タレントマネジメントシステムを導入したものの、「データはあるのに活用が進まない」「現場にやらされ感がある」といった課題を抱える企業は少なくありません。本記事では、株式会社サイダスの西英伸氏が登壇したセミナーより、「運用がうまくいく組織」と「いかない組織」の決定的な違いを解説します。
目的・ゴールの設計から、人事の印象評価からの脱却、1on1やサクセッションプランでの具体的な進め方までを、豊富な事例をもとに紹介。システムを単なる「管理」ではなく「人材育成」に活かすためのポイントをひもときます。
「タレントマネジメントの活用」が進まない理由
西英伸氏(以下、西):みなさま、セミナーをご視聴いただきまして、本日は誠にありがとうございます。サイダスの西と申します。

みなさまは、基調講演をご覧になられたと思います。その有沢正人さまの講演を受けた次の一歩ということで、私からは「タレントマネジメントの“運用が上手くいく組織”は何が違うのか」と題して話を進めてまいりたいと思います。最後までご視聴をよろしくお願いします。
まずは、弊社サイダスの紹介をさせてください。サイダスという名前は、「すべての人・チームの才能を引き出す」という言葉が由来となっています。

2011年10月に設立し、実はもう10数年、タレントマネジメントシステムを開発・販売する専門業者として活動しております。2024年に株式会社WHI Holdingsの一員となりまして、一緒にこのHR分野に関するソリューションを網羅したかたちで提供しております。
本日は、基調講演に沿って、タレントマネジメントに特化した話をさせていただければと思います。さっそくですが、この「よくある課題」をご覧いただいて、みなさまはどのように思われますでしょうか?

お客さまと接する中で我々もよく聞く言葉でございます。最近は、タレントマネジメントシステムを導入している企業だからこそ、こんな声をいただくことが増えてきております。
制度も整えたし、データもほどほどある。こういう中でタレントマネジメントシステムをご導入いただくんですけれども、結果的に思ったように運用もしくは活用が進んでいない。そういった課題が今回の基調講演でも多く聞かれたかなと思っております。あるいは、現場で「やらされ感」と言われるものも非常に多く発生しているとよく聞きます。

そして、せっかくデータを蓄積したんだけれども、異動の配置やサクセッションの場合に、どちらかというと、その企業の固定観念や印象が重視される。なかなか抽出されたデータが使われない状態が増えてきていると思います。
今日は、このうまくいかないケースと、うまくいくケースの違いを整理しつつ、実際に運用が回り始めた企業の事例も含めてご紹介をしていければと思います。
成功の鍵は経営戦略とリンクしたゴール設計
西:まず1つ目の視点として取り上げるのが、目的・ゴールの設計です。左側に、うまくいかない組織ということで記載をしております。

この表計算ツール管理から脱却してペーパーレス化することは、どこもやっているように、DXに結びつけたデジタイゼーションやデジタライゼーションの流れの1つと思っています。なので、これ自体が悪いのではなくて、実際にタレントマネジメントの本来に即したかたちで進められているかが、やはり問題になる部分だと思います。
本来のタレントマネジメントシステムについて、我々はこのように考えております。基本的には従業員の能力やスキルを向上させて、組織でしっかりと活躍してもらうことが目的になるかと思います。その結果、組織の業績の向上、もしくは成長と言われるものに帰する人が資産だという考え方ではないかと思います。
ですので、単純にシステムを導入する、もしくは人事管理や業務の効率化のためだけということになると、なかなかタレントマネジメントとしては進まないものになってくるかと思います。
一方で、うまくいっている企業はどういうことを考えられているのか。企業には、進むべき道といった、経営層を筆頭として考えられるものがあると思います。よく上場企業などで見られる中期経営計画の中にある人事施策がそれに値するのかなと思います。

自社が進むべき道に対して人材をどのように利活用していくか、活躍していただくか。目的をしっかり見定めて進めていくことを運用に落とし込めているかが、分かれ道になろうかと思います。
例えば、新しい事業やグローバルに行きたい人、もしくは次世代のリーダーシップを取れる人は誰なのか。そういったことや、若い人たちを抜てきしたいといったことも、中期経営計画の中にはよく入っていると思います。
人事だけで抱え込まず現場を巻き込む
西:2つ目は、オーナーシップと進め方の違いをお話しできればと思います。なかなか進まない、うまくいかない組織は、どちらにしても人事部が主体としてスタートしているのかなと。もしくは、限られた権限を持たれている方のみで進められて、なかなか情報の公開や社内浸透が進まなくて、データが集まらないなどの失敗談をよく聞きます。

