような状況だといえると思います。
都市の発展において重要なことのひとつは、コントラストです。生活水準の高い人と低い人がいたり、土地や物価の安いところと高いところがあったりすることでコントラストが生まれます。
現在の東京は成熟しているがために、コントラストが生まれづらい状況になっています。すると「このマーケットに投資をして成長が見込めるのだろうか」という問題が出てきます。
守りという意味ではどうでしょうか? われわれは衣食住が足りた生活をしていますが、ある種の不安感を抱えています。
しかも、東京は横浜と並び、保険機関の調べによると世界一危険な都市でもあります。震災の不安がありますね。コミュニティーのためのセーフティ機能をどうしていくかが問題です。
では、流動性という点ではどうでしょうか? 大企業などは組織が縦割りになっており、一つひとつのコミュニティ同士につながりがなく、ある種のヒエラルキーができてくるため、流動性が下がっている状況があると思います。
とても希望あるお話をしてくださった二人の後で、東京代表として私が話をして、いきなり「東京は大丈夫か?」という話になってしまって、すみません。ですが「この4つのことをどうやってポジティブに転換していくか」こそが、東京がイノベーティブ・シティになっていく鍵だと思います。
太刀川:ケーススタディとして、東日本大震災での経験をお話したいと思います。
東日本大震災が発生したときには、なにが起きたかわからず、無力感を感じました。クリエイターが被災した人のために何ができるか、到底わかりませんでした。
私の経験上、最も早い段階で必要なのは回復ムーブメントをつくっていくコミュニティでした。震災の40時間後には「OLIVE」というサイトを立ち上げました。このサイトは東北を助けたいけれどなにもすることができないと感じていた人が集まってつくったものです。
仮設トイレやホッカイロのつくりかたなど、多くの人が可能な範囲で情報を提供してくれました。このサイトは開設した週のうちに100人以上ものコントリビューターを集め、100以上のアイディアを4カ国語に翻訳して、3月19日にはフリーペーパーとして配布することができました。同じ目的をもったコミュニティーがあったからこそ、成し得たことです。
これは「安全ではない街からコミュニティーをつくることで、安全をつくっていこう」という、いわゆるソーシャルキャピタルの例です。ネットワークをつくることによって、私たちは安全を欠いた場所であっても、安心感を持って生きることができるようになってきます。
これからの東京をどうすべきかについては、さまざまな道があると思いますが、東京が成熟して個人社会になっているところで、もう一度コミュニティーをつくることは、都市が再活性化するために大切なテーマだと思います。
コントラストをつくらなければならないという話がありました。市場や新しい仕組みをつくるということです。東日本大震災が起こった後、世界で最もひどい災害を起こした場所に世界に冠たる防災産業の拠点ができたら、格好いいと思いました。
そこで仙台市で私たちと一緒に取り組んでくれる企業を探し、高進商事株式会社と防災キットを開発しました。将来的には10兆円の市場規模が見込まれる防災産業の拠点が東北であったらいいなと思います。
東京にこうした新しい市場を生み出すためには、「いま暮らしている人たちがどんな人たちで、どんな新しい価値を提供できるのか」を考え直さなくてはなりません。東京がイノベーティブ・シティになるためには、マーケティング・アクションを起こしていかなくてはいけないのです。
東京は十分に成熟してスローダウンしています。全体にゆっくりと下降していくなかで、私たちはどこであればプラスに転換できるのかを見定めなくてはならないのです。
太刀川:東京に住んでいる方はご存知だと思いますが、東京都の舛添都知事が東京の全世帯に防災の本を配りたいと、『東京防災』という本をつくりました。
このプロジェクトを電通が受注して、私たちは榊良祐くんなど電通のクリエイティブチームと協業し、本のデザインと編集を担当しました。「東京防災」は約340ページ、750万部が発行され、 東京都の全700万世帯に郵送されました。
学校の教科書としても使われています。行政史上でも例を見ない規模の防災プロジェクトです。東京防災は皆さんに愛していただくことができ、行政が発行した無料の本にもかかわらずネットオークションでは1000円から1500円のプレミアム価格がつきました。
防災にしてもそうですが、行政が普段から出している情報は重要なのに、あまりおもしろくない。 しかし、そこにこれまでとは違うクリエイティブが入ることで、違う感じかたをしてくれる方がいると思うのです。
クリエイティビティは新しいエンゲージメントをつくることができるのです。だからこそ、東京に安全やコミュニティが足りないから、「どうやっておもしろくできるか?」というのは、私はクリエイティブの問題だと思っています。
