自分の話をしない男性たち

ジェーン・スー氏(以下、スー):自分の話をしないって言いますからね、男性は。自分が最近見た映画とか、野球がどうのとか、今何を感じているんだいうこと、こういうことを悩んでるんだという話は、ほとんどしないという。

情報の交換と、その情報に対してどう思うのかという、何か1つ媒介を介さないと話はできないということなんだなって思って。そこに個体差はあれど、「性差の傾向がある」という。最近これが一番誤解を生まない言い方だなと思っています。

田中俊之氏(以下、田中):そうだと思います。傾向性っていうものがあるので、この本もそうなんですけど、「男はこうだ!」って言っている訳じゃないんです。男性ってこういうパターンにハマりがちだから、これにハマっちゃってる人は気をつけましょうと。その言い方っていうのは別に全然悪くないし、傾向があるっていうこと自体、当然だろうと思うんですよ。

スー:例えば悩んでいる男性がいたとして、友達が飲みに誘ったり、馬鹿話をしたりして励ます。でも悩みについては一切聞かないっていう男の美しい友情みたいなものも、よく聞きます。

『ルールズ』というアメリカの婚活本があって、結婚にたどり着くためのルールがたくさん書いてある。ざっくりと「男の人に好かれたかったらこうしろ」とか、「プロポーズされたかったらこうしろ」とか、延々と書いてあるんですけど。

THE RULES―理想の男性と結婚するための35の法則 (ワニ文庫)

もちろんできないことだらけなんですが。「男の人と車に乗ってて、確実に道を間違えると思っても、あなたは指摘しないで」とか書いてある。

(会場笑)

スー:「彼は必ず私を目的地にたどり着かしてくれると信じることが、あなたの仕事です」って書いてあって。確実に「右! 右! ウィンカー出して!」って免許持ってない私みたいなのがいて。ゲラゲラって笑ってたんですけど。

その中の1つに「男性はトラブルがあった時に、真剣に考えることはなく、他のことをして気を紛らわして、リカバーするものです」と書いてあって。それを読むまで全くそんなのわかんなかったです。よく見てみると本当にそうだと思いまして。私の周りの男性は。

嫌なことがあったとき、そのことについて考えたり解決をするんじゃなくて、違うことをするんですよ。DVD見たり、酒を飲んだりして、気を紛らわして。「まぁなんとかなるさ」っていう話。

「ちょっと聞いてよ」みたいなことで友達に集合をかけたり絶対にしないな。これは孤独な戦いで大変だな、男の人は、と思いました。

社会全体でつくられた男性の嗜好パターン

田中:そうですね。そう思うと女性とどういう関係にあるかっていうことも、この話では重要なことで、そのアドバイスって女性誌でもよく書いてあるんですよ。

『anan』とか『non-no』を分析した社会学の論文を読んだとき、男の人は評価されるのを好まないから「○○さんって楽しい人ですね、と決して言ってはいけません」と。女子が評価していることになっちゃうからね。どう言えばいいのかというと「何々さんといると私が楽しい、と言いなさい」みたいな。

スー:喜ばせる系だ。すげー! メモメモ(笑)。

田中:そんなアドバイスがあって。だから何ていうんですかね、男の人が誤魔化して上にいるという状況を支えるようなアドバイスを、女性誌とかはしているのかなっていう気がしたんです。

スー:ありますね。確かにそうです。

田中:だから男の人が自分の問題を正面から捉えられない問題は、社会全体がそう仕向けている。そういう傾向に男の人がなるように、面子が潰れないように優しくしてあげてるという側面があるのかなと思います。

スー:「向き合ったら壊れるからやめろ!」みたいな(笑)。

田中:「本人のためになってないことが多いのかな?」という気がするのが、僕がこの本を執筆した理由でもあるんですよ。

スー:男性に届くと良いですよね。

田中:届くといいです。でも20年ぐらい前よりは届くようになってきたかなと思うんですよ。

スー:「男は黙って……。」の時代から変わっている?

田中:経済的な事情が悪くなっていることは、男性にとってはチャンスでもあって。「経済の状況がよければ男は働いていればいいんだよ」っていう意識って、たぶん変わらないと思うんですよ。

スー:確かに。

田中:「働いてお金を稼いで何が悪いの」っていう時代だったわけじゃないですか、バブルが弾けるまで。ただ、僕は大学を卒業して40年間、定年まで「1回も休まず働いてください」って言われたとき、到底できないなと思ったんです。男性の生き方が一通りしかないことに違和感がありました。

スー:相当無理ゲーですね。この無理ゲーを、20歳過ぎぐらいから自動的に背負わされている苦労は、女性サイドは理解したほうが良いと思います。本当に。

怪獣を生み出したのはだれだ?

田中:男の人って本当は不満があったんじゃないかと思うんです。仕事だけの人生っていうことについて。専業主婦のパートナーがお家にいる場合って、言いようがないじゃないですか。

自分が辞めたら家のローンが払えないし、食費も払えない。だから悩みや不満を無いことにして。それはそれで、今定年退職をしたお父さんたちが町に溢れてきて、「あいつら邪魔だ」っていう話もありますけど。悲しいモンスターっていうか。

(会場笑)

田中:僕たちがあの怪獣を生み出した側面もあるんじゃないかという気はするんですよ。

スー:そうですよ。ゴジラ的な日本人が町中にいっぱいいる。

田中:定年退職者はようやく会社から帰ってきたんじゃないかなと思うんです。40ぐらいだとまだ助かるんじゃないかなと思うので、そういう意味でこの本は補助線的なことをやっているわけなんで。

ただ、認識されない問題は無いと等しいので、どうすればいいのかと。ある程度女性は、「男性って問題があるんじゃないか」と思っているのに、それが多くの男性に届かない。

スー:そうですよね。

田中:一番ひどいのは、セクハラだと思うんですけど。

スー:そうですね。

田中:一番悪い例で言うと、「自分はそんなつもりは無い」って言っても、相手はそう解釈しているわけじゃないですか。そのことのズレがうまく理解できないというのは、本人もかわいそうだと思う。人に迷惑かけてるんでね。

スー:いがみ合って生きたいと思っている人って、いないと思うんです。男女ともに。できるだけ仲良く穏便にやっていきたいと思うんですけど、どうしていけばいいんですかね。女性には、40男が嫌われないためにできることあるんですかね?

田中:女性ができることっていうのは。誰でも「男はこうだ」っていうビジョンを持ってしまっているんですよね。それは男性自身が持っていて、自分で自分を縛っている側面があると思うんですけど、女性がそう思ってしまっている側面もあると思うんです。

この本のテーマはリアリティーと現実のズレがあると、大変生きづらいという話なので、皆さんが思われている「自分の夫はこうだ」とか、「パートナーはこうだ」っていうのと、目の前にいる現実のパートナーは違う。

自分の頭の中にあるものですから、目の前の彼が、今どういう状態にあるのかというのは、しっかり見てもらうと扱い方が変わって来るかという気がするんですけど。

「女のくせに」はダメで、「男のくせに」はOK!?

スー:さっき裏でも先生と話してたんですけど、男の人は「誰かを食わせてナンボ」っていう呪いをずっと背負って、支えてもらってきた日本社会なわけです。でもそうじゃなくなってきて、物理的にそれは無理になってきて。

先日とある取材を受けていたとき「自分より稼ぎがどうのという話って、ズレてくるんじゃないか」という話をしたとき、それまで理解をして、100パーセント言ってることがわかっていると思っていたインタビュアーの人に「無職の働かないダメ男でも愛せってことですよね」って言われたことがあって。いやいや、その時点でバイアスがかかってるだろうと。

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