先ほどのように、タレントマネジメントというものは、最終的には従業員に対して施策を打つことになります。みなさま方にも、従業員一人ひとりに情報が見えていなければいけないのではないか、というところも見え隠れしているんじゃないかと思います。
そして、数値管理にこだわるところもあまり良くありません。もちろん人事システムや給与システムは、法律で固められていて、いつ出さなければいけない(というのが決まっています)。もしくは会計や販売管理のように、予実との関係などの数値が重要視されるツールもあると思います。
ただ、タレントマネジメントに関しては、どちらかというと、生々しいデータのほうが多いです。あまりこの数値管理に重きを置くのはよろしくないかなとも思っております。
そういった背景を受けて、うまくいく組織について、少しお話ししていければと思います。うまくいく組織であっても、やはり人事部が主体になることは変わりないと思うんですけども。

いかに現場が使えるか、もしくは経営層が見るデータをちゃんとアウトプットできるか。こういったものを、全体を踏まえたかたちで合言葉にしながら進められている印象があります。
また、進め方に関しても、優先順位をつけてPDCAを回す余力を持ちながら、しっかり中長期を見据えてフェーズ分けし、順番に進めていることが多いかなと思っております。
特に大手企業に関しましては、組織の中で人事が与えられる役割が多方面になってきます。対応する各事業部の方々も、目を届かせなければいけないとなると、なかなか大変になります。
ですので、HRBP(HRビジネスパートナー)などと協力しながら、目的もしくは範囲を明確にしながら、中長期的なスパンで優先順位も決められている。そういう流れも多く見られると思っております。
では、その中期ぐらいのステップをどういうふうに考えていけばいいのかということで、フェーズごとに、少しお話をさせていただければと思います。
段階を踏む「フェーズごとの進め方」
西:先ほどもお伝えしましたように、タレントマネジメントは人事だけが考えるものではありません。経営層や現場の方々、管理職になる前、もしくは管理職になった当初の課長さんなども一緒に、「まずはどういうところをやるのか?」という活用の範囲を決めていく必要があると思います。

そこで、(導入当初は)必要なデータを集めていくフェーズになるのかなと。ある程度のデータが溜まってきた段階で、組織の状況を把握したり、分析したり、そのデータを使い倒すというフェーズ1に入っていきます。
そこまでできてくると、自分たちがやりたい方向に基づいて、よくいう人事イベントに基づいたデータの利活用を、範囲を広げながら進めていく(フェーズ2になります)。
「我々は、サクセッションや後継者候補の策定のために必要なんだ」「そうじゃなくて適材適所のために必要なんだ」「いやいや、もう少し従業員のスキルアップを行って自律的に学習する組織にしたいんだ」といった、いろいろな方向性があろうかと思います。
そういった目的の中で、まず当初の活動も行われると思います。我々は、このようなタレントマネジメントのシステムの進め方が、うまく定着している企業に共通する点だと思っております。
システムを運用していく上で、目的別にどのようなテーマをとらえたらいいのかについても(課題が)出てくると思います。そこで、その参考となる、目的別のタレントマネジメントシステムの導入のきっかけを共有できればと思います。
大手企業が中期経営計画などに入れているネタもたくさんあるかなと思いますし、実はみなさまが日々考えられていることだと思っております。全体をこの6つにまとめたのは、我々がお客さまと会話する上でよく出てくるものだとお考えください。

本日は時間の都合もありますので、1番と2番に関して、導入事例を含めて深掘りしていきます。また、3番から6番に関しましても、みなさまに情報提供できますので、ぜひお気軽に弊社までお声掛けいただければと思います。
評価業務の効率化とコミュニケーション活性化
西:それでは1つ目、A社の社内コミュニケーションの活性化の事例ということで進めてまいります。実はこちらの企業は、評価に関するデジタル化ということで、初めはシステムを効率的に使いたいということでした。評価シートの配布や回収、集計に人事が大変工数をかけていました。なので、こういったものの工数削減が当初の課題になっておりました。

ただ、詳しくお話を聞いていくと、現場や従業員の方々の運用面に課題がありました。これはどちらかというと、一人ひとりの評価に対する考え方が「評価をする」という作業になっていたことが見受けられました。
そして、その背景を整理していくと、現場での情報やコミュニケーションが不足していました。「何のためにこれをやるのか」「この評価を通じて社員がどのように成長するのか」といった落とし込みが(うまくいかず)、なかなか納得感がない中で進めておられました。
そのため、進捗を少しリプランしました。必要な人材情報をタレントマネジメントシステムに集約しながら、それぞれの立場・役割に応じて、誰でも活用できる状況を作り出していくことを目的にしております。
併せて、コミュニケーションが不足していましたので、月に一度の1on1の記録を同じシステム内に残しつつ、マネージャー自身が過去の内容を振り返ったり、継続した視点で部下との向き合い方を考えたりできるようにしました。結果として、マネジメントの支援につながっています。

単純にコミュニケーションツールというわけではなく、上司と部下の成長の軌跡の中で1on1ができるようになったということになります。また、この実施状況を人事側も見られることになります。マネージャーがしっかりやっていなければ、人事から早い段階でフォローアップをすることができる。このようなところにもつながったかなと思います。