お知らせ
お知らせ
CLOSE

アニマルウェルフェアの権威に聞く!世界初?東京モデル鶏舎から見える世界とは(全2記事)

2025.09.30

Brand Topics

PR

日本は「アニマルウェルフェア」への理解が遅れている…… 鶏の生態が“丸見え”になる施設「Unshelled」でわかる鶏たちの自由と不自由 [1/2]

提供:株式会社ベルシステム

東京農工大学の見学型鶏舎「Unshelled」は、ガラス越しに“鶏のリアル”をそのまま見られる施設です。バタリーケージ、エンリッチドケージ、平飼い、エイビアリーの4方式を並べて衛生面や生産性、アニマルウェルフェアなどの観点から飼育方法をフェアに比較可能。さらには屋外運動場も備え、鶏たちの本能行動をつぶさに観察することもできます。

東京農工大学 農学部教授・新村毅氏が「Unshelled」内を案内しながら詳しく解説する本記事の前半パートでは、日本が誇る高い衛生管理の裏側や、内部の初公開映像、“養鶏農家”としての苦労話などを現場で体感しながらアニマルウェルフェアの本質に踏み込みます。

アニマルウェルフェアの最前線「Unshelled」

川崎佑治氏(以下、川崎):みなさんこんにちは。本日は東京農工大学にお邪魔しております。私の隣にいらっしゃるのは、新村毅教授です。お久しぶりでございます。

新村毅氏(以下、新村):お久しぶりです。よろしくお願いします。

川崎:第1回の「アニマルウェルフェアとは何なのか?」というウェビナーが非常に大好評でして。どうですか? 先生のところにも反響はありましたか?

新村:
かなりいろいろな人から反響がありまして、ありがたかったです。

川崎:アニマルウェルフェアということが、これから知られていくものとして、みなさん興味深く感じていただけるとは、ぜんぜん予想していなかったので、すごい反響で私も驚きました。今回はその第2弾ということで、(そちらは)東京農工大学の特殊な施設ですか?

新村:そうですね。鶏舎なんですけれども、その見学施設に今います。

川崎:後ろで鶏が出たり入ったりしていたんですが、ガラス張りで、その向こうでは鶏が自由に暮らしているんですよね。

そこに見えているのが、カメラです。鶏の様子をずっと撮っているので、このウェビナーの中でも、鶏の生態がどういうものなのか、そこから考える「アニマルウェルフェアって何だろう?」というところを、深く掘り下げていければと思います。おそらくこの施設自体が日本では初ですよね?

新村:そうです。これは世界でも初めてだと思います。

川崎:もしかしたら世界でも初めてとなる鶏の生態を映像に収めるということも含めて、いったい、どういうアニマルウェルフェアの最前線がここで学べるのかということなんですが。こちらはなんという建物なんですか?

新村:これは「Unshelled(アンシェルド)」という名前を付けた鶏舎になります。

川崎:「shell」は、殻ということですか?

新村:そうです。「unshell」なので、殻に覆われていない環境で暮らしている鶏を見ながらみなで議論しましょう、というテーマで鶏舎を建てました。

川崎:なるほど、まさにガラス張りで。

新村:そうですね。

「Unshelled」では4種類の飼育方法を観察可能

川崎:普通は、鶏舎のバイオセキュリティってかなり厳しくて。

新村:そうですね。

川崎:鳥インフルエンザがどうって(言われたりするので)、入れないですよね。

新村:それを、できるだけ鶏を飼っている状況をそのまま見てほしいということで、いろいろな窓をたくさん付けて、ガラス越しに様子を見られる施設にしました。

川崎:ここでは、単に放し飼いをしているだけではないんですよね?

新村:そうです。放し飼いもあるんですが、ケージや、エンリッチドケージなど、4種類の飼い方をしていて、それを同時に見られるシステムになっています。

川崎:鶏の飼い方に、4種類あるんですか?

新村:そのとおりです。1つが「バタリーケージ」といって、いわゆる金網のケージが1つ。

もう1つはケージに止まり木や巣箱を入れた「エンリッチドケージ」と呼ばれるものがあります。

川崎:バタリーケージは、止まり木や巣箱はなくて、本当にシンプルなケージ?

