「500社営業して買ってくれた会社はゼロ」ミドリムシを世に広めたユーグレナの創業ストーリー

ミドリムシが世界を変える #2/3

IVS 2015 Spring Miyazaki
に開催

2015年6月11日に開催されたIVS 2015 Springの本セッションに、株式会社ユーグレナ・出雲充氏が初登壇。モデレーターを務めるIVP(Infinity Venture Partners )共同代表・小林雅氏の進行で「ミドリムシが世界を変える」をテーマにディスカッションをしました。本パートでは、25歳で株式会社ユーグレナを立上げた出雲氏が初期の資金調達で工夫したことや、ミドリムシの販売にあたって500社に営業して1社にも買ってもらえなかった体験を語りました。また、出雲氏はそのような苦労の中で自らの意志を支え続けた「メンター」と「アンカー」の2つの話を紹介します。

25歳で株式会社ユーグレナを創業

小林雅氏(以下、小林):ありがとうございます。ミドリムシ、ユーグレナについてご説明いただいたんですけども、これからベンチャー創業に関わるお話を伺いたいと思います。

きっかけは大学時代にあったと思うんですけど、実際に創業したのはちなみに何歳のときなんですか? 今は35歳?

出雲充氏(以下、出雲):はい。今35歳で、会社をつくったのは25歳のとき、2005年です。ミドリムシビジネスをやろうって決めたのは大学3年生のときなので、20歳ですね。

これは何の理由も根拠もないんですけど……私は20歳のときにすごくおもしろいなと思って、「将来ミドリムシやりたい」と。

でもそのときは技術もお金もまったくないので、35歳まで勉強して、貯金をして、研究をして、2015年で35歳になったら株式会社ユーグレナをつくろうと思ってたんです。

そう思ってたんですけど(笑)。予定よりは10年早く会社をつくって今に至ります。だから、昔につくった計画というのは本当にすぐ変わりますね。

ベンチャーの資金調達の工夫

小林:ちなみに創業したときは何人でしたか? あと創業のときの苦労というか、よくインタビューとかにも出てるんですけど、「営業してみたけどまったくダメだった」みたいな話があったと思うんですけど、それはどうですか。

出雲:会社は3人で立ち上げまして、鈴木(鈴木健吾氏、取締役・研究開発担当)と福本(福本拓元氏、取締役・マーケティング担当)という仲間とやったんですね。実は、会社を立ち上げるときと立ち上げてからで、ひとつずつ申し上げたいことがあります。

会社をつくるときに、我々のような開発型の会社はすごくお金がかかるというイメージを持たれるんですよね。研究開発にすごくお金がかかると。

だから「どうやって最初のお金を調達したのか」というのはすごくよく聞かれるんです。

まず、ユーグレナは1000万円でスタートした会社なんです。自動車ベンチャーだろうと、ミドリムシベンチャーだろうと、ITベンチャーだろうと、私はスタートのときのお金は全部自己資金にして、自己資金以外の外部資金は少なければ少ないほどいいと思ってるんですね。ITだけじゃなくて、自動車にもバイオにも同じことがいえるんです。

最初にお金がかからないように一生懸命工夫すると、まったくお金がかからないんですよ。

そもそも大学のいろんなラボの設備っていうのは、24時間365日動いているわけではないですよね。夜に行くと動いてない装置が置いてあるわけですよ。

だから何百万何千万円もする機械がなくたって、バイオベンチャーは大学のアセットを使えばお金をたいしてかけなくてもスタートすることができるんですね。

例えば最初からお金が1億円集まってしまうと……まあ私の場合は集められなかったんですが(笑)。

もし1億調達できたら、たぶんすごい大型のLC/TOFMS(質量分析計の名称)とかPCRの装置とかをドーンと導入してました。連続で質量分析する装置があるんですけど、そういうものだったら1000万円くらいするんですよ。

超高速のPCRのシーケンサー、たぶん第5世代のAgilentとかIlluminaのものですと2500万円くらいで、みなさんのフルゲノムを1日で……フルゲノムですよ? SNPs(一塩基多型)で「この人はこういう病気になりやすい」とか部分的な遺伝子多型を検査するのではなくて、フルゲノムを読み込むのに、昔はすごく高額の機械で1年かかったんですけど。

