沖縄のカミンチュ(神人)・渡久地十美子氏の活動

司会:沖縄県今帰仁村生まれ。お告げに従い、1980年頃より神に仕える身となり、沖縄を中心に国内海外を問わずにマブイグミやヌジファ(神や霊の救い上げ)を行っていらっしゃいます。著書に『ニライカナイの風』『ほんとうの琉球の歴史』『尚円王妃・宇喜也嘉の謎』『祭祀のウソ・ホント』がございます。渡久地十美子さんです。

渡久地十美子氏(以下、渡久地):いつも緊張していますけど、今日は特別緊張しています。よろしくお願いします。みなさん初めてのかたも、いっぱいおられるようです。初めて私に会った人はいつも「ええー、普通のおばさんだったの?」と驚かれます。「講演に行ったら普通のおばさんでした」とブログにも書かれたりしますが、本当に普通のおばさんです。(著書の)『祭祀のウソ・ホント』も、6月の末頃に発売しました。みなさんよく買われて読まれているようですが、ありがとうございます。

私はカミンチュ(神人)として、カミンチュと言ったらなんか大げさかもしれませんけど、私はユタ嫌いなのですよ。私、ユタにしたたか、もうあっちこっち引っ張られて…。もう、何が良くなったかと言ったら何も良くならない。ただ貧乏しただけで。それで本当にユタ嫌いになって。もうお金もない、体も具合悪いし、「もう自分でやらないといかん」と思って自分でやりだした。

自分の先祖をやって。「やってよかった、もうこれで終わり」って。ちょっと体も軽くなりましたから、楽になりましたのでね。「はー、これで終わり」と思ったら、終わりの始まりなんですよ。今度は生きている人間から「ワッターウヤフジ(私達の先祖)してちょうだい」って、これがもう何十年続いて、ぜーったい卒業できないです。沖縄の人たちだけじゃなくて、全国です。

今月も1日から九州に行きます。あまりにも人に追っかけられるものですから、ちょっと温泉に入りながら逃げたつもりでいるんですよ。もちろん、向こうにもお客さんがいるものですから。鹿児島、熊本、福岡と、たくさん(依頼が)来るものですから。「ならん、ならん」って、また沖縄に逃げてきて。もうずっとこれの繰り返し。そして、沖縄に帰ってきたと思ったら「九州に行ったんでしょ? どうして大阪まで足を伸ばさなかったの」「どうして京都まで来てくれなかったの」って言われるんです。また来月は東京に行くんですけどね。

ユタ(琉球列島のシャーマン)に対する怒り

渡久地:それで、もう、話したいことはいっぱいあるんですけね。霊能者というのは、アマクマ(あっちこっち)行ってはいけないんですよ。というのは、(霊能者である)自分たちが歩いたら、この辺の浮かばれてない霊や神が「私のことを分かってちょうだい」「私のこと分かってくれるかな」って、みんな信号を送ろうか送らないかと待っているんですよ。ちょっと近づいたら、すぐ引っ付かれるんですよ。そしたら、もうダレるんですね、頭痛い、具合悪いと。磁石に金属製の物が近づいたら、パッと引っ付きますよね、そういう具合です。

あんまり、ウガンジュ(拝所)もあちこち行きたくないし、行けないんですよ。アマクマ、ウガンジュ周り、お寺回りするユタたち、あれは何にも引っかからないから、どんどん歩くんですよ。そういうことですので、あまり、どんどん歩くユタは頼まない方がいいですよ。

別に私は本を出そうと思ってウガンチュ(拝む人)しているわけじゃないです。(著書の)「ニライカナイの風」を書いたのは、自分が健康になろうと思ったから。また、息子もそういう体質で、私がしないと息子が大変なことになると思って始めたんです。終わりにするつもりで始めたんですよ。で、そうこうしているうちに全国を回るようになって。

本を書くきっかけはみんな人でした。これ(『祭祀のウソ・ホント』)も、ユタにお金500万かけたとか1000万かけたとか、巷でよく聞くんですけどね。私は、いくらお金かけたからといって、ちゃんと戦争で沈んだ人が浮かばれて成仏して、うつの人はちゃんと治って健康になるのでしたら、私財は使ったかもしれないけれど、よかったね、綺麗にできてますよって言うんですけど。そういうケースが1件もありませんでした今まで。それにワジワジーして(怒って)この本を書きました。

お墓を移動しても霊は残っている

渡久地:お墓の移動はしないほうがいいですよ。古い墓でも不便な所でも動かさないこと。もうずーっとね、地縛霊になって、そこにいますのでね。親切に上等な墓を造って、お骨だけ移動してもずっと残ってるんですよ。