新村:そこに給餌器と、餌を食べるところと、水を飲むところがあります。

川崎:それに止まり木を足したりすると、エンリッチド。

新村:そうです。3種類目が、いわゆるスーパーでたまに見掛ける「平飼い」。

川崎:平飼い、最近見掛けます。

新村:平屋のような構造に鶏が放し飼いにされている環境が、3つ目の平飼いです。4つ目は、平飼いをさらに2段、3段にした「エイビアリー」という飼い方があるんですが……。

川崎:
平飼いを3段にする?

新村:そうです。上下にも行けるし。

川崎:そうか、平飼いは、水平方向の移動はあるけれども。

新村:上方向にも行けるということですね。鶏も上に飛んでいけますし、単位面積当たりに飼える鶏の数も増やせる飼い方です。

川崎:まさにマンションみたいなものですね? 複数階あるからいっぱいいられるよっていうような。

新村:はい。おっしゃるとおりですね。

川崎:先生、ここでは今、鶏が自由に出てきているんですけど、これは平飼いということなんですか?

新村:これは野外運動場になります。ちょっと難しいんですけど、これが付くと「放牧」という名前になります。

川崎:これ、5つ目が出てきましたね。

新村:5つ目が出てきた、どうしましょうね(笑)?

鶏の「リアル」を集めて観察できる「Unshelled」

川崎:この建物の中から鶏が出てきているんですが、建物の中でエイビアリーだったり平飼いだったりしている。プラスアルファ、ここでは野外運動場が付いている。

新村:そうですね。こちらも同じで、平飼いの外に野外運動場が付いている。

川崎:今、みなさんのカメラの向こう側にも、同じようにガラスで野外運動場が付いています。そちらはガラスですけど、外はあみあみで、空気は自由に行き来しているということで。

新村:自然の太陽光や風を浴びられる環境になっています。

川崎:これは、光を入れたいということなんですか?

新村:やはり太陽光を浴びると、鶏も代謝が良くなってビタミンD3が合成されたりしますので。けっこう自分たちで太陽光を浴びたがったりするんですよね。

川崎:鶏って、放っておいたら太陽光を浴びたい生き物なんですか?

新村:野外運動場はけっこう使っていますね。

川崎:ところが先生、今日は6月でも、外の気温が実は34度もありまして、そうなるとさすがに鶏の姿もあんまり見えないですね。

新村:そうですね。いつもはもう外に出ているんですが、今日はほとんどいませんね。

川崎:これ、中はクーラーがかかっているわけですか?

新村:クーラーはかかっていないですね。でも、うまく換気がされていて、中はかなり涼しい状況になっています。

川崎:中のほうが涼しいから、鶏も外に出てこないんですか?

新村:そうですね(笑)。そういうことだと思います。

川崎:鶏って、太陽をいっぱい浴びているイメージがありますけど、やはり涼しいほうがいいんですか?

新村:やはり暑さにかなり弱いので。羽に覆われているので、羽毛布団のようなイメージです。寒さには強いんですけど、暑さにはかなり弱い生き物ですね。

川崎:なるほど。じゃあ、鶏も今はこの状況では屋内のほうが過ごしやすいっていうことなんですかね(笑)?

新村:この行動を見る限りは、そういうことだと思います。

川崎:ここにリアルがありますね。たまに出てきたりして、暑いなと思って帰る。ちょっとなんかね(笑)。

新村:(笑)。

自由は制限されるが衛生的で生産性が高い「バタリーケージ」

川崎:鶏の行動が見られるわけですが、奥にはバタリーケージとエンリッチドケージが。

新村:エンリッチドケージの部屋が1つあります。

川崎:なぜこの4種類の飼養方法を、1ヶ所で見られるようにしたんですか?

新村:大きな理由の1つとしては、できるだけフェアに見せて、フェアに議論したいなと思いました。放し飼いはもちろんあっていいんですけど、やはりケージにも良いところがございますので。

みなさんにケージも放し飼いもすべてを見てもらって、「あっ、こんな良いところがある」と知っていただく。そして、「じゃあ、日本はこれからどういった方向に進みましょうか?」という議論をするためのフェアな情報を提供したいと思いまして。

川崎:アニマルウェルフェアというと、やはりケージが悪で平飼いが善だと。天使と悪魔のようなイメージがあると思うんですけど、先生のおっしゃるフェアというのはどういうことですか?

