元警備員から事務員へ、そして業務改善の担い手へ。大阪の警備会社アースセキュリティの中西さやか氏は、非効率すぎる業務に「仕事を辞めちゃおうかな」とまで思い詰めていた中で、kintoneを使ったDXに挑戦。
5メートルに及ぶホワイトボード管理や、Excelへの多重転記といった“ドン引きレベル”の業務を見直し、年間約1,500時間の業務削減を実現しました。すべてをkintoneで統一しない判断や、現場の負担を最優先する設計など、人の弱さに寄り添った改善のリアルを語ります。
元警備員の最弱事務員がkintoneで業務改善
中西さやか氏(以下、中西):みなさん、こんにちは。大阪の警備会社アースセキュリティの中西と申します。
本日は、「元警備員の最弱事務員が仕事から逃げまくってたら……以下略」と題しまして、kintoneの活用事例をご紹介いたします。どうぞよろしくお願いいたします。
(会場拍手)
では、まず初めに簡単に自己紹介させてください。私は中西さやかと申します。2000年生まれの25歳です。タイトルのとおり、もともと警備員として入社し、その後経理事務に異動。業務改善をしているうちにいつの間にかエンジニアになっていました。

こんな私ですが、「積極型マイナス思考系生き急ぎタイプ」を自称しておりまして、つまりどういうことかというと、行き過ぎた想像力によって生まれるいろんな恐怖から逃げるために行動するしかない人間です。チキンです。

ということで、今日はこんな超ネガティブな私が業務改善とどう向き合ってきたのかという、ちょっとだけ心が軽くなる方法を共有させていただこうかなと思います。よろしくお願いします。
事務員になってわかった、ドン引きするほど非効率な業務
中西:さて、私たちアースセキュリティは、主に交通誘導警備を軸としております。

みなさんの身近にも警備員さんはいらっしゃると思うんですが、いったいどういった仕組みでお仕事をしているかご存じでしょうか?
基本的には交通誘導警備は、お客さまからご依頼をいただいて、管制という部署が「この日、この現場にこの人をアサイン」と決め、各隊員に連絡します。

そして警備員さんが当日現場に向かうという、非常に派遣業に近いかたちをしております。

私も警備員としてこんな感じでフローを回していたんですが、事務員さんに異動になって、実際に中の作業をしている時に、「この時代にこんなことをしているのか」と、すごく効率の悪い作業に驚きました。
ここでドン引きポイントを2つご紹介いたします。1つ目が、アナログな管制業務です。おさらいすると、管制業務とは警備員さんをいつどこに配置するかという作業のことです。
弊社では、もともとこんな感じでホワイトボードで行っておりました。ちょっと画質が悪くて恐縮なんですが、私もここにいます。このように現場名や住所など必要な情報を記入し、隊員の名前の書いたマグネットを貼りつけることで管理していました。

実は、このホワイトボードはごく一部の画像で、全体はこれぐらいになります。この5メートルのドン引きホワイトボード、配置が確定したら、こんなふうに写真を撮り、これを元に事務員さんが基幹システムとExcelに二重登録していたんですね。

これだけで、なんと年間約1,000時間もかかっていました。これが1つ目です。
リスクを抱えたまま回っていた業務の改善に乗り出す
中西:2つ目がこちら。みなさんにも身近な課題かなと思います。Excelの転記地獄です。そもそも警備業者には警備業法で指定されたさまざまな書類を作成、備えつけておく義務があります。これは1年に1回、警察による立ち入り検査で確認されます。

先ほどお話しした、このホワイトボード情報のExcel入力も、立ち入り検査対応のための書類の1つでして、他にも必要な書類はたくさんあるのですが、弊社ではこれらをすべてExcelで作成していました。
何が問題だったかというと、とにかく転記が多かったんです。例えばこちら。この営業さんが持ってきた受注票を計5回転記することで運用していました。特に基幹システムに関しては、仕様上の問題で「絶対手入力してくださいね」というルールがありました。

この運用により、リスクを抱えたまま業務が回っていたんですね。これが2つ目です。

そして、こんな感じで日々ミスを繰り返す人間がいました。私のことです。

うちの会社の人たちはみんな優しいので、実際に怒鳴りつけられるみたいなことは絶対にないんですが、私なので、「今日こそどんな方法で怒られるんだろう?」と日々ビクビクしていました。

そして、マイナス思考が行き過ぎた結果、うっかり「仕事を辞めちゃおうかな」と思い始めてしまいます。

でも、仕事を辞めたらそれはそれで大変だし、でも今の仕事を続けるのもちょっとなんか違うな。であれば、「仕事をなくす仕事をしよう」と思い、DXプロジェクトを開始しました。
カスタマイズ性の高さがkintone導入の決め手に
中西:業務の棚卸しから始まり、いろんな課題が出てきたのですが、あらためて、この2つのドン引きポイントを私たちの課題として指定しました。なんとかならないかなと思い、いろいろ考えてたどり着いたのが……お待たせいたしました、kintoneです。
もちろんノーコードで業務アプリが作れるのは魅力的だったんですが、特に心引かれたのがこちら、「cybozu developer network」です。開発者の視点で、kintoneでできることをもう一歩進んで知ることができるサイトです。

そして、このカスタマイズ性の高さがあれば、多少の無茶な要求も、最悪カスタマイズでのパワープレーが効く。ここが決め手となりkintoneの導入を決定しました。
結論から申し上げると、年間約1,500時間の削減に成功します。では、我々がどうやってこの数字を達成することができたのか。本日は大事にしたことを3つご紹介させていただきます。
DX難易度“鬼レベル”は導入を諦める
中西:1つ目が「kintoneを使ってもらうのを諦める」。実は、業務の棚卸しの際にアンケートやヒアリングを通して、とある調査を行っていました。それがこちらです。

こんな感じで、各部署ごとに攻略方法を調査していました。こちらで言うと、営業さんや管制さんたちは、もともと現場上がりの方が多くパソコンが苦手な人が多いんですが、業務改善には積極的なんですよ。
一方、こちらの経理さんたちは、パソコンは使えるものの従来のやり方にこだわる傾向にあって、ちょっと説得が難しいんですね。でも、いったん説得してしまえば、ある程度自走できるだけのポテンシャルがあります。

しかし問題なのがこちら。ご注目ください。実動部隊、警備員のみなさんです。このとおり、18歳から80代まで年齢層も幅広く、パソコンどころかスマホも使えないよという人もけっこういます。このDX難易度鬼レベルの人たちに果たしてkintoneが使えるのか?

私たちは、無理だなと結論付けました。というのも、大前提としてkintoneのモバイルアプリってちょっと使いづらいじゃないですか。これをスマホが苦手な80代にも説明して使っていただく。仮にうまく運用できたとしても労力に対するリターンが望めません。これは誰も幸せにならない選択です。