「延長コード買ってきます!」という日常から、ノーコードツールのkintoneを活用した業務改革へ。日本海ガス絆ホールディングスのDX推進部が、旧来型の販売管理システムを自社の力だけで変革し、目標の3倍以上となる年間2,546時間の業務効率化を成し遂げるまでの成功ストーリーを熱く語りました。
延長コードを買いに走るDX推進部、火種は3年前の行列から
松井義行氏(以下、松井):突然ですが、3年前。1台の専用パソコンに今夜も行列ができていました。

ある後輩は思った。「これが当たり前なのか? パソコン・印刷・ハンコ待ち、手書き、電卓、手入力。もう限界だ」。彼に小さな火種が灯ります。

お昼寝まくらで会社が変わった! いや、真面目にやっていますよ。本当に。

日本海ガス絆ホールディングスDX推進部の松井義行です。「#仕事前向き」。仕事中は「Yes」と「はい」だけ。「#人生後向き」。毎晩、家では涙酒。「#妻は横向き」。酔いつぶれる私を、いつも朝まで床に放置。そんな私が、なぜ床で風邪もひかずここに立っているのか? 話は少しさかのぼります。

少年時代の松井は、サッカー強豪校で全国大会もベスト16。しかし、松井の出番はなぜか一度もなかった。一方、私との職場結婚を機にサッカーを始めた妻は、全国大会でなんとベスト8に入賞。いつも妻は、なぜか私の上を行く。松井、グラウンドで叫ぶ。「必ず会社で妻に勝つ!」。
こんな松井と妻のいる日本海ガス絆ホールディングスグループは、都市ガス・LPガスの供給を中心に、15の企業から構成する総合エネルギーグループです。

この中のDX推進部は、グループ内のIT整備・業務改善を目的に2年前に発足しました。
上層部のむちゃ振り、現場の悲鳴──DX推進部の現実は
松井:しかし、DX推進部への期待は想定をはるかに超え、上層部からは「すぐにペーパーレス!」「全部AI!」「サーバーを置くな。クラウドだろう!」と。

一方、社員たちからも、「ログインできない!」「スマホはどこ?」「LANケーブルはどこ!?」。極め付きは、「延長コード持ってきて!」。こんな状況に、私の部下は叫びながら飛び出していきます。「部長! 延長コードを買ってきます!」。仕事前向きって、前ってどっち?

今回の舞台は、グループ内のモット日本海ガス、通称「モット」です。お客さま宅で器具販売や修理・点検などのサービスを提供しています。あの後輩もここにいます。

そんなモットの販売管理システムは、店舗に1台ずつでネットワーク接続もないために、さまざまな課題がありました。

まず、順番待ちの行列ができてしまう。そして、販売単価などの登録も店舗ごとに違ってしまう。さらに、データをまとめる時にも手作業が多すぎる。このような課題にDX推進部は、システムのリプレイスを提案しました。
しかし、上層部は「そんなコストは高すぎるだろう」と言う一方で、翌日には「松井。ダッシュボードをモニタリングして、データドリブンさせろよ」って。コストの話はどうなった?

こんな上層部のワガママに……失礼、こんな上層部の高度な要求と延長コードの購入要求に、解決の見えない日々。「あれ? そのお昼寝まくら、ちょっと見せてよ。kintone! kintoneならできるでしょ!」。2年前にもらったノベルティまくらが、ようやく目覚めます。

とはいえ上層部は、今も業務はちゃんと回っているし、形の見えないkintoneには懐疑的でした。
通常業務とプロジェクトの推進に追い込まれるメンバー
松井:そこで、説得という名の試合がキックオフ。説得のシュートその1、「あのライバルたちも、みんなkintoneを使っていますぜ」。シュート2本目、「全部自動。データドリブンできちゃいますよ」。

しかし、上層部の心のゴールネットを揺らしたのは、このシュートでした。「kintoneのCM、ご存じですよね。みんなに言われちゃいますよ。『うちの店長って、豊川悦司みたい』って」。

さぁ、これでkintoneの魅力は伝わってしまいました。あとは1,800円の月額使用料をどう説明するか。1,800円は、1日当たり90円。残業に換算すれば3分程度です。1日3分の残業を削減できれば、ライセンス料はペイできる。楽勝でしょう。

松井はメンバーを召集します。「もしもし。すぐ会議室に集まってよ。え、戻れない? 延長コードが売り切れ? いや、もうそれはいいから」。
このように、プロジェクトは盛大にスタートしました。ゴールは、「販売管理システムを変える」「営業状況はリアルタイム把握へ変える」。そしてあの、「行列する日常を変える」。

通常業務を抱えながらも、プロジェクトは順調に進んでいくように見えましたが、通常業務の多さが、時間のなさが、徐々にメンバーたちを追い込んでいきます。

とうとうメンバーの心は折れました。後輩はまた行列の中へ。