火葬の時代の人たちは移してもいいですから。元の墓は、そのまま不便なままで、1年に1回行ってなくてもいいです。2年に1回でも、3年に1回でも行って、ウートートーしてください。もし行けないようだったら、仏壇からでも、通せばいいんじゃないんですか。元の墓を動かすよりは、ずっとその方がいいですよ。あまり墓を動かしてる所は、いいようにはいってないみたいです。

お墓は毎日行ってもいいですよ。昔は、遺体をそのままお墓に入れますからね、臭うんですよ。立派な墓とはいえない墓がいっぱいありますので。3年、5年と洗骨するまでは行くなと言いますけどね、今は火葬ですから毎日行ってもいいです。「来んけー(来るな)」っていうウヤフジ(先祖)はいませんので、いつでも行ってください。ヤマト(本土)では朝でも毎日行きますよ。

屋敷のウガン(御願)とか、よく聞きます。みんな、四隅ありましたら、外に向かって拝みしますよね。門の方も。住んでるところに「ありがとうございました」ってお礼を言うんですよ。だから屋敷に向かって、例えば、荷物を持ってきてくれた人に「ありがとうございました」って言いますよね。何もしてくれてない他人に「ありがとうございました」って言わないですよね。だから、いつもありがとうと言える人、土地に感謝の言葉を述べて、屋敷のウガンをしたらいいです

二月八月(ニンガチハチガチ)とかなんとか言いますけど、1年に1回でいいんですよ。「去年はありがとうございました、今年もまたよろしく」でもいい。何月や何の月とか、そういうのはしないでいいですから。内に向かって。門から、中に向かって。簡単ですよね。外に向かったり、水道から何から拝んだり、ややこしいことはしないでいいです。自分がいつもお世話になっている屋敷に、実になるものをお供えして、果物とか、ナスとかキュウリとかでいいですよ。家族の名前を言って「ありがとうございました」って、自分でなさってください。

引っ越しする時にも、みな大安にウガミますよね。あんなのはね、ただ書いてあるのであって。何にもない。「これからの人生が順風満帆で、こっちに引っ越して栄えますように」って、潮の満つ時間に合わせて、実になるものをお供えするといいですね。あとは、自分の都合のいい時間に搬入していいです。

よく「仏壇からウンチケー(ご案内)しないといけないかねー?」って思われる方もたくさんいると思いますけど。まず自分達の環境を整えて、仏壇ウンチケーは後でいいですから。それは引き潮の時に。仏さん栄えさせたらいけないのでね。みんながいるところにウンチケーすると、仏さんも安心します。仏さんから先にウンチケーしますと「まーやがや?(どこだろう?)」ってなりますよ。だから、何でも仏さん仏さんじゃなくて、引っ越しのときは、仏さんが安心できるようにしてしてください。

ユタに洗脳されてはいけない

渡久地:皆さん、カミンチュとかユタになりたい人いますか? それはもう、なりたくてもなれない。また、やりたくないと思っていても、逃げることもできない。私は毎日その葛藤でした。「いつ卒業出来るんですか?」「いつ逃げればいいの?」って。

ですからカミンチュっていうのはもう、本当に大変です。みなさん、なりたいからといってユタにだまされたら、洗脳されたら、だめよ。「拝んだらカミンチュになれるよー」とか「ウガンサー(ユタ)なれるよ」とか、全部ウソです。戦後はね、戦争の未亡人がいっぱい居て、遺族年金が下りてくるの。これにたかって、自分も出来る、自分も出来るって、みんなしぼられて。私が見て、出来る人はちっともいないです。

霊に対するマブイグミ(魂込め)

渡久地:それで、よく神様のことを聞かれるんですけどね。まあ神様の話する前に、私はマブイグミ(魂込め)が一番きつくて難しい拝みだと思うんです。霊とかだと、もう一カ所に皆固まっていますのでね、そこで取って、二度とウクイ(送り)残しのないように、きちんと、ロウソクで白紙にして、こっちに残らないように、取るんです。

例えば小さい頃にマブイ(魂)を落としますよね。すると、一カ所に皆集まるんですよ。こっちで交通事故したってそこにはいないんですよ。追いかけていったら、小さい時に木から落ちたとか、火傷したとかいう場所にいることが多いんですね。そこでマブイグミをするんです。

アマクマにはいないです。そこにね、ずーっと落とすその度に重なっていく。上の方から全部取って、そこにいるマブヤーに気合を入れるものですから。マブヤーもので一番難しい拝みです。パワーもいるし、ひっくり返るくらいですよ。入れた人は言葉では表現できないけど何かが変わったって必ず言います。

高い所から落ちると、人は高所恐怖症なります。飛行機に乗るのが怖いとか、高い所が怖いという人には「上から落ちたことないねー?」と聞いてみてください。よくトラウマとか言いますけど、あれ全部「マブイ落ち」ですよ。

