心理的資本の4つの要素「HERO」
橋本:「心理的資本」ってバクっとその言葉だけとらえると、非常につかみどころがない話になってしまうんですが、先ほどの奥田さんの発表の中にもありましたとおり、4つの要素から成り立っているんですね。
その頭文字をとって「HERO」と私も言っていますけれども、Hope、Efficacy、Resilience、Optimism。この4つの要素に分解することで、それぞれどんなものなのか、それをどうやって高めるのかということが明らかになってくるわけです。
少しだけ具体的にお伝えすると、まずHopeは直訳すると「希望」ですが、「意志と経路の力」と私は表現しています。自分の意志を具体化して、目標への道筋を描いて進むことができる力だとご認識ください。
そして2つ目にEfficacyですね。「自己効力感」という言葉で聞き慣れているかもしれませんが、私たちはあえて「自信と信頼の力」と表現しています。自分にもやれそうだと、自信を持って行動に移すことができる力とご認識ください。
そして、3つ目にResilience。言葉を聞いたことがある方はいらっしゃいますよね。これはある意味回復力であり、成長力そのものだと私は考えています。逆境すら乗り越えて適応して、さらにそれまで以上に成長するような力とご認識ください。
最後の4つ目、Optimismは直訳すると「楽観主義」になっちゃうんですけれども、楽観性や「現実的かつ柔軟な楽観力」と表現しています。
状況を前向きにとらえ直すことができて、悲観してモヤモヤして前に動けないのではなくて、状況を現実的にしっかりとらえながら、良いところをしっかり見つけながら前向きに行動できる。そういう力だとご認識ください。

HEROはそれぞれ要素が独立しているというよりは、それぞれが関連し合って相乗効果を生みながら高めていくものなので、この一つひとつをどう開発するのか押さえておくと、全体的に底上げできてくるのでいいかなと思います。
心理的資本は、測定したり伸ばしていくことができる
橋本:先ほど少し私からも触れましたけれども、心理的資本は測定ができて、なおかつ開発ができるという特徴があります。当社の提供するHEROIC診断には、心理的資本の状態を測定する機能がございます。
例えばこの図のように「Efficacyがちょっと相対的に低いですよ」ということで、どんなことが考えられるかというと……すごく目標は具体化しているし、そこに対する具体的な手段・方法もわかっている。

ふだん逆境にもがんばって打ち勝つことができたり、物事も前向きにとらえ直すことができる。そういったポジティブなタイプの人なんだけれども、ちょっと一歩踏み出すための行動ができないかもしれない。まだそこの経験値が少ないので、自信がないのかもしれない。
じゃあ前向きに行動を起こすために、小さな達成体験を積んでもらうためのサポートをしていきましょうとか。そういったことが結果からもすごくわかるんですよね。どこが高いか、どこが低いか、伸び代がどこにあるのかを見ることで、その人の働きがいの根源となる心理的資本を高めていくことができるわけです。
もともと管理職を目指そうとしている人は多くない
橋本:後半では、具体的にどうやって今回のテーマになっている若手の意欲を育むマネジメントをすればいいのか。その先に管理職になりたい人が増えることの関連性も示されていたので、まずここをやっていきましょうということですよね。
では進んでまいります。そもそもなんですけれども、将来マネジメントをしたくて仕事をしているわけじゃないはずなんですよね。
中にはそういう方もいらっしゃるかもしれないですし、もしかしたら「将来自分で会社を経営したいんだ、だからマネジメントも経験しておきたいんだ」という人もいるかもしれないんですが、もともとそうじゃない人のほうが多いはずなんですよね。
やりがいを感じる仕事をした結果、「この仕事はおもしろいぞ」「結果が出たらすごくうれしいぞ」と。この結果や成果をさらに最大化するための手段として、管理職になるということがあるんじゃないかなと。あくまで手段の1つだと僕は思っているんですよね。
中にはスペシャリストを目指して、専門性をどんどん追求していくことで成果を最大化していこう、成長していこうとする人もいるんですけれども。
マネジメントをしっかりすることで、チームとしてそれに取り組むことができることで最大化を目指す、こういう場合もあると思うんですよね。だから、そのあたりを見誤らないことが、今回のテーマですごく大事かなと考えています。
仕事のミッションと個人の意志が重なった先にある選択肢
橋本:本人のWill、意志、志というのも基本的に変化していくものです。先ほどお伝えしたとおり、目の前の仕事がすごくおもしろい、楽しい。そうやっているうちに「これをもっと多くの人に広げられないかな、もっと関与者を増やせないかな」と思った。
その時に、それを達成する手段として「管理職になろう」。なれるなら手を挙げようとか、評価されてそこにいこうと思うわけです。それが結果的に会社へのコミットメントや、自分が社会に貢献したいと思うことにもつながってくるかなと思っています。

