通信制の授業を飽きさせない仕組みづくり

野口かおり氏(以下、野口):N高等学校に関する発表は以上です。ここからは質疑応答に移らせていただきます。

記者:アスキーのモリタです。今日はありがとうございました。川上さんに伺いたいんですけど、授業の双方向性を取り入れるってことだったんですけど、例えば授業が生放送で出てて、そこに字幕が流れるとか、「こういう形で双方向性をとっていきますよ」っていう具体的な方策があれば教えてください。

川上量生氏(以下、川上):当然ニコ生っていう、ニコ動でやっている生放送のシステムはコメント機能があるわけなんですけども、それも一応双方向の1つではありますが、それだけではありません。現状のニコ生のシステムを進化させた新しい仕組みを使っていきたいと思っています。

記者:具体的なところは、検討中って感じですかね?

川上:それはまだ。発表できる段階になれば発表いたしますので。

記者:わかりました。あとですね、どうしても通信制の授業の場合だと飽きてしまいがちっていうところがあると思うんですけども、飽きさせない工夫の1つが、さっきも話されてたSlackのチャットだったり、ネットであっても友達ができるってところだと思うんですけど、その他に考えられてることがもしあれば。

川上:そうですね。やっぱり1人でやってると辛いと思うんですよね。そういうものが、友達の関係をネット上でも構築することによって、それは生徒のモチベーションを上げる1つの方法なんですけども。

それ以外にも、例えば、生徒の習熟度に応じた講義を選択していただくことで、それでまた(モチベーションを)上げることができます。

また、一流の先生たちにすばらいし講義をつくっていただくんですけども。例えばその講義を説明するチューターみたいな人がいてもいいんじゃないかなって思っていまして。生徒が生徒を教えるような仕組みもつくれたらいいなと思っています。

記者:ありがとうございます。

N高等学校の「N」の解釈は人それぞれ

記者:実質的に授業料が年間10万切るぐらいで、これは他の通信制高校と比べて安いのかどうなのかっていうのをちょっと伺いたいんですけど。

奥平博一氏(以下、奥平):全ての通信制高校を今この場で比較っていうのはできませんけど、1単位の授業料はおそらく最も安い授業料ではないかなと思っております。

野口:よろしいでしょうか? では続いていらっしゃいますか?

記者:共同通信のカワモトです。ありがとうございます。2点あります。まず1点目が、当然の確認までなんですけど、NというのはネットのNということでよろしいでしょうか。あと、もう1点が募集人員。何人っていうのはありますでしょうか。お願いします。

川上:まずN高校のNは、これはみなさんのご想像にお任せいたします。当然、ネットでしたり、ニコニコもNですし、例えば仲間だったり、そういういろんな言葉で解釈することが可能だと思っていますが、特にこれだってことは、我々のほうでは決めておりません。また定員なんですけれども、定員は初年度1万人を予定しています。

記者:学びリンクのコバヤシと申します。2点ほどお伺いしたいんですけども。レポートもネットで提出ということで、タブレットを使って提出されてる他の学校さんもあると思うんですけども、そういったものを利用していくのかっていうこと。

あと、スクーリング会場について。今、東京と大阪の2ヵ所っていうことだと思うんですけど、今後他の地域での開設を予定されているかどうかお伺いしたいです。

川上:タブレット、スマホ、パソコン、どれでも使えるような仕組みを構築しようとしております。スクーリング会場に関しても。

奥平:スクーリング会場は当然これから増やしていく予定でございます。今日の段階で発表できるのは2会場ということでございます。

川上:基本的には、やっぱり沖縄に来ていただきたいなって思っています。沖縄で、僕らいろいろと楽しいスクーリングを用意したいと思ってます。

授業料は、実はかなり安い値段を設定させていただいてるつもりなんですけども、残念ながらスクーリングでそれは帳消しになってしまうような場所を僕ら選んでるんです。

それでも僕は、沖縄に行ったほうがよかったなって思っていただけるんじゃないかって思っています。

記者:タブレットのことなんですけども、例えばiPadを生徒に貸し出すとか、そういう予定とかはあるんでしょうか。

川上:それはまだ考えていないですね。

記者:わかりました。ありがとうございます。

N高等学校が目指す理想の学校とは

記者:冒頭で、今回のN高校の立ち上げの趣旨とキャッチコピーというか、「デジタルネイティブ世代の新しい教育」というところを掲げてらっしゃったかと思うんですけれども。

