生成AIが世の中に普及する中で、ユーザーの行動も大きく変化しています。AIによるお勧めが認知のきっかけになったりと、従来のSEOや広告に頼る集客だけでは、ユーザーにコンテンツを届けることが難しくなりつつあります。本イベントでは、株式会社LANYの浅井優太氏、株式会社ラクスの宮坂夏生氏らが登壇し、生成AI時代に顧客から選ばれるための戦略を徹底解説。注目の「LLMO」から、プラットフォームに依存せずに顧客に直接リーチする手法まで、すぐに実行できる施策を語ります。
「AIを使った検索」が増える世の中に
馬渡拓海氏(以下、馬渡):あらためまして、株式会社LANYの浅井さま、そして株式会社ラクスの宮坂さまにご登壇いただくかたちとなります。
今回は「生成AI時代のコンテンツマーケ戦略~ユーザー行動が変わりつつある今、選ばれるサービスになるためには?~」と題して、いくつかアジェンダを持ってきておりますので、それに沿って両者間の意見交換をできればと思っております。
浅井優太氏(以下、浅井):みなさまもたぶん、AIを使って物事を調べたりすることがすごく増えているんじゃないかなと思っております。
ChatGPTやGeminiといった、AIチャットボット。最近だとGoogleで検索した時にAI Overviews(AIによる概要)というものが出てきて、回答をAIがまとめてくれるかたちになっています。

そういったことによって、今までは物事を何か知りたいなと思ったら調べて、いわゆるSEOや(ページの)上部にある広告などの検索結果を見ていたところが、すごく変わってきています。
AIを使った検索行動はすごく増えているんですけど、現時点ではまだ少ないかなと思います。
現状だと、AIによる概要がすごく増えています。これが表示されると何が起きるかというと、SEOとかをやられている方だと、もしかしたらみなさんも、実際に「流入が取りにくくなっているよね」というお話を聞くこともあるんじゃないかなと思います。
「AI Overviews(AIによる概要)」で検索流入が減少
浅井:Googleとしては「検索の総数はぜんぜん減ってないよ」とは言っているんですけど、サイトやキーワードによっては、こういうものが出てくると流入が取りづらくなることは実際に起きているのかなと思います。

弊社でサポートしている会社さんも、やはりAIの概要が出てくることによって流入が減る事態も実際に起きています。推定で4割くらい取られちゃっているんじゃないかというところもデータとしてはあります。(いわゆる「ノウハウ」系のキーワードの流入は取りにくくなっているという所感があります)。

AIの検索がより進んでいく未来として、この「AIモード」が日本に実装されると、すごく変わるんじゃないかなと思っています。
知っている方もいるかもしれませんが、通常のGoogle検索をした時に「すべて」「画像」「動画」みたいなタブが出てくると思うんですが、そこにAIモードという機能がつく。簡単に言うと、そこを押すと調べているキーワードに対してGeminiが物事を調べてきて、回答をまとめてくれるような機能があります。

これが今アメリカとインド、先月にイギリスでリリースされています。日本でもAndroid版だと、もうすでに「AIモード」という表示がうっすら見えていることもあって、年内
※ぐらいに来るんじゃないかなという予測もあったりします。
※2025年9月9日にGoogleからAI モードの日本語でのリリースが正式発表されました。この機能が日本のみならず全世界で導入されると、AIを使った検索などが広く一般的になるんじゃないかなと思います。
こうなってくると、今まではいわゆるSEOやリスティングが検索の結果においてすごく重要だったんですが、そこで調べるユーザーだけではなくて、さっきのAIモードが出てきた時にはそっち(AIモード)を使うユーザーだったりとか。

今でももうChatGPTとかGeminiを使っている人もいると思うので、検索の総数自体が減ることはないと思うんですけど、そのたどり着く先がバラバラになっていく。シェアの取り合いになっていくのかなと思っています。

生成AIに自社の製品やサービスを推奨してもらう取り組みが重要
浅井:そうなった時に、やはり生成AIで聞かれた時にも自社が出るようにしたり、AI Overviewsでも(自社の商品やサービスが)お勧めされることの重要性は今後増していくんじゃないかなと弊社では考えております。
今までは、例えば掃除機が買いたいとなったら「掃除機おすすめ10選」とか、いろいろなサイトの情報をユーザーが自分で検索して何個も見て。「ダイソンがいい」「パナソニックがいい」とか、いろいろなものを自分で整理して、「値段だったらこれがいいよね」といったことを見て「これを買おう」と決めていたと思います。
今後は、自分が「2DKに住んでます。こういう悩みがあります。こういう掃除機がいいです」というのを生成AIに聞いて、それを生成AIがまとめてくれて、そこでお勧めされたものを買うという行動がどんどん増えてくるんじゃないかなと。
そうすると、生成AIにまず選んでもらわないことには、ユーザーの選択肢に入ってこなくなるので、今後はAIに良い製品や良いサービスとしてお勧めされる重要性が高まってきます。