もともとのミッションと本人の意志はずれていても仕方がない。でも、それが関係してきて、だんだん重なり合っていく。こういうところが管理職を目指す人とそうじゃない人の、1つの分かれ目にもなってくるかなと思うんですが、ここはけっこう大事な視点かなと個人的には思っています。
そもそも若手に限らずなんですけれども、一人ひとりのやりがいを感じるポイントや、それを高めるアプローチもそれぞれですよね。性格も十人十色ですし、100人いたら100通り。それがある意味個性だと考えているんですが。
そういった場合、究極は個別の対話と日々の観察によって、できる限り把握していくことが必要だとは思うんですが、とはいえ完璧に個別対応するのは難しい。思い込みもあったりするのが現実だと思います。
タイプ別で分かる「4つの原動力」
橋本:例えばこれは私たちが提供しているHEROIC診断の分類をお見せしているんですが、わかりやすく4つに分類しています。左上の人の原動力は「楽しいかどうか」。自分が楽しめるかどうかが大事。

右上の人は感謝とか「自分が貢献できたな」ということを重視する傾向がある。左下の人は使命感こそが大事で、納得感が大事だという人もいます。「いや、実績とか信用、着実性がすごく大事なんだ」ととらえる右下のタイプの人もいます。
これをざっくり4分類しただけでもおわかりのとおり、まったく原動力が違うんですよ。なのに例えば「楽しいかどうか」「自分が自由に動きたい」というタイプの人に対して「いや、このとおり確実にやりなさい。じゃないとダメだ」みたいなことを言うと逆効果なんですよね。やる気がなくなっちゃいます。
右上の「Be-Defense」タイプと書いている、周りの人と協調しながらやりたい人に対して「どんどんリーダーシップを発揮して目立ってよ、もっと前に出てよ」と言うのも逆効果です。
人ってけっこう自分と同じタイプの人を評価しがちだし、相手のことを自分の価値観と同じだという前提でコミュニケーションを取ってしまいがちなので。そこでミスコミュニケーションが生まれたり、本来のその人の強みが発揮されたり、やりがいを感じる前にへこたれてしまうことがあるんじゃなかろうかと考えています。
だからざっくりでもいいので、やはりタイプの違いがあるんだということは認識した上でマネジメントをしてほしいなと思いますし。
このあとお伝えしますが、心理的資本のHEROそれぞれをどうやって高めるのといった時も、このタイプの違いを明らかにしていくことでぜんぜんアプローチが違ってきますよね。ちょっと頭のすみっこに置いておいていただけたらなと思います。
「Hope」の観点の優しさと厳しさのアプローチ
橋本:先ほどからお伝えしているHEROをそれぞれどうやって高めていくのか。奥田さんのお話にも「優しさだけじゃなくて厳しさも大事だよ」とありましたよね。それに倣って、どうやってアプローチしていくのかお伝えしていきたいなと思います。
まずHope、意志と経路の力の視点で考えてみた時に、優しさの点で言えば、まずは具体的な目標と最適な目標を示してあげましょう。本人にはわからないことがあるので、まずは示してあげましょう。そして自分で選択、自己決定できるようにしっかりサポートしていきましょう。

本人の意志も尊重するし、上司である自分自身はその人の応援者であろうとする。こういったアプローチって、優しさのほうに入るかなと思うんですね。
加えて厳しさのほうもやりがいにおいては重要です。何かと言うと、ストレッチが効くような、少し挑戦的な目標設定も推奨していきましょう。そのほうが本人も実は張り合いが出てくるんですよね。だから達成した時にうれしいし、やりがいも感じやすいということになります。
さらに「これをやっていればいい」だけではなくて、プランB、プランC。「これがダメだった時、ほかに案はないの」といった複数の手段・方法を自分で考えさせるようなアプローチも非常に重要だと思います。
プランB、プランCができてくると見通しがより立ってくるので、行動につながりやすいんですよね。「失敗してもプランBがあるから大丈夫だ」というふうになる。経験値が貯まってくるので、そのアクション自体がまたやりがいにつながってきたりするんですよ。
そして、行動を続けるための工夫もちゃんとしたほうがいいよと。行動することって、やはりそれをしっかり求めるのは厳しさになるかなと思うので、こういったことを重視していただけたらなと思います。
「Efficacy」の観点の優しさと厳しさのアプローチ
橋本:Efficacyのほうも見ていきましょうか。まず優しさといった意味では、本人が行動できるぐらいの小さなステップ、ベイビーステップでの行動を促していくことは、けっこう優しいアプローチかなと思います。

