やれない挑戦ができる場所がいい

小野裕史氏(以下、小野):残り15分ほどなので、そろそろ質疑応答に入っていきたいなと思うんですけれども。会場のほう、少し明るくしていただきまして……。ぜひお三方に聞いてみたいという思う方。じゃあ、一番最初に手を挙げていただいた方。所属と名前を言っていただいてから質問をお願いします。

質問者:同志社大学の○○と申します。将来起業するにあたって一旦就職するとしたら、お三方なら今どういう企業に入りたいと……。

金山裕樹氏(以下、金山):クラウドワークス。

古川健介氏(以下、古川):クラウドワークスですね。

吉田浩一郎氏(以下、吉田):なんで!(笑)

小野:速いですね(笑)。

質問者:この3社以外でお願いします(笑)。

古川:3社以外。えー? あんまりないな。アメリカのシリコンバレーのベンチャーとかたぶんいいと思いますけどね。

吉田:何そのあいまいなやつ(笑)。「アメリカのシリコンバレーのベンチャー」って死ぬほどあるんだけど(笑)。

古川:すごそうじゃないですか(笑)。アメリカだし。……ないんですよね。でも、大企業に入ると給料がいいわりにすげえラクなんですよ。マジでラクなんで、起業しようと思って入って、28歳とか30歳とか1000万円もらうとみんな起業しなくなってくっていう。これは一番よく見るパターンです。なので、成長できるキツい場所のほうがいいかなと。

ただ、単なる飛び込み営業をし続けるとかは、さっき言ったような「できることをたくさんやってるだけ」の負荷ってあんまり意味がないので、やれない挑戦ができる場所がいいかなと思いますね。

就職するなら創業者のそばに

吉田:でも、起業したいんだったら今は絶対起業したほうがいいと思いますけどね。

古川:今日したほうがいいと思いますね。

吉田:今日したほうがいいですね。昨日相談を受けた人にも言ったんですけど、起業するのっていずれにしろ怖いんですよ。

さっきの金山さんの話でいくと、見えない道なわけですよね。見えない道を1回選択して、会社を創るじゃないですか。名刺を作るじゃないですか。で、とりあえずすごくしょぼい自分なりのこだわりがある社名とかつけちゃうんですよね、だいたい。わかりにくい社名とか。

さっきまでずっと隠してましたですけど、私の1回目の会社は「ZOOEE(ゾーイ)」って社名ですから。ゾーイって何なんだ、みたいな(笑)。何やってる会社かぜんぜんわからないじゃないですか。やってみて、しばらくして事業も考えられない。仕事も始まりません。友達に見られてるうちに「お前サムいやつだな」ってなるんですよ。

そこから動き始めるんですよね、みんな。「俺、すげえサムいやつだ。何にもできないやつだ」と追いつめられてから、自分なりに興味あるかもしれないってことで、すごくしょぼいメンズスカートとか始めて(笑)。自分のできなさを知りながら1歩ずつ前に進んでいくっていうのが起業なんで。起業したいのであれば、将来じゃなくて今やったほうがいいと思いますけどね。

金山:でも仮に就職するなら、さっきの話ですけど、創業者と仕事をできるところが絶対いいです、本当に。そこはもう100パーセントですね。必ず創業者のそばにいれるような。だから、人数でいうと必然的に50名以下になってしまうと思いますけれども。

やっぱり、創業者の熱意とか仕事のやり方は本当にエグいんですよ。(吉田氏のほうを指す)見たらわかるじゃないですか。おかしいじゃないですか。

吉田:いや、風貌的にはこちら(金山氏)が……(笑)。

金山:(笑)。やっぱりそこで創業者からの直爆撃を受けることが起業に、そして起業後も役に立っていくと思うので、そういった環境がいいんじゃないかと俺は思いますね。業種問わずで。

質問者:わかりました。ありがとうございます。

起業はプロスポーツに近い

小野:やっぱりキーワードとして感じるのは、自分が「ヤバいんじゃないかな」とか、「このままじゃサムく見られる」とか、そうならないとなかなか人間って必死にならないですよね。だからそういうふうに感じられる環境を自ら作る。

大企業になると、逆にそれがあいまいになってしまうというのもアンチテーゼで、どこを選ぶにしても自分が「これじゃちょっとヤバいな」と思える環境を見つけるというのはとても重要かもしれませんね。

金山:起業は誰でもできますけど、起業して勝ち残っていくのって競争なんですよ。やっぱりプロスポーツに近いんですよね。例えばサッカーの日本代表は、企業だったら上場しててデカい会社ですけど、その人たちがどんな練習してるかって想像したらわかるはずなんですよ。

