お知らせ
お知らせ
CLOSE

「自走するエンジニア」の育て方 - 答えを教えない研修が生む人材力の差(全2記事)

2025.11.27

Brand Topics

PR

「考えろ」と言うだけの上司が組織を壊す 自律型人材が育たない本当の理由 [2/2]

提供:株式会社ジョブサポート

「答えを教えない研修」の意味

——そういった自走力を育てるために、ジョブサポートさんではどのような研修をされているのでしょうか?

朝蔭: 自走力を育むために、私たちは「答えを教える研修はしません」というところをホームページ等で声を上げています。もう少し説明すると、「答えを教える」「ヒントをあげる」というところではなく、”考える時間を奪わない研修”を心掛けているんです。

失敗を糧にするということを重視しています。世代によって良いところ、悪いところがありますが、現代の方々の課題として、失敗をするというプロセスを飛ばして、ベストな答えをなるべく早く求めようとしているというところがあります。失敗を経験した人にしか培えない力があると思っていて、今はAIやネットの普及によって失敗する前からベストな手段を知ることができてしまいます。

そうすると、失敗しながらそこにたどり着いた人と比べると、失敗した経験からしか得られない力という点で差ができてしまうので、「考える時間を奪わない。ベストな方法をすぐに提示しない」ということを心掛けています。

ですから、「どうやったらいいですか?」というHow、手段の部分を質問の趣旨にしてきた場合は回答しないんです。「それをどうこうするのが我々の仕事ですよね」と一括して返してしまいます。

——失敗するのが怖いという話はよく聞きますが、それはなぜなのでしょう?

朝蔭: 感情が理由の方もいると思いますが、先ほど説明したとおり、今の若い人たちは非常に慎重なんです。言い方を悪くすると必要以上に慎重です。ある程度の慎重さは大人になれば必要ですが、不必要に慎重という印象を持っています。これは私の主観ですが、何をリスクと捉えるかという考え方が大人と違うのではないかと思います。

——なるほど。ここらへん篠田さんも、なんか課題とか、あるいは若い人の話とかをお聞きすることが多いと思うんですけど、ここらへんってどうお考えですかね?

篠田: そうですね。今の若手の社会人はSNSに囲まれて育ってきているので、プラス面としては、人はかなり自分と違う意見を持つということをよく知っているという点では、私たち年上の世代よりも優れていると思います。

一方で慎重さという点でいくと、とにかく自分の発言に非常に気をつけます。相手を傷つける可能性があることに対して、非常に感度が良くも悪くも高い。そこでのコミュニケーションのプロトコルがわからないと黙ってしまうんです。

詳しくはないのですが、例えばゲームやアニメのファン同士のやりとりでも、それぞれ違うキャラクターが好きだったり、好みが違うことがあります。それを初めての自己紹介の時に確かめ合うプロトコルがあって、「この人の前でこのキャラのことはいいことを言っちゃいけないんだな」ということを確かめてからでないと交流しないくらい、コミュニケーションの手順やお作法が決まっているんですね。

それに慣れ親しんで青春時代を過ごした彼らが、いきなり職場に入ると、どの職場もその職場特有のコミュニケーションの暗黙知がありますよね。そこで非常に不安になっているんだろうなと想像します。

さっき朝蔭さんがおっしゃった、失敗経験から得られるものを上手に避けることが彼らのサバイバル術だったのかもしれないと思いながら聞いていました。

朝蔭: そうですね。失敗を糧にした人にしかわからないことというのを言語化するのが難しいので失敗してほしいんですが。抽象的にはなってしまいますが、簡単にベストな手段を手に入れてしまった人は、少しケースが変わるだけで対応できなくなってしまうんです。つまり水平展開する能力が単純にないんですね。

「次は何をしたらいいか?どの道具を使ったら解決できるか?」という発想になってしまいます。例えば火をおこすことができる道具が1つあれば、どんな状況でも火をおこせる人と、特定のシチュエーションでしか火をおこせない人になってしまうという大きな違いがあります。

今の若手の方は慎重で、人生において何をリスクだと思うかが我々の世代と異なっています。上司は彼らが何を恐れているのかをしっかり理解することが大事です。慎重でない人から見れば、まったくリスクでないことを彼らはリスクだと捉えているんです。

我々は、彼らが単純に評価されるかどうかや、怒られるかどうかをリスクに考えていると思いがちですが、実はもっと繊細なところをリスクに考えていて、そこを理解してあげれば、それがリスクではなく大した問題ではないと共感できれば、彼らもチャレンジできるようになります。そして彼らがチャレンジングになれば、我々よりも優れている部分がたくさんあるので、組織として機能するようになると考えています。

「考える」ということをどう教えるか

篠田: 流れを壊したらごめんなさい。朝蔭さんがおっしゃったことで私も質問したくなったのですが、「自分で考えなさい」と言って、Howを聞かれたら「これは我々の仕事だから」と返すとおっしゃいましたが、考えるということを教えるのって、失敗経験よりも難しいことなのではないかと感じました。そこはいかがですか?

