70代ドライバー同士のけんかが起き、事務所では猫が出産──。そんな混乱した現場から改革を始めたのが、広島県でタクシー・バス・送迎事業を展開するニコニコ観光株式会社です。異業種出身の漆川敏彦氏は、「真の従業員ファースト」を掲げ、稼げる環境と働きやすさの両立に挑みました。ところが、善意で導入した「完全希望休制度」が、かえって現場を混乱させることに。そんな中、くじけずに平均年齢の若返りと売上・給与20パーセントアップを実現した、kintoneによる業務の仕組み化について語りました。
70代ドライバーが取っ組み合いのけんか、事務所では猫が出産
漆川敏彦氏(以下、漆川):いよいよラストです。ニコニコ観光株式会社の漆川でございます。私は、「真の従業員ファースト」というテーマで本日はお話をさせていただきたいと思います。
私たちがkintoneで実現したこと。それは従業員一人ひとりの力を最大限に発揮できる環境づくりです。これを私たちはkintoneで実現していきました。

まずは自己紹介です。名前は漆川敏彦と申します。子どもは男の子が4人、奥さんが1人の6人家族。広島県の東部、福山市というところに住んでおります。現在44歳です。

会社の紹介です。会社はタクシー事業、バス事業、旅行業を中心に送迎事業等をやっております。主に車両関係の仕事をしており、これも広島県の福山市にある会社になります。創業は昭和35年。ちょうど2025年で65年目の会社になります。従業員は86名の会社です。

実は私、8年前に異業種から、このタクシー・バスの業界に入ってまいりました。大学を卒業してから12年間、人材ビジネス業界で仕事をしており、あることがきっかけで、広島県福山市のタクシー・バス業界に入ることになります。

私が来た8年前の状況です。当時は従業員数は45人、平均年齢は64歳。大変高齢の会社でした。驚いたのは、就業規則を見ると20年前から変更がない。これは実際の当時の事務所ですが、2階の書類置き場では猫が子どもを産んでおりました。

また、私が出勤初日に訪れると、70歳と74歳のドライバーが取っ組み合いのけんかをしていました。人材ビジネスから来た私にとっては衝撃的な光景でした。
岡山から福山に家族を一緒に連れて来ているわけですから、とんでもないところに来てしまったと。もう課題だらけだなと感じておりました。ただ、もうやるしかないと。とにかく前を見て、一つひとつ課題を整理することから始めていきました。
稼げる環境が整っておらず、ドライバーのモチベーションも低い
漆川:その中でも、タクシー・バスの業界。他の業界でも他の会社でもそうでしたが、我々の会社もご多分に漏れずドライバー不足と高齢化が一番の課題としてありました。

給与が低かったりシフト制の勤務。また、当社に至っては60代や70代のドライバーが多かったので、年金をもらいながら仕事をしている。向上心やモチベーションが高くないドライバーも非常に多い状況でした。
つまり、稼げる環境がなかなか整っていないことが問題だなと感じておりました。稼げる環境さえ作れれば若い人材も集まってくるはず。私はこのように考えました。
そして、未来を変えるために3つの取り組みを進めていきます。1つ目、新部門の立ち上げです。タクシーやバスの事業は繁閑の差が非常に激しく、収入が安定しづらいという側面があります。

そこで比較的収入が安定しやすそうな送迎部門を立ち上げ、収入を安定させることを目指しました。

2つ目は、ドライバーの多能工化です。当時ニコニコ観光では、バスのドライバーはバスの仕事。タクシーのドライバーはタクシーの仕事。送迎のドライバーは送迎の仕事というように、完全に縦割りで仕事をしておりました。そのため、ドライバーがいなければ案件が取れないという取りこぼしが多発しておりました。

私は、バス、タクシー、送迎、それぞれの部門の仕事と人をクロスさせ、売上やスキルをアップしていくことを目指していきました。

そして3つ目。完全希望休制度の導入です。通常、タクシー業界では会社がシフトを決めて、そのとおりにドライバーさんにシフトに出勤をしていただくのが一般的です。

ただ、私たちは自分の休みを毎月自分で決めて、申請してシフトを組んでいくことにチャレンジしていきました。このことによって、プライベート優先のワークスタイルが得られると考えました。