べンチャーキャピタリストの道を選んだ理由

河端保志氏(以下、河端):木下さんから自己紹介していただいてもいいですか?

木下慶彦氏(以下、木下):こんばんは。SKYLAND VENTURESの木下です。僕はアンリさんがベンチャーキャピタルを立ち上げたのを見て「あっ、僕でもできるんじゃないか?」と思って(笑)、それでSKYLAND VENTURESを今はやっています。この#Hiveshibuyaは1ヶ月前からEast Venturesと一緒にはじめたもので、ここはIBMさんとかにスポンサードをしてもらいながら運営しています。

現在は十数社の会社に投資をしていて、2〜3人のところから立ち上げをやって、それはアンリさんと同じなんですけれども。僕も学生時代にスタートアップをやりたくて、ベンチャーキャピタルの道を選んだんですけど、そういう人が最初に相談していく場所や人に自分がなりたいなと思っていて。Hiveshibuyaにも月間500人とか、最近は1000人ぐらいいくんじゃないかという数の人たちがイベントとかを通じて相談しに来てくれています。

日本中の地方からも来てほしいなっていうのもあるし、海外からも、今朝も韓国の起業家が6社くらい来たんですけど、僕は東京から一歩も出てないけど世界中からめちゃくちゃ人が来るのを目指したく……と言いながら、今日の深夜に韓国行くんですけど。よろしくお願いします。

(会場拍手)

佐俣アンリ氏(以下、佐俣):こんばんは。ANRIっていうベンチャーキャピタルファンドをやっている、佐俣アンリといいます。学生の頃は筋トレしかしてなくて……。筋トレと恋愛しかしてなかったです。恋愛っていうのは、今の奥さんは学生の頃から付き合っていたので。

ちなみに僕と木下は大学の時の友達です。僕と木下と◯◯さんと3人で全くインターネットとは関係ないバイトをしていた時のつながりなので、かれこれ10年ぐらいの友達です。

今日はみんな起業に興味がある人たちだと思うんですけど、僕はなぜか起業を支援するほうに異常にはまったんです。よく例えるんですけど、自分がイチローになりたいんじゃなくて、イチローが使ってるバットを作りたいという。そういうちょっと特殊な性癖があったっていうことで今に至ります。

2012年にスタートして、ファンドとしては4年目に入りました。総額20億円のファンドをやっていて、上場したクラウドワークスや、MERY、スクー、YouTuberの会社のUUUMとか、あとは奥さんがやっているコイニー、印刷のラクスルといった会社を支援をしています。

だいたい創業期から出資して「どういうことやろっか?」ってゼロから一緒にビジネスを考えたりするのが好きな感じです。今日はよろしくお願いします。

(会場拍手)

投資家は投資する際に何を見るのか

河端:いろんな質問があると思いますが、このテーマは、これから投資を受けたい人がすごく気になる話題だと思います。アンリさんと木下さんは投資する上で何を見てるんですか?

木下:僕が見てるのは2つあって、1つはマーケット。マーケットっていうのは、何千人、何万人ぐらいが使うのかとか、という視点もあれば、1人の人が1日に何時間ぐらい使えるサービスなのかとか。

そういうマーケットっていうところと、もう1つは、僕はエンジニアに投資してます。僕のところにも起業家からたくさん相談が来ますけど、多い悩みのナンバーワンは、CTOがいません、エンジニアがいません。「なぜお前は起業したのか?」みたいな感じにだいたいなるんですけど。

でも一方でインターネットの未来に僕は賭けていて、それはエンジニアが作るものだと思っているので創業者がエンジニアであるとか、この人はエンジニアチームを引っ張りそうだとかいうところを非常に見ていますね。

佐俣:僕が確実に見ているのは、頭の良さ。学歴とかじゃないんですけど、物事をちゃんと追って考えられるかというのをすごく見ています。ものを考える訓練をしておいたほうがいいなと思っていて。

数学の証明とかプログラミングもそうなんですけど、物事をちゃんと追って考える力は普遍的な力だと思うんですよ。これがないと、トライアンドエラーをやみくもに繰り返してしまうので、この力はすごく必要だと思います。

これは普遍的な力なので若い時につけておけばずっと生かせるし、つかない人は一生つかなかったりするので。今のうちにそういう考え方を身につけておくとすごい役に立ちます。

物事を順を追って考えるって理系の人は自然にやってます。僕は文系で文化人類学を専攻していたので全然関係なかったんですけど、フェルミ推定とか、いろいろ就活で勉強して身につけました。そういう力ってすごい大事だなって思ってます。

あとは何かひとつのことにすごい高い熱を持って頑張れるかっていうところを見ていて。やっぱり学生の頃ってエネルギーを持て余してて、サークルやってますとか、体育会やってますとか。うちの投資先で「ホストやってました」っていうやつも3人ぐらいいて。僕は筋トレしてたんですけど(笑)。

若い起業家、特に社会人経験がない人は、何をやってたか、どのぐらいやってたのか、死に物狂いで何かやってるっていうやつはだいたい変なので。それがビジネスとちゃんと噛みあうと結果が出るので、だいたいこの2つだと思っています。

河端:たぶん前者は論理的思考能力っていうやつだと思うんですけど、僕は19歳ぐらいの時にまさに某外資系コンサルで働いてる人からそういう力をつけろってひたすら言われました。おすすめはケース問題と、フェルミ推定。それをやったら起業に成功するというわけじゃないですけど、論理的思考能力を育てるには良いかなと思います。

死ぬほど働くやつが成功している

河端:じゃあ次の質問に行きます。話がちょっと重複するかもしれないですけど、投資してからしばらく時間が経って、現状どんな人が成功してますか?

