顧客から「信頼性」を最重視される日本の金融業界では、優れたテクノロジーだけでは採用の条件を満たせません。国内法令への準拠はもちろん、「FISC」の安全対策基準にどう対応するかが、デジタル活用の前提になります。Braze日本法人代表の水谷氏は、日本データセンター開設の狙いは、「個人データを国内で管理」しつつ「グローバル水準の顧客エンゲージメントを実現すること」であるとします。一方、山口フィナンシャルグループ(YMFG)の古堂氏は、DX戦略の中核としてBrazeを選定した理由と、リアルとデジタルの接点をつなぐ「チャネルDX」の構想を語りました。
前編はこちら 日本の金融業界のデジタル変革をリードしていく
水谷篤尚氏(以下、水谷):みなさんこんにちは。本日はお忙しい中ご参加いただきまして、本当にありがとうございます。Braze日本法人代表の水谷でございます。先ほど、ビルからもコメントがありましたとおり、Braze Japanとして日本市場にコミットメントということで、インフラ投資である日本データセンターの開設を発表いたします。
このインフラを足掛かりに、日本経済の基幹産業である金融業界のデジタル変革をどのようにリードしていくのか。そのあたりのデモンストレーションも交えながら、みなさまにご説明できればと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

では最初に背景ということで、まず日本の今の状況をご説明いたします。Brazeは、2020年に会社が設立され、5年目になります。
創業から年平均成長率が212パーセントと、非常に高い成長を続けています。また、お客さまのほうもEC・小売・エンターテイメントなどを含め、幅広いお客さまに導入いただけるようになっています。また、Brazeを通じて消費者に届けられる体験数も、月間約2.7億人となり、この5年弱で大きな貢献を日本の社会にできつつあると考えております。
「FISC」の安全対策基準をより高水準で厳格に対応可能
水谷:ビジネスの価値をより明確にマーケットに届けるという意味で、本社に投資をお願いし、日本のデータセンターの設立を決定しました。日本データセンターはBrazeの最先端のテクノロジー、世界最高クラスのパフォーマンスを支えるインフラとなります。
併せて、グローバルでは、セキュリティやプライバシーの要求が高い業界に対しても、各国のコンプライアンス基準に準拠できる環境を整備してきました。
日本でも、個人情報保護法をはじめ、法規制に対応をしていますので、安心してご利用いただけるようになっています。
さらに今回、日本のデータセンターを開設により、特に金融業界で事実上の標準となる「FISC」の安全対策基準をより高水準で、厳格な要件にも対応可能な環境を新たに整えました。

これにより、Brazeの世界最高水準のテクノロジーと、日本市場で求められるコンプライアンス要件の2つを組み合わせて適用させることで、日本の金融業界をはじめ、日本のお客さまに大きな価値を届けたい。これが、今回の大きな趣旨になります。
結果として、グローバルでも非常に高い信用性で、日本市場でもより広く採用いただけるのではないかと考えております。
それでは金融業界におけるBraze自身の認識をお話できればと思います。まず、金融業界は、私たちが特にフォーカスする業界です。
私たちが金融業界にフォーカスする理由の1つ目は、消費者と金融機関の間で、金融サービスを選択する際に最も重要な判断基準として、我々の調査では消費者の50パーセントが信頼性を挙げている点にあります。

顧客関係における企業と顧客の認識ギャップは大きく、センシティブな資産状況を扱うことになる金融業界においては、信頼できる、安心できるというポイントがお客さまに選ばれるための重要な要素となっています。
金融機関と顧客の満足度には2倍ものギャップが
水谷:次に、日本データセンターの戦略的な意義、主にFISCへの対応についてお話しします。日本の多くの金融機関では、厳格な支払いポリシーを持っていて、FISCに基づく解釈の下で個人データの国外保存を制限しています。
今回、日本でのデータセンター開設により、Brazeはこうしたデータ主権の要件に関しても、金融機関がお客さまの情報を日本で管理できるように対応します。
今まで金融機関から「日本にデータセンターはないか?」「Brazeを採用したい」という要望を数多くいただいていたものの、そのご期待に沿えないことが多くありました。
私たちのサービスは豊富な実績があり、今回のこの戦略的な投資により、日本の金融機関のみなさんにも世界最高のテクノロジーとサービスを届けられると思います。

