議会の反対によって進められない改革

橋下徹氏(以下、橋下):地下鉄の民営化も今のところは進んでいない。水道の民営化も進んでいない。公立の幼稚園とか公立の保育所の民営化、こういうのも全部やればこれで何百億円も出てきて10年間で大体2,700億円ぐらいのお金が出てくると。これを住民サービスで還元しようと言ってるのに、維新以外の会派はみんな反対。

彼らは大阪都構想じゃなくても、今の状況で大阪会議でこれができるって言ってたんですよね。

松井一郎氏(以下、松井):そうそう。僕は7月24日に一番腹立ったんはそこなんよ。これはもう大阪市、大阪府、僕と市長で役所同士はまとまった話。

だから後は議会が話し合いでまとめてくれたら実現できる話なの。この話を彼らは「やらん」言うから、もう本当に腹立ったんですね。

橋下:だから「着実に改革を進めよう」とか、この間も産経新聞の社説か何かで言われて、コメンテータも「着実な改革を」と。

ありとあらゆる改革はほとんどやってきて、残りの本当に今まで誰も手をつけてこなかった、ひとつのマスだけでも普通の市長、知事だったら10年、20年かかるようなことを僕らは一気に全部出してきたと。

それを着実に改革を進めようと言ったって、僕らは進めたいのに議会が反対してるから進まない。だから都構想なんだと。

松井:さっきの公衆衛生研究所と、環科研のこの話、自民党の市議会、府議会、意見が違う。まさにこれ彼らが話し合いで決めてきてくれたらいい話なんですよ。

橋下:だから僕らはこういう改革案件を進めることができないから、大阪都構想なんだと。

吉村:ちょっと聞いていただいていいですか?

この地下鉄とバスの民営化、これなんかはさっき言うた通り、これを反対するのが本当に意味がわからないくらい初期効果の33億、経済効果160億出てますけど、これ以外に市民にもたらされるメリットっていうのがすごいですからね。

これをずっと公務員が経営し続けてるゆうのは絶対おかしいと思います。

こっちの水道事業の民営化、これも年間10億円の削減効果って書いてるんですけれども、これだけじゃなくて、大阪市の水道事業の技術っていうのはすごいんですよ。世界でもトップレベルの水道事業の技術があって、これを民営化したら大阪市だけじゃなくて国内、それから海外にもどんどん展開できるんですね。

例えば市町村で、水道事業やってるところっていうのは、パイプの老朽化とか技術職員の新たななり手が少なかったりで、なかなか承継が難しくなってきてる。

他の普通の市町村、ある意味小さな市町村にとっては、他の大都市の技術を持ってきてほしいところはたくさんあるんですよね。

だからこれはもっともっと展開できますし、私今回の夏にフィリピンに視察に行ってきたんですけど、委員会の視察とかじゃなくて、国会議員の中で行ってきたんですが。

その時にフィリピンの向こうの大臣とかといろいろ話したんですけど、やっぱり水道で水が飲めないと。赤ちゃんも蛇口ひねっても水飲めないし。それで国民は多大な不利益を被ってるんですよと。

というんで、僕も大阪市の水道事業の技術の話をしたんですよ。輸出の話。今、ベトナムでやってますけど。そういったことをどんどん海外展開していく技術があるにも関わらず、この大阪市という枠の中で抱え込んでるっていうのは、大阪市民だけじゃなくて、日本全体にとっても国際的に見ても、やっぱりこれはもったいない。これは絶対に進めるべきだと思いますね。

本当にここにあるのは、これからの時代の中で進めていかなければいけないものばっかりだと思います。

民営化によるプラスの効果

橋下:民営化の話をすると、「安心・安全はどうなるんだ」とか必ず言われる。「料金どうなるの?」と。

料金は市議会の議決が必要なので、民営化になっても上がりません。これは海外の水道の民営化とちょっと違うわけです。議会が議決するわけですから。

それから安心・安全の面についても、本当に安心・安全を守らなければいけない部分は、ちゃんと役所がきちっと関与する仕組みをつくってるんで、民営化になって安心・安全が危ぶまれるとか、料金が上がるってことは全く心配がないと。