住人があまりにも変わる屋敷には何かある

渡久地:皆さん、神様といったら、すごいものだと思いますでしょう。本島中部のある家は神もいたし霊もいた家です。15年拝みしたそうですよ。屋敷に行った時、もう車から降りたくないくらい苦しいんですね。そこの旦那さんは霊感があるんです。全然そうは見えないんですけど。寝てたらもう、足から冷たいのがムジュムジュムジュムジュしてくるんですって。

いつも眠れなくて、冬は毎晩のようにコタツに入って。拝みしても拝みしても、その繰り返しなものですから、私のところに来たんです。15年拝みして「どうして霊をとらないんですか?」って聞いたら、「もう首里城に行ったり、ウガンジュに行ったりした時に、ユタはどんどん歩くけど、私はユタの後ろについて歩くだけで大変でした」って言うんですよ、奥さんが。

私は「お寺には自分で行きなさい。拝みにも行きなさい。私があなた達の屋敷をきれいにしましょう」と言って、それで屋敷の霊をとったんです。「なんか今日はとても軽くなった」って言ってました。

今はもう、旦那さんはコタツの中に行くこともなくなりました。

霊をとって昇天させて「行くべき場所に行きなさい」ってやったのに、「来年もお願いします」と言うもんだから、「自分でやりなさい。さっき話したみたいに、自分の屋敷にありがとうございましたって言えばいいですよ」って、そう言って終わったんです。

皆さん、神様は人間を救うものだと思っていますけどね、ウシクミ(埋め立て)して上に建物作ったりしたら、人間でも重いもの持たされたら文句言いますよね? 神様も同じですよ。ですから、こういう神のウシクミとか霊のいる所は避けたほうがいいですよ。必ずしも、病気とかマブヤーじゃなくて屋敷から来るときもあります。住人があまりにも変わる屋敷は何かあるんじゃないかなって気を付けた方がいいです。

お墓を移動したらトラブルが起きた

渡久地:質問ありましたら、それにお答えしたいと思います。

質問者1:お墓を移動したら良くないとおっしゃってましたが、私もお墓を移動したら大きなトラブルが起こってしまいました。もう移動してしまっているんですが、この場合はどうしたらいいですか?

渡久地:前の墓が道などに利用されていないなら、まだそこにいらっしゃいますので、あらためて、そこをきれいにして謝って、通った方がいいですね。

質問者1:前の墓はもう、ほかの親族にあげてしまったんですが。

渡久地:それはね、なお良くない。本土でもそういうことがよくあるんですけどね。例えば、鹿児島なんか噴火したら火山灰がたくさん降ってくるんですよ。それで墓を屋根式の納骨堂にしてるんですね。そして自分の墓を移動して、この納骨堂みたいにして、一つにしてるんですけど。

私が行ってみたら、「あなたの墓の下に他人がいますよ、ここ他人の墓だったんじゃないの?」と聞いたらね、「ああ、ここは○○の墓でした」って言うんですよ。墓を移動して、そこに他人の墓を作ると、なおダメですね。他人の先祖がいるので。

質問者1:他人じゃなくて、親戚なんですが。

渡久地:じゃあもう、あなた達が「ごめんなさい」って謝罪して、本当はそこにお骨も返した方がいいんですけど、それが出来なかったら、「自分達もそこで拝ませてください」とした方がいいですね。そこに皆さんおられますから。

質問者1:あげた所じゃない方には、父親のお兄さん、成人したお姉さんだけ今入ってるんですけど。

渡久地:じゃあ一緒にやった方がいいですね。一族ですのでね。一緒に拝んだらいいです。両方に行って。

お墓を移動するのは絶対に良くないです。火葬した人は、いいです。墓を移すんでしたら、火葬した自分のおじぃ、おばぁからは新しい所にして、前のお墓はもう落ち着いていますので、刺激を与えないように。行くのは1年に1回でもいいです。自分の先祖、ルーツはここなんだって、古い方の墓を残すのもいいんじゃないですか。

お墓の先祖への声かけ

質問者2:墓を改修工事したんですけど、業者じゃなくて素人にさせたものですから、拝みとかそういうのをしないで工事してしまったんですね。そういうのはよくないと聞いたんですけど、そうなんでしょうか。

渡久地:拝みしてから工事をするというのは、あまり聞いたこと・・・私ならやらないですね。私なら、改修工事する人と一緒に「墓荒らすんじゃなくて、あなた達のために、きれいにやってあげるんだからなんにも心配しないでくださいね」って、なるべくは声かけた方がいいですね。

質問者2:そういう声をかけてないんですけど、もう済んだ工事についてお詫びとかは?