よく職場で「ちゃんと考えて!」と上司が言い放つんですが、考え方を教えられる上司はとてもまれです。言ったほうも「あなたはどうやって考えているんですか?」と聞かれても説明できません。そういう人に限って「ちゃんと考えなさいよ!」と乱暴に言ってしまうような現象がある中で、それをちゃんと指導の型にされているのが、すばらしいと思って興味が湧きました。

朝蔭: うまく言語化できるかわかりませんが、我々は1ヶ月から3ヶ月の研修期間を設けていて、これらコースから選んでいただいているのですが、贅沢を言えば1年預かりたいですね。ただ3ヶ月という限られた時間で考える力を身につけさせるということを考えると、とても大変です。おそらく私よりも上の年代は、小中の義務教育期間、高校・大学の高等教育期間の環境が今の若者よりも厳しかったと思うんです。

そのため、本人が望まなくても考える力を身につけざるを得なかったのではないでしょうか。これは私の主観ですが、だんだんと過度なサポート機能が学校側から提供されるようになり、自分で生き抜く術を培えなくなっていったと考えています。今は望まないと、自分がそうしたいと思わないと生き抜く術が身につかない時代になっています。

昔は全員共通で、自分で生き抜く力がなければ生きていけないようなところがあったのではないかと思います。今はそれがないので、自分で生き抜く術を身につけることを望まなかった方々に、我々が3ヶ月間でそれを身につけさせるという使命を教育の根本に考えています。

3ヶ月間で考える力を身につけさせるためには、本人の思考をたどる必要があります。これは非常に面倒なことで、時間がない上司には難しい作業です。我々だからできることなのですが、意外と話を聞いてみると、感覚知の失敗が多くて、「3択あるうちの、なぜそっちを選択したのか」と聞くと大した理由がないことが多いんです。

そこで、理由なく選ぶのをやめようというところから始めます。何をするにしても理由があってほしい。「今、PowerPointではなくExcelでまとめたのはなぜか?理由があるなら……理由がないならまず理由付けしてから選んでくれ」というところから始めます。

質問対応をするにしても、「なぜそれを聞いたのか?」というところを問いただします。もちろん関係づくりをしてから始めますが、最初は非常に嫌がられますけどね(笑)。

——(笑)。

篠田: 納得です。自分の無意識の思考をいちいち言葉にする……本当に言葉にしないと考えるということはできないわけで、それを全部言葉にして頭に思い浮かべるんだよということを、そういうやりとりの中で積み上げていくんですね。確かに骨は折れるけど、それは必要だし、めちゃくちゃ納得します。

マニュアル教育の限界

——確かにそうだなと思いつつも、企業はマニュアルを用意してしまったほうが楽だと考える傾向があります。「教えるもののマニュアルを渡せば後はいい」という考え方で、研修もあまり行わない企業が増えているように感じますが、朝蔭さんはどう思われますか?

朝蔭: 事情があればマニュアルを用意せざるを得ないところは仕方がないと思います。マニュアルを用意して端的に組織を構築する部署に配属された場合でも、そこで自主的に考えて自走する力が身につくように育てたいと考えています。

——なるほど。篠田さんも同じような悩みをお持ちの管理職の方から相談を受けることがあると思いますが、上司としては全部指示してしまったほうが楽だと思いがちですよね。このあたりの課題についてはどうお考えですか?

篠田: 私から見ると、管理職の方を中心に語ると、何でも管理職に丸投げし過ぎて困っていらっしゃるという状況が多く見受けられます。

例えばここ数年、ハラスメント対策が非常に大事になり、法律的にも求められるようになりました。そのため「こういうことを言ってはいけない」「ああいうことを言ってはいけない」というガイダンスは、管理職の方はかなり厳しく受けているんです。しかし「では、どうすればいいのか?」については教わっていないんですよ。

自分たちが新人だった時は、朝蔭さんがおっしゃっていたような厳しい環境で、社会人になっても厳しい状態で、必死に上司に食らいついてなんとか生き延びてきました。特に今、管理職になっている方々、最近なられた方々は氷河期世代に社会に出たので、本当にサバイバルしてこられた方々なんです。だから「教わる」という経験は自分の中に少ないんですね。

