2024.12.10
“放置系”なのにサイバー攻撃を監視・検知、「統合ログ管理ツール」とは 最先端のログ管理体制を実現する方法
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ジェーン・スー氏(以下、スー):『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』とか、『私たちがプロポーズされないのには、101の理由があってだな』とかいう本を書いていて、その時にもお話ししたと思うんですけど。
今正確なデータが手元にないんでアレですけど、日本の自殺の7割は男性なんだそうです。私はそのデータを見たときに結構ギョッとして。そのデータの一番怖かったところは、7割超えてる年代っていうのが20から60の間ですよ。つまり就業期間にあるとき、自殺全体に占める男性の割合は7割を超える。
それぐらい男の人にとって仕事って大きいものなんです。でも構造として社会がそれを受け入れられなくなったら、女の人は絶対に追い立てちゃダメだと思うんですよ。だって焼け野原みたいなところに行って「草刈って来い!」っていうのは……。
草が枯れないことが自分の価値とイコールになってしまうぐらい煽ったり追い込んだりっていうことだから。今は手と手を取り合って、「どちらかが草を見つけたら手を挙げて!」みたいな(笑)。
田中俊之氏(以下、田中):自分の父親を想像して、自分のパートナーを見ちゃうと。自分のお父さんが自分のお給料だけで家族を食べさせていたりしてるときに、「どうして自分のパートナーにできないんだろう」という感覚を抱いちゃうかもしれないですけど。経済構造上仕方がないことだと思うんです。
自分の家族しかみんな知らないので、「父親ってこういうものだ」っていうのを父親がやってたら、それが夫像になっちゃったり。あるいは母親像。女性の人はあんまり出世したくないとか、そういう話もあるじゃないですか。
自分の母親が専業主婦だったり、働いていても途中で辞めていたりする、女の人ってそういうものかなと思うんですけど。時代が変化してるんで、現実を見なきゃいけないというのは、男女関係ない気がするんですけどね。
スー:今日話していて、現状としての社会はこうだとか、傾向としてこうであるというのは、わかって皆さん来ていらっしゃると思うんですけど。実際に「どうすれば生きづらくなくなるの」っていうところで。
個人的な意見としては、私は「隣人を許す」ところから始めるしかないと思うに至りました。具体的には父親ですね。本当に頭にくることはいっぱいあると思うんですよ。私も親もお互いに。
でも人には誰でも事情があるということを、一歩こちらで飲んでから、話をせざるを得ないところがあると思うんです。うちの父親は、私が子供のころは社員100人ぐらいの会社をやってて、それが母親が死んで金庫番がいなくなったら一気にひっくり返って。今は完全に禁治産者な状態ですよ。
私がお金をあげたりしてるんですけど、それが楽しそうなんですよね。それで一瞬ヤバイかなと思ったんですよ。「お金を稼げない自分を受けいれられるかな?」と心配していたら、夏は普通に電車乗って隅田川の花火を見に行ったりしていて(笑)。私よりリア充じゃないか。
男性にしては珍しく、厚かましく意識を変えることができたタイプではあったと思うんですけど。それでもやっぱり稼げなくなって、まるで金が無くなったときの落ち込んだ顔はすごかった。この人の全人生、これで支えられていたんだと痛感しました。
それからは稼ぎ手だと言う意識に付随する態度や言動、家族へのコミットメントの低さを少しずつ許せるようになってから、物事がうまく回り出しました。
田中:他者もそうだし、自分自身もそうだし、大人の男性の評価軸って仕事以外ないんですよ。少年時代とかだったら、もう少し評価の軸があったんですよ。「君は頭が悪いけど、運動ができる」とか、「君は絵がうまい」とか。「あの人の足早いね」って言って昇進できたりしないですよね。
(会場笑)
スー:嫌だなそんな会社(笑)。
田中:そんな会社があったら嫌ですけど。評価の軸っていうのは仕事しかない。でも仕事しかないって言いますけど、仕事の評価ってかなり偶発的じゃないですか。
能力があっても自分が所属している組織でたまたま評価されない人もいるし、明らかに能力以上に偉くなっていく人もいるし、偶発的なところも、運の部分もあるのに、それだけで自己評価が決まっちゃったり。
そうは言っても年収を気にしている男性ってすごく多いと思うんです。子供の頃の身長みたいなものだと思うんですよ。数字で具体的に現れちゃって、他者と比較可能じゃないですか。大小が簡単に比べられるので、すごい気にしていて。そこで自分の価値を測ってしまう人って多い。
そこから脱出するのは、相当うまい具合に着陸できるような補助線が必要で。そういう時に「強者の手助けをどうしてしなくてはいけないの?」みたいな論理があるんですけど。それはさっきスーさんが言ったことで、手助けしてうまく降りられると、女性や子どもにとばっちりもこない。さらに良い関係が結べるんじゃないかと。
女性のほうが非正規が多いし、お給料も安い状況で困っているわけですから、男の人の手助けをするっていうと、「女性で困っている人がいっぱいいる中でなんで?」っていう話になるんですけど。
社会全体を円満に回していこうと考えたときに、競争から降りたい男性には降りていただいて、そこのスペースが開けば、女性で入りたい人は入っていけるわけじゃないですか。
それでいいんじゃないのかなということを、やんわりと提案しているぐらいなんですけど。男性学っていうのは。
スー:「それは正論とは違うだろ」と言う人もいると思いますよ。ただ正論だけだと世間が回らないっていうのは、皆さんご存知の通りで。男性を威張らせてあげてうまくコントロールするるとかそういうことではなくて。
田中:全然違いますね。
スー:ありのままの状態を評価するってすごく難しいことだと思うんですけど。結婚していない私がいうのも違うんですけど(笑)。その辺がうまくできるようになると心を開いてくれる。
田中:そうですね。
スー:すごく難しいのは老後の計画ですね。私はよく「俺のチェンマイ」って言ってるんですけど。どう考えたって、老後は金が足りなくなるじゃないですか。
生活をダウンサイジングしてくださいってよくネットに書いてあるんですけど、それにも限界があるじゃないですか。となると貨幣価値を変えるしかないんです。みんなでチェンマイ行こうと。
(会場笑)
スー:「独身の女たちだけで団地を借りよう」っていうのは、前回の本でも書いたテーマですけど。そのニューバージョンですね。旦那がいる人は連れてきてもいいし、私も彼氏がいたら連れていくけれど、ある一定の敷地以外は入れないっていう話をしてて。まぁ向こうも入りたくないだろう(笑)。
なんで女のコミューンを作りたいかというと、「年をとったら、好きでもない男にはもう気を遣いたくない!」という切実な叫びがありまして……。男性はこれを聞くとカチンとくると思うんですけど、理由があるんです。
会社である程度の地位までいった男性って、初対面でも、すごく上からものを話したりするのがいるんですよ。いまの社会では、横柄なおじさんにも敬意を払い、きちんと節度を持って話してあげるというのが良しとされる。それが大人のスマートな対応とされていて。それを70過ぎてやりたくはないんですね
親、兄弟、自分のパートナーだったら少なくとも、情や愛があるから不条理に横柄な態度も1回我慢したりとか、好きだという気持ちで歩み寄れると思うんですけど。周りにそういう人がいない男性は大変ですよね。
田中:うん、そうですよね。1人でいるタイプの人はこうなんですよ。女性だったら女子同士で集まって住もうとか、そういう話になってくるわけじゃないですか。そこで男性とコミュニケーションをする能力を鍛えてこなかったツケが回っちゃってたり、「友達なんかいらない!」って言ったことのツケが回っちゃってたりすると思うんです。
だから働いている人って、大きい企業を選んだ人って全能感を抱きがちなんですよね。「自分で何でもできる」って思いがちなんですけれど、その分野のそのパートにおいて強いだけで、人生全般が強いわけじゃないっていうことを、ある程度自覚しておかないとまずいのかなという気はすごいしますね。
スー:うちの父親も、昔はそういうところありましたね。こないだも初対面の人にため口で話しかけてたし。
田中:アハハハ(笑)。気さくなお父さんで。
スー:昭和の自営の社長って本当にタチ悪いです。
田中:そうですか(笑)。
スー:本当に。そこはすごい注意してるんですけど、誰にでもため口で話すとか、良く知らない人をすぐからかうとか。
田中:先日の講談社エッセイ賞受賞パーティーの時も、そういうことがあったそうですね(笑)。
スー:そうなんですよ。他の受賞者の方に自己紹介もせず突然ため口で話かけて。あんなに背筋が凍ったことは久しぶりです(笑)。
男性はどうしていけばいんですかね? 女性は愛情がある人に対して1回受け止めることは、たぶんできると思うんですけど。知らない男性までには……。
田中:心が広くて自分に余裕があれば、可能かもしれないですよね。
スー:男性陣はどうしていったらいんですかね?
田中:男性陣は自分の頭で考えることができない場合もあるとするなら、「考えないで済ます」っていうのはどうかなと思うんです。自分の頭で考えて、答えを出すっていうところまで行かなくても、このままでいいのかというのを考えるぐらいは、誰でもできるんじゃないのかと思うんですよ。
スー:「考えてないことに気づくには、どうするのか」っていう、ソクラテスみたいな話になってくるんですけど。
田中:そうなんです。それが問題で、こういうところに足を運んだり、市民講座に来たりする人はもういいんですよ。奥様に無理矢理言われて来たといっても。だって奥様に無理矢理言われたって来ない人のほうが大半なわけなんですから。
「そこにツケが回ってきますよ」とか言っていても、たぶん届かないんで。今は結構、企業に研修に行くみたいなことで入り込む余地があるんで。実際に大きい企業だと「定年退職した後にこういう困ったことになるから、今から備えておいたほうがいいよ」とOBが来たりして話をしたりすることってあるみたいなんですよね。
スー:多いみたいですよね。TBSもやってるって聞きました。
田中:そうですか。現実感を持って、当事者としてリアルなものを見ないと、理解できないと思うので。ただ、そういう直属の先輩に来てもらったりとかもいいと思うし。
そういう機会も無い方は、平日の昼間に休みを取れないかもしれないけど、平日の昼間の図書館に行かれるとよろしいと思うんですね。何もやることない定年退職後のお父さんのたまり場なんですよ。
だって無料で冷暖房完備で、ずっといられるじゃないですか。あそこに通われているお父さんて一定数いるんですよ。本も読まれてないんですよ、残念なんですけど。それほど居場所がないわけなので。
同じことはデパートの無料のベンチでも言えるんですけど。あそこも雨風しのげて冷暖房完備で無料なんですよ。あそこで何してんのかな、お父さん。西武デパートでも東武デパートでも必ずいるんですよね。それは厳しいだろうと思うんですよね。
それを見て、「あの人かわいそうだから、俺はそうならない」ってだけじゃなくて、現に友達もいなければ行き場の無い男性って一定数出てきちゃっているので。せっかく僕は男性の問題をやっているわけですから、彼らにも何かそういう機会があれば、理解してもらって自分の問題として考えてもらえれば。
結局自分で解決するしかないっていうのは、男女問わず、しょうがないことだと思うんですけど。自分なりの答えを出す機会さえ無いことが男性は多かったんじゃないかなと思うんです。仕事、仕事で。
スー:そうですよね。
田中:そういう機会や悩みを持てること自体は、大変幸福なんじゃないかと思いますけどね。
スー:今聞いてて思ったんですけど、何のあてもなく1日有給を取ってみるのもいいかもしれませんね。女の人はすぐにやることがたくさん出てくると思うんですよ。
田中:それはすごく具体的で、良いアイディアだと思います。
スー:そうですね……。そうですねって自分で言っちゃいました(笑)。
(会場笑)
スー:女の人って個体差はありますが、傾向として、有給を何の理由もなく取ったら、「美容院行かなきゃ」とか、「ここ掃除しなきゃ」とか、「シーツ洗ってない」とか。やることがパパパーっと出てきて、ワァーってやって。
「疲れてるから何もやらない」とか、「行きたかったんだけど、遠いから行けなかった映画観に行こう」とか「展覧会行こう」とか。男の人は真面目に働いている人ほど、出てこないと思うんです。
田中:出てこないし、僕はFacebookで友達が書いているのを思い出したんですけど、「有給取って遊んでてすみません」みたいなことを書いてるんですよ。有給って権利じゃないですか。取って遊んでたって、申し訳なくないじゃないですか。
スー:1週間前でも1ヶ月前でもいいんですけど、決めるときには何の申請理由もない状態で、とりあえず親戚の1人が、少し危篤だとかなんだとか、言っておきましょう。法事とか結婚式とか、何でもいい。
1日有給を取って、その日までに自分は何をするか考えて。平日の昼間、外に出てみるっていうのはいいかもしれません。そうすると仕事を抜かした自分の等身大っていうのがわかる。
田中:わかる気がします。そこで連絡が入ったら誰もいないんだとするならば、「ぎょ」っともするでしょうし。そういう状況って、学校とか行ってたら気づいたような問題っていうのは、働いていても気づかなくなっちゃうと思うんですよ。
スー:男性は受難の時代でもあったと思うんです。女性と同じようなコミュニケーション能力を持っていて、競争よりも和を重んじ、かつ休日にやることや趣味もあるような男性というのが、出世しづらい世の中だった訳です。ずっと。
田中:そうですよね。
スー:その辺は女性も理解して圧をかけずにやってくれればいいなと思うんですけど。
田中:あと有給の話でいいなと思ったのは、「今この場を楽しむ」っていうことをもっとしたほうが良いんじゃないかっていう気がして。男性が取り組んでいる話って、長期的な話が多いじゃないですか。例えば家のローンが25年とか。あるいはやっているプロジェクトとか、年単位のものとかをやってると思うんです。
この瞬間をどう楽しむかということは、子供の頃はいくらでもやってたと思うんです。そういう工夫が全くできなくなっちゃってる。
僕の友達で主夫をしている人が、『スーパーマリオメーカー』っていうのを買ったと、Twitterで言ってたんですよ。そういうのをやりにいっていいのかなって。大人なんですけど、友達にファミコンやりにいっていいのかなって、40過ぎて(笑)。
スー:アハハハ(笑)。
田中:返事を打つかどうか迷ったんですけど。その人は主夫だし、月に1回、1日は「ノー家事デー」というのを決めているらしいんです。僕は大学が休みだったら、その人のところにファミコンしにいこうかなと思って。それでもいいですよね。
スー:そうですね。
田中:スーパーマリオのコースを作れるのは知ってます? あれをやってみたいなって。買うほどじゃないなと思って。
スー:人の家にあれば。
田中:そうそう。端から見たらバカみたいなことも、気晴らしになるなら、やってみたらいいかなと。大人になると、友達に気を遣っちゃいますよね。「家庭の都合があるんじゃないかな」とか、「忙しいじゃないかな」とか、そんなことを思ってもしょうがないんで。何か声をかけてみるっていうのは良いっていう気はしています。僕自身。
スー:まずお互い自分の置かれた状況を、考えてみたら良いですね。
田中:そうですね。男性が立ち止まることが、今までどうしても難しかったと思うんですけど。
スー:立ち止まっちゃいけないっていう空気でしたからね。24時間働けますかって言われて、立ち止まれないですよ。
田中:そうですね。そこは残念といえば残念なんですけど、やっぱり僕らの生き方って、経済に左右されるんで、幸いにして悪くなっていると。
これ自体は僕たち男性にとっては、いい側面があるので。これを機会に、立ち止まっていただいて、やりたいことをやればいいと思うんですよ。大人って、ある程度冷めていることが重要だと思われているかもしれないし、かっこ悪いと思われるかもしれないですけど。
「もう少しモテたい」とかっていう夢じゃなくて、具体的に「こういうことがやりたい」とか、「こういうことをしたい」とかっていうのを、実際にやってみてもらえればいいのかなと思います。
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