ただもちろん、いろいろなデジタルマーケティングの手法がある中で、SEOや広告も同じだと思うんですけど、すべての製品やサービスと相性が良いわけではないかなと思っています。
特に相性が良い領域は、理性的で高関与。検討がすごく重要な領域かなと思います。端的に言うとすごく高いものとか、検討に時間がかかるもの。BtoBのサービスやプロダクトはこっち寄りなのかなと個人的には思っています。

みなさまだったら、いろいろな情報を基に比較をした上で、上司の方に説明されたりすると思うので、いろいろな情報を集めなきゃいけないと。そうするとAIなどで情報を集める行動がかなり起きやすいというところですね。
一方でファッションや嗜好品はわざわざAIで検索をするよりは、ブランドの憧れで買うとか。お菓子などはわざわざ調べることもないと思うので、そういった領域ではないところで、LLMO(Large Language Model Optimization:大規模言語モデル最適化)はどんどん重要になってくるのかなと思っています。
生成AI検索のベースになるのは、SEOとブランドづくり
浅井:ただ、生成AIの検索の対策はすごく画期的に聞こえるんですけど、ベースは今までどおりのSEOとブランドを作ることが重要になってくるのかなと思っています。

生成AIなどの細かな情報の取得の仕方は今日はちょっと割愛しますが、基本的にはGoogleなど検索エンジンにある情報を引っ張ってきますというところですね。
なので、みなさんのサイトやサービスの情報が、検索をした時にちゃんと見つからないと、そもそも生成AIも見つけることができない状態です。なので、もしSEOをやられていなければ、きちんとSEOをやっておきましょうというのが大前提。

その中でブランドですね。「何々といえば何々」みたいな想起が、インターネット空間にできているかどうかはすごく重要です。「SEOといえばLANY」、もっと言えば「BtoBのSEOならLANY」といった、いろいろな切り口で「何々といえばLANY」という想起ができている。
そうすると、例えば「SEO会社のおすすめってどこですか?」と生成AIに聞いた時に、「LANYさんがいっぱい『いいよ』と言われているから、ここがおすすめ」と出してくれやすくなるので、ブランドを作るという活動がどんどん重要になるのかなと思っています。

弊社ではこんな例えを出しているんですけど、「姿勢を良くする椅子は?」と聞くと、ハーマンミラーという高い椅子が出るんです。それは「姿勢を良くするためには人間工学的にデザインされた椅子が重要」という思想が生成AIの中に入っていて、「人間工学的に設計された椅子は?」と聞いた時に「ハーマンミラー」という想起もあると。

これをリーズニングモデルと言うんですけど、「何々に必要なのは何々で、その何々ができるのは何々」という連想ゲームをしていくようなかたちになっています。

みなさまも、まずは切り口を何にするかを決めて「そのためにはこういうことが重要で、これができるのは我々だよ」という情報を、例えばPRやアフィリエイトや広告、オウンドメディアで達成していくことが、今後はどんどん重要になるんじゃないかなと思っています。

こういうふうに検索行動の変化がすごく起きやすくなっているので、みなさまの情報の発信の仕方も変わってくるんじゃないかなと思っています。いったん簡単な説明としては以上とさせていただきます。
検索流入の減少の原因は、データを見て冷静に見極めを
宮坂夏生氏(以下、宮坂):浅井さん、ありがとうございました。お話をうかがって私から1つ質問をさせていただけたらなと思います。私どもの社内でもやはり生成AIが登場してから、ちょっとサイトへの流入数が減るといったことが起きています。
私たちのように、最近Webサイトへの流入数が減っている企業さまがいるとして、では生成AIが原因ということでしょうか?
浅井:それは、一概に生成AIが登場したから流入が取られているわけではないと思っています。もちろんオウンドメディアなどで、いわゆるノウハウ系のキーワードを対策していれば、AIなどに取られている可能性はすごく高いんですけれども。
それ以外にも、やはり単純にSEOで順位が落ちているといったトレンドに左右されている場合もけっこうあるので。
ここはみなさまもいろいろなデータが見られるんですね。生成AI起点の流入が増えているか減っているかは、例えばGA4などでリファラーを設定すれば見られたりしますし、外部のツールを使えばAI Overviewsがどれだけ出ているかはチェックできる。
そこはぜひ冷静に判断をしつつ、今後は生成AIからの流入を増やすとか、AI Overviewsに取り上げてもらうことも頭に入れてもらえるとうれしいなと思っています。