お知らせ
お知らせ
CLOSE

アニマルウェルフェアの権威に聞く!世界初?東京モデル鶏舎から見える世界とは(全2記事)

2025.10.01

Brand Topics

PR

価格差は「数十円」だが設備導入には“億単位”の負担も… 「アニマルウェルフェア」の権威と考える養鶏業のリアルと消費者の行方 [1/2]

提供:株式会社ベルシステム

東京農工大学の見学型鶏舎「Unshelled」は、ガラス越しに“鶏のリアル”をそのまま見られる施設です。バタリーケージ、エンリッチドケージ、平飼い、エイビアリーの4方式を並べて衛生面や生産性、アニマルウェルフェアなどの観点から飼育方法をフェアに比較可能。さらには屋外運動場も備え、鶏たちの本能行動をつぶさに観察することもできます。

東京農工大学 農学部教授・新村毅氏が「Unshelled」内を案内しながら詳しく解説する本記事の後半パートでは、引き続き内部を探索しつつ、施設導入が養鶏農家に与えるコストやリスク、飼い方によって生まれる卵の栄養素の違いなどを元に、日本の養鶏業の今後について考えます。

前回の記事はこちら

鶏の習性を利用して夜のタイマーをセット

川崎佑治氏(以下、川崎):それで、これは何ですか?

新村毅氏(以下、新村):餌箱。餌ですね。

川崎:
へぇ。じゃあ、これを人が手で入れているわけですね。赤いのは何ですか?

新村:お水を飲むところです。給水器ですね。

川崎:これは、先ほど小窓で開けていたところの反対側ですか?

新村:そうです。

川崎:これはなぜ、こういう青いカーテン状になっているんですか?

新村:鶏は、暗いところに入って誰にも見つからないように卵を産む習性がありまして。できるだけ暗くしてあげると、巣箱で卵を産んでくれるんです。

川崎:
だから暗いところをわざわざ作って、ここで卵を産むと、先ほどのようにコロコロっと落ちると。へぇ、そういう仕組みなんですね。

新村:そうですね。

川崎:この穴は、先ほどの運動場につながっている。

新村:はい。ここから鶏が出ていくっていう。

川崎:じゃあ、ちょっと運動場のほうにも。あっ、暑いですね。

新村:さぁ、来るのか(笑)。

川崎:先ほどガラスから見ていた時は、ここから見ていたんですね。上がスリットで、こうして来てみると広いですね。あっ、ここから鶏たちが見えますね。へぇ、なるほど。

新村:出てこない(笑)。いつもは出てくるんですけどね。暑いと出てこないですね。

川崎:やはり鶏も涼しいところのほうがいいんですね。逆に言うと中のほうが換気がされていて涼しいんですね。

新村:そうですね。

川崎:すごい。電子的なシャッターがありますけど。

新村:そうですね。太陽光給電ですべて電池を賄っているんですが、卵を産み終わる時間に自動で開くようになっていまして。夜になったら自動的に閉まる仕組みになっています。

川崎:ハイテクですね。

新村:鶏は基本的に夜になったら止まり木に止まりたがるので、勝手に入って、夜になったら閉まるという仕組みになっています。人が追い込むのではなく、そういった習性を利用してタイマーをセットしています。

川崎:これでうまくいっているんですね。すごい。鶏の習性を初めて知りました(笑)。鶏も興味はあるので、小窓からこっちをのぞいてくれていますけど、きっと暑いから付き合っていられないという感じでしょうね。

新村:(笑)。なるほど。

床の下にある餌を見つけようとする「探査行動」

川崎:徐々に西日になってきていますね。

新村:確かに、こっちは暑いですからね。

川崎:余計に、こう。

新村:うーん、そうかもしれないですね。

川崎:あっ、出てきた! 「コッコ、コッコ」って挨拶しに来てくれましたね。

新村:(笑)。

川崎:これはもう自由に。どんな行動をしているんですか?

新村:これは、探査行動といいますか。脚で何かをかいて、床の下にある餌を見つけようとするような。

川崎:脚でかいている行動自体が、下に何か餌がないかなって探しているということなんですか?