今は2500万円の機械が1台あると1日でヒト1人の遺伝子を全部読み込むことができるんですね。

そういう時代なので……私は買っちゃうんですけど、そういうのを買わなくたって大学とか、例えば日立のような大企業の中にあるんですよ。

なので使ってない時間に使わせてもらうってことにだけ特化すれば、「アイデアはあるけどお金がないので、薬をつくるベンチャーを立ち上げられません」とか「自動車会社は初期投資がかかるのでできません」とか聞くと「本当にできないのかな」と疑問に思いますね。……本当にできないのかもしれないんですけど(笑)。

500社に営業して買ってくれた会社はゼロ

小林:(笑)。先ほど言ったように、(一般の人は)そもそも「ミドリムシについてほとんど知らない」みたいな感じになると思うんですけど、そこから今に至るまでどのようなステップやマイルストーンがあったんですか?

出雲:2005年12月に屋外大量培養ができるようになって、2006年1月からミドリムシの販売を開始して、私も会社を立ち上げるときに事業計画書をつくったんです。

私がつくった事業計画書では「ミドリムシは一般のみなさま方になじみがないので、100社に説明に行くと1社買ってくれる」と、そういうビジネスプランだったんですよ。それはよく覚えてます。

100社に行けば、99社には断られて1社買ってくれるってビジネスプランをつくってスタートしたんですね。

2006年1月から2007年12月までのちょうど2年間で、私は500社にミドリムシの営業に行ったんですね。飛び込み営業も含めて。

そうすると500社中5社は買ってくれるかなと思ってスタートした会社なんですけど、2007年12月の段階で500社に行ったのにゼロだったんですよ。

高いハードルを乗り越える2つの方法

出雲:結構ビックリしてですね。「500社に行ってゼロ!?」って。やっぱり他がやってないものって、すごくハードルが高いんですよ。これを乗り越えるためには2つの方法がある。

1つは「500社行ってダメだったら501社行く」。もう1つは、今になってすごくコミュニケーション能力が高い人に教えてもらった方法なんですけど、「学生時代にちゃんと自分で合コンをやってないからダメなんだ」って言われたんです。

そう言われて「なんのことだろう」って思ったんですけど……あ、合コンに行くんじゃなくて主催してないからダメってことですね。

なんでダメかっていうと、女性はいい男性が来るか心配じゃないですか。女性には、確定してなくても「超イケてる男性が来る」って言い張って来てもらわないといけないわけです。

それで、男性には「素敵な女性が来てくれるかわからない」って不安を打ち消すために「素敵な女性が来ることに決まってますから」と言って誘う。それで合コンの男女が揃うわけですね。

だから、決まってなくても「いや大丈夫です、決まってます」と言い切らないといけない。

ベンチャーキャピタルにファイナンスするときってそうですよね? だいたい「リードインベスターを連れてこい」って話になって、「リードインベスターが決まってないんだったらダメです」って言われるじゃないですか。そこは「小林さんが出すことになってます」と、なってなくても言うんですよね?(問いかける)

(会場笑)

小林:……それは、たまに僕もやります(笑)。

出雲:そうですよね。

小林:正確に言うと「決まるかもしれない」くらいの(ニュアンスで)。

出雲:そんな正直に言います? 「決まるかもしれない」って。

小林:「決まります!(小声で)ただ○○で……」ってちょっと聞こえないような感じで。ちょっと入れとかないと。

出雲:なるほど。

小林:「将来不確定なので変わりうるかもしれない」っていう、よくある……。

出雲:まあ、スタートアップはそんなのいらないですよ。そんなのわかってますからね。明日どうなるかわからないなんて。

手をさしのべてくれた501社目の会社

小林:結局、500社行ったあとにどうなったんですか?

出雲:500社行って、私は「他で決まってますから安心してください」って言えなかったんですよ。だから501社目に行ったんですね。

それで、501社目が手をさしのべてくれたんです。宣伝になっちゃいますけど、501社目がこの会社なんですよ。

小林:おー。

出雲:めちゃくちゃおもしろいんですけど……2008年5月から伊藤忠商事が「ミドリムシをやる」ということになって。

伊藤忠商事が販売するミドリムシと私が販売するミドリムシって、中身は同じですよね。

だって私が両方とも石垣島でつくってるんですから。何も違わない同じミドリムシですよ? でも、私が売るとほとんど売れないのが、伊藤忠商事が売るとめちゃくちゃ売れるんですよね。