渡久地:お詫びじゃなくて、人間が気持ちいいように言ったらいいんですよ。詫びとかじゃなくて、「事前に言わなかったけど、みなさんのためにお墓を上等に、きれいにしましたからと、安らかに眠ってください」と言ってください。

ユタ(霊媒師)の言うとおりにしたら貧乏になる

質問者3:私の母は高生まれ(高い位で生まれた)しているということで、元は祝女(ノロ)っていうことだったんですけれども、ユタ嫌いで、他界しました。結構、難病で苦しんで亡くなったんですけど、若い頃から寝たきりになると言われていました。実際その通りになりました。でも私たちはユタが嫌いだったので、そのままにしていました。

ところが、3年後に、私が原因不明で起きることができなくなりました。それで、ユタの方に聞いたら、やっぱり母のものを下げて、あなたもやるべきことがあると言われました。それで、何百万円も使いました。今は金銭面のことがあって中断しています。それでいいのかどうかっていうことなんですが?

渡久地:あなたにもしお金があったら、これからも続けていくっていうことですよね?

質問者3:といいますか、いろいろ本を読んでいるとですね、この方が3人目なんですけど、この方を信じていいのか?って気持ちが出てきてしまって。結局何年かかっても終わりがない、目の前にニンジンをぶらさげてお金を出させているようにしか思えないんですね。それで、今は距離を置いている状態なんです。姉妹そろって、そういう状態でお金を使ったものですから、母の成仏のこともあって、やってあげたいと気持ちもあるんですけど。

渡久地:お母さんのどうのこうのを下げるというのはないんですよ。例えばですね、いっぱい拝みした所を下げてきなさいって言いますよね。せっかく上げてるのに、お金をあげてからね、取り返してくるようなものですよ。そんな拝みはないですよ。

質問者3:祝女(ノロ)として生まれてきたので、詫びの拝みを下げるって言うふうにいわれたんですよ。

渡久地:なぜ、あなたのお母さんが祝女なの? 生まれ高くても、祝女ではないですよ。これは昔の神職の名前ですよ。今あなたのお母さんが祝女っていうのはおかしいですよ。ちょっと生まれが高かったかもしれませんけどね。

で、それを下げるってどう下げるの? そんな拝みはない。お母さんが苦しんでいたら、お母さんを成仏させて、きれいにしてあげること。あなた方にお母さんが、のり移ってるっていうのなら、まだ浮かばれてないですよって信号を送っていると思うんですよね。ただ、それだけのこと。祝女だから下げたり上げたりしないこと。

よくね、前に拝んだのを下げてきなさいって言いますよね。私は下げるのやめなさいっていうんですよ。神の所にいって下げてくださいなんて言ったら失礼ですよ。取り返しにきたようなものですよね。私はそういうことはやらないですね。

上げたものを下げるのは失礼ですよ。下げにいくことはないです。下げに行ってまたユタに何万円払って何日も仕事もしないで、しょっちゅう拝んでいたら、なお貧乏になりますよ。

屋敷に霊がいるかどうかの判断

質問者4:引っ越しの時、霊がいない所にすればいいと言っていましたけど、今の家のトラブルが霊のせいであるかどうかや、新しい家にいるかどうかなど、見えない人はどのように判断すればいいでしょうか?

渡久地:それが分からないから、みんなユタの所に行くんですけど、ユタも分かる人がいないんですよね。私も「あなたの家に霊がいますよ」って言ったら「いない」と言われたことがあります。

「なんでわかるの?」って聞いたら「ユタ4人に坊さんも連れてきて見せた」って言うんですよ。念には念をって。「でも、いますよ」って言ったら、やっぱり本人の具合が悪いんですよね。「あなたの家の見取り図を書いてごらん」って言って、「そこにいますよ」って言ったら、「いつもここ天井の電気がパチパチする」って言うんですよ。「やっぱり、あなた感づいてるじゃないですか」って言いました。

質問者4:それはさっき言ってた、屋敷のウガンをやればある程度いい、ということですか?

渡久地:そうです。自分で自分の屋敷に向かってやったほうがいいです。屋敷の地鎮祭は、神主さんを呼んでください。

質問者4:屋敷の拝みで霊とかも外れていくんですか?

渡久地:霊がいたらお経をあげたほうがいいですね。私でしたら、ちゃんと霊をとって行くべき所に行きなさい、行きたい所に行きなさいって送るんですけど。みんながみんなできないので、お経をあげたほうがいいですね。みんなの屋敷に霊がいるわけじゃないからね。屋敷の拝みは自分でやって。ユタを頼んでお金使うぐらいだったら、その分ごちそうを食べたほうがいい。