新村:実際には餌はないんですが、野生の鶏はなんとか自分で餌を見つけて食べないと生きていけないので、そういう本能行動が今の鶏にも色濃く遺伝しているということなんですね。

川崎:あっ、そうですか。じゃあ、こうやって脚でかいているというのが、本能が満たされている状態ということですね。

新村:うん、うん。

川崎:あっ、帰っていきました。すばらしいですね。

新村:(笑)。

川崎:では、次の飼い方の前へ行きたいと思います。

(※場面転換)

川崎:では先生、こちらは?

新村:バタリーケージとエンリッチドケージです。

川崎:右側がバタリーケージで、左がエンリッチドケージ。見た目は、そんなに変わりませんね。

新村:よく見ると止まり木があったり、巣箱があるんですけど。

川崎:あっ、もう……先生、ここに卵が。

新村:そうなんですよ、優秀ですね。全員産んでいますね。

川崎:なぜ全員ってわかるんですか?

新村:4羽、3羽、3羽なので。

川崎:4個、3個、3個。あっ、1羽1個なんですか?

新村:はい、そうですね。

川崎:へぇ。本当だ。これがバタリーケージ? 糞とかはこの下に落ちていくんですね?

新村:ケージの鶏が糞の上を歩く必要がなくて衛生的だという。

川崎:確かに。卵もこの糞と一緒になることはないんですね。ちなみに今4羽、3羽、3羽で入っていますけど、だいたいこんなものですか?

新村:生産現場だと、たぶん7羽ぐらい入ると思います。

バタリーケージの改良版「エンリッチドケージ」

川崎:ここに? へぇ、1羽当たりは羽は伸ばせないぐらいの感じですかね?

新村:(バタリーケージでの鶏1羽あたりの広さは)だいたいA4サイズぐらいと言われているので。

川崎:それに収まるんですか?

新村:そうですね、はい。

川崎:ちなみに先生。このハンドルは何ですか?

新村:これは、糞のベルトをグルグル回して、自動で糞が回収できるという。「除糞ベルト」と言います。

川崎:これで一気に糞を回収して、きれいに保つんですね。これは効率的ですね。

新村:現場になるとこれがモーターになって、全部トラックの荷台に落ちていきますので。それで、全部堆肥場に持っていくみたいな。

川崎:堆肥になるんだ。すごい。なるほど、確かに。こちらがエンリッチドケージ? これは、すごくこちらに興味津々な感じで。

新村:そうですね。

川崎:一瞬狭く見えるんですけど、よく見たら青いカーテンが掛かっているんですね。

新村:ここで朝は巣箱に産んでくれるんですが、あんまりうまくいっていなくて。

川崎:確かに。別に巣箱じゃないところでも産卵がありますね。

新村:そうですね。

川崎:なんでしょう、気のせいか、エンリッチドの鶏たちのほうがバタリーケージよりも羽の状態がきれいな気がします。これはどうしてこうなるんでしょう?

新村:これは、たぶんバタリーケージのほうが、ケージと擦れる頻度が高いということだと思います。バタリーケージはちょっと狭いので、例えば回転している時に尾羽がケージに当たって毛が抜けちゃう。

川崎:なるほど。

新村:確かに、そういったことで毛が抜けているのかなと思いますね。

川崎:こっちのほうが行動の自由度が(高くて)、横には区切られていないんですね。これが、バタリーケージのいわば改良版ですか?

新村:止まり木に止まりたいといった、鶏の正常行動の欲求をある程度満たすように設計されているということです。なおかつ生産性は高いまま、衛生面も良いまま維持していくエンリッチドケージのコンセプト。

川崎:確かに、糞と鶏が交ざらないわけですよね。

(※場面転換)

川崎:先生、こちらが?

新村:こちらはエイビアリーですね。

鶏は夜になると高いところに登って寝る

川崎:1階部分がここですか? これは糞ベルトですよね。

新村:そうですね。本当はここにも入れるような仕組みなんですけど。

川崎:下にも入れるようになっている。これはどうして閉じているんですか?

新村:鶏が多くないので、ここを閉じちゃっていますね。

川崎:多かったらここも開放して。

新村:ここが1階になって、ここが2階。

川崎:で、ここに止まり木がありますね。

新村:はい。で、3階、4階、5階とあるんですね。

川崎:4階、5階に止まり木がありますね。めちゃくちゃ止まり木があります。この赤いのが給水器?