新村:例えば、バタリーケージでは正常行動の自由がかなり制限されてしまうんですが、糞などはすべて下に落ちます。なので環境や卵を衛生的な状態に保ちやすいですし、生産力がかなり高いので、安くてきれいな卵をたくさん作れる利点があると思いますね。

一方、ケージフリーはその逆で、鶏たちが取りたい正常行動を自由に取れるんですが、どうしても活動量が増えて、卵を産む量が少なくなってしまいます。なので卵の値段も高くなってしまうと。

川崎:卵を産む量も、1羽当たりで違うんですか?

新村:そうですね。やはり同じ量の餌をあげた時に、ケージの鶏の卵のほうがたくさん産んでくれるのはほぼ間違いないです。

川崎:僕はてっきり、ケージのほうが単位面積当たりの鶏の数が多いから、採れる卵が多いのかなって思っていたんですけど、それだけじゃなくて1羽当たりの産卵数も違うんですか?

新村:飼料効率と呼ばれるんですけども。活動量が増えると、どうしてもそっちにエネルギーがいってしまうので、同じ餌当たりで採れる量が減ってしまうということです。

川崎:なるほど。卵のほうにエネルギーが(いかない)。逆に時間がかかるわけですね。

新村:おっしゃるとおりですね。

なぜヨーロッパではアニマルウェルフェアへの理解が進んだのか

川崎:ということは、場所も1羽当たりが広くなるじゃないですか。場所当たりの生産性も下がるし、一方で1羽当たりの生産性も下がってしまうから、ある種、高くなるのは、比べれば自然なことなんですね。

新村:いろいろな管理やお世話を人が入り込んでしなければいけないということについても、放し飼いのほうが難しくなります。そういった意味でケージは生産性が高くなる。人の管理も少なくて済むし、卵の価格が安くなる設計にできているという感じですね。

川崎:なるほど。ただ一方で、先ほど私も見ましたが、外で日なたぼっこや毛繕い、グルーミングをしている鶏たちが気持ち良さそうだなと思うと、こっちの卵のほうが良いのかなと感じてしまう部分もあるし。

新村:そうですね、おっしゃるとおりです。

川崎:確かに両方ありますね。

新村:非常に高度なアニマルウェルフェアを達成しようと思うと、こういった放し飼いのほうがいろいろな行動の自由の制限はなくなります。より高度なアニマルウェルフェアを達成できるというのは、それはそれでまた事実だと思います。

川崎:かと言って、そればかりじゃないという現実が、実際にはあるということですね。

新村:そこの生産性とアニマルウェルフェアはトレードオフの関係にあります。「じゃあ、どうしますか?」と考えるのが、やはり今の日本では重要かなと思いますね。

川崎:この施設には、すでにほかにもお客さんがいらしているんですか?

新村:けっこういろいろな方に来ていただいております。先日は小池(百合子)都知事ですとか。文科省の方ですとか、いろいろな方にも来ていただいています。

川崎:以前のウェビナーの際に、ヨーロッパでなぜアニマルウェルフェアへの理解が進んだのかの1つに、生産者と、小学生や中学生などの学生がすごく近かった、ということを挙げられていたと思うんですね。

新村:そうですね。

川崎:例えば今の日本のほとんどの小学生は、実際に牛や鶏などの畜産の現場には行ったことがないわけですよね。

新村:自分たちが毎日食べている動物がどうやって生産されて、飼われているのかというのは、たぶんほとんどの人が知らないんじゃないかなと。アニマルウェルフェアが、日本の消費者とすごく距離があるのは、そこに大きな理由があるんじゃないかなと思いますね。

続きを読むには会員登録
(無料)が必要です。

会員登録していただくと、すべての記事が制限なく閲覧でき、
スピーカーフォローや記事のブックマークなど、便利な機能がご利用いただけます。

無料会員登録

すでに会員の方はこちらからログイン

または

名刺アプリ「Eightをご利用中の方は
こちらを読み込むだけで、すぐに記事が読めます!

スマホで読み込んで
ログインまたは登録作業をスキップ

名刺アプリ「Eight」をご利用中の方は

デジタル名刺で
ログインまたは会員登録

ボタンをタップするだけで

すぐに記事が読めます!

次ページ: 日本レベルの衛生基準を保つための苦労

関連タグ:

この記事のスピーカー

同じログの記事

この記事をブックマークすると、同じログの新着記事をマイページでお知らせします

コミュニティ情報

Brand Topics

Brand Topics

人気の記事

    新着イベント

      ログミーBusinessに
      記事掲載しませんか?

      イベント・インタビュー・対談 etc.

      “編集しない編集”で、
      スピーカーの「意図をそのまま」お届け!