ヘラヘラ酒飲んでないですし、タバコ吸わないですし、女遊びしてないですし。絶対にめちゃくちゃ集中して、誰よりもハードなトレーニングを科学的にやってるわけですよね。

だから「起業してる」とか「起業したい」という人は、そういうトレーニングというか環境を生む場所に行くべきなんで、あんまりカジュアルにやってもうまくいかないと思う。だから結論としては、やっぱりエグいところに行ったほうがいいですね。

吉田:めちゃくちゃ気合い入ってますね。ベンチャーの敷居上がってますよ、それ(笑)。

勝ち馬に乗るような気持ちで来られたくない

金山:ベンチャーにもよると思うんですけど、わりと……そんなラクなベンチャーあります? 結構いるんですよ。僕らって幸いこんなところに出させていただいて、「ユーザー数が伸びてます」みたいなグラフも見せちゃうんで、勝ち馬に乗るような気分で来るやつがいるんですよ。

吉田:それはあるかもしれないですね。

金山:「本当ふざけんなよ」と思うんですよね。こっちは「これでもぜんぜん成長が足りない」と思ってますし、まだまだ先があるのに、フリーライドしようとするような人たちがいる。そういう人たちとは仕事したくない……まあ、そういうやつは入れないですけど。

それでも、「そういう気持ちがどこかにあるんじゃないのかな」というのは、今の若い人たちと話してて……まあ自分も若いつもりでいますけど、すごく思いますし、違和感がある。そこは変えてほしいなと思いますね。

ベンチャーは基本的にキツいですしエグいですし、だからこそ生きてる感じがしますし、だからこそ自分の人生がオリジナルなものになっていくと思うので。起業とかベンチャーというものに対する「ファッショナブル」とか「イケてる感じ」というのは忘れたほうがいいですね。

ここに来てる皆さんも、なんかここで盗めるものがあると思ってるでしょ? はっきり言って何もないですからね。魔法の杖なんてないですから、言っちゃうと。これを参考にあがきまくって、はいつくばって、泥水飲みまくって、それでも生存確率1パーセントとかだと思ったほうがいいです。マジで。

小野:もっと低いかもしれないですね。現実は。

吉田:金山さんのあまりにロックな感じで、学生たちにもガチでぶつかるみたいな……。

金山:ガチでいきますよ! 関係ないですから。直爆撃しますから(笑)。

小野:将来、ライバルになるかもしれないですからね。

金山:今のうちに(芽を)摘んどかないと。いや、違う違う(笑)。

起業当時はそんなにすごくなくていい

古川:とはいえ、ベンチャーを立ち上げてこういうのに立ってると「俺たちすごい」って話をしちゃうんですけど、起業当時の金山さんってただのチンピラでしたし、吉田さんも起業当時ってめちゃくちゃ器がちっちゃかったんですね。

金山・吉田:(笑)。

古川:競合サービスに「いいね!」を送ると「なんでいいねするんですか」ってメッセージが……。

金山:それね、1年前くらいのこと(笑)。

吉田:最近じゃねえか(笑)。

古川:「私のこと嫌いなんですか」みたいな。

吉田:ごめんなさい。(客席前方の)彼のPCにランサーズのステッカー貼ってあるの見て(笑)。

古川:許せないと(笑)。

吉田:「競合のステッカー貼ってるな」、みたいな(笑)。いまだに見てます。

古川:何が言いたいかというと、起業当時はそんなにすごくなくてよくて。超人じゃなくてもできます。ただ、その先にすごくつらいこととかがあって、だんだん成長していって、こんな感じにさせていただいているみたいな感じなんで。「最初からこのレベルじゃないとダメだ、だから就職しよう」みたいなのは思わなくていいかなという話をしたかったです。

金山:いや、でも最初からやっぱ……。

吉田:古川:(笑)。

小野:いいですね?(笑)。

創業者は先天的で狂人的

金山:やっぱり経営者は後天的に育てられると思うんですけど、創業者は絶対先天的だと思います。唯一の例外は、命のかけひきをしたことがある人だけ……ヤクザみたいな話ですけど(笑)。

古川:命のかけひき(笑)。

吉田:だんだん再現性がなくなってますよ(笑)。

金山:でも本当にそうで、創業者は後天的に産めないと思ってますね。創業者だけは。(吉田氏・古川氏を見て)やっぱり話をしてると、死んだことがあると思うんですよ。三途の川に足を突っ込んだことが絶対あるはずなんですよ。

