日本レベルの衛生基準を保つための苦労
川崎:なるほど。わかりました。ちなみにこのエリアは、Unshelled以外にもそういった動物のことを考える場所になっているんですか?
新村:東京農工大学の半分が農場になっておりまして、畑もありますし、牛、鶏、昆虫、植物もいます。たくさん「見て、考えて」という場を肌で感じられる環境が整えられています。
川崎:ちなみにここで先生も鶏舎を持ったということで、ちょっとした養鶏農家さんになったということですか?
新村:そうですね、そういう意味では。めちゃくちゃ大変ですね(笑)。
川崎:なってみていかがですか(笑)?
新村:たったの50羽しか飼っていないんですが、いや、こんなに大変だとは……想像以上でした。(飼育方法が)4種類あるということもあるかもしれないですが、鶏のお世話をするのってこんなに大変なんだなということで。
川崎:何が大変なんですか?
新村:もう、朝起きて卵を集めて、糞を運んで、鶏の状態を確認して、餌を足して。当たり前の業務なんですが、それが想像以上に、土日も含めて毎日誰かがやらなきゃいけないということで。
川崎:土日だからって、休めないですよね?
新村:そうなんですよ。動物は休んでくれません。お正月も夏休みも含めて全部、やはりやらなければいけない。
川崎:それ、どうしているんですか? 学生さんでシフトを組まれているんですか?
新村:学生がシフトを組んでくれて、なんとかみんなで回しているような状況です。
川崎:それでもけっこう大変だと?
新村:やはりきれいに維持していかなければいけないということがあります。生産者の方には頭が上がらないような状況ですね。
川崎:そうですよね。日本の養鶏業者さんって、当然「業」として営むからには、すごい羽数を飼わなければならないし、その分手間もかかる。
一方で我々は気軽にスーパーで卵を飼って、卵かけご飯を「TKG」って言って、生の卵も安全においしく食べられますよね。日本にはかなり高いレベルの衛生基準があると。これはやはりすごいことなんですね。
新村:なかなか世界で見ても、ここまできめ細やかに管理できる生産者というのは、日本がもうトップなんじゃないかなと思いますね。
本邦初公開の「Unshelled」に潜入
川崎:生卵を食べたり、半熟の卵を食べたりしてあたったよという描写って、海外ドラマであるあるなんですけど。海外ってそんな感じなんですか?
新村:基本的にはお湯で熱を加えて食べるのが一般的です。そうすればサルモネラ菌などはすべて死んでしまいますので、生で食べるような環境にはないかなと思いますね。卵の殻も洗いませんし。
一方で日本は、必ず殻もすべてきれいに消毒して、洗ってからスーパーに並べていくので。(厚生労働省の規定で)次亜塩素酸で洗うのが決まっていますね。
川崎:洗卵と言われる作業で。
新村:なのでやはり日本(の衛生管理)は世界トップクラス。
川崎:飼い方自体も、鳥インフルエンザなど、バイオセキュリティに気を配って清潔にして飼わなきゃいけないし。さらに出荷前にも洗卵をして、やっと初めてクリーンな卵をいただくことができると。
新村:それをあれだけ安くきれいにして売っているというのは、やはり生産者の努力のたまものじゃないかと思います。
川崎:なるほど。先生、今日は特別に中も見せていただけるとうかがっていますので。中にカメラが入るのは、本邦初公開でいいんですかね? 学術的にも非常に貴重な初めての映像になるとうかがっておりますので、一緒に回っていただければと思います。よろしくお願いします。
新村:よろしくお願いします。
(※場面転換)
川崎:あれ? これ「あみあみ」ですか?
新村:そうですね、小鳥が入れないぐらいの大きさで。あっ、いますね。
川崎:近づいてきた(笑)。
新村:(笑)。
川崎:すごい。中に入っちゃってもいいんですか?
新村:ここは駄目なんですよ。
川崎:わかりました。あっ、衛生管理区域。
新村:そうなんです、ここから(衛生管理区域になっています)。
川崎:すごい。こういうバイオセキュリティが張られているわけですね。あっ、すごく寄ってくる。
新村:かわいいですね。
川崎:フワフワですね。
新村:そう。羽につやがあってきれいですね。
川崎:すごい。それは平飼いだからですか?
新村:そうです。
川崎:あそこにスリットがありますね。このスリットは斜めになっているんですか?
新村:そうですね。太陽がこうこういう感じで……。
いよいよ運動場とケージの全容を見学
川崎:今、確かに日が入ってきていますね。
新村:そうですね。
川崎:そうかそうか。じゃあ、今太陽が傾いてきていますから、こう当たっていますけど。太陽が上にある時もこのスリットで。
新村:(日光が)浴びられるということですね。
川崎:へぇ。
(※場面転換)
川崎:ジャンプして入っていくんですね。
新村:うまく入っていきますね。
川崎:鶏ってジャンプするんですね。
新村:意外と飛ぶんですよ。2メートル、3メートルぐらいはぜんぜん余裕で。
川崎:それは羽を使ってですか。あぁ、そうか。あっちも、運動場自体は、両方同じですよね。
新村:そうです、同じですね。
(※場面転換)
川崎:じゃあ先生、ここは運動場でしたけど、もうケージの全容が見られると。
新村:すべてが見られます。
川崎:潜入してみたいと思います。
(※場面転換)
川崎:ここが、全部の飼い方が見学できるような施設になっているわけですか。
新村:そうです。
川崎:あっ、もう見えていますね?