いま私たちの気持ちに刺さるのはなにか、何が新しいマーケットになりうるのかを考え、新しいセーフティなコミュニティをつくることや、もう一度流動性をあげることに挑戦していきたいのです。
日本の公園遊具メーカーの最大手でコトブキという会社があり、そこと一緒に公園に無料電力とネット環境を配備するプロジェクトを進めています。普段はオフィスなどに利用し、災害時にはインフラになります。都市にそういったものを埋め込んでいくことで、産業になりそうな気がしています。
そこから地域のイベント情報を発信していったら、コミュニティが形成されそうですよね。マイナスに感じている部分は、考え直せばそのすべてが成長領域です。ですが、メスを入れなければならないとも考えています。流動性を上げることも非常に重要です。
太刀川:2014年度に 当時クールジャパン担当大臣だった稲田朋美さんにご指名いただき、内閣官房のクールジャパン推進会議の コンセプトディレクターに就任して、「クールジャパン提言」をつくりました。
各界の有識者に知恵を借り、海外の人たちから日本がクールだと思ってもらえるコンテンツを考え、どのようなミッションであればクールジャパンに共感してもらえるのかと話し合いました。
提言書では「日本人は世界の課題をクリエイティブに解決することが可能なのか?」が提言されています。これは、流動性を高めるためには何をしたらいいのかという話に他なりません。
行政の縦割りや世代間の壁をどのように越えられるのか。または行政がクリエイティブに対して投資しやすくするためにはどうすればいいのかなどです。
私たちはクリエイティブというツールを使い、クリエイティブな場を生み出すことで、どういう流動性を生み出せるのか、どういうコントラストを生み出し、セキュリティを生み出せるのか。その点こそが都市の成長領域だと思います。
答えはありません。東京以上に成熟した都市は、歴史の中でもそうそう存在しないのではないでしょうか。それは悪い意味でもあります。われわれは思考を転換してイノベーションしなければいけません。これからみなさんと、そのあたりを議論できたらと思っています。
庄野:太刀川さんありがとうございました。今回のプレゼンテーションにあたっての打ち合わせで太刀川さんがお話しされたことで一番印象的だったのが、「いまの東京はもしかしたら目標を見失っているのかもしれない。もしかしたらイノベーティブに対して都市としての目標を再定義することが、必要なのではないか」という言葉でした。
今日はその再定義を伺えると思い、とても楽しみにしていました。セーフティと流動性を持たせるということが、そこに対する大きなヒントなのではと思います。それではパネルディスカッッションに移りたいと思います。
庄野:テーマは「アジアン・クリエイティブ・プラットフォーム」です。今後アジアの都市において、クリエイティブがどのような影響と変化を与えていくのか。そこを探りたいと思い、このお三方にご登壇いただきました。
共通点として感じているのが、クリエイティブ・プラットフォームのつくり方がトップダウンではないことです。
まずは個人の想いが行動に変わり、それが求心力となってコミュニティーができ、それがプラットフォームになり、個々の集合体となって、大きな影響を与えるといった、ボトムアップ的にプラットフォームをつくった3人なのです。
これからその辺りについてお伺いしていきたいと思います。1つ目のテーマは、「自分たちの都市はいま何を目指しているのか、目指すべきなのか」についてです。
ジャクソン・タン氏(以下、ジャクソン):シンガポールの状況は極めてユニークです。独立してから50年が経ちました。シンガポールでは「われわれはローカルになる前にグローバル化した」とよく言われます。
そして国際都市になるために慌ただしく動いたわけですから、われわれ自身のアイデンティティがありませんでした。
しかし50年が経ち、そろそろ国として成熟してきてもいます。そのため、多くのクリエイターは、シンガポールの文化的なアイデンティティを模索しています。それはシンガポールが成熟した証だと思います。
庄野:シンガポールは独立してまだ50年なんですね。そのなかで、アイデンティティをいままで確立できていなかったということですか?
ジャクソン:その通りです。これまでは政府主導のトップダウンでメッセージが発信されてきていました。しかし、50年間の間にコミュニティーあるいはクリエイターが、文化的な影響を国に対して及ぼすことができるようになってきています。
庄野:そこでまさにジャクソンさんのような方が登場して、今回、プレゼンしていただいた「クリエイティブシティ」のような国を超えたプロジェクトが生まれてきていると思うのですが、そもそもなぜジャクソンさんはこのクリエイティブシティにおいて、10カ国の都市を繋げようと思ったのですか?