今回のようなカリキュラム、要は通常の教育プラス実地でのリアルな研修だったり、プログラミング含めて、今後の教育で何かが足りなそうだったので、N高校でこれを実現したっていうところを、ぜひ、お三方の視点でお伺いできればなと思ってます。

川上:まず最初に、N高校っていうのは、1つはコンピューターを使って次世代の最先端の教育システムをつくろうっていうのを1つの目標として掲げています。

それともう1つは、高校に行った後の出口を明確に示したいというのが僕らの目標で、1つは大学進学ですし、もう1つは手に職を付けてちゃんと就職もできる、そういった学校を目指しています。

佐藤辰男氏(以下、佐藤):デジタルネイティブにとっての理想の学校、それは先ほどから出ているコミュニケーションの双方向性とか、独自のコミュニティーいったものを、ニコニコから学校の世界で築いていくとか。

あるいは一人ひとりの志とか、苦手、得意みたいなことに合ったカリキュラムを、デジタルの世界で理想を求めて追求していくということが1番大事なことなんだと思ってます。

パンフレットを見ていただくと奥平のコメントが出ておりますけど、非常に熱い人間で、おそらくスクーリングで実際生徒たちと接して、彼が前面に立ってやっていくんだと思うんです。

私の立場で言えば、出身がカドカワの中で、先ほど新人賞の話もしましたけれども、新人賞に応募する子たちっていうのは、芥川賞とかと違って、例えば電撃なんかはやはり高校世代とか大学世代とか若い人が多くて、心の病とかを抱えてる人が多いんですよ。

ですから私はそういう経験から、奥平と共にといいますか、リアルな生徒と接していきたいと思っております。以上です。

変化する学校と教師の役割

奥平:ありがとうございます。実は昨日沖縄から参りまして、自分は沖縄で学校準備を進めております。

私も1人の指導者として教室の前に立っていたわけですけれども、やっぱり教師の役割っていうのは本当に明治時代に学制がひかれてから、実はあまり変わっていない。学校っていうのは最先端の場であったはずなんですけれども……今、どうなんでしょうかね。

そういう意味でおいては、教師の役割は変わってきてると思います。つまり、私が頭の中にある教科書知識だけで勝負できる時代ではありません。

いわゆるそういった情報というのは、もうネットの世界に溢れてます。むしろ、それをうまく取り上げて編集していって伝えていくっていうのが教師の役割だと思ってます。

それと、やっぱりサポーターです。今、本当に精神的な部分で病んでる子は多いです。ですから、そういった意味で、私はこのN高校、ネットの高校にそういったコンテンツの部分での期待部分っていうのがあります。コミュニケーションの部分の期待部分。

ただ、教師の最後守るべきところっていうのは変わらないと思うんです。けれども、本当にそういった役割が変わってきています。

ですからこの学校、この企画にめぐり会った時に「よし、これだ!」と思ったというのが、私の正直な気持ちです。

学校法人としての利益化

記者:ちょっと伺いたいんですが、課外授業は授業料に含まれるのか、それともプラスアルファで、1つのコースにつきいくらか別にかかるのかというのと、

佐藤会長もおしゃってましたけど「自分でも受けたいな」と非常におもしろそうなコースが多いんですが、外の方に解放することは可能なのか。それともこの高校に入らなければ受けられない授業なのか。そこをお聞かせください。

川上:課外授業に関しては、今ご紹介したもののほとんどは、基本無料で受けられることを考えています。

ただ、例えば実際にバンタンとかに通学をしたいっていう場合には、別途費用が請求される場合もありますが、基本的には無料です。また、聴講生みたいな形で外部の方が見れるような制度については、現在検討中です。

学校法人としての利益化

記者:朝日新聞のタカシゲと申します。2点お伺いします。プログラミングから受験に強い学習まで、かなり幅広く手厚く教えられるとなると、人件費がすごくかかると思うんですけれども。

授業としては、初年度から黒字でできるんでしょうか。それとも利益は出さない授業ということになるんでしょうか。

川上:学校法人としては当然継続して運営しなければいけませんので、もちろん初年度から黒字になるかどうかはわかりませんけれども、最終的にはちゃんと成り立っていくような仕組みで考えています。