新村:そうです。入っていきましょうか?

川崎:すごいですね、夢の5階建て。

新村:(笑)。

川崎:ある意味、アニマルウェルフェア的には一番すごい飼い方ということになりますかね。お邪魔します。これ今、みんな下にいますけど、止まり木は使わないんですか?

新村:(笑)。夜になるとできるだけ上の止まり木に止まりたがる習性があるんですよ。

川崎:それは捕食動物から自分を守るため?

新村:おっしゃるとおりです。野生の鶏は、基本的にはできるだけ高い止まり木に止まって、夜を越すという。

川崎:えっ? 鶏って夜になると高いところに登るんですか? 知りませんでした。

新村:パクッとやられちゃうので、そういった習性が今の鶏にも残っています。夜になると、こうやって上にどんどん上がって、ここでほとんどの鶏が、この一番高い止まり木で寝るという。

川崎:そうですか。夜の映像も、今回撮ろうと思っていますので。

新村:楽しみですね。

川崎:すごく探査行動されていますね(笑)。

新村:(笑)。

川崎:興味津々ですね。エンリッチドのほうでは、指を近づけるとバッと離れていた子もいたんですけど。こちらだと、もう鶏のほうから寄ってきて探索されています。

新村:探索されていますね、すごく(笑)。

川崎:「誰? 誰?」みたいな感じですかね。ここからも運動場につながっているんですね。

(※場面転換)

川崎:意外と涼しくなってきた気がします。さぁ、来るのか。こちらも先ほど(平飼いの運動場)と同じですね。あ、エイビアリーの鶏たちがついてきてくれて。

全身の羽に脂を塗り付けて光沢を出す「羽繕い」

新村:おぉ。

川崎:エイビアリーの子たちが続々と、今集まって(笑)。

新村:すごいですね(笑)。

川崎:スライディングで、おぉ。すごいスピードで羽を広げながら集まってくれるものなんですね。

新村:好かれていますね。

川崎:これ、好かれているんですか? よかったです。鶏的には変なやつと思われていない(笑)?

新村:(笑)。

川崎:先生も好かれていますよ(笑)。

新村:意外と(笑)。よかったー。

川崎:鶏ってけっこう走るんですね。

新村:そうなんですよ。飛ぶし走るし、いろんな行動をしますね。

川崎:日光の下をわざわざ選んで座っていますね。これは要するにまったりしている?

新村:日光浴ですね。鶏は脚のところで、ビタミンD3をほぼ100パーセント合成するので、横になって足を伸ばすと、上から太陽光が当たるよりも、よりビタミンD3も合成されるという。

川崎:そうか。ボディがあるから脚には太陽光が当たらないですもんね。これ、他の鶏の死角になっていますけど、実は後ろ側では脚が伸びていると。

新村:伸びているんじゃないかなと思いますね。

川崎:リラックスしている様子は見えますね。あっ、脚が伸びていそうです。ここ、ちょっと出ていますもんね。砂をかいていますね。

新村:かくと爪が削られるんです。そうすると爪が長く伸びないので、折れにくくて出血もしにくいという利点があります。

川崎:なるほど。爪とぎになっているわけですね。

新村:ケージでは、そういうことはできないので。よく言われるのが、爪が伸び過ぎて引っ掛かって、出血しちゃう時もあるので。この行動には、そういったことを避けるという利点があります。

川崎:これも。

新村:おぉ、これは頭かきですね。

川崎:何か気になったんですかね?

新村:いろいろ付いたりとか、気になったりした時に頭をかいたり。脚を伸ばしたい時に脚を伸ばしたりという。

川崎:これは、羽をさらに。

新村:これは羽繕いですね。

川崎:前後で、後ろの子もやっていますね。

新村:尻尾の付け根に脂が出る分泌腺があるんですよ。そこにくちばしを付けて脂を取って、全身の羽に塗り付けて光沢を出す。

川崎:あっ、そういう行動?

新村:そうですね。

川崎:これ、広さが要りそうですね。

新村:羽繕いの行動頻度は高いですね。1日の中でもけっこうします。

川崎:へぇ。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

次ページ: 鶏が新しい刺激に対して好奇心を持つ理由

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!