若手の7割が管理職を志望しない──その背景にあるのは、単なる負担感ではありません。本調査では「なりたい人」と「なりたくない人」を分ける決定的要因として、仕事のやりがい=ワーク・エンゲージメントに着目。さらに、その源泉となる「心理的資本」と上司の関わり方が、意欲を大きく左右する実態が明らかになりました。若手の意欲を引き出す打ち手を、株式会社タバネルによる調査から読み解きます。
若手社員の管理職意向を調査
奥田和広氏(以下、奥田):みなさま、こんにちは。株式会社タバネルの奥田と申します。本日はお忙しい中、ご参加いただきましてありがとうございます。今から12時半まで「『管理職になりたくない』若手が生まれる分かれ目を読み解く」をお送りしていきたいと思います。
本日は私、タバネルの奥田と、Be&Doの橋本さまにもご登壇いただくということで、進めていきたいと思います。橋本さん、最初にごあいさつをよろしいでしょうか。
橋本豊輝氏(以下、橋本):ありがとうございます。今日は私から第2部でお話しをさせていただきます、株式会社Be&Doの橋本です。奥田さん、今日はよろしくお願いします。
奥田:橋本さん、ありがとうございます。本日のプログラムの前半は、当社で行った若手社員の管理職意向に関する調査について、ご説明させていただきたいと思っております。
後段では、先ほどごあいさついただいた橋本さまから「若手のやりがいを高め、能力を発揮させる内なる原動力とは?」ということでお話しいただきます。
詳しくは後ほどあるかと思うんですが、橋本さんはBe&Doの取締役であると共に、心理的資本の専門家として著書も出版されている方になりますので、ぜひそのあたりもみなさまお聞きいただければと思います。
若手社員の7割が「管理職になりたい」を選ばない現状
奥田:ではさっそくですが、進めていきたいと思います。若手社員の管理職意向に関する調査を行いました。20歳から29歳までの若手社員の方400人に対して、今年1月に調査をした結果から読み解けることをお伝えしていきたいと思っています。
昨今、さまざまなところで、なかなか「管理職になりたくないんだよ」という若手が多いとか、管理職自体が「罰ゲーム化している」というニュースをよく目にするようになりました。
それもあって当社でも調査を進めることにしました。実際どうだったのかというところを見ますと、400人の若手のうち「将来は管理職になりたい」ということで、「当てはまる」「やや当てはまる」と答えた人の合計で27パーセントということですね。

ですので「なりたい」ではない方が70パーセントいる。さらに言えば「当てはまる」と答えた人は8パーセントしかいないということで、昨今ニュースで言われているように、実際に管理職になりたい人が少ないのは、この調査からも読み解けます。
確かに管理職になりたくない人が多いということで、「若手は管理職にどんなイメージを持っているんですか」ということですね。いろいろなニュースで見たり、私のほうでも聞く限り、よく言われるのは「人の管理とか板挟みとか、大変そうだな」とか。

「管理職になると責任や負担がすごく重そう、プレッシャーが大きそう」とか「残業もすごく多そうですよね」と。そうなってくると「給与と割が合わないんじゃないですか?」とか「ワークライフバランス、どうなっちゃうんですか?」。
そうなると、わざわざ管理職になりたいと思いませんよね。そういうところが、管理職になりたい人が少ないことの現状にあるのではないかとよく言われます。
管理職意向の分かれ目は「ワーク・エンゲージメント」
奥田:でも、一方でこう考えたんですね。おそらく多くの人がこういったイメージを持っている。でも、それにもかかわらず「管理職になりたい」人と「なりたくない」人がいるわけです。数は少ないとはいえ、分かれている。
これはなんでなんだろうなということを調査しました。そうすると、仕事のやりがいとか働きがいを総称する概念ですが、「ワーク・エンゲージメント」が大きな分かれ目なんじゃないかと考えております。
ワーク・エンゲージメントは「活力」「熱意」「没頭」という要素からなると言われていまして、今回の調査はそれに対する質問の平均値で、400人の中から3分の1ずつ上位、中位、下位と分けました。
そうするとワーク・エンゲージメントが上位の人の中では、56パーセントが「将来は管理職になりたい」と答えているんですね。一方で中位や下位の人は14パーセント、12パーセントと、上位の人と4~5倍の開きがあるということですね。