自分の経験を再現しようと思うと「もういいから、 ついてこい」というような態度になってしまいます。「なんでできないの?なんで自分から来ないの?」と内心イライラするけれど、そのイライラをぶつけるとハラスメントになってしまうからと言えなくなり、うまく指導できないまま自分が業務を引き取ってしまうというお悩みをよく聞きます。

——なるほど。私も氷河期世代なので、先輩の背中を見て育つというような環境で、人がどんどん減っていく職場にいたので「後はよろしく」と言われて何もわからないまま任されたりしていました。それを今度は自分の部下にどう教えればいいのかと言われると、「同じことはもちろんできないし、どうすればいいんだろう?」と思うことがありますね。

篠田: そうなんです。「部下を育成することは管理職の大事な仕事ですよ」と言われているけれども、「どうやればいいんですか?」ということをちゃんと教わっていないという職場が多いようにお見受けします。

——朝蔭さんのところにも同じような悩みは寄せられますか?

朝蔭: 例えば再教育という観点でお預かりすることもあります。「自社で育てられなかったので」とか「育てる時間が持てないので」、あるいは「配属させたけどフィットしなかった。ただ教育期間が社内では持てない」というケースもあります。

お預かりしてすべてがうまくいくわけではないですが、その業界に来た理由・会社に入った理由が本人の意志ではない場合は私も育てられないこともあります(笑)。我々の研修で再教育できた場合はお客さんからある程度評価をいただくのですが、「どうやったんですか!?」と聞かれることもあります。

ただ、あまり嫌味にならないように「一朝一夕ではどうにもならない」とお伝えしています。「1日、2日でどうにかする手段」として聞かれることが多いので(笑)、「時間は必要です」とお伝えしています。

まず傾聴が大事だと思います。これは篠田さんと考え方が近いと思いますが、上の世代のすばらしい点は生き抜く術が備わっていて、自分の意志がしっかりあることです。あとは忍耐力があるなど、社会人としてのインナーマッスルが違うなと感じます。

一方で、傾聴力が足りないなと感じます。多様性を重要視する話などは上の世代にとっては「なんだ、多様性って?」と軽く扱うかもしれませんが、裏を返すと他の人の話を「聴く」ことができるというのは若い世代には備わっていて、上の世代にはなかなか難しいところがあります。

話を聴いているつもりでも、実際に立ち会ってみると10まで話したい話の2くらいでフタをしてしまっていることがよくあります。

篠田: メチャクチャわかります(笑)。

朝蔭: 本人が言っていることが正しいか正しくないかという評価軸で話を聞いているんですね。しかしコミュニケーションは本来「正しい、正しくない」で測ってはいけないんです。

結果として本人が間違っていたかどうかは他人が決めるのではなく、本人が感じるべきことだと思います。「報告・連絡・相談をしなくて18時のギリギリまで作業時間に充てていたため、結果として遅れたので明日にしてください」というのは確かに正しくない行動ですが、それが正しくなかったかどうかを本人が理解する前に説明してはいけないと思うんです。

ひととおり話を聞いて、気になるポイントを伝えていって、最終的に本人が気づかないと明日につながりません。「なんか怒られたな」という記憶だけが部下に残ってしまいます。まず傾聴し、注意すべきポイントを整理して、本人が自覚する。そこを大切にするとうまくいくと感じています。

篠田: 本当にそうですね。個として戦闘力が高い上司の方の若手とのコミュニケーションを見ていて、「効率はいいだろうけど、それはきついな」と思う場面を今の朝蔭さんの話を聞きながら思い出しました。

上司の方には部下からの話を聞きながら判断して進めることが第一の目的なので、部下がつらつら話し始めると、「あぁ、わかった、わかった。でさ……」と途中で遮って、自分の聞きたいことだけを「これはどうだった?相手は何て言っていた?」のように質問して「わかった、じゃあこうして。以上!」と指示するという感じになりがちです。

最初に部下が話した内容も、その上司の方の判断のフレーム外なので覚えていないんです。そうすると部下からすると、自分の話を全部聞いてもらっていないし、自己解決力も育っていません。しかし最初の話はしたつもりでいる。一方、上司の方はそれを覚えていなくて……。

朝蔭: そうですね(笑)。

篠田: 後になって「お前、言えよ」と言われて、「いや、昨日言ったけどな」というような、意思疎通のズレが常に起きている状況をよく見かけます。

朝蔭: その平行線の溝がずっと埋まらないまま2年、3年経っているんです。上司は関係性が良好だと感じていて、部下は話を聞いてもらえない…と感じている。お互いの認識の違いが5年経った時に離職につながるケースがあります。もったいないし、やり切れないと思うんです。

篠田: 本当にそうなんですよね。

朝蔭: はい(笑)。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!