先ほど承認が大事だってお話がありましたけれども、ポジティブなフィードバックをしっかり伝えてあげる。これもEfficacyを高めるアプローチになります。
そして疲労やストレスが溜まっていたら、それをしっかりケアすることを推奨しましょう。実は心身の健康が伴っていないとEfficacyって下がってしまうんですよね。前向きに行動しようという気持ちになれないので、このあたりも重視していただきたいなと思います。
加えて反面、厳しさもけっこう大事ですね。トライアンドエラーをしっかりすることを推奨します。先ほどの続きになりますけれども、「行動をちゃんとしましょうよ」としっかり推奨しましょう。
さらに振り返りによる改善とレベルアップもしっかりサポートしましょう。「やって終わりじゃないよ、次に向けてちゃんとチャレンジしようよ」ということを推奨する。
こういったアプローチが実は適度な緊張感につながってきます。張り合いを重視して、できるようにしていきましょう。このあたりがEfficacyに影響するアプローチになるかなと思います。
「Resilience」の観点の優しさと厳しさのアプローチ
橋本:Resilienceも見ていきましょう。Resilienceは優しいアプローチとすれば、「リスクや不安を感じる要因って何なの?」と一緒に考えてあげるのもアプローチですね。本人が強みと認識できるようなものは何なのか。

本人では気づかないことがあるので、客観的に「あなたの強みはこうですよ」「このリスクを乗り越えるためにはこれが使えるんじゃないか」ということを、自己認識してもらえるように対話するのも優しいアプローチかなと思います。
そして適切な資源、適切なリソースをちゃんと活用しているかを客観的に評価してあげて、ちょっとガードレールのように「これをやったほうがいいんじゃない?」ということをサポートしていくのも、まず初歩的なアプローチかなと思います。
一方で厳しさも大事ですよね。時にリスクテイクして挑戦をしないとやはり成長しないので、「リスクテイクしていこうよ」と後押しする。これも成長には大事です。
そして乗り越えて成長するためには、資産や資源をしっかり開発していく。「今あるものだけじゃないよ、これも新しく作らないとね」と率直に伝えることが大事だと思います。行動を起こすことを重視した指導もResilienceにつながってきます。
「Optimism」の観点の優しさと厳しさのアプローチ
橋本:そしてOptimismで言うと、優しさの面では「うまくいったことはあなた自身の力だよ」としっかり伝えることや、良い点、感謝できる点が必ずあるはずだということで、そこに注目したフィードバックを伝えることも(必要)ですし。

うまくいかなかったとしても、「これは道の途中に過ぎないんだよ」ということで、まずはとらえ直しをしてもらうきっかけを作ることが大事かなと。
そして厳しさの面は「自分でコントロールできたことをちゃんと言語化して次につなげようよ」。そして「現実的かつ客観的な情報整理をしていこうよ」。その上で「やれる準備をやり切っていこう」。「人事を尽くして天命を待つ」ができているかを求めていくことが大事かなと思っています。
これら優しさと厳しさを両立させながら、ちゃんとメンバーを巻き込んでいけているか。その中で裁量を与えて、権限を与えて、自己統制感を持てているか。

その結果として業績とかエンゲージメント、やりがい、そしてコミットメントにつながってくる。これはもうこのように明白に考えられているので、そのようにできたらなと思います。
なので結論ですけれども、優しさだけでは内なる原動力は育まれないことは明確なので、両輪でやっていきましょうと。
優しさと厳しさの両輪ということは、僕はBeとDoが両方大事だなと。うちの社名はBe&Doですけれども、あり方を認めるのは実は優しさのアプローチで、加えて行動を促すという厳しさ。これが両方ないと実は成長しないし、本人のやりがいも高められないので、そのようにするのが重要かなと思っています。

というわけで、ご清聴ありがとうございました。奥田さんにマイクを戻したいなと思います。
心理的資本を高める両輪のマネジメントの重要性
奥田:橋本さん、ありがとうございました。いや、本当にBe&Doさんのお名前がまさか今日のテーマとぴったり合っているというのが、最後すごく腑に落ちました(笑)。
でも、おっしゃっていただいているように、優しさ・厳しさの両輪大事だなというところが、あらためて心理的資本からもわかりました。橋本さん、ありがとうございました。
橋本:今回はありがとうございました。
奥田:みなさまも本日はお忙しい中、ご参加いただきましてありがとうございました。ぜひ管理職になりたい、やりがいを持って働ける若手の人が増える、そういったヒントになっていただければ幸いでございます。では本日はこちらで終了させていただきます。みなさま、ご参加ありがとうございました。
橋本:ありがとうございました。