しかもこの紺色のところが「当てはまる」という方なんですけども、中位で1パーセント、下位で2パーセントしかいない。要は将来管理職に積極的になりたい人は、やりがい上位の人しかほぼいないとも言える。
こういったデータを見るとだいたいの場合は上位、中位、下位と階段式になっていくんですが、完全に上位の人で分かれている。やりがいを非常に高く持って、ワーク・エンゲージメントを非常に高く感じている人の半数以上が将来管理職になりたいと思っているわけですから、ここの分かれ目はすごく大きいことがわかりました。
そう考えるとワーク・エンゲージメント、仕事のやりがいを持つって大事だなと。それはそうなんですけども、じゃあそうするために何をすればいいのかが気になるところかなと思います。
ワーク・エンゲージメントに影響する要素
奥田:ワーク・エンゲージメントについて、研究ではさまざまな要素が影響すると言われています。仕事の負担であるとか、仕事の資源であるとかですね。
今回非常に顕著に出たのが、このあとお話しいただく「心理的資本」。この心理的資本もワーク・エンゲージメントの要因として研究結果からわかっているものなんですが、Hope、Efficacy、Resilience、Optimismの「HERO」と呼ばれる4つの要素からなると言われています。

前向きな心理的な状態とか、心の原動力と言われるようなものなんですが、これとワーク・エンゲージメントの相関係数が0.82。相関係数が0.82というのは、ほぼ一緒ということですね。心理的資本が上がれば、ワーク・エンゲージメントはほぼ一緒に上がるような状態であることがわかりました。これは若手にすごく特徴的な状態だと思います。
なので前向きな心理的な状態、心理的資本を抱けば、ほぼ一緒に仕事のやりがいも抱けることがわかったということです。
心理的資本を向上させるのは、優しさと厳しさを両立した指導
奥田:そうなると、何が若手の心理的資本を向上させるのかが気になってくるわけです。昨今は、パワハラや厳しい指導をしづらいとか、若手との向き合い方でいろいろ悩まれている上司の方がいらっしゃいます。
1on1、キャリア開発とか、いろいろなことで上司の方は若手の方と向き合っているかと思うんですが、こういうことがわかりました。上司の行動が、心理的資本に及ぼす影響力の強さを調べる調査があるんですが、4つの要因が挙げられます。
特に「β=」と書いている数字が計算上の影響力の強さになるんですが、1つ目の行動としては承認とか認知とか、意見に耳を傾けたり、努力や成果を把握して認めたりという行動。前向きな心理状態にすごくプラスですよ、ということです。

一方でこのあと2つ、「成果や基準の明示」ということで高い水準の成果を求めたり、仕事の進め方についての改善を指摘したり、言いにくい内容であっても注意や指導をする。こういう言わば厳しい指導、厳しい育成も、心理的資本に前向きな影響を与えることがわかりました。
最後に「関係構築や支援」。最近言われている心理的安全性みたいなところになるかと思います。職場の人間関係や雰囲気への配慮、困っている時に助けるといった優しさも、もちろん影響を及ぼします。
昨今はついつい若手の人に対して、優しい・支えるマネジメントみたいなことが言われるんですが、認める・助けるだけではなくて、高い要求や耳の痛い指導も、若手の方の心理的資本を向上させることがわかりました。
若手の仕事のやりがいを高めるには
奥田:若手の方に「管理職になりたくない」という(ふうに思われる)ことを改善するために、管理職の方が「罰ゲーム化というイメージを改善しましょう」と言われることがあるんですが。
そこも大事かもしれませんが、今回の調査からは、上司の方が優しさも厳しさも持って本気で若手の成長に向き合う。こういうことによって、若手の方は前向きな心理的な状態になり、心理的資本が高まる。