吉田:あります。

古川:う~ん、まあ……。

金山:あと、起業後に足を突っ込んでるんですよ。

吉田:私はバイクで居眠り運転で事故りました(笑)。

小野:それは相当危ないですね(笑)。

吉田:なかなかバイクでしないっていう。2キロメートルくらい寝てた(笑)。こんなに簡単に死ぬんだと思って。

金山:僕らが与えられたものって、平等なのは時間しかないんですよ。それさえ平等じゃないかもしれない。「24時間をどう使うか」、「どう濃く使っていくか」という本当の時間の意味を知るためには、死にかけたりとか目の前で死を経験したりとか……例外もあるかもしれないですけど、そういう命のやり取りをした人間のほうがいいんじゃないかと思ってるんですけどね。

吉田:私はビジネスも頑張ってましたけど、やっぱり36歳で1人になる、役員が出ていくところまでは、確実に自分の本当の問題からは逃げまわってたと思いますけどね。

だから37歳からは肯定的に……よく言われますからね。昔から知ってる人、けんすうとかもそうですけど、「吉田さん変わりましたね。ずいぶん穏やかになりましたね」みたいに結構言われる。だから、いつでも変われると私は思ってますけどね。(自分は)あんまり優秀なタイプではないので。

金山:いやいや、超優秀ですよ。吉田さんはこんなにニコニコしてていい話しますけど、もう……エグみしかないですよ(笑)。

吉田:あのね……(笑)。

金山:だって、ランサーズのステッカー見つけます?(笑) そのくらいの狂人的なところはやっぱりあるんですよ。

偉大になりたければ、今の生活はやめなさい

小野:時間が差し迫ってしまっているので、ちょうど盛り上がったところで(先ほどのものを)最後の質問にさせていただければと。これからまだまだ質問の機会が休憩中にありますので、そのときに頑張ってトライしてみてください。アクションを起こせばチャンスはもらえます。

最後に、皆さんに1人ずつメッセージを送っていただいて締めたいと思うんですけれども、金山さんは最後にしましょうかね。先ほどの流れから。

金山:僕、同じことしか言わないですから(笑)。

吉田:じゃあ、(最初に)金山さんにしゃべってもらって、(2人で)緩和しますわ(笑)。

小野:その流れでいきましょう(笑)。金山さんからメッセージを。

金山:起業したい人って何人いるんでしたっけ?

(会場挙手)

吉田:こんなに起業したい人いるんだ。

金山:将来、「みんなみたいになりたくない」「自分は特別になりたい」「何か成し遂げたい」「社会に大きなインパクトを与えたい」って人はどれくらいいますか?

(会場挙手)

金山:じゃあ、マジで今の生活やめないと絶対無理ですよ。

吉田:今の生活知らないでしょ(笑)。

古川:決めつけないでください、そういうのを(笑)。

金山:やっぱり、偉大になりたければ大きな犠牲を払うんですよ。本田圭佑がプレステやってますかと。本田圭佑わかりますよね? サッカーのことしか考えてなくて、あのレベルなんですよ。

吉田:本田圭佑にキョトンとしてるんじゃなくて、金山さんにキョトンとしてるんですよ(笑)。

金山:やっぱり簡単じゃないですよ。みんながやりたいことは。本当にやりたいかって話ですよ。そこまでしてでも。本当に、自分に問うてほしいです。めっちゃこれから大変ですよ。

だって、社会にインパクトを与える人が何人いますかと。狭き門をくぐり抜けようとしている皆さんは、その覚悟と行動が伴ってますか。

それは本当に考えたほうがいいです。「死ぬ覚悟があるか」と。なければ大企業とか、就職したほうがいいと思います。もしくは、ウチの会社に入ればそれを獲得できる。新卒を募集してるので入ってください(笑)。

吉田:最後自分に持ってった(笑)。

小野:ありがとうございました! 拍手お願いいたします。

(会場拍手)

切迫感にかられたときじゃないと成功しない

小野:吉田さんお願いします。

吉田:これ、どう引き継ぐかな……(笑)。でも、思った以上に起業したいという人たちがこれだけ多いのであれば、金山さんの言っていることは真理だと思います。ただ、その気合いがなければ起業しちゃいけないかというと、そうではないと思ってて。

別に「ちょっとやりたいからやってみた」、「人にすごく迷惑かけたからそこから(本格的に)始まる」というのもあると思うんですね。なので、ちょっとでも起業したいのであれば今すぐしたほうがいいです。起業するか、ベンチャーに入って成長の中にいるか、ということで。

なんで私がこういうふうに穏やかに言ってるかというと、人生本当に切迫感にかられたときじゃないと成功しないというのは事実なので、「今ピンと来ない、でもやった、ダラダラ自分のやりたいようにやったけど結果が出ない」という3年、4年を送るのも、後々考えるといい人生になるんですね。