こういう話を「着実に進めろ、着実に進めろ、大阪都構想なんかやらずに他の方法で進めろ」って言うんですけれども、進まないから僕らは大阪都構想を打ち出したと。

僕は大阪都構想の住民投票のときに「大阪会議ってこうなりますよ」と。「こんなもん、まとまりませんよ。大阪会議なんていうのは、大阪都構想の対案になりませんよ」と。このパネルを使ってずっと言ってたんですけれども、住民投票がああいう結果になりました。

今大阪会議はまさにこの状態。全く進まないと。ですから最後といいますか、もう1回大阪都構想というものを考えなきゃいけないのかなと思っています。

まだ若干自慢めいた話をすると、これちょっと見てもらいたいんですが、地下鉄の民営化がなぜ必要なのかっていうことなんですけれども、かつての大阪市の地下鉄と今を見てもらいたいんですけれども、今は民営化に向かってどんどん改革進めてるんですが、トイレです。劇的に変わりました。

松井:これはみんな言うてたね。「きれいになった」言うて利用者喜んでくれたね。

橋下:これは、この間国土交通大臣賞ももらって、ホテル以上のトイレになってます。僕らの頃は、本当に大阪市の地下鉄のトイレっていうのは、臭い、汚い、暗い、その代名詞だったんですけれども、今やもう全国で一番のトイレになってます。

それで下が外郭団体改革。天下り改革なんですけれども、これ昔の地下鉄の売店です。

松井:うん、懐かしいな。

橋下:こんな状態だったでしょう? これ天下り団体だったんですね。それが今、民間に開放したら、ファミリーマートにも入ってきてもらって、こんな状況になってます。

借金を増やすのではなく、改革でお金を生み出す

橋下:あとは大阪市のほうなんですけれども、「何もやってない」って言われるんですが、これも吉村さんと一緒にやってきて、現役世代の重点投資ということで、教育関連予算、子育て予算、当時67億円しかなかったものが、今や336億、390億円くらいまで増えてきてると。これも市議会で言うのは簡単だけれども、やるってことは大変でしょう?

吉村:そうです。何で67億っていうか、こんなに少なかったのか。例えば小中学校のエアコンの設置も全然できてなかった。給食なんかも全然できてない。

例えば子供の医療費助成だって中学校終了までするようになりましたけど、当初は小学校の入学までとかね。大都市でもあり得ないような状況になってたわけですよね。

なんでこれがそんなに少なかったのかっていうのが、すごい大事だと思っていて。というのは、結局政治家の考えからすると、子供予算に一生懸命やっても票にならないんですよ。

子供予算にどれだけ突っ込んでも当選もしないし、票のないところにお金を突っ込むっていうのは、なかなか政治家の常識で言うとできない。

なので、ここは全然できてなかったところなんですよね。それをこれだけ上げていくというのは、言ってしまえば政治家からしたら反対のことをやってるわけですよ。票のないところに一生懸命やるというようなこと、でもこれはやらないといけないこと。

そういうのを維新はやってきたので、しっかり見てくれてる人は見てくれてると思いますし、これはやっぱり続けなきゃいけないやろなと思いますね。だから昔に戻せば、また戻りますよ。

橋下:本当そうですね。これまでの国の政治と決定的に違うのは、予算を増やしていくのに簡単な方法は借金を増やせばいいんですね。僕らは借金を増やさないと。

借金を増やさないのに、どうやって子供教育関連予算を増やしたかっていうと、徹底した改革、徹底したいろんな補助金の見直し。

もちろんここに反発とかいろんなことがあるけれども、それをやってきたのが維新政治の象徴で。

借金を増やすんじゃなくて改革、改革でお金を生み出して、このように必要なところの予算を増やしていくという。これは維新政治の典型例かなと思います。

南海トラフ地震の被害想定

橋下:あとはこの辺で、南海トラフは知事、どうですか?