ジャクソン:台湾の高雄市の自治体からアプローチがありました。高雄はシンガポールや横浜のように港町です。都市としては他とは差別化をしようとしています。そして、自分たちのDNAで他の都市とどのようなつながりを持とうか模索をしているところです。
台湾政府はシンガポールでの私のキャリアに関連を見出したようです。しかも私は中国系ですから、中国語と英語を話します。そうしたアイデンティティーは彼らにとって、他の都市とつながりを持つ上で役立つと考えられたのだと思います。
庄野:ありがとうございます。タイに関してはいかがでしょうか?
ジラット・ポーンパニパン氏(以下、ジラッド):タイ人は強制されるのではなく、自由が好きなのです。タイでいま起きていることは、おそらくは正しい方向に向かっていると思います。クリエイターは自分の意見を自由に言えますし、インディペンデントな団体も設立されてきています。
私は雑誌を発行していますので、クリエイターを支援する立場にあります。なるべく周りの人たちを応援して、一人や小さなグループでは実現できないことを、人を集めてうまく活動できるようにしています。
そうしてパワーを得れば正しい方向に歩んでいけますし、国にも良い影響を及ぼすと思います。若い人のタイの文化には、そうした傾向がはっきりと見えていると思います。
庄野:クリエイターを支援し育つことによって、国や都市にはどのような影響があるのでしょうか?
ジラット:いまやっていることは、きちんとした道徳観に基づいて、社会を破壊しないようにしようとしていると思います。そして、新しい経験を学び、それがまた周りの人たちにいい影響を与え、なにかをしようという新しい力になっています。そして正しい方向にそのパワーが歩んでいっていると思うのです。
政治には不安もありましたが、それとは関係なく、クリエイターは自らの道徳心にもとづいて行動していると思います。ビジネスをやるにしても、社会に還元しようという意識をもって活動しています。そして、それを応援するのがタイのメディアです。
庄野:太刀川さんどうですか、いまのお話は。道徳心がクリエイティブと関連が深いというところは、われわれには不思議な感じがしなくもないのですが。
太刀川:二人共お若いですが、国を代表するクリエイティブディレクターとして活躍していますよね。以前から国を超えた同時代性を感じています。
ジャクソンとは前から仲が良く、クリエイティブシティのプロジェクトなどにも参加させていただいたりしていたのですが、「格好いいことをしているなあ、負けてられんわ」みたいなのは、たぶん同世代間で同時代的に国を超えて存在しているのだと思います。
そうしたなかで、格好いいという姿と、道徳心という姿は日本人の中ではつながっていると思います。それは、オーガニックが格好いいと言われることと似ていると思います。
われわれの同時代的な層に浮かび上がっていることは、これからどんどんメジャーになっていくと思います。シンガポールやバンコクには、その流れがすぐに都市にインストールされるような勢いや若さがあり、うらやましさを感じます。
東京は成熟期を迎えた社会であるがために、簡単には変わっていかないのです。ハッキングというと言葉が悪いのですが、どの流れに向かっているのかは、早めにわかったほうがいい。
その立ち回り方を、流動性の高いシンガポールやバンコクが、東京よりも先に見せてくれる可能性が高くあります。
東京のほうが成熟している都市なのであれば、先に東京が見せるべきなのかもしれませんが、そうでないかもしれない。それは楽しみでもあると思います。
庄野:太刀川さんの作られた「OLIVE」は、人の道徳心や良心が集まり、それがまさに生かされたプラットフォームだと思うのですが。
太刀川:おそらくここ30年間の呪いのようなものがあるのです。高度成長期に領域が専門分化して、収益を追うことが資本主義的な勝利になるという価値観になった。
日本語で経済とは「經世濟民(けいせいさいみん)」であり「世を經(おさ)め民を濟(すく)う」ことだったはずなのですが、そうした感覚をすっかり忘れてしまっていた30年間だった。
われわれはそうしたことに嫌気がさしている世代だと思います。クリエイターはそういうものに対してある種のカウンターを入れたいと思っています。もっとまともでいい縁をつくり得ないのか、と。
OLIVEはひとつのケーススタディですが、OLIVEのようなプロジェクトがクールだと思われる土壌が、すでに世界にできています。これは利用するしかないと思います。
庄野:ジャクソンはいまの話を聞いていてどうですか? 日本における道徳心や同時代性やについては。
ジャクソン:道徳心は世界中のどんな人も持つべきものだと思います。クリエイティブなものをつくるチャンスがある人は、道徳心を持たなければいけません。
私たちも様々なものを社会から受け取っていますし、受け取ったものは社会に還元していかなくてはいけないと思います。道徳心はどんな人にとっても心の底にあるべき大切なものではないでしょうか。
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