そうなると、ほぼ一緒に仕事のやりがい、ワーク・エンゲージメントが高まりますので、管理職になりたいという気持ちも高まっていくということです。
ですので、ぜひ上司の方は若手の成長のために、優しさ・厳しさも持って本気で向き合っていただきたい。人事の方はそういう優しさ・厳しさの両面を持って本気で向き合える上司が働ける環境、指導できる環境をしっかり整えていただくことが大事かと。
こういったことが、この調査からわかったことかと思います。こちらがみなさまのこれからの活動のヒントになれば幸いでございます。
ではここからは、いったい心理的資本って何なんだと。それをどうしていけばいいかというところを、橋本さんからお話しいただければと思います。よろしくお願いします。
そもそも「モチベーション」のマネジメントは困難
橋本:かしこまりました。奥田さん、ありがとうございます。それではバトンを引き継ぎまして、心理的資本とはどんなものなのか。どんなふうに若手に心理的資本を高めるアプローチをしていくのかといったところをお話ししていけたらなと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
では第2部スタートということで、「若手のやりがいを高め、能力を発揮させる内なる原動力とは」というテーマでお話ししてまいります。
あらためてですが、株式会社Be&Doの橋本豊輝と申します。十数年来、人と組織の利益活性化といったところに関わっています。

大阪大学の開本浩矢先生とご一緒に
『心理的資本をマネジメントに活かす』という書籍を2023年に出版しているんですけれども、先日3刷になりましたので、じわじわとこの概念って広がっているなと感じています。よければお手に取っていただけたらなと思います。
というわけで、今日は2つのお話をしていきたいなと思っております。まずチャプター1ということで「内なる原動力」。そもそも心理的資本って何なの、というお話をしていきます。
内なる原動力って聞いた時に「モチベーションと何が違うの?」と感じられた方もいらっしゃるんじゃないかなと思うんです。このスライドに表現していますけれども、モチベーションって言わば短距離走型のものですよね。
人間なので実は日々浮き沈みがけっこうある、感情に近いものですね。なので開発がすごく難しくて、一過性のものだとご認識ください。「モチベーションをマネジメントしようよ」と言われがちなんですけれども、実は根本的にけっこう難しい領域だと思っています。
人的資本と社会関係資本だけでは、十分な成果は出ない
橋本:一方で心理的資本というものは何か。長距離型、マラソンのようなものですね。本当に行動の原動力であり、スキルに近いものです。私は、ちょっとわかりやすく言うならば「心の力」であり「パワーの出力状態」のようなものだと表現するんですけれども、長く保つんですよね。
なので開発する意味がある、パフォーマンスに影響するところがあるんです。開発が可能という特徴があるのでマネジメントができる。つまり「関わり方によって、ここって上げることができるよ」というのがお伝えしたいことです。
じゃあ心理的資本をもう少し深掘りしますと、もともと経営学の分野で人がなぜ成長するのか、なぜ成果を上げるのかといった研究が続けられてきたわけなんですけども、まず最初に注目されたのはやはり「知識やスキルが必要だよね」と。
専門的には人的資本と言われますけれども、「知識やスキルが必要だよね」「わかります」と。でもこれだけでは実は成果につながらないぞと。
次に注目されたのが人のつながりですね。やはり社内外のネットワークを活かしながら仕事をしていくことでパフォーマンスが上がる。これもイメージはわかります。専門的には社会関係資本と言います。

ただこの2つがあっても、それだけでは実は前向きに進まないことがあるということで、近年注目されてきたのが心理的資本というものです。心の力でありパワーの出力状態、原動力そのものですね。
これが先ほどの奥田さんの話にありましたとおり、やりがい、働きがいに直結する、個人が持っているリソースという位置づけになっております。