それは教材の開発とか、教育システムの開発とか、多分これが投資として収入の大きく必要な部分なんですけれども。

それは、Dwango Kadokawaで開発する予定です。それも最終的にはビジネスとして成立すると僕らは信じていますけれども、初年度は難しいなと思っています。

記者:2点目で、今日から出願が始まってるということで、選抜についてなんですが。引きこもりの方とか、そういう人たちのことも視野に入れて学校を始められるということで、そういうことが有利になるような選抜を考えてらっしゃるんでしょうか。

すごく魅力的な授業だと思うので、一般的な学力としても高いけど、サブカルとかITが好きで、普通の高校も行けるけどこっちに行きたいっていう人もいっぱいいると思うんです。

例えばそういう方たちが受かってしまって、中学校の時から引きこもってた人は受からないとか、人気が高くなった場合にそういうことにはならないんでしょうか。

川上:基本は意欲のある方は全て受け入れたいっていうふうに思っていますし、それができるのがネットの高校の大きな特徴じゃないかっていうふうに思っています。

記者:1万人っていう定員は、意欲がある人はだいたい入れるっていう人数っていう……、詳しくはわからないんですけれども。

川上:そうですね、例えばネットの高校といっても完全にネットだけっていうわけにはいかなくて、実際にはスクーリングだったりだとか、生徒に対しても担任も付きますし、いろいろ人と関わる部分もありますので。そうすると、現状さばける限度としては1万人くらいになってしまうだろうっていうのが、僕らの今考えている想定です。

記者:ありがとうございます。

N高等学校の解釈とクラスの仕組み

野口:はい。それでは大変恐縮ですが、次の質問で最後とさせていただきたいと思います。

記者:すみません、朝日新聞のフジサキと申します。先ほどのN高校についてはネットでもありうるし、仲間でもありうるっていうことだったんですけど、その解釈の自由を預けるっていうところで、そういう名前を付けた理由や狙いについてお聞かせいただけますか。

学校名ってはっきり明示されることが多いと思うんですけど、解釈の自由をそこに付けられた狙いといいますか、もしあればお願いします。

川上:いや、特にないほうがおもしろいかなっていうだけなんですけど。N高校っていう名前は特殊な名前だと思うんですよね。

実は名前の申請のときに仮称だと思われまして、「いや、本当にN高校です」っていうことを言われると、担当の方が数十秒間黙り込まれて……その後「特に問題はないです」とおっしゃっていただいたんですけども。

今まであまりなかった名前だと思うんですよね。そして新しい学校で、新しい可能性を追求したいと思ってますので、その解釈にも多様性があったほうがいいんじゃないかということで、決めないでおこうということにした次第です。

記者:もう1点あります。校長先生にお伺い差し上げたいんですが。担任の先生を付けられるっていうことなんですけど、例えば1クラス何人くらいの生徒さんを持つイメージなのか。

また、どういったバックグラウンドの先生が入られるイメージなのか、トラブルがあった場合には例えば直接その子のところに行ったりとか、どういうイメージで運営されるか教えてください。

奥平:学校名の詳細になると思うんですけども。いわゆるネット通信制といえども1クラス40人というルールはありまして、ですから先ほどスクーリング等来ていただいたら、学年ごと、40人ごとに授業をやっていくことになります。

ですから、40人×何クラスという計算になると思います。担任は、日常的に顔を合わせているわけではありませんので、先ほどのさまざまなコミュニケーションツールを使ってやりますので、その40人×何クラスか何人かを見ていくと。地区別等で担任を割り振っていくということも考えられます。

先ほど言いましたリアルな高等学校教育の中ですから、おっしゃったように何かトラブルがある可能性があります。

その場合は、当然今後各地にそういった教員を常駐させて、そういったことにも対応できるようにしていきたいと思っております。

野口:よろしいでしょうか。では最後になりますが、川上さんから一言お願いいたします。

川上:僕たちは、今回のN高校の教育プロジェクトに対しては、非常な決意でこの事業に臨んでいます。そして、当然まじめにこれを成功させたいと思って全力でやっていきたいと思います。

あともう1つ、今日は前面には出てませんけれども、僕らはまじめにやるだけじゃなくて楽しい学校生活、そして通ってる生徒が誇りに思えるようなネットの学校をつくりたいと思っていますので、どうかみなさんもご支援いただければと思います。よろしくお願いします。

野口:これにて、カドカワネットの高校発表会は終了となります。最後までお付き合いいただきまして、ありがとうございました。