新村:そうなんです、ここが平飼いですね。
川崎:これ、見えますか。鶏と今、目が合いましたよ(笑)。
新村:(笑)。ここにいても寄ってくるんですよね。
川崎:すごい。中のほうが涼しいから、先ほどは運動場にはいなかったですけど。
新村:おりますね。
川崎:これは平飼いなんですか? 2階建てになっていますけど。
新村:そうですね、一応ここを1階とするという。
川崎:へぇ。ここに今何羽ぐらいいるんですか?
新村:15羽ですね。なんというか、他がスカスカな状態というか。
川崎:もう、ある意味リッチな状態というか。これが平飼いと言われる状態? ちょっと運動スペースはあるんですね。
新村:ここで砂浴びをしたり、いろいろ探索行動をしたりできるのがここですね。
川崎:けっこうみんな、ゆったりと過ごしていますね。そして、振り返ってこちらが。
新村:こちらがエイビアリーという飼い方になります。
巣箱の裏側で採卵体験
川崎:この青いのは何ですか?
新村:水が自動で流れていくような。
川崎:給水器?
新村:赤く見えるのが。
川崎:見応えありますね。あっ、止まり木に止まっている。平飼いはこの高さに止まり木なかったですよね。
新村:そうですね。具体的に言うと、1段、2段、3段、4段と段差があって。
川崎:4階建て。ここで何羽?
新村:ここも15羽です。
川崎:15羽で4階建てだったら、もうスカスカですね。そして?
新村:こちらがケージですね。裏がケージで、奥がバタリーケージです。
川崎:同じように見えますけど、違うんですね。
新村:止まり木がケージの中にあるんですけど、ここがエンリッチドケージになっています。
川崎:これを見て、こっちを見ると、なんか確かにちょっときゅうきゅうな感じがしますね。こっちは何羽ずつなんですか?
新村:10羽ですね。これ以上は飼えない。バタリーケージには、1ケージに4羽から3羽、入っています。
川崎:へぇ。すごいですね。こっちの部屋で一気にガラス越しに全部見られるわけですね?
新村:そうですね。
川崎:そして、お越しになった方も普通はここまでなんですが、今日は先生と一緒に中をめぐってみたいと。じゃあ先生、まずは着替えからですかね。
新村:そうですね。
川崎:じゃあ、着替えます。
(※場面転換)
川崎:着替えました。養鶏業者さんって、みんなこういう格好なんですよね。
新村:必ず着替えて、長靴も履き替えて入りますね。
川崎:はい。ここは小窓が。
新村:のぞいていただくと、巣箱の裏側になっています。
川崎:えぇ?
新村:ちょうど卵が見えるんですけども。
川崎:産んでいます(笑)。
新村:ここで巣箱が斜めになっているので、卵がこっち側に落ちてきて、ここで回収できます。
川崎:これはなんの裏側なんですか?
新村:巣箱の裏側ですね。
川崎:飼い方で言うと?
新村:平飼いですね。
川崎:えっ、先生、じゃあ……。
新村:そうなんですよ。
川崎:採っちゃってもいいんですか?
新村:採っちゃってください。
放し飼い卵としては出荷できない「巣外卵」
川崎:あっ、採卵しました。卵です。ちょっと感動(笑)。すごい。産みたてですね。なんか、普通ですね。
新村:(笑)。
川崎:産みたてだから、ということじゃなくて、普通にもう(店頭に)並んでいる状態の卵に見えます。
新村:そうですね、きれいですね。
川崎:へぇ。じゃあ、基本的には採卵は裏側でするんですね。
新村:みんな基本的に巣箱で産んでくれるので。
川崎:わかりました。ちょっと覚えておきましょう。じゃあ、さっそく中へ。
新村:はい。こちらでもう一度履き替えて……。
川崎:わかりました。
(※場面転換)
川崎:先生。ここが、ええと?
新村:平飼いですね。
川崎:はぁ。これもうすでに鶏たちが寄ってきてくれていますけども(笑)。
新村:(笑)。そうですね。好奇心旺盛ですね。じゃあ、ちょっと中へ。
川崎:今回特別に中に入れていただけることに。あっ、そういう感じで。じゃあ、カメラさんも気をつけて入っていただければと思いますので。どうぞ。あれ、先生。これ僕、発見しちゃったんですけど。
新村:巣外卵ですね。
川崎:これ、卵ですよね。あっ、巣の外で産んでいるという。
新村:1羽か2羽ぐらいなんですけど、産んじゃうんですね。
川崎:これはどうしているんですか?
新村:これは、もう放し飼いの卵としては僕らは出していなくて。熱でサルモネラ菌を殺して食べる。
川崎:そうか、バイオセキュリティ上の問題があるんですね。へぇ、わかりました。
新村:生産者の方も、だいたいこういう卵はもう、加工品用に割っちゃって使う。
川崎:そうなんですね。その歩留まりもありますね。
新村:放し飼いの卵としては売れなくなるので。
川崎:あっ、先生。ちょっと、ツンツンされています。
新村:(笑)。
川崎:これはどういうことでしょう?
新村:新しい環境に対してすごく興味があるので、それを探索しに来ている。
川崎:敵対心でツンツンしているわけではなくて?
新村:これは好奇心で来ていますね。探査行動です。
川崎:好奇心。これ(卵)、いったんここに置いておいていいですか?
新村:はい。
川崎:巣外卵。
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