金融企業においては、お客さまと自分たちのコミュニケーションについて、満足しているはずだと考えている方は82パーセントです。

一方で、お客さまの認識を問うと、41パーセントしかありません。金融機関と消費者の顧客体験に関する満足度に大きなギャップがある、ということがわかっています。このギャップは、私たちとって大きな改善機会だと捉えています。
この41パーセントを改善し、お客さまとコミュニケーションできれば、その企業のロイヤリティと満足度が上がり、その企業に非常に大きな価値をもたらすことになると考えています。
企業と消費者との適切なパーソナライゼーション、最適な体験を設計することをサポートしていくことが、Brazeのソリューションの1つになります。それでは、具体的にどのように実現していくのかを1つ簡単な例としてご紹介します。
「4R」でのコミュニケーションが顧客との関係性を作る
水谷:私たちは「4R」と表現しますが、適切なユーザー(Right User)、適切なタイミング(Right Time)、適切なコンテンツ(Right Content)、適切なチャネル(Right Channel)というものがあります。

適切なユーザーに、適切なタイミングで、適切な内容を、適切なチャネルで継続的に、企業がお客さまに対してコミュニケーションする。これができれば、企業と消費者との関係性がすばらしく良くなるという考え方です。
私たちはAIを始め、さまざまなテクノロジーを持っています。お客さまの行動データをリアルタイムで収集し、次の行動を予測し、柔軟なコミュニケーションを実現し、かつそれをAIで適切に効率化、自動化を進めていく。それがBrazeの強みです。
このように、データを活かして成果を自ら高めていく仕組みが整っている、ということがBrazeの1つの大きな特徴になります。
先ほど紹介した企業と消費者の間のギャップを、私たちのソリューションを使って埋めていく。こちらのスライドは、私たちが金融機関のお客さまからよくうかがう共通の課題になります。
例えば、一律のご案内しかできないがために、ユーザーのみなさまと金融のカスタマー(担当者)との間でのコミュニケーションが口座引き落としなどのシンプルな領域に留まっている、ということが、課題としてよく挙げられます。
Brazeの使用により成果が2.7倍に
水谷:Brazeは、お客さま一人ひとりのライフステージの行動に合わせたパーソナライゼーションによって、こうした課題を解決していきます。例えば口座開設前の検討段階から、利用の定着まで。お客さまの行動をリアルタイムで把握し、それぞれの状況に合わせて個別最適化した提案を支援します。
また、これらのデータをもとにBrazeのAIで予兆検知、配信内容の最適化を行えます。お客さまからのより高い反応や成果を導き出すことができます。こうした仕組みによって、これまで能動的にサービスを利用してこなかった休眠層のお客さまを、右上の収益性の高いアクティブユーザーへと育てていくことが可能になります。

では、具体的なビジネスの成果に関してです。上がBraze適用前で、下がBraze適用後ということでご覧ください。Brazeがそれぞれのコンバージョンポイントを30パーセントから40パーセントへ、10パーセントを改善するだけで、32.4万人から86.4万人ということで約2.7倍の成果が上がります。

10パーセントというと、そこまで大きな改善効果を感じないかもしれません。掛け算すればそうなるよね、というのは当たり前の話なんですが、積み重ねることで、全体で2.7倍の価値を生み出すことになります。
次にグローバルの事例を1つご紹介します。米国のデジタル投資プラットフォームで、Stash社という会社があります。Stashさまは、個人投資家の少額の積立サービスを提供している会社で、ミレニアル世代を中心に幅広いユーザーさまからの支持を集めています。

この会社では、Brazeを活用して、ユーザーの離脱ポイントを可視化。一人ひとりに合わせたオンボーディング体験を設計しています。