松井:やっぱり我々役所の一番の使命としては、住民のみなさんの命、財産、生活を守るというところで、この南海トラフの地震で津波が来ると13万人の人が命を落とすと。

それで、大阪の経済損失は26兆円。なぜそうなるかというと、南海トラフの津波対策の防潮堤、あの防潮堤が高さは何とか津波高までの5メートルの高さがあるんだけれども、地震がきたときに地盤が揺れて液状化現象を起こして、基礎から防潮堤が倒れてしまうと。そのことによって、13万人が命を落とすという被害想定がされたんですね。

これも大阪府だけで防潮堤を補強工事しても、大阪市側の防潮堤が倒れれば同じこと。水が入ってきて。だからセットでやらないかんということで、これも平成26年から市長としっかりルールを決めて、今大阪市のゼロメートル地帯の此花、西淀、一番危ないところは3年で完了させてしまおうと。

そういうことで、事業費2,100億円かかるけれども、津波対策はスタートしたんでね、10年でやりきろうという形。

これ本当は橋下知事時代にもわかってたんやね。でも当時の平松市長となかなか意見が合わない、お金が無い。結局この事業着手まで4年ほど遅れてるわけよね。

橋下:これも府と市の協調というものが必要だったんですけど、その当時は協調ができなかったと。先ほど言った子供の教育予算とか、防災対策とか、こういうものに僕らは大変多くのお金を使ってるけれども、借金は増やさない。

自民党の柳本さん、こういうこと言うわけです。「改革は自民党も昔やってきた」と。「大阪市なんていうのは、いろんな数字を見ても悪くはない」って言うんですけれども、それはそうですよ。何もやってないんですから。

さっきの子供の教育予算なんて、もう何もやってない。必要なこともやっていない。それから地震の津波対策だって何もやってない。これで「数字が良い、数字が良い」って言ったってこれは意味がないわけでね。

それで最後彼らは、「自分たちは借金を減らしてきた」「大阪府は借金を増やし続けてる」ということを言うわけです。そのパネルないですかね?

二重行政の構造的な問題

吉村:ちょっとその間にいいですか?

橋下:はい。

吉村:このパネルを見てもらって思うんですけどね。ここにも実は二重行政っていうのがあるんですよ。

二重行政って単に箱モノが似たものがあるとかないとか、それも大問題なんですけれども、それだけじゃなくて。結局先ほど言った通り、府の方向と市の方向が違っていたら、これができないわけですよね。

だからそこに府のほうと市のほうと。今はたまたま松井知事と橋本市長が方向が一緒だから進んでますけど、これが違って「南海トラフより違うことが市にとって大事だよ、市はお金を出さないよ」ということになれば、これは実現できてなかったんです。これは市民にも見えないわけです。

この間の鬼怒川の堤防の決壊もありましたけど、本当に市民の命とか府民の命を守るっていうのが一番役所にとって大事なことで、二重行政が解消されればこういうこともできますんでね。

やっぱり二重行政っていうのは箱モノとかそういうものだけじゃない。これ府と市の構造的な問題だっていうのは見えないところではあるんですけど、それはやらないといけないことだと思うんですよ。

松井:これを完成させると、さっき13万人命を落とすって言ったんが、被害想定でいくと8,000人までぐっと命を落とす人は下げられる。

その8,000人の人も早期に避難していただいて、もちろんゼロを目指していかなきゃいかんけどね。

それで経済損失、26兆円が約16兆円くらいまでぐっと抑えることができる。だからこれが完成すれば、大阪の経済の被害損失想定は10兆円下げられるんですよ。これをやらなければ。

今はまだ南海トラフが起こる前にスタートできてるんだけど、府と市が足並み合わずに、その間に津波がきたらもう後悔し倒さなあかん話になるよ。

吉村:これはハードの話で、さっき二重行政取り上げましたけれど、大事なのはソフト面も大事だと思うんですよね。ハードがしっかりして、ソフト面でも津波がきたときに防災体制を町の中でどうするか。

「寝たきりの方がここにいるよ」とか「こういうふうに逃げよう」とか、そういったきめ細やかな防災のソフトの面を充実すれば、また結果がだいぶ違うという測定も出てるんですけど。

そういうところを、もっと特別区のようなところで区長をつくって、しっかりとソフト面を強化するというのが大事だと思うんですよね。

そういう意味でもしっかりときめ細かな住民サービス、防災1つとっても大きなところは府と市で二重行政やるんじゃなくて、しっかりやるというのが僕は本当に大事だと思うんですよね。

橋下:防災面でも大阪都構想が必要だということなんですよね。

吉村:そうですね。