佐俣:超簡単で、死ぬほど働くやつです。

(会場笑)

本当に死ぬかもしれないなっていうやつがいて。投資したチームにこの前久々に会ったら、「食事をするのも忘れて、徹夜でやってたんですけど、ちょっとソファで昼寝して起きたら体が動かなくなっていて、ヤバいと思ってソファからわざと落ちて痛みで起きました」っていう話をしていて……。

木下:ヤバい……。

佐俣:「こいつは絶対に死ぬな」と思って、それ以来ずっと飯を食わしてるんですけど。でも僕、そういうやつが成功すると思っていて。僕が投資している中でMERYっていう会社があって、24歳、20歳、20歳のチームでスタートして2年でDeNAグループに入ったので、みなさんと近い世代では一番大きな成功をしてると思います。

彼らは全く休まずずっと仕事をしていて、特に社長の中川綾太郎はオフィスに住んでたんですよね。オフィスに行くと、大量の布団と脇にマットレスが1枚敷いてあって「これが家です」って。ずっと仕事していて最後にマットレスポンって置いて寝て、また仕事するみたいな。すげぇ汚かったですけど、オフィスが(笑)。

色んな人がいるんですけど、死ぬほど仕事しないで成功するやつってほとんど見たことなくて、やっぱり週7で、夜中2時〜3時ぐらいまで普通に仕事するやつが結果は出している気はしています。

河端:余談なんですけど、僕らも1年目ぐらいの時に、すごい謎な地下帝国みたいなのに住んでいて。あるノリがいいおじさんから「すごい広いスペース借りちゃったんだよ」って言われて。

「じゃあここちょっと貸し切らせてください」って言って、お金払わずになぜか貸し切らせてもらって、そこに3段ベッドを2台置いて、ずっとそこで仕事をして生活してたんですよ。で、そこにアンリさんも木下さんも来てもらって。多分そこを見て投資してくれたんじゃないかなと……(笑)。

投資家の仕事は起業家に飯を食わせること

佐俣:そんなに「俺らは無理だ」とか思わなくて大丈夫で、起業して2年間だけ使える魔法があるんです。2年間だけはどんなに働いても疲れない。これは魔法だから。ここに来るような物好きなみなさんだったら、とりあえず起業してみるところまで行っちゃえば、週7ぐらいは働けます。新卒のコンサルとかでも週120時間働いてるんだから。

僕、友達から週120時間働いてるって聞いた時に計算が合わなくておかしいなって思って。週5だと24時間×5だよねって(笑)、新卒でもできるんだから、起業家ならもっと簡単にできるんで大丈夫です。

木下:『はじめの一歩』で「努力する者が必ずしも成功するわけではない、だが成功する者はすべからく努力している」っていう言葉があって、これは超名言だなと思います。僕も#Hiveshibuyaの入居条件としては、僕が投資したらこの人はすごくいけるって思うサービスだったりチームだっていうパターンか、週6〜7で働くとかの「Work Super Hard」っていう感じの人しか入れてないです。投資先と結構共通するんですけど。

Hiveにはそういう起業家に集まって欲しいと思って期待してるんですけど、みんな働いてるじゃないですか。その中で働いてるか働いてないかっていうのを……。本当に働いてないやつは「あ、こいつ働いていない」ってわかるじゃないですか。アンリさんはどこで判断されてるんですか?

佐俣:僕が理想的だと思ってるのは、起業家から「週125時間働いたら色んなものが見えてきました」みたいなことを言われたときに、投資家が「落ち着いて」だったり「飯食え」って言うような状態です。起業家は思う存分突撃すればいいんじゃないかなと。

でも、やっぱり何かをどれぐらい突き詰めているかっていうのは会話してればだいたいわかってきますね。(MERYの)中川綾太郎は「どんなスタートアップよりも、もっと働いたほうがいい」しか言わない。彼のアドバイスはそれしかないんですけど、みんなわりと働いてるんですよ。

努力とは、何かを捨てること

佐俣:あと、リブセンスの共同創業者の桂さんがすごく良いことを言っていて、「努力するというのは、何かを捨てることだ」と。これ、めちゃめちゃ良い言葉。僕も事業の立ち上げとかは、いっぱい頑張るんじゃなくて、色んな物を捨てていく作業だと思うんですよね。

正直僕も立ち上げたときに、友達ほとんど誰もいなくなって、誰とも会わなかったし。もともと海外の投資もしてたんですけど、一切海外も行かなくなったりとか。自分が本当にしなきゃいけないこと以外は全部捨てていくっていう。

中川綾太郎はすごくそれがうまくて、ほとんど全部切り捨てられるんですよ。何かを足していくっていうのも大事なんだけど、プライオリティの低いものは切り捨てていく作業、これができる人がものすごい高いコンセントレーションを持って仕事をしていける気がしてる。

木下:僕も集中力はすごい大事だと思います。ここ、イベントとかやってるじゃないですか。でも(イベントをやっているそばでも)すごく集中して働ける人がいるんですよ。「うるせーな」と思ってるはずなんですけど(笑)。

なんかそういうのってすごく良いなって。何が起きても動じず集中して、何かに向かって迷いなくいける人は集中して仕事をしているんだなと。この2つなんじゃないかなと思っています。

佐俣:ピボットして成功したチームって何社かいるんですよ。MERYとか、子育て系のサービスでママリっていうのがあって、今すごく伸びてるんですけど。これらのチームって、もともと始めにやったサービスは超失敗したんですけど、最終的に成功させてます。彼らは失敗してても全員働いてました。

起業してる人たちはわかると思うんだけど、不安なので働くしかないんですよ、失敗してても。それでもずっと走り続けてるみたいなやつ以外は、やっぱり最終的な成功はしないなって思います。