私が1回目に起業した3年というのは、お金儲けとか、個人的な欲が強かったわけですね。「社長がやりたい」「自分で自由にやりたい」とかですね。その3年のイメージがあるから、今はもうそれを選択しない。100パーセントユーザーのために頑張るっていう気合いを持てたんですね。

だから遠回りしたんですけど、その遠回りのおかげで確信を得たというのもあるので、最初から「バン!」とすべてをミートしなくても、起業したければ今すぐ起業してもぜんぜんいいかなと。その中でいろんな先輩に相談しても、響かないときはぜんぜん響かない。

私は2回目に起業したときに、ずっと黙ってた先輩から「サシでご飯いこうぜ」って言われて、そのときに言われたのは「お前、1回目の起業のときはうまくやろうとしてた。伸びてる市場とかよさそうなサービスに手を出して、ちょっと儲けてやろうみたいな気がしてたんだけど、今回は外にいても明らかにお前が本気だってわかるよ」みたいな感じで。

結局、自分の思考って伝わっちゃうんですよ。なので、そういう意味ではなるようにしかならないというか。そういう中で、まずチャレンジしてみるということが何よりも重要。

それで自分が「ぜんぜん本気じゃないな」って知る作業にもなるので、起業したい人はやっていただければいいですし、ベンチャーに興味があるって人は「“働く”ことを通して人々に笑顔を」というミッションを掲げている(クラウドワークスに)……(笑)。

2016年は30名採用ということで、今は第2創業と位置付けてまして、その一番の母体をつくるのが16年新卒・17年新卒だと考えてますので、ぜひエントリーのほどをお待ちしてます(笑)。

小野:ありがとうございました。

(会場拍手)

「次こそはいける」という執念

小野:最後にけんすうさんお願いします。

古川:僕はよく「なんで起業したんですか?」って言われたときに「なんでだろう」と思って、最近わかったのは、みんながやってるからなんとなく起業してるんですね。援助交際における女子高生みたいなマインドでやってきた人間なので、あんまり偉そうなこと言えない。

吉田:これ、ログミー無理(笑)。

古川:無理ですね(笑)。そんな覚悟もなかったし、頑張ろうと思ってたわけでもなく、かつ人生バラ色だと思ってたタイプなので、あんまり偉そうなこと言えないなと思ってます。なので、誰でもできると思っています。

一方で、僕は2000年くらいから「2ちゃんねるを超える次のコミュニティを作ろう」っていうのをずっと考えて、ちょこちょこ挑戦しては失敗してというのを15年くらい、いまだにやってるんですね。

「次こそはいけるかな」と思ってやってるんですけど、こういう怨念みたいな、「こういうサービスをやってここまでいくぞ」というのを15年間待ち続けるみたいなやつもあって。それくらい、恨みみたいなドロドロした何かを持っておくと強いかなと思ってるので……。

金山:執念みたいなものですね。

古川:執念ですね。怨念じゃないですね(笑)。執念みたいなものを持てるといいかなと思ってます。持てない人は別になんとかなるので、サクッと起業して失敗したところでそんなに死なないじゃないですか。起業して殺された人ってあんまり知らないですし。借金1億背負っても、どうせ払えないんで別にどうでもいいじゃないですか。

吉田:そうなかなか思えない(笑)。実際に、ないときに訴えられるとどうなるんですか?

古川:別に払わなくていいんですよ。賠償金って、6割くらいの人は払ってないんです。払えないんで。

吉田:え、そうなの?

古川:そうなんです。だから払ってないほうが半数じゃないですか。だから別に訴えられてもリスクないですし。100万くらい借金するとリスクあるんです。追い詰められちゃうんで。でも1億くらい借金すると追い詰めると死んじゃうので、1億損するとなるとみんな超優しくなるんですね。……何の話でしたっけ(笑)。

小野:皆さんへのメッセージですね(笑)。

古川:「起業をそんなに重く考えなくてもいいかな」派なので、サクッと行動してみたらどうかなと思ってます。その先はたぶんつらいことがいっぱいあるんですけど、全部ひたむきにやっていくといろんな道が開けるかなと思うので、頑張ってください。以上です。

小野:ありがとうございました。

(会場拍手)

小野:先ほど私がちょっと言わせていただいたように、このようにいろんな考え方があります。でも根っこになる部分……さっき執念って言葉が出ましたけど、何かを思い詰めてやっていくとき(起業家の)皆さんには本当に血のにおいを感じるときがありますし、その中で生き残れるだけのメンタリティだとか仲間がある。

これは一朝一夕にできるわけではないかもしれませんけど、必ずそれを乗り越えてきて今があるということを忘れないでいただきたいなと思います。

最後に今日1番目のセッション、この3名のお話がおもしろかったという方は、もう1度スタンディングオベーションで締めたいなと思います。ありがとうございました。

(会場拍手)