(会場笑)

出雲:伊藤忠商事が「59種類の栄養素が入ってます」と言うと「伊藤忠さん、それはすごいですよ! 59種類も入ってるんですか」。「他に培養できる人はいませんよ」と言うと「独占技術ですか! すごいですね」。と。すぐに品切れになるわけですよね。

すぐ品切れになるんですけど、そのあとは「まあ伊藤忠がやってるんだったら大丈夫だろう」ということで、多くの会社が出資してくれて。しっかり研究を進めて、広めていきましょうとなりました。

ベンチャー同士で取引しても実績にはならない

出雲:(言いたいことの)2つ目です。ミドリムシを広めることは最初大変だったんですけど、みなさんのビジネスやサービスやプロダクトも大変だと思うんですね。これを乗り越えるためには、500社ダメだったら501社営業に行くか、「もう他で決まってます」と合コンシステムを(採用すること)。

ベンチャーキャピタルからのファイナンスだけではなくて、プロトタイプのプロダクトを販売するときにも使うというセンスが必要だと思います。

あともう1個だけあって。最初の会社が伊藤忠商事だったからよかったんですね。ベンチャーは、ベンチャー同士で取引しちゃダメなんですよ。

どんなに大変でも大手(企業)・政府に採用されるというレピュテーションも含めた実績が、ベンチャーにとっては転換点になりますから。

同じくらいのサイズの中小企業・ベンチャー企業と一緒に小さい取引を何個やっても、大手から見ると実績にはカウントされないんですよね。

中小企業同士の取引だと条件もお互い厳しかったり、環境が変化すると本当は払いたいのに払えないとか、そういうことが日常的に起きる。

なのでどんなに大変でも、そういう取引はスタートアップの序盤ではあんまり得策ではないんじゃないかなと私は思ってます。

センスはないけど1000回実験した

小林:お聞きになってる方も一緒だと思うんですけど、500社行ってよく気持ちが萎えなかったなと。

よくあるじゃないですか。「ちょっとダメだったらすぐピボットしよう」みたいなスタートアップって、ここにいるかわからないですけど結構多いと思う。

2年間営業し続けて「お前の会社なんて実績がないじゃん、ダメじゃん」って言われ続けてるわけじゃないですか。そのときの精神状態というか、なぜそこに対して飽くなきモチベーションがあるのかなと。

出雲:ありがとうございます。(スライド切替)

小林:ずいぶんスライドがあるんですね。典型的な質問でしたか?(笑)

出雲:いや違います(笑)。別のところで同じこと言われたんです。「500社は結構堪えるし、すごい。私も同じくらい大変なんです」という方がいらっしゃったんですね。

「本当に回ったんだけどぜんぜん資金が調達できない」とおっしゃったので、「バイネームで何社ベンチャーキャピタルに行かれたんですか」とお聞きしたら「10、11社行きました」と。

VEC(一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター)がベンチャーキャピタルの年鑑をオフィシャルにつくってますけど、日本のベンチャーキャピタルって別に11社じゃないじゃないですか。

11社でダメだったので「やめようと思います」とか「何が悪いんですか」って言われたんですけど、「何が悪いとかじゃなくて、こんなところに来てる時間があれば12、13、14、15社目に行かないといけないんじゃないですか?」と申し上げた。

実は「本当にたくさんの会社に営業に行く」っていうことを、みなさんやらないことが多いんですよね。びっくりするくらいやらないんです。

私は別に何のセンスもなくて、25歳のときにミドリムシの培養技術がたまたまできた。まあ、これは鈴木が頑張ったというのが9割くらいなんですけど。

でも、私も約1000回はやったんですよ。私でも1000回やったらできた。「1000回実験する人ってこの世に1人もいないんだ」って本当に思ったんですね。

それで「1000回やるだけですよ」って言うと「そんなにできない」って言われるんですよ。絶対そんなことはなくて。

自分の意志を思い出す「メンター」と「アンカー」

出雲:そうすると「意志が強い・弱い」って話になるんですよ。意志ってベクトルみたいなもので、どういう方向に興味が向くか、どういう方向に感受性が働くかという。

スカラーみたいに「この人の意志の強さは100」「この人は42」「この人は8」とか、直線的にボリュームで表現できるものじゃないじゃないですか。

意志って、強いとか弱いとかじゃないんですよ。向きが大事で、向きを自動的に思い出す仕組みがあれば誰だってできることなんですよね。

それが何かというと、私は2つあると思ってまして。「メンター」と「アンカー」です。いろいろ探したんですけど、やっぱりメンターとアンカーだと思うんですよ。

自分の例で申し訳ないんですけど、私のメンターはグラミンバンクを創設して2006年にノーベル平和賞を取られたムハンマド・ユヌス先生なんです。

この先生は現在75歳なんですけど、世界から貧困を撲滅するために年間200日も講演とソーシャルビジネスのお仕事をされている方です。

僕はこの人のことが本当に好きなんです。ユヌス先生は「貧困博物館をつくろう」と言っていて、私はそれに本当に共感してます。

みなさんは貧困博物館には行かないけど、恐竜博物館とかSLの博物館とかそういうものには行きますよね? それは恐竜がいないからですよね。

今、貧困はどこにでもあるので貧困博物館ではお金が取れないんですけど、貧困を撲滅すれば博物館に多くの人がお越しになるようになる。だから貧困博物館をつくろうとしてるんです。

ユヌス先生にお会いしたとき「博物館をつくると言ってるのはいいんですけど、何階建てなんですか?」と聞いたことがあります。

「何階建てって何の話?」って言われたんですけど、(貧困の撲滅には)学校教育の問題を解決したり、水の問題を解決したり、いろんなことをしなければいけない。

僕は栄養失調の問題をミドリムシで解決したいので、貧困博物館の栄養失調のフロアをインチャージしたいって話をしたんですね。

そしたら大ウケして「絶対やってくれ」って言われて。そのときのメンターとの大事な約束、一番尊敬してる人と約束したこと……私の場合はこのTシャツが大事だったんです。

このTシャツはグラミンでインターンシップしたときに買って、理由は自分でもわからないんですけど、衣装棚に置いといたんですね。

メンターからもらったものがあれば何でもできる

出雲:朝起きて、200社くらいに断られてるから「今日営業に行って、また芋虫とか毛虫とか言われて断られるのやだな」って思いますよ。人間なんで。でも、着替えるときにTシャツがパッと目に入るんです。

そうすると「嫌だけどユニス先生と約束したし、今日もう1回だけ営業に行ってみよう」という、最後にあと1回だけやる元気をつくってくれるんです。こういうアンカーって。

(アンカーは)メンターとのストーリーを思い出させてくれる品物。グッズだったらなんでもいいんですけど。それを見て、行って、201社目に断られるじゃないですか。201社目、202社目、203社目に断られてヘトヘトになって帰ってくるじゃないですか。それでパジャマに着替えるときに、また目に入るんですよ。

「ミドリムシなんてやってられるか」と毎日思うんですけど、家に帰ってTシャツを見るとハッと思い出すんですね。「これで終わりにしていいんだっけ」「明日もう1日だけやってみよう」って気持ちになるんです。

私の場合はTシャツですけど、うまくいっているスポーツ選手の方や起業家の方、研究者の方にお会いしてると、すごく尊敬してる人からもらった手紙とか、賞状とか、ハンカチとかいろんなものがありましたけど、やっぱり「自分はなんでこれをやってるんだっけ」ということを思い出させてくれるようなアンカー、碇のようなものがあると、人ってなんでもできるなと思うんです。

小林:ここにいる経営者の方は、若者に会ったらボールペンでもいいから何でもあげたほうがいいってことになりますね(笑)。

出雲:はい。本当にそのボールペンが、尊敬する人と自分との関係性を思い出させてくれるという、そういうストーリーが込められているものであれば、ボールペンでもハガキでもTシャツでもなんでもいいと思うんです。

小林:ちなみに、今回のIVSの表紙になってる出雲さんのパネルがあるじゃないですか? 終わったらスタッフにプレゼントしてるんですよ。「拝んで生活しなさい」っていう(笑)。一応、忘れずに初心を持って頑張りましょうという感じでやってるんですけど……。

出雲:いや、これはメンターからもらうから効き目があるんですよ。メンターとアンカーというのは不可分、一体のものなので。別に有名人である必要はぜんぜんなくて、自分にとってのメンターからもらったものがあると本当に人間ってなんでもできると思うんですね。

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IVS